治療スケジュール
概要
監修医師

Ravulizumab:ラブリズマブ(ユルトミリス®)

投与量コース投与日
初回2400~3300mg、 2回目以降3000~3600mg 点滴静注1~Day 1

前投薬

投与開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種.

その他

用量は体重によって規定.
投与間隔は、 2回目は初回投与2週間後、 3回目以降は8週間ごと.
最短投与時間は、 通常製剤とHI製剤で異なるため注意すること.
0.2又は0.22ミクロンのインラインフィルター付きルートを用いて投与.
初回投与2週後までにLDH活性が低下していない場合、 投与継続の要否を検討.
免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法の施行後は、 本剤の補充投与を考慮.
レジメン
Ravulizumab
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ユルトミリス® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「アレクシオンファーマ合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

適正使用ガイド¹⁾ ALXN1210-PNH-301試験 Ravulizumab継続群より引用.

(全集団/日本人集団) の順で記載.

主な有害事象

  • 頭痛 (36.8%/44.4%)
  • 上気道感染 (19.2%/38.9%)
  • 上咽頭炎 (12%/11.1%)
  • 発熱 (11.2%/11.1%)
  • 関節痛 (10.4%/11.1%)
  • 悪心 (10.4%/0%)
  • 下痢 (9.6%/11.1%)
  • 腹痛 (8%/11.1%)
  • 口腔咽頭痛 (6.4%/11.1%)

その他

  • 背部痛 (8.8%/5.6%)
  • ウイルス性上気道感染 (8.8%/0%)
  • 四肢痛 (8%/0%)
  • 浮動性めまい (7.2%/5.6%)
  • 低カリウム血症 (7.2%/0%)
  • 筋肉痛 (6.4%/0%)
  • 嘔吐 (5.6%/5.6%)
  • 不眠症 (5.6%/0%)
  • 動悸 (5.6%/0%)
  • γGTP増加 (5.6%/0%)
  • インフルエンザ様疾患 (5.6%/0%)

特徴と注意点

発作性夜間血色素尿症 (PNH)

  • 補体タンパク質C5を標的とする遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体の一つ.
  • 補体タンパク質C5に対して高い親和性かつ特異的な結合により、 C5からC5a及びC5bへの開裂を阻害. 終末補体複合体C5b-9の産生を抑制することにより、 PNH患者における終末補体介在性血管内溶血を改善する.
  • 注意すべき副作用に、 髄膜炎菌感染症Infusion reaction (臨床試験¹⁾では1.5~6.9%) がある.
  • 本剤の投与により、 髄膜炎菌をはじめ、 莢膜形成細菌 (淋菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型等) による感染症リスクが増大することから、 感染対策、 ワクチン接種などの十分な患者指導を行う.
  • 初回投与2週後までにLDH活性が低下していない場合には、 本剤の投与継続の要否を検討する.
  • 本剤とEculizumab (ソリリス®) の違いとして、 投与間隔とウシ血清アルブミンの有無が挙げられる.
  • Ravulizumab:維持期は8週間毎、 Eculizumab:維持期は2週間毎
  • Eculizumabは製造過程でウシ血清アルブミンを使用.

髄膜炎菌感染症の予防

  • 緊急治療を要する場合等を除き、 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種.
臨床試験では、 ワクチン接種前又は接種後2週間以内に本剤を使用した場合、 ワクチン接種後2週間は抗菌薬投与を規定 (例:セフトリアキソン、 セフォタキシム等).
  • ワクチンは、 A、 C、 W-135及びY型に対するワクチン、 及びB型 (入手可能な場合) を推奨.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注
  • ワクチン接種又は再接種により補体が活性化され、 PNH、 aHUS、 gMG及びNMOSD等の補体介在性疾患が悪化する可能性あり.
  • 髄膜炎菌ワクチンは5年ごとを目安に追加接種することをガイドラインで推奨. 必要な抗体価については諸説あり、 現時点では確立されていない.
  • 免疫抑制状態の患者に対しては、 髄膜炎菌ワクチン (ACWY型) を第1期接種として8週以上間隔をあけて2回接種すること、 また5年ごとに追加接種することを推奨.

関連する臨床試験の結果

ALXN1210-PNH-301試験²⁾

概要

  • 第Ⅲ相非盲検ランダム化実薬対照多施設共同試験
  • 対象:補体阻害剤未治療の18歳以上のPNH患者246例*
*Ravulizumab群125例 (うち日本人18例)、Eculizumab群121例 (うち日本人15例)
  • 方法:Ravulizumab又はEculizumabを1:1で無作為に割付
  • 主要目的:補体阻害剤未治療のPNH患者を対象に、 Eculizumabを対照薬としてRavulizumabの非劣性を検証
  • 主要評価項目:Day183までの輸血回避達成率、 Day29からDay183までのLDH値の正常化達成率

結果

  • Ravulizumabは、 主要評価項目及び全ての主な副次評価項目においてEculizumabに対して非劣性であった (Pinf<0.0001).
  • 輸血回避:73.6% vs 66.1% (差6.8% [95%CI] -4.66、 18.14)
  • LDH正常化:53.6% vs 49.4% (オッズ比1.19 [0.80、 1.77] )
  • LDH減少率:-76. 8% vs -76.0% (差 -0.83% [95%CI] -5.21、 3.56)
  • FACIT-Fatigueスコアの変化:7.07 vs 6.40 (差0.67 [95%CI] -1.21、 2.55)
  • ブレークスルー溶血:4.0% vs 10.7% (差 -6.7% [95%CI] -14.21、 0.18)
  • ヘモグロビン値の安定化:68.0% vs 64.5% (差 2.9 [95%CI] -8.80、 14.64)
  • RavulizumabとEculizumabの安全性と忍容性は同様であり、 髄膜炎菌感染症は発生しなかった.
  • Ravulizumab 8週ごとの投与は、 Eculizumab 2週ごとの投与と比較して、全ての有効性エンドポイントで非劣性が得られ、 安全性プロファイルも同様であった.

ALXN1210-PNH-302試験³⁾

概要

  • 第Ⅲ相非盲検ランダム化実薬対照多施設共同試験
  • 対象:過去6ヵ月以上Eculizumabの投与を受け、 臨床的に安定している18歳以上のPNH患者195例*
*Ravulizumab群97例 (うち日本人5例)、 Eculizumab群98例 (日本人7例)
  • 方法:Ravulizumab又はEculizumabを1:1で無作為に割付
  • 主要目的:Eculizumabによって臨床的に安定しているPNH患者を対象に、 Eculizumabを対照薬としてRavulizumabの非劣性を検証
  • 主要評価項目:ベースラインからDay183までのLDH値の変化率

結果

  • 183日間の治療を完了した191例の患者において、 Ravulizumabは Eculizumabに対して非劣性であった (全てのエンドポイントについてPinf<0.0006).
  • LDH変化率:差 9.21% ([95%CI] -0.42~18.84、 優越性 P=0.058)
  • ブレークスルー溶血:差 5.1 ([95%CI] -8.89~18.99)
  • FACIT-Fatigueの変化:差 1.47 ([95%CI] -0.21~3.15)
  • 輸血回避:差 5.5 ([95%CI] -4.27~15.68)
  • ヘモグロビン値の安定化:差 1.4 ([95%CI] -10.41~13.31)
  • 最も多く報告された有害事象は頭痛であった (Ravulizumab 26.8%、 Eculizumab 17.3%).
  • 髄膜炎菌感染症や有害事象による中止は認められなかった.
  • PNH患者において、 Eculizumab 2週毎投与からRavulizumab 8週毎投与に安全かつ効果的に切り替えられる可能性が示された.

参考文献

  1. ユルトミリス®適正使用ガイド
  2. ALXN1210-PNH-301試験
  3. ALXN1210-PNH-302試験

関連コンテンツ

🔢 発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断基準・重症度分類

HOKUTO表・計算ツール
最終更新:2024年6月28日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

レジメン
Ravulizumab
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
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監修・協力医一覧
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Ravulizumab
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Ravulizumab

ラブリズマブ(ユルトミリス®)
2024年06月28日更新

Ravulizumab:ラブリズマブ(ユルトミリス®)

投与量コース投与日
初回2400~3300mg、 2回目以降3000~3600mg 点滴静注1~Day 1

前投薬

投与開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種.

その他

用量は体重によって規定.
投与間隔は、 2回目は初回投与2週間後、 3回目以降は8週間ごと.
最短投与時間は、 通常製剤とHI製剤で異なるため注意すること.
0.2又は0.22ミクロンのインラインフィルター付きルートを用いて投与.
初回投与2週後までにLDH活性が低下していない場合、 投与継続の要否を検討.
免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法の施行後は、 本剤の補充投与を考慮.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ユルトミリス® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「アレクシオンファーマ合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

適正使用ガイド¹⁾ ALXN1210-PNH-301試験 Ravulizumab継続群より引用.

(全集団/日本人集団) の順で記載.

主な有害事象

  • 頭痛 (36.8%/44.4%)
  • 上気道感染 (19.2%/38.9%)
  • 上咽頭炎 (12%/11.1%)
  • 発熱 (11.2%/11.1%)
  • 関節痛 (10.4%/11.1%)
  • 悪心 (10.4%/0%)
  • 下痢 (9.6%/11.1%)
  • 腹痛 (8%/11.1%)
  • 口腔咽頭痛 (6.4%/11.1%)

その他

  • 背部痛 (8.8%/5.6%)
  • ウイルス性上気道感染 (8.8%/0%)
  • 四肢痛 (8%/0%)
  • 浮動性めまい (7.2%/5.6%)
  • 低カリウム血症 (7.2%/0%)
  • 筋肉痛 (6.4%/0%)
  • 嘔吐 (5.6%/5.6%)
  • 不眠症 (5.6%/0%)
  • 動悸 (5.6%/0%)
  • γGTP増加 (5.6%/0%)
  • インフルエンザ様疾患 (5.6%/0%)

特徴と注意点

発作性夜間血色素尿症 (PNH)

  • 補体タンパク質C5を標的とする遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体の一つ.
  • 補体タンパク質C5に対して高い親和性かつ特異的な結合により、 C5からC5a及びC5bへの開裂を阻害. 終末補体複合体C5b-9の産生を抑制することにより、 PNH患者における終末補体介在性血管内溶血を改善する.
  • 注意すべき副作用に、 髄膜炎菌感染症Infusion reaction (臨床試験¹⁾では1.5~6.9%) がある.
  • 本剤の投与により、 髄膜炎菌をはじめ、 莢膜形成細菌 (淋菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型等) による感染症リスクが増大することから、 感染対策、 ワクチン接種などの十分な患者指導を行う.
  • 初回投与2週後までにLDH活性が低下していない場合には、 本剤の投与継続の要否を検討する.
  • 本剤とEculizumab (ソリリス®) の違いとして、 投与間隔とウシ血清アルブミンの有無が挙げられる.
  • Ravulizumab:維持期は8週間毎、 Eculizumab:維持期は2週間毎
  • Eculizumabは製造過程でウシ血清アルブミンを使用.

髄膜炎菌感染症の予防

  • 緊急治療を要する場合等を除き、 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種.
臨床試験では、 ワクチン接種前又は接種後2週間以内に本剤を使用した場合、 ワクチン接種後2週間は抗菌薬投与を規定 (例:セフトリアキソン、 セフォタキシム等).
  • ワクチンは、 A、 C、 W-135及びY型に対するワクチン、 及びB型 (入手可能な場合) を推奨.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注
  • ワクチン接種又は再接種により補体が活性化され、 PNH、 aHUS、 gMG及びNMOSD等の補体介在性疾患が悪化する可能性あり.
  • 髄膜炎菌ワクチンは5年ごとを目安に追加接種することをガイドラインで推奨. 必要な抗体価については諸説あり、 現時点では確立されていない.
  • 免疫抑制状態の患者に対しては、 髄膜炎菌ワクチン (ACWY型) を第1期接種として8週以上間隔をあけて2回接種すること、 また5年ごとに追加接種することを推奨.

関連する臨床試験の結果

ALXN1210-PNH-301試験²⁾

概要

  • 第Ⅲ相非盲検ランダム化実薬対照多施設共同試験
  • 対象:補体阻害剤未治療の18歳以上のPNH患者246例*
*Ravulizumab群125例 (うち日本人18例)、Eculizumab群121例 (うち日本人15例)
  • 方法:Ravulizumab又はEculizumabを1:1で無作為に割付
  • 主要目的:補体阻害剤未治療のPNH患者を対象に、 Eculizumabを対照薬としてRavulizumabの非劣性を検証
  • 主要評価項目:Day183までの輸血回避達成率、 Day29からDay183までのLDH値の正常化達成率

結果

  • Ravulizumabは、 主要評価項目及び全ての主な副次評価項目においてEculizumabに対して非劣性であった (Pinf<0.0001).
  • 輸血回避:73.6% vs 66.1% (差6.8% [95%CI] -4.66、 18.14)
  • LDH正常化:53.6% vs 49.4% (オッズ比1.19 [0.80、 1.77] )
  • LDH減少率:-76. 8% vs -76.0% (差 -0.83% [95%CI] -5.21、 3.56)
  • FACIT-Fatigueスコアの変化:7.07 vs 6.40 (差0.67 [95%CI] -1.21、 2.55)
  • ブレークスルー溶血:4.0% vs 10.7% (差 -6.7% [95%CI] -14.21、 0.18)
  • ヘモグロビン値の安定化:68.0% vs 64.5% (差 2.9 [95%CI] -8.80、 14.64)
  • RavulizumabとEculizumabの安全性と忍容性は同様であり、 髄膜炎菌感染症は発生しなかった.
  • Ravulizumab 8週ごとの投与は、 Eculizumab 2週ごとの投与と比較して、全ての有効性エンドポイントで非劣性が得られ、 安全性プロファイルも同様であった.

ALXN1210-PNH-302試験³⁾

概要

  • 第Ⅲ相非盲検ランダム化実薬対照多施設共同試験
  • 対象:過去6ヵ月以上Eculizumabの投与を受け、 臨床的に安定している18歳以上のPNH患者195例*
*Ravulizumab群97例 (うち日本人5例)、 Eculizumab群98例 (日本人7例)
  • 方法:Ravulizumab又はEculizumabを1:1で無作為に割付
  • 主要目的:Eculizumabによって臨床的に安定しているPNH患者を対象に、 Eculizumabを対照薬としてRavulizumabの非劣性を検証
  • 主要評価項目:ベースラインからDay183までのLDH値の変化率

結果

  • 183日間の治療を完了した191例の患者において、 Ravulizumabは Eculizumabに対して非劣性であった (全てのエンドポイントについてPinf<0.0006).
  • LDH変化率:差 9.21% ([95%CI] -0.42~18.84、 優越性 P=0.058)
  • ブレークスルー溶血:差 5.1 ([95%CI] -8.89~18.99)
  • FACIT-Fatigueの変化:差 1.47 ([95%CI] -0.21~3.15)
  • 輸血回避:差 5.5 ([95%CI] -4.27~15.68)
  • ヘモグロビン値の安定化:差 1.4 ([95%CI] -10.41~13.31)
  • 最も多く報告された有害事象は頭痛であった (Ravulizumab 26.8%、 Eculizumab 17.3%).
  • 髄膜炎菌感染症や有害事象による中止は認められなかった.
  • PNH患者において、 Eculizumab 2週毎投与からRavulizumab 8週毎投与に安全かつ効果的に切り替えられる可能性が示された.

参考文献

  1. ユルトミリス®適正使用ガイド
  2. ALXN1210-PNH-301試験
  3. ALXN1210-PNH-302試験

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🔢 発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断基準・重症度分類

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最終更新:2024年6月28日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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レジメン(血液)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

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