「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない
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3ヶ月前

「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない

 「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない
2024年4月から始まる医師の働き方改革が目の前に迫ってきました。 ただ、 労働時間の圧縮ばかりに焦点が当てられ、 本当の意味での 「改革」 になっていないと感じています。 連載 「Dr. 岩田による医師のためのタイムマネジメント」 の3回目では、 その背景などを掘り下げます。

旗振り役の厚労省が 「改革」 意味を理解していない

そもそも、 旗振り役の厚生労働省自体が 「改革」 の意味を理解できていないことが大きな問題です。 その証拠に、 彼らが作る 「働き方改革」 のホームページを読んでも、 ほとんど 「労働時間の圧縮」 のことしか書いてありません。 具体的にどのようにすれば労働時間の圧縮が可能なのかについて、 ほとんど記載がないのです

霞が関の長時間労働を見れば分かるように、 本当に 「働き方改革」 が必要なのは、 官僚の彼らの方ですからね。 厚生 「労働」 省であるにも関わらず、 働き方の観点から見ると、 最も稚拙な働き方をしているのです。

 「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない

「改革 reform」 とは現在とは異なる形に仕立て上げることを意味します。 業務量などはそのままで労働時間だけ圧縮しても、 どうしたって無理が出ます。 だから、 「自己研鑽」 のような労働時間のゴマカシをやって、 取り繕おうとするのです (厚労省は1月に通達を改正し、 大学病院の勤務医による研究や教育は 「労働」 と明記しましたが…)。 これじゃ、 コトバを言い換えて現状維持しているに過ぎず、 とても 「改革」 とはいえないでしょう

「人手増やして業務分散」 は実現可能なのか

ではどうすれば改革できるのでしょうか。

一つの方法には、 人的リソースの拡大による業務の分散があるでしょう。 100時間分の労働を一人でやるから無理が出る。 それを例えば3人に分割すれば、 労働に無理はなくなります。

しかし、 現状の医療制度で人的リソースを増やすには、 金銭的なリソース (給与) が必要になります。 物価上昇に伴う賃金上昇で、 それでなくても医療機関は経営難で青息吐息。 さらに新たな雇用を重ね、 働き方改革ができるわけもありません

 「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない

どうでもいい仕事を減らすことが最も効果的

結局、 労働時間をカットしたいのなら、 労働そのものをカットするのが最も効果的で、 かつ抜本的な方法といえます。 例えば、 ブルシット・ジョブ (どうでもいい仕事) を減らすことです。

厚労省に文句を言いたいのは、 彼らが求めてくる書類関係の多くが、 医療の質の担保、 改善に役に立っていないことです。 医師に働き方改革を要請するのなら、 したいのなら、 このブルシット・ジョブの源泉たる紙を全部燃やしてからにしてほしい。

 「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない

厚労省の書類は2枚も要らない

僕の身近な感染症領域では、 いわゆる感染症法に基づく結核の届け出用紙は必ず2枚セットです。 なんで2枚も書類を書かねばならないのか。 お役人は 「1枚は疾病の届け出、 もう1枚は公費負担申請だから」 と説明してきます。

でも、 これは詭弁だと考えています。 そもそも治療を要しない超高齢の潜在性結核では届け出も不要です。 つまり、 治療と届け出は100%連動しているわけで、 書類が2枚必要な本質的な理由は存在しない

同様に薬剤耐性菌や梅毒、 侵襲性肺炎球菌感染症など、 書類の届け出は本当に必要?というシチュエーションは多いです。 なんで疑問かというと、 どのみち保健所は介入しないから。 ならばレセプトや検査データを吸い上げるだけでよいわけで、 「書類」 は要らないですよね。

日本では官僚のみならず、 医療者も 「引き算」 が苦手です。 足し算しかできない。 だから 「改革のふり」 になってしまうのです。

監修・執筆医

 「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない

島根医科大 (現・島根大) 卒。 沖縄県立中部病院研修医、 セントルークス・ルーズベルト病院 内科研修医を経て、 ベスイスラエル・メディカルセンター感染症フェローに。 北京インターナショナルSOSクリニックを経て、 2004年に亀田総合病院で感染症科部長、 同総合診療・感染症科部長歴任。 2008年より現職。

「タイムマネジメントが病院を変える」 など著書多数。 米国内科専門医、 感染症専門医、 感染管理認定CIC、 渡航医学認定CTHなどのほか、 漢方内科専門医、 ワインエキスパート・エクセレンスやファイナンシャル・プランナーの資格をもつ。

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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