概要
監修医師
2024年7月31日、 「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」 を適応、 承認申請。 2025年5月19日、 正式に承認された。
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

- タグリッソ® (添付文書¹⁾ / 適正使用ガイド²⁾*)

第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬 オシメルチニブ
*アストラゼネカ株式会社の外部サイトへ遷移します

投与スケジュール

【1コース】連日内服投与*
【催吐性】 最小度催吐性
【FN発症】低リスク**
*LAURA試験では病勢進行またはレジメン中止まで投与継続
**LAURA試験のFN発生率 : 未報告を基に編集部が分類
タグリッソ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作表

Key Data|臨床試験結果

📊 LAURA試験

N Engl J Med 2024;391:585-97.

化学放射線療法中または後に進行が認められなかった、 切除不能なEGFR遺伝子変異陽性のIII期NSCLC患者216例を対象とした国際共同・第III相無作為化比較試験。 オシメルチニブ群とプラセボ群に2:1の比率で無作為に割り付け、 主要評価項目として盲検下独立中央判定 (BICR) によるPFSが設定された。 

【有効性】オシメルチニブ群

出典3を基に編集部作図
  • PFS中央値 39.1ヵ月
  • 12ヵ月PFS率 74%
  • 24ヵ月PFS率 65%
  • OS中央値 (中間解析) 54.0ヵ月
  • 36ヵ月OS率 (中間解析) 84%
  • 客観的奏効率 57%
  • 奏効期間中央値 36.9ヵ月
  • 病勢コントロール率 89%
  • 新規脳病変の発生率 8%

【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)

  • 放射線肺臓炎 48% (2%)
  • 下痢 36% (2%)
  • 発疹 24% (0%)
  • COVID-19 20% (1%)
  • 爪囲炎 17% (0%)
  • 咳嗽 16% (0%)
  • 食欲減退 15% (1%)
  • 皮膚乾燥 13% (1%)
  • そう痒症 13% (0%)
  • 口内炎 12% (0%)
  • 白血球数減少 12% (1%)
  • 肺炎 11% (2%)
  • 貧血 10% (1%)
  • 帯状疱疹 9% (0%)
  • 尿路感染症 8% (1%)
  • ALT上昇 7% (1%)
  • 関節痛 7% (1%)
  • 上気道感染 7% (0%)
  • ざ瘡様皮膚炎 6% (0%)
  • 血小板数減少 6% (0%)
  • 呼吸困難 6% (0%)
  • AST上昇 6% (0%)
  • 鼻咽頭炎 6% (0%)
  • 肺臓炎 6% (1%)
  • 洞性頻脈 6% (0%)
  • 湿性咳嗽 5% (0%)
  • 筋骨格系胸痛 3% (0%)
  • 筋肉痛 3% (0%)
  • 頭痛 1% (0%) 

各プロトコル

適格基準

LAURA試験³⁾の主な適格基準

  • 年齢: 18歳以上
  • PS: WHO PS 0または1
  • 好中球数: ≧1,500/μL
  • 血小板数: ≧100,000/μL
  • ヘモグロビン: ≧9.0 g/dL
  • 腎機能: 血清クレアチニン ≦1.5x ULN かつ CrCl ≧30 mL/min
  • 肝機能: 総ビリルビン ≦1.5x ULN、 ALT/AST ≦2.5x ULN

減量の目安

タグリッソ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作表

有害事象発現時の用量調節基準

タグリッソ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作表

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️術後補助療法 (ADAURA) が原則3年間の投与であるのに対し、 CRT後の治療は病勢増悪まで継続される点に注意が必要である。 
和歌山県立医科大学附属病院 赤松弘朗先生

本レジメンの位置づけ

本レジメンは、 切除不能なEGFR遺伝子変異陽性のIII期NSCLCに対する、 根治的化学放射線療法 (CRT) 後の維持療法として位置づけられる。

従来、 CRT後に病勢進行のない症例に対しては、 抗PD-L1抗体デュルバルマブによる地固め療法が行われてきた。 しかし、 PACIFIC試験のサブグループ解析では、 EGFR遺伝子変異陽性例におけるデュルバルマブの有効性は限定的であることが示されている。

LAURA試験は、 オシメルチニブがこの集団においてPFSを有意に延長することを示し、 新たな標準治療となる可能性を示唆している。

>> LAURA試験 : 日本人コホート解析

レジメン適用時の注意事項

  • 化学放射線療法後という背景があり、 放射線性肺臓炎と間質性肺疾患/肺臓炎の鑑別が重要
  •  呼吸器症状 (呼吸困難、 咳嗽等) のモニタリングと、 疑われる場合の適切な診断・管理を行う
  • QT間隔延長のリスクがあるため、 投与開始前および投与中は定期的な心電図 (ECG) モニタリングを行い、 カリウム・マグネシウム・カルシウムなどの電解質異常を適切に補正する。 あわせて、 QT延長リスクのある薬剤との併用に注意する
  • CYP3A4誘導薬との併用で血中濃度が低下し、 効果減弱のリスクがあるため、 可能な限り併用は避ける

RMP【重要な特定されたリスク】

RMP : 医薬品リスク管理計画書
  • 間質性肺疾患
  • QT間隔延長
  • 肝障害
  • 血液毒性
  • 中毒性表皮壊死融解症 (Toxic Epidermal Necrolysis : TEN)、 皮膚粘膜眼症候群 (Stevens-Johnson症候群)、 多形紅斑
  • うっ血性心不全、 左室駆出率低下

遺伝子パネル検査・コンパニオン診断

日本肺癌学会の各種手引きHOKUTO編集部のまとめコンテンツを参照すること。

肺癌遺伝子パネル検査・コンパニオン診断薬一覧ページへ遷移

出典

  1. アストラゼネカ株式会社. タグリッソ®電子添文 (2025年5月改訂 第7版) [最終閲覧 : 2025/5/20]
  2. アストラゼネカ株式会社. タグリッソ®適正使用ガイド (2024年7月作成) [最終閲覧 : 2024/5/20]
  3. N Engl J Med 2024;391:585-97.
最終更新日 : 2025年5月20日
監修 : HOKUTO編集部監修医師

レジメン
Osimertinib
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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オシメルチニブ (タグリッソ®)
2025年05月23日更新
2024年7月31日、 「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な局所進行の非小細胞肺がんにおける根治的化学放射線療法後の維持療法」 を適応、 承認申請。 2025年5月19日、 正式に承認された。
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

- タグリッソ® (添付文書¹⁾ / 適正使用ガイド²⁾*)

第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬 オシメルチニブ
*アストラゼネカ株式会社の外部サイトへ遷移します

投与スケジュール

【1コース】連日内服投与*
【催吐性】 最小度催吐性
【FN発症】低リスク**
*LAURA試験では病勢進行またはレジメン中止まで投与継続
**LAURA試験のFN発生率 : 未報告を基に編集部が分類
タグリッソ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作表

Key Data|臨床試験結果

📊 LAURA試験

N Engl J Med 2024;391:585-97.

化学放射線療法中または後に進行が認められなかった、 切除不能なEGFR遺伝子変異陽性のIII期NSCLC患者216例を対象とした国際共同・第III相無作為化比較試験。 オシメルチニブ群とプラセボ群に2:1の比率で無作為に割り付け、 主要評価項目として盲検下独立中央判定 (BICR) によるPFSが設定された。 

【有効性】オシメルチニブ群

出典3を基に編集部作図
  • PFS中央値 39.1ヵ月
  • 12ヵ月PFS率 74%
  • 24ヵ月PFS率 65%
  • OS中央値 (中間解析) 54.0ヵ月
  • 36ヵ月OS率 (中間解析) 84%
  • 客観的奏効率 57%
  • 奏効期間中央値 36.9ヵ月
  • 病勢コントロール率 89%
  • 新規脳病変の発生率 8%

【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)

  • 放射線肺臓炎 48% (2%)
  • 下痢 36% (2%)
  • 発疹 24% (0%)
  • COVID-19 20% (1%)
  • 爪囲炎 17% (0%)
  • 咳嗽 16% (0%)
  • 食欲減退 15% (1%)
  • 皮膚乾燥 13% (1%)
  • そう痒症 13% (0%)
  • 口内炎 12% (0%)
  • 白血球数減少 12% (1%)
  • 肺炎 11% (2%)
  • 貧血 10% (1%)
  • 帯状疱疹 9% (0%)
  • 尿路感染症 8% (1%)
  • ALT上昇 7% (1%)
  • 関節痛 7% (1%)
  • 上気道感染 7% (0%)
  • ざ瘡様皮膚炎 6% (0%)
  • 血小板数減少 6% (0%)
  • 呼吸困難 6% (0%)
  • AST上昇 6% (0%)
  • 鼻咽頭炎 6% (0%)
  • 肺臓炎 6% (1%)
  • 洞性頻脈 6% (0%)
  • 湿性咳嗽 5% (0%)
  • 筋骨格系胸痛 3% (0%)
  • 筋肉痛 3% (0%)
  • 頭痛 1% (0%) 

各プロトコル

適格基準

LAURA試験³⁾の主な適格基準

  • 年齢: 18歳以上
  • PS: WHO PS 0または1
  • 好中球数: ≧1,500/μL
  • 血小板数: ≧100,000/μL
  • ヘモグロビン: ≧9.0 g/dL
  • 腎機能: 血清クレアチニン ≦1.5x ULN かつ CrCl ≧30 mL/min
  • 肝機能: 総ビリルビン ≦1.5x ULN、 ALT/AST ≦2.5x ULN

減量の目安

タグリッソ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作表

有害事象発現時の用量調節基準

タグリッソ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作表

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️術後補助療法 (ADAURA) が原則3年間の投与であるのに対し、 CRT後の治療は病勢増悪まで継続される点に注意が必要である。 
和歌山県立医科大学附属病院 赤松弘朗先生

本レジメンの位置づけ

本レジメンは、 切除不能なEGFR遺伝子変異陽性のIII期NSCLCに対する、 根治的化学放射線療法 (CRT) 後の維持療法として位置づけられる。

従来、 CRT後に病勢進行のない症例に対しては、 抗PD-L1抗体デュルバルマブによる地固め療法が行われてきた。 しかし、 PACIFIC試験のサブグループ解析では、 EGFR遺伝子変異陽性例におけるデュルバルマブの有効性は限定的であることが示されている。

LAURA試験は、 オシメルチニブがこの集団においてPFSを有意に延長することを示し、 新たな標準治療となる可能性を示唆している。

>> LAURA試験 : 日本人コホート解析

レジメン適用時の注意事項

  • 化学放射線療法後という背景があり、 放射線性肺臓炎と間質性肺疾患/肺臓炎の鑑別が重要
  •  呼吸器症状 (呼吸困難、 咳嗽等) のモニタリングと、 疑われる場合の適切な診断・管理を行う
  • QT間隔延長のリスクがあるため、 投与開始前および投与中は定期的な心電図 (ECG) モニタリングを行い、 カリウム・マグネシウム・カルシウムなどの電解質異常を適切に補正する。 あわせて、 QT延長リスクのある薬剤との併用に注意する
  • CYP3A4誘導薬との併用で血中濃度が低下し、 効果減弱のリスクがあるため、 可能な限り併用は避ける

RMP【重要な特定されたリスク】

RMP : 医薬品リスク管理計画書
  • 間質性肺疾患
  • QT間隔延長
  • 肝障害
  • 血液毒性
  • 中毒性表皮壊死融解症 (Toxic Epidermal Necrolysis : TEN)、 皮膚粘膜眼症候群 (Stevens-Johnson症候群)、 多形紅斑
  • うっ血性心不全、 左室駆出率低下

遺伝子パネル検査・コンパニオン診断

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出典

  1. アストラゼネカ株式会社. タグリッソ®電子添文 (2025年5月改訂 第7版) [最終閲覧 : 2025/5/20]
  2. アストラゼネカ株式会社. タグリッソ®適正使用ガイド (2024年7月作成) [最終閲覧 : 2024/5/20]
  3. N Engl J Med 2024;391:585-97.
最終更新日 : 2025年5月20日
監修 : HOKUTO編集部監修医師

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。