寄稿ライター
9日前
日本の衆院選は、 自民党の惨敗で幕を閉じました。 敗北の一因には石破茂首相が前言を翻したことが挙げられると思いますが、 政治家や官僚は 「嘘」 や 「詭弁」 を多用します。 連載 「Dr. 岩田による医師のためのタイムマネジメント」の8回目では、 医師にも深く関わる予防接種に関する詭弁について考察します。
石破首相は自民党の総裁選で勝利し、 すぐに衆議院を解散、 総選挙をしました。 その後打ち出した政策は、 総裁選前に述べていたものと全く異なるもので、 石破氏が 「嘘つき」 であることが悲しくも露呈しました。
典型例はマイナ保険証の使用推進や選択的夫婦別姓制度の導入です。 これらの政策について様々な意見があるとは思いますが、 それとは関係なく、 石破氏が前言を簡単に翻したこと自体は紛れもない事実です。
近年の日本の政治家や官僚は嘘や詭弁を恥知らずにも頻用します。 しかも、 それらがまるで彼らに与えられた特権でもあるかのように開き直ります。
予防接種制度もその一つです。 僕は昔から、 日本の予防接種制度は世界から数周遅れの時代遅れな制度であり、 日本は 「ワクチン後進国である」 と批判してきました。
官僚はワクチンの定期接種を 「感染が広がり社会に病気がまん延するのを防ぐのが目的」 だといい、 自費の任意接種を 「個人が感染症にかかったり重症になったりするのを防ぐため」 だといいます。
つまり、 後者は 「自己責任の予防医療だから自費」 というロジックですが、 これは詭弁です。 詳細は厚労省のホームページへ。
昔は小児に対するインフルエンザ予防接種も 「定期接種」 でした。 ただ、 質が低いとの研究結果を受け、 「任意接種」 に格下げされました。 「まん延を防止するのに効果的」 だと言うのに。
同様に新型コロナウイルスのワクチンも一部のグループを除いて自費診療になりました。 あれこそ堅牢なエビデンスが蓄積されているワクチンの好例だと思いますが、 「5類」 にしたとたん、 どさくさ紛れに任意扱いになりました。
一方、 「定期接種」 には、 破傷風や日本脳炎など 「まん延を防止する効果」 がほぼ皆無なものも入っています。 まさに詭弁。 そもそも、 「定期」 と 「任意」 の区分けなど、 基本的に諸外国は行っていません。 これこそ、 「日本の常識、 他国の非常識」 であり、 日本が 「後進国」 である理由です。
ワクチン接種は予防目的で治療ではないから、 医療保険の対象外だいう主張もありますが、 これも詭弁です。
詳しくは拙著 「ワクチンを学び直す」 (光文社新書) で説明しましたが、 「妊娠出産を医療保険で」 と議論しだした昨今、 このロジックが詭弁以外の何物でもないことは明らかです。 医療保険は確たる原則もなく、 恣意的に運用できるのです。 良くも悪くも。
厚労省はくだらない詭弁を弄するのはやめ、 以下をファクトと認識するべきです。
別に現状が上手くいっていないこと自体は問題ではないのです。 上手くいっていないのに、 上手くやっているかのようにアコギな態度を取り続けるのが悪いのです。
島根医科大 (現・島根大) 卒。 沖縄県立中部病院研修医、 セントルークス・ルーズベルト病院 内科研修医を経て、 ベスイスラエル・メディカルセンター感染症フェローに。 北京インターナショナルSOSクリニックを経て、 2004年に亀田総合病院で感染症科部長、 同総合診療・感染症科部長歴任。 2008年より現職。
「タイムマネジメントが病院を変える」 など著書多数。 米国内科専門医、 感染症専門医、 感染管理認定CIC、 渡航医学認定CTHなどのほか、 漢方内科専門医、 ワインエキスパート・エクセレンスやファイナンシャル・プランナーの資格をもつ。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。