HOKUTO編集部
2年前
〔編集部から〕食道がんは代表的な難治がんの1つとされてきましたが、 近年、 複数の治療を組み合わせた集学的治療の開発が進んでいます。 そこで今回、 消化器内科、 消化器外科、 放射線領域における"Young Opinion Leader"の3氏にご参集いただき、 局所進行食道がんの集学的治療について、 議論してもらいました。 第3回のテーマは、 「オリゴ転移・再発へのアプローチ」です。 ぜひご一読ください。
❶ オリゴ再発のデータは少ないが、 限局した再発例なら長期制御を目的とした治療を検討
❷ 真のオリゴ再発かどうか見極めも課題だが、 現時点では局所治療をしっかり行うことが肝要
❸ 再発までの期間も重要で、 術後早期に再発する症例は予後が悪い傾向が示唆される
❹ 術後早期に再発を認める症例に対する治療法は、 さらなる検討が必要
山本 近年、 「オリゴ再発」や「オリゴ転移」が各がんで注目を集めています。 食道がんでの最適な治療法について、 展望はいかがでしょうか。
柏原 食道がんでは、 オリゴ転移・再発 (以下、 オリゴ再発) のデータはまだ少ないですが、 例えば前立腺がんではオリゴ再発をコントロールすることが生存に寄与するというデータも出てきています。 食道がんの術後再発例でも、 限局した再発例であれば積極的に局所コントロールをすることで根治を目指せる症例もありますので、 そのような症例ではオリゴ再発を積極的に治療した方が良いと思います。
ただし、 最も大事なのは、 「本当にオリゴ再発なのか」という点だと思います。 放射線治療で照射野内の病変がしっかりコントロールできていたとしても、 後に転移再発が認められる症例もあります。 「本当はオリゴ再発ではない症例」を見極められる方法が今後開発されることに期待しますが、 現時点では、 局所治療をしっかり行うことが何より重要だと思います。
山本 そう考えると、 循環腫瘍DNA (ctDNA) によるオリゴ再発の検出にも期待が寄せられますね。 実臨床では、 再発リスクが高い症例には術後にニボルマブを投与できる時代になりました。 実際に、 (術後ニボルマブの有効性を示した) CheckMate 577試験では、 術後ニボルマブ療法により遠隔転移が抑えられたというデータも示されています。 これらを鑑みると、 局所治療に勝負をかけられれば、 長期制御も期待できると思います。 なお、 オリゴ再発といいつつも、 No.16リンパ節近傍が腫れてくるような症例は、 予後が不良である印象がありますが、 いかがでしょうか?
柏原 No.16リンパ節あたりに転移を認める場合は、 骨転移と同様にほぼ遠隔転移に相当しますね。 たしかにそのような症例に対しては、 局所治療を行なっても、 早期に再発を認めやすい印象はあります。
また再発までの期間も重要だと思います。 術後早期に再発を認める症例に対しては、 やはり局所治療を行なっても予後が悪い印象はあります。
山本 たしかに術前DCF療法が標準となった時代でも、 術後早期に再発を認める症例は、 局所治療を行なってもやはり予後は良くない印象はありますね。 そのような症例には、 当院ではレジメンをFOLFOX療法に変えて交差耐性がないと考えられる局所治療を行うなどのアプローチも試みていますが、 いまだ未開な領域であり、 さらに検討が必要と思われます。
(第4回「切除不能 (Ⅳa期) な局所進行食道がんの集学的治療」に続く)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。