本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
薬剤情報
ユルトミリス® (添付文書/適正使用ガイド*)
*「アレクシオンファーマ合同会社」 の外部サイトへ遷移します.
主な有害事象
適正使用ガイド¹⁾ ALXN1210-PNH-301試験 Ravulizumab継続群より引用.
(全集団/日本人集団) の順で記載.
主な有害事象
- 頭痛 (36.8%/44.4%)
- 上気道感染 (19.2%/38.9%)
- 上咽頭炎 (12%/11.1%)
- 発熱 (11.2%/11.1%)
- 関節痛 (10.4%/11.1%)
- 悪心 (10.4%/0%)
- 下痢 (9.6%/11.1%)
- 腹痛 (8%/11.1%)
- 口腔咽頭痛 (6.4%/11.1%)
その他
- 背部痛 (8.8%/5.6%)
- ウイルス性上気道感染 (8.8%/0%)
- 四肢痛 (8%/0%)
- 浮動性めまい (7.2%/5.6%)
- 低カリウム血症 (7.2%/0%)
- 筋肉痛 (6.4%/0%)
- 嘔吐 (5.6%/5.6%)
- 不眠症 (5.6%/0%)
- 動悸 (5.6%/0%)
- γGTP増加 (5.6%/0%)
- インフルエンザ様疾患 (5.6%/0%)
特徴と注意点
発作性夜間血色素尿症 (PNH)
- 補体タンパク質C5を標的とする遺伝子組換えヒト化モノクローナル抗体の一つ.
- 補体タンパク質C5に対して高い親和性かつ特異的な結合により、 C5からC5a及びC5bへの開裂を阻害. 終末補体複合体C5b-9の産生を抑制することにより、 PNH患者における終末補体介在性血管内溶血を改善する.
- 注意すべき副作用に、 髄膜炎菌感染症、 Infusion reaction (臨床試験¹⁾では1.5~6.9%) がある.
- 本剤の投与により、 髄膜炎菌をはじめ、 莢膜形成細菌 (淋菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型等) による感染症リスクが増大することから、 感染対策、 ワクチン接種などの十分な患者指導を行う.
- 初回投与2週後までにLDH活性が低下していない場合には、 本剤の投与継続の要否を検討する.
- 本剤とEculizumab (ソリリス®) の違いとして、 投与間隔とウシ血清アルブミンの有無が挙げられる.
- Ravulizumab:維持期は8週間毎、 Eculizumab:維持期は2週間毎
- Eculizumabは製造過程でウシ血清アルブミンを使用.
髄膜炎菌感染症の予防
- 緊急治療を要する場合等を除き、 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種.
臨床試験では、 ワクチン接種前又は接種後2週間以内に本剤を使用した場合、 ワクチン接種後2週間は抗菌薬投与を規定 (例:セフトリアキソン、 セフォタキシム等).
- ワクチンは、 A、 C、 W-135及びY型に対するワクチン、 及びB型 (入手可能な場合) を推奨.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注)
- ワクチン接種又は再接種により補体が活性化され、 PNH、 aHUS、 gMG及びNMOSD等の補体介在性疾患が悪化する可能性あり.
- 髄膜炎菌ワクチンは5年ごとを目安に追加接種することをガイドラインで推奨. 必要な抗体価については諸説あり、 現時点では確立されていない.
- 免疫抑制状態の患者に対しては、 髄膜炎菌ワクチン (ACWY型) を第1期接種として8週以上間隔をあけて2回接種すること、 また5年ごとに追加接種することを推奨.
関連する臨床試験の結果
概要
- 第Ⅲ相非盲検ランダム化実薬対照多施設共同試験
- 対象:補体阻害剤未治療の18歳以上のPNH患者246例*
*Ravulizumab群125例 (うち日本人18例)、Eculizumab群121例 (うち日本人15例)
- 方法:Ravulizumab又はEculizumabを1:1で無作為に割付
- 主要目的:補体阻害剤未治療のPNH患者を対象に、 Eculizumabを対照薬としてRavulizumabの非劣性を検証
- 主要評価項目:Day183までの輸血回避達成率、 Day29からDay183までのLDH値の正常化達成率
結果
- Ravulizumabは、 主要評価項目及び全ての主な副次評価項目においてEculizumabに対して非劣性であった (Pinf<0.0001).
- 輸血回避:73.6% vs 66.1% (差6.8% [95%CI] -4.66、 18.14)
- LDH正常化:53.6% vs 49.4% (オッズ比1.19 [0.80、 1.77] )
- LDH減少率:-76. 8% vs -76.0% (差 -0.83% [95%CI] -5.21、 3.56)
- FACIT-Fatigueスコアの変化:7.07 vs 6.40 (差0.67 [95%CI] -1.21、 2.55)
- ブレークスルー溶血:4.0% vs 10.7% (差 -6.7% [95%CI] -14.21、 0.18)
- ヘモグロビン値の安定化:68.0% vs 64.5% (差 2.9 [95%CI] -8.80、 14.64)
- RavulizumabとEculizumabの安全性と忍容性は同様であり、 髄膜炎菌感染症は発生しなかった.
- Ravulizumab 8週ごとの投与は、 Eculizumab 2週ごとの投与と比較して、全ての有効性エンドポイントで非劣性が得られ、 安全性プロファイルも同様であった.
概要
- 第Ⅲ相非盲検ランダム化実薬対照多施設共同試験
- 対象:過去6ヵ月以上Eculizumabの投与を受け、 臨床的に安定している18歳以上のPNH患者195例*
*Ravulizumab群97例 (うち日本人5例)、 Eculizumab群98例 (日本人7例)
- 方法:Ravulizumab又はEculizumabを1:1で無作為に割付
- 主要目的:Eculizumabによって臨床的に安定しているPNH患者を対象に、 Eculizumabを対照薬としてRavulizumabの非劣性を検証
- 主要評価項目:ベースラインからDay183までのLDH値の変化率
結果
- 183日間の治療を完了した191例の患者において、 Ravulizumabは Eculizumabに対して非劣性であった (全てのエンドポイントについてPinf<0.0006).
- LDH変化率:差 9.21% ([95%CI] -0.42~18.84、 優越性 P=0.058)
- ブレークスルー溶血:差 5.1 ([95%CI] -8.89~18.99)
- FACIT-Fatigueの変化:差 1.47 ([95%CI] -0.21~3.15)
- 輸血回避:差 5.5 ([95%CI] -4.27~15.68)
- ヘモグロビン値の安定化:差 1.4 ([95%CI] -10.41~13.31)
- 最も多く報告された有害事象は頭痛であった (Ravulizumab 26.8%、 Eculizumab 17.3%).
- 髄膜炎菌感染症や有害事象による中止は認められなかった.
- PNH患者において、 Eculizumab 2週毎投与からRavulizumab 8週毎投与に安全かつ効果的に切り替えられる可能性が示された.
参考文献
- ユルトミリス®適正使用ガイド
- ALXN1210-PNH-301試験
- ALXN1210-PNH-302試験
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最終更新:2024年6月28日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔