治療スケジュール
概要
監修医師

Danicopan:ダニコパン(ボイデヤ®)

投与量コース投与日
1回150mg 1日3回 経口投与 (食後)1~Day 1~

前投薬

本剤開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチンの接種 (接種が確認できない又は追加接種が必要な場合).

その他

補体 (C5) 阻害剤と併用して投与.
効果不十分な場合には、 1回200mgまで増量可能.
本剤を中止する場合は最低6日間かけて漸減し、 中止すること.
漸減例:1回100mg 1日3回 3日間 ⇒ 1回50mg 1日3回 3日間 の計6日間
レジメン
Danicopan
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ボイデヤ® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「アレクシオンファーマ合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

適正使用ガイド¹⁾ ALPHA試験 (ALXN2040-PNH-301試験) より引用.

延長投与期[データカットオフ時点 (2023年3月31日) まで]の安全性の項のうち、全集団で2例以上に認められた副作用発現例数

主な有害事象

  • 悪心 (6%)
  • 頭痛 (3.6%)
  • 肝機能異常 (3.6%)
  • 発熱 (3.6%)
  • ALT増加 (2.4%)
  • AST増加 (2.4%)
  • 下痢 (2.4%)
  • 血小板減少症 (2.4%)

特徴と注意点

発作性夜間血色素尿症 (PNH)

  • 本剤は、 補体第二経路を選択的に阻害する経口の低分子補体D因子阻害剤.
  • C5阻害剤のみではコントロールが不十分な症例に対し、 C5阻害剤*に本剤を追加して使用する.
*臨床試験のC5阻害剤はラブリズマブ又はエクリズマブ
  • C5阻害剤に本剤を追加することにより、 終末補体経路と近位補体経路の両方を阻害し、 血管内溶血と血管外溶血の持続的な管理を可能とする.
  • 肝機能異常を発現することがあるため、 剤の投与開始前及び投与期間中は定期的に肝機能検査を実施する.
  • 下記の患者には投与時留意すること.
  1. 髄膜炎菌感染症の既往のある患者
  2. 感染症の患者又は感染症が疑われる患者
  3. 重度の腎機能障害 (eGFRが30mL/min/1.73m²未満) のある患者
  4. 重度の肝機能障害 (Child-Pugh分類C) のある患者
1)、2)は感染リスク増加、3)は本剤の血中濃度上昇リスク、4)臨床試験データなし
  • 本剤は、 補体介在性の感染防御機能の一部を阻害すると考えられるため、 髄膜炎菌感染症を発症しやすくなる可能性がある. 髄膜炎菌に対するワクチンの接種歴を確認し、 接種が確認できない又は追加接種が必要な場合は、 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までにワクチンを接種する.

髄膜炎菌感染症の予防

  • 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種.
  • ワクチンは、 A、 C、 W-135及びY型に対するワクチン、 及びB型 (入手可能な場合) を推奨.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注
  • ワクチン接種又は再接種により補体が活性化され、 PNH、 aHUS、 gMG及びNMOSD等の補体介在性疾患が悪化する可能性あり.
  • 髄膜炎菌ワクチンは5年ごとを目安に追加接種することをガイドラインで推奨. 必要な抗体価については諸説あり、 現時点では確立されていない.
  • 免疫抑制状態の患者に対しては、 髄膜炎菌ワクチン (ACWY型) を第1期接種として8週以上間隔をあけて2回接種すること、 また5年ごとに追加接種することを推奨.

本剤を中止する場合

  • 本剤を漸減せずに中止した場合は肝機能障害が発現するおそれがあるため、 本剤を中止する場合は、 最低6日間かけて漸減し、 漸減する際は1回100mgを1日3回3日間、 その後1回50mgを1日3回3日間投与してから投与を中止する.
  • 本剤の漸減及び中止により重篤な溶血が発現するおそれがあるため、 漸減期間中は溶血及び付随する症状を注意深く観察し、 必要に応じて適切な処置を行う.

関連する臨床試験の結果

ALPHA試験 (ALXN2040-PNH-301試験)¹⁾

概要

  • 国際共同第Ⅲ相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
  • 対象:ラブリズマブ又はエクリズマブが投与されており血管外溶血が認められるPNH患者84例
  • 方法:ダニコパン又はプラセボを2:1で無作為に割付し3期*に分けて検証
*二重盲検期(12週間)、継続投与期(12週間)、延長投与期(最長2年間)で構成
  • 主要目的:C5阻害薬に追加投与した際の投与12週時点でのダニコパンの有効性をプラセボと比較検討
  • 主要評価項目:投与12週時点のHb濃度のベースラインからの変化量

結果

  • 投与12週時点のHb濃度のベースラインからの変化量
  • ダニコパン群 2.940 (SE:0.2107) g/dL、 プラセボ群 0.496 (SE:0.3128) g/dL、 群間差 2.444 (SE:0.3751) g/dL.
  • ダニコパン群のプラセボ群に対する優越性が検証された (P<0.0001).
  • 投与12週時点のHb濃度が輸血なしで2g/dL以上増加した患者の割合
  • ダニコパン群 59.5% (25/42例)、 プラセボ群 0% (0/21例)、 群間差 46.9% [95%CI:29.16-64.68].
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に高かった (P<0.0001).
  • 投与開始から12週間、 輸血回避できた患者の割合
  • ダニコパン群 83.3% (35/42例)、 プラセボ群 38.1% (8/21例)、 群間差 41.7% [95%CI:22.67-60.77].
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に高かった (P=0.0004).
  • 投与12週時点のFACIT-Fatigueスコアのベースラインからの変化量
  • ダニコパン群 7.97 (SE:1.128)、 プラセボ群 1.85 (SE:1.581)、 群間差 6.12 (SE:1.894).
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に有意に高かった (P=0.0021).
  • 投与12週時点の網状赤血球絶対数のベースラインからの変化量
  • ダニコパン群 −83.8 (SE:8.93) ×109/L、 プラセボ群 3.5 (SE:12.68) ×109/L、 群間差 −87.2 (SE:15.25) ×109/L.
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に低かった (P<0.0001).
  • 投与中止に至った副作用は、 ダニコパン群で3例 (肝酵素上昇1例、 ALT増加及びAST増加1例、 血中ビリルビン増加及び膵炎1例) であった. 死亡に至った副作用は認められなかった. また、 髄膜炎菌感染症は認められなかった.

参考文献

  1. 適正使用ガイド

最終更新:2024年6月23日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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ダニコパン(ボイデヤⓇ)
2024年06月30日更新

Danicopan:ダニコパン(ボイデヤ®)

投与量コース投与日
1回150mg 1日3回 経口投与 (食後)1~Day 1~

前投薬

本剤開始2週間前までに髄膜炎菌ワクチンの接種 (接種が確認できない又は追加接種が必要な場合).

その他

補体 (C5) 阻害剤と併用して投与.
効果不十分な場合には、 1回200mgまで増量可能.
本剤を中止する場合は最低6日間かけて漸減し、 中止すること.
漸減例:1回100mg 1日3回 3日間 ⇒ 1回50mg 1日3回 3日間 の計6日間

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ボイデヤ® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「アレクシオンファーマ合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

適正使用ガイド¹⁾ ALPHA試験 (ALXN2040-PNH-301試験) より引用.

延長投与期[データカットオフ時点 (2023年3月31日) まで]の安全性の項のうち、全集団で2例以上に認められた副作用発現例数

主な有害事象

  • 悪心 (6%)
  • 頭痛 (3.6%)
  • 肝機能異常 (3.6%)
  • 発熱 (3.6%)
  • ALT増加 (2.4%)
  • AST増加 (2.4%)
  • 下痢 (2.4%)
  • 血小板減少症 (2.4%)

特徴と注意点

発作性夜間血色素尿症 (PNH)

  • 本剤は、 補体第二経路を選択的に阻害する経口の低分子補体D因子阻害剤.
  • C5阻害剤のみではコントロールが不十分な症例に対し、 C5阻害剤*に本剤を追加して使用する.
*臨床試験のC5阻害剤はラブリズマブ又はエクリズマブ
  • C5阻害剤に本剤を追加することにより、 終末補体経路と近位補体経路の両方を阻害し、 血管内溶血と血管外溶血の持続的な管理を可能とする.
  • 肝機能異常を発現することがあるため、 剤の投与開始前及び投与期間中は定期的に肝機能検査を実施する.
  • 下記の患者には投与時留意すること.
  1. 髄膜炎菌感染症の既往のある患者
  2. 感染症の患者又は感染症が疑われる患者
  3. 重度の腎機能障害 (eGFRが30mL/min/1.73m²未満) のある患者
  4. 重度の肝機能障害 (Child-Pugh分類C) のある患者
1)、2)は感染リスク増加、3)は本剤の血中濃度上昇リスク、4)臨床試験データなし
  • 本剤は、 補体介在性の感染防御機能の一部を阻害すると考えられるため、 髄膜炎菌感染症を発症しやすくなる可能性がある. 髄膜炎菌に対するワクチンの接種歴を確認し、 接種が確認できない又は追加接種が必要な場合は、 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までにワクチンを接種する.

髄膜炎菌感染症の予防

  • 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに髄膜炎菌ワクチンを接種.
  • ワクチンは、 A、 C、 W-135及びY型に対するワクチン、 及びB型 (入手可能な場合) を推奨.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注
  • ワクチン接種又は再接種により補体が活性化され、 PNH、 aHUS、 gMG及びNMOSD等の補体介在性疾患が悪化する可能性あり.
  • 髄膜炎菌ワクチンは5年ごとを目安に追加接種することをガイドラインで推奨. 必要な抗体価については諸説あり、 現時点では確立されていない.
  • 免疫抑制状態の患者に対しては、 髄膜炎菌ワクチン (ACWY型) を第1期接種として8週以上間隔をあけて2回接種すること、 また5年ごとに追加接種することを推奨.

本剤を中止する場合

  • 本剤を漸減せずに中止した場合は肝機能障害が発現するおそれがあるため、 本剤を中止する場合は、 最低6日間かけて漸減し、 漸減する際は1回100mgを1日3回3日間、 その後1回50mgを1日3回3日間投与してから投与を中止する.
  • 本剤の漸減及び中止により重篤な溶血が発現するおそれがあるため、 漸減期間中は溶血及び付随する症状を注意深く観察し、 必要に応じて適切な処置を行う.

関連する臨床試験の結果

ALPHA試験 (ALXN2040-PNH-301試験)¹⁾

概要

  • 国際共同第Ⅲ相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験
  • 対象:ラブリズマブ又はエクリズマブが投与されており血管外溶血が認められるPNH患者84例
  • 方法:ダニコパン又はプラセボを2:1で無作為に割付し3期*に分けて検証
*二重盲検期(12週間)、継続投与期(12週間)、延長投与期(最長2年間)で構成
  • 主要目的:C5阻害薬に追加投与した際の投与12週時点でのダニコパンの有効性をプラセボと比較検討
  • 主要評価項目:投与12週時点のHb濃度のベースラインからの変化量

結果

  • 投与12週時点のHb濃度のベースラインからの変化量
  • ダニコパン群 2.940 (SE:0.2107) g/dL、 プラセボ群 0.496 (SE:0.3128) g/dL、 群間差 2.444 (SE:0.3751) g/dL.
  • ダニコパン群のプラセボ群に対する優越性が検証された (P<0.0001).
  • 投与12週時点のHb濃度が輸血なしで2g/dL以上増加した患者の割合
  • ダニコパン群 59.5% (25/42例)、 プラセボ群 0% (0/21例)、 群間差 46.9% [95%CI:29.16-64.68].
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に高かった (P<0.0001).
  • 投与開始から12週間、 輸血回避できた患者の割合
  • ダニコパン群 83.3% (35/42例)、 プラセボ群 38.1% (8/21例)、 群間差 41.7% [95%CI:22.67-60.77].
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に高かった (P=0.0004).
  • 投与12週時点のFACIT-Fatigueスコアのベースラインからの変化量
  • ダニコパン群 7.97 (SE:1.128)、 プラセボ群 1.85 (SE:1.581)、 群間差 6.12 (SE:1.894).
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に有意に高かった (P=0.0021).
  • 投与12週時点の網状赤血球絶対数のベースラインからの変化量
  • ダニコパン群 −83.8 (SE:8.93) ×109/L、 プラセボ群 3.5 (SE:12.68) ×109/L、 群間差 −87.2 (SE:15.25) ×109/L.
  • ダニコパン群はプラセボ群と比較して、 有意に低かった (P<0.0001).
  • 投与中止に至った副作用は、 ダニコパン群で3例 (肝酵素上昇1例、 ALT増加及びAST増加1例、 血中ビリルビン増加及び膵炎1例) であった. 死亡に至った副作用は認められなかった. また、 髄膜炎菌感染症は認められなかった.

参考文献

  1. 適正使用ガイド

最終更新:2024年6月23日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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