HOKUTO編集部
2年前
HER3を標的とした抗体薬物複合体 (ADC)であるPatritumab Deruxutecan (HER3-DXd)。 同薬はすでに国内承認されているトラスツズマブ デルクステカン (T-DXd) と同じリンカーおよびペイロード (ADCに搭載する低分子医薬品) を用いているもので、 T-DXdとはHER3の抗体を用いている点のみが異なる。
JSMO 2023では、 同薬の有効性に関する新データが肺がん領域 (関連ポスト「【初報告】HER3-DXdがEGFR陽性NSCLCのOS延長」に加えて、 乳がん領域でも報告された。 愛知県がんセンター乳腺科部長の岩田広治氏が発表した。
新たに報告されたのは、 HER3発現を認める転移・再発乳がんを対象にHER3-DXdの有効性および安全性を検証した第Ⅰ/Ⅱ相試験U31402-A-J101 のHER2発現によるサブグループ解析の結果だ。
同試験の主解析の結果については、 すでに昨年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2022) で報告されており、 有望な抗腫瘍効果が示されている。
今回は、 乳がん領域で新しい概念である「HER2-low」 (IHC 1+またはIHC 2+/ISH-) と「HER2-zero」 (IHC 0) の集団を対象に、 HER3を標的としてADCの効果がどの程度異なるかを検証した結果が世界で初めて報告された。
1) HR (ホルモン受容体) 陽性かつHER2陰性
2) トリプルネガティブ乳がん (TNBC)
HER3-DXdは、 多くの治療歴 (前治療歴レジメン数の中央値が上記の各集団で3〜7) がある転移・再発乳がんに対して、 HER2発現のlow、 zeroに関わらず有効性が示された。
主な結果〔奏効率 /奏効期間中央値 /無増悪生存期間 (PFS) 中央値/全生存期間 (OS) 中央値〕
36.2% / 7.2カ月 / 5.8カ月 / 13.7カ月
28.2% / 7.0カ月 / 8.2カ月 / 14.6カ月
20.7% / 4.1カ月 / 4.4カ月 / 12.7カ月
26.3% / 8.4カ月 / 8.4カ月 / 16.6カ月
同試験は、 日本と米国のみが参加した試験だが、 今回新たに日本人 (142例) と米国人 (40例) で分けて解析した安全性の結果も示された。
その結果、 日本人患者では、 米国人患者に比べて、 白血球減少および間質性肺炎 (ILD) の頻度が高かった。
特にILDについては、 米国人患者では発症を認めなかったのに対し、 日本人患者では12例 (8.5%、 うちグレード3が3例、 グレード5が1例) に認められた。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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