寄稿ライター
19日前

前回は、 個別株として高配当株を評価する方法について勉強しましたが、 個別株を調べるのは大変なうえ、 減配などのリスクも存在します。 連載 「医師による医師のための財テク術」 第43回では、 ETF (上場投資信託) を活用した高配当株投資について見ていきましょう。

【表1】を見てください。 高配当株ETFの中でも、 代表的な銘柄を整理しました。
米国S&P500の配当利回りは現在1.18%前後。 上記のETFはいずれもS&Pを上回る利回りです。 最も高い利回りを示しているのがSPYDです。
一方、 最も長い運用実績を持ち、 かつ広く分散されているのがVYMです。 経費率も低く、 コスト面で優位性があります。 また、 25年以上連続増配を続ける 「配当貴族」 銘柄のみに投資するNOBLも選択肢の一つです。 ただし、 経費率は0.35%と相対的に高くなっています。
日本では配当金を重視する投資家が多いため、 これらの銘柄は人気です。 では、 実際のリターンはどの程度なのでしょうか。

次に、 【グラフ1】を見てください。 これは最も歴史が浅いSPYDに合わせ、 2015年以降のリターンをS&P500と比較したものです。 ここでは単純な株価ではなく、 配当金を再投資した前提でのトータルリターンで比較しています。
このグラフからは、 高配当ETFはいずれもSP500のリターンに及んでいないことが分かります。 その主な要因として、 2023年以降のAIブームにより、 ハイテク企業の比率が高いS&P500が大きく上昇した点が挙げられます。

もっとも、 常にS&P500が高配当株より優れているとは限りません。 より長期で見ると、 配当貴族指数がS&P500を上回る結果も確認できます【グラフ2】。 これは、 ITバブル崩壊時にS&P500が大きな影響を受けたことが背景にあります。
足元ではAIブームによってS&P500が再び大きく伸びていますが、 このトレンドの反動を想定するならば、 高配当株にも投資妙味があるかもしれません。

ただ、 配当貴族指数に連動するNOBLは、 信託報酬の高さにも注意が必要です。 0.35%という水準は一見小さく見えますが、 長期投資では無視できない差となります。
実際、 【グラフ2】に信託報酬を反映させるものが【グラフ3】です。 S&P500が36年間で約1.3%のリターン低下にとどまるのに対し、 配当貴族指数は約10.8%も低下する結果となりました。 信託報酬の差は、 投資期間が長くなるほどリターンに大きな影響を与えるため、 十分に考慮する必要があるでしょう。

もう一つ考慮しておきたいのが、 「高配当のジレンマ」 です。 ここではマイクロソフト (MSFT) を例に見てみましょう。
Windowsで爆発的な成長を遂げた同社ですが、 2000年代以降は反トラスト法 (独占禁止法) 問題やPC市場の成長鈍化、 スマートフォン時代への出遅れのほか、 インターネット広告分野でGoogleの後塵を拝するなどが、 長期低迷が続きました。
こうした企業は成長余地が限られるため、 稼いだ資金を配当に回しやすく、 MSFTは高配当ETFであるVYMの筆頭銘柄となっていました。
転機となったのは、 2014年のサティア・ナデラCEOの就任です。 クラウド事業への転換やサブスクリプションモデルへの移行が奏功し、 業績・株価ともに大きく回復しました。

一方、 株価上昇に伴って配当利回りは低下し、 MSFTは高配当株の基準から外れることになります。 その結果、 2018年にはVYMから除外され、 同ETFではその後の成長の恩恵を享受できなくなりました。
このように、 高配当株は株価上昇によって利回りが低下し、 指数から除外される可能性があります。 結果として、 有望な成長企業を保有し続けられない点は、 高配当ETF特有のリスクといえるでしょう。
いかがでしたでしょうか。 次回は、 セクター投資について考えたいと思います。


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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