2024年12月7~10日に米・サンディエゴで開催された第66回米国血液学会 (ASH 2024) について、慢性骨髄性白血病 (CML) およびその他の血液疾患に関する注目トピックスを紹介します (解説 : 大阪国際がんセンター 藤重夫氏)。 ※以下、 AbsrtactへのリンクはASH公式サイトに遷移 慢性骨髄性白血病 新規診断CML-CPへのアシミニブ : ASC4FIRST 初発の慢性期慢性骨髄性白血病 (CML-CP) において、 BCR::ABL1阻害薬アシミニブが従来のチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) と比べて有効性ならびに安全性の面で有意に優れる結果を示していた。 実際には第2世代TKIとは奏効の点では有意差が認められない結果ではあったが、 アシミニブの方が優れる傾向は見てとれた。 また、 安全性の面でアシミニブの方が優れている点は、 長期で使用することを考えるとメリットが大きいと感じられた。
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Asciminib (ASC) Demonstrates Favorable Safety and Tolerability Compared with Each Investigator-Selected Tyrosine Kinase Inhibitor (IS TKI) in Newly Diagnosed Chronic Myeloid Leukemia in Chronic Phase (CML-CP) in the Pivotal Phase 3 ASC4FIRST Study 新規CML-CPへのアシミニブ、 変異別の解析結果 : Ascend-CMLフォローアップ 新規診断CML-CPへの初回治療でアシミニブを用いた第Ⅱ相試験ALLG CML 13 Ascend-CMLのフォローアップ結果。 基本的には大きな変化はなく、 治療の有効性が保たれていた。 一部で抵抗性を示す遺伝子変異についても紹介されていたが、 数が少なく評価は難しいものの、 従来のTKIと異なるタイプが多いため、 従来のTKIが良い選択肢になり得ると考えられる。
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Update of the Ascend-CML Study of Frontline Asciminib: High Rate of Optimal Response and Resistance Due to Mutations Is Rare TKI耐性/不耐性例に対する新規STAMP阻害薬Tgrx-678 新しいABLミリストイルポケット (STAMP) 阻害薬の安全性・有効性に関する第Ⅰ相試験。 中国から新しい薬剤の報告が相次いでいる点は興味深い。
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Safety and Efficacy of Tgrx-678, a Potent BCR::ABL1 allosteric Inhibitor, in Patients with Tyrosine Kinase Inhibitor Resistant and/or Intolerant Chronic Myeloid Leukemia: Updated Results of Phase 1 Study Tgrx-678 -1001 2次治療としての新規開発TKI olverembatinib 本試験も中国開発のTKIに関する報告であり、 十分妥当な成績を示してきている。 今後他の国でも開発が進むことが期待される。
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Olverembatinib As Second-Line (2L) Therapy in Patients (pts) with Chronic Phase-Chronic Myeloid Leukemia (CP-CML) ホジキンリンパ腫 非腫瘍性早期cHLへのNivo+BV+化学療法 : 第Ⅱ相SGN35-027アップデート 非腫瘍性の早期古典的ホジキンリンパ腫 (cHL) に対し、 化学療法に抗PD-1抗体ニボルマブ+抗CD30抗体ブレンツキシマブ ベドチンを組み込んだ治療成績のアップデートである。 2年無増悪生存 (PFS) 率は95%と非常に高い成績を示している。 今回のASHでも多数報告されている通り、 現在はニボルマブおよびブレンツキシマブ ベドチンを組み込んだレジメンに関するさまざまな臨床試験が行われており、 どこまで簡便なレジメンで高い疾患コントロールが可能かどうかについての評価が期待される。
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Updated Analysis of Brentuximab Vedotin, Nivolumab, Doxorubicin, and Dacarbazine for Nonbulky, Early-Stage Classical Hodgkin Lymphoma 1次治療での完全寛解後再発・難治例へのペムブロリズマブ維持療法 Pembro-GVD療法*後の自家移植の優れた成績は報告されているが、 自家移植なしで抗PD-1抗体ペムブロリズマブによる維持療法を行った場合の転帰を検討した試験。 結果として再発が一定割合で認められ、 特にStage 4の症例は再発率が高かった。
*ペムブロリズマブ+ゲムシタビン+ビノレルビン+ドキソルビシン Abstract #569の詳細はこちら
Pembrolizumab Maintenance Instead of Autologous Hematopoietic Cell Transplantation for Patients with Relapsed or Refractory Hodgkin Lymphoma in Complete Response after Pembrolizumab, Gemcitabine, Vinorelbine, and Liposomal Doxorubicin 早期例へのNivo+BV上乗せ・放射線療法非実施 早期cHLにおける第Ⅱ相試験の結果報告であった。 早期例において、 ブレンツキシマブ ベドチンをABVD療法*に組み込むレジメンはデータが不十分という意見も挙がっていたように感じられるが、 既に両薬を含めたレジメンでの検討が進んでいるようである。 現在第Ⅲ相試験が進行中であり、 その結果も期待される。
*ドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジン Abstract #459の詳細はこちら
A Randomized Phase 2 Study Incorporating Nivolumab and Brentuximab Vedotin into Radiation-Free Treatment of Early Stage Classic Hodgkin Lymphoma 骨髄線維症 再発・難治例への新規PIM1キナーゼ阻害薬nuvisertib PIM1キナーゼ阻害薬の安全性と臨床活性を評価した第 I/II試験の途中経過報告。 効果に関してはさらなるデータが必要とされるが、 一定の効果が得られつつ用量規定毒性が認められなかったため、 安全性の面でも期待される。 今後単剤療法もしくは既存薬剤との併用の開発が予定されている。
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Nuvisertib (TP-3654), an Investigational Selective PIM1 Kinase Inhibitor, Showed Durable Clinical Response and Sustained Hematological Improvement in Relapsed/Refractory Myelofibrosis Patients 骨髄線維症、 貧血への新規抗ヘモジュベリン抗体 鉄代謝の調節において重要な役割を果たすタンパク質 「ヘモジュベリン」 に対する抗体の有効性・安全性を検証した第Ⅰ/Ⅱb相試験。 既に貧血の改善効果が観察されており、 今後の発展が期待できる。
Abstract #657の詳細はこちら
A Phase 1b Study of DISC-0974, an Anti-Hemojuvelin Antibody, in Patients with Myelofibrosis and Anemia JAK阻害薬耐性で再発・難治例への新規MDM2阻害薬 navtemadlinはマウスダブルミニッツ 2 (MDM2) に作用しTP53 の活性化をもたらすとされている薬剤であり、 今回はJAK阻害薬抵抗性の骨髄線維症において疾患修飾作用によるバイオマーカー改善効果の検討結果が報告された。 その作用機序から、 他疾患での開発も期待される。
Abstract #483の詳細はこちら
Disease-Modifying Activity of Navtemadlin Correlates with Clinical Responses in a Randomized, Multicenter, Global Phase 3 Study (BOREAS) in JAK-Inhibitor Relapsed/Refractory Myelofibrosis 真性多血症 新規GalNAc結合siRNAを使用した新たな治療戦略 : SANRECO 低分子干渉RNA (siRNA) を用いた新たな治療薬の開発。 理論通り機能するのかという点で興味が持たれており、 計画通りの効果も得られていたようである。 今後、 他疾患において同様の技術を用いた開発にも期待したい。
Abstract #656の詳細はこちら
Initial Results from a Phase 1/2 Study Evaluating Divesiran, a Novel Galnac Conjugated siRNA, in Patients with Polycythemia Vera (SANRECO) 血球貪食性リンパ組織球症 血球貪食性リンパ組織球症への新規JACK/ROCK阻害薬 本試験も中国からの報告である。 JAK1/2 の阻害のみならず、 ROCK1/2 の阻害という作用も有しており、 骨髄線維症においても理にかなっている。 第Ⅰ相試験の段階ではあるもののJAK阻害薬ルキソリチニブ不応例などでも奏効が得られており、 今後の展開が期待される。
Abstract #806の詳細はこちら
Rovadicitinib in Patients with Myelofibrosis Who Were Refractory or Relapsed or Intolerant to Ruxolitinib: A Single Arm, Multicenter, Open-Label, Phase Ib Study 解説医師