寄稿ライター
1ヶ月前

2026年のサッカー・ワールドカップを見ていると、 日本社会における人事の下手さを痛感します。 連載 「Dr. 岩田による医師のためのタイムマネジメント」の第14回では、 その点について考察します。
大いに盛り上がったサッカー・ワールドカップも決勝戦と3位決定戦を残すのみとなりました。 日本はベスト32で敗退。 残念なことではありますが、 私の事前予測はピタリと当たってしまいました。 もちろん、 予測など外れて、 日本に優勝してほしいと思っていましたが。
2006年のワールドカップでは、 ブラジルにタコ殴りにされた日本。 しかし、 今回はちゃんと殴り合うことが出来ました。 強者揃いの2006年に比べれば、 今回のブラジルは 「普通」 のチームではあったものの、 両者の差はかなり縮まったといえるでしょう。

敗戦について、 個別の選手への誹謗中傷はあってはならないことです。 そもそもサッカーは、 ミスが一定頻度で発生するスポーツであり、 「ミスしたこと」 を非難しても意味がありません。 これは、 ブラジルのアンチェロッティ監督の言葉です。
大切なのは、 「ひと」 ではなく 「こと」 で議論することでしょう。 ゴール前でミスした個人を非難するのではなく、 自陣ゴール前に釘付けにされ、 ミスが発生しやすい状況になっていた後半の構造や原因、 そして克服策を論ずるべきです。 サッカーに限らず、 日本社会は 「こと」 の議論が下手すぎると感じています。 医療の世界も例外ではありません。

日本代表の敗戦を受け、 代表監督人事が話題になっています。 来年のアジアカップまで森保一監督が続投した後は、 どうやらU―21日本代表監督の大岩剛氏が新監督に就任するようです (2026年7月15日時点)。 これまでに浮上した監督候補者をみても属人的な議論が多く、 「こと」 が論じられていないのは非常に残念です。
ワールドカップでは、 グループ・ステージとその後のトーナメントは 「別の大会」 と言われています。 優勝候補の国々は、 グループ・ステージでは力をセーブし、 トーナメントにチームのピークを持ってこようとするからです。
日本は近年になって、 ようやくグループ・ステージを安定して突破するだけのチーム力がついてきました。 最大の理由は、 欧州で活躍する選手が増え、 個々の選手のレベルが上がったことだと考えられます。

一方で、 欧州で活躍できる日本人監督はまだ登場していません。 語学力が堪能な久保建英氏や長谷部誠氏らが、 もしかしたら次世代の 「欧州で戦えるハイレベルの監督」 になる可能性はありますが、 それはまだ先の話でしょう。
日本はグループ・ステージを突破できるまでに強くなりましたが、 トーナメント初戦は全敗です。 こういう場合、 「前例踏襲」 はアウトです。 絶対に 「過去にやってこなかったこと」 に取り組まなければ、 先はありません。
日本に勝ったブラジルも、 2002年以降ずっと優勝できていません。 ブラジルの選手はレベルが高く、 欧州トップリーグで活躍しています。 しかし、 欧州で活躍しているブラジル人の監督は稀有です。 そこで、 ブラジルサッカー連盟は前例を捨て、 イタリア人のカルロ・アンチェロッティ氏を監督に招聘しました。 欧州5大リーグ全てで優勝し、 チャンピオンズリーグを監督として5回制覇した超一流の指導者です。 先日の日本との試合も、 アンチェロッティ監督の戦術変更で逆転に成功しました。

イングランドも同様です。 イングランドのプレミアリーグは世界トップレベルですが、 イングランド人監督はあまり活躍できていません。 そのため、 ブラジル同様、 ドイツ人のトーマス・トゥヘル氏を監督に招聘したのです。

繰り返しますが、 日本代表はワールドカップ優勝を目指しています。 しかし、 現状はグループ・ステージ突破が精一杯で、 その先では一つも勝利できていません。 よって、 前例を覆し、 新しい試みをすべきだといえます。 そこから導き出せる結論は、 ただ一つです。
人事とは、 本来このように論理的に決定すべきものです。 ところが、 日本社会の人事はしばしば属人的であり、 クールに正しく人を選べない傾向にあります。 大学にいると、 そのことを嫌というほど思い知らされます。


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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