寄稿ライター
27日前
新NISAを始めた先生も多いでしょう。 連載 「医師による医師のための財テク術」 第29回では、 非課税枠を利用する際に 「一括投資」 と 「分割投資」 のどちらを選ぶべきかを検討します。
第28回は、 新NISAでS&P500に投資する場合、 最速の5年で枠を使い切ることの重要性を解説しました。 今回はその前提のもと、 年間360万円を 「年初に一括投資」 するか 「毎月30万円ずつ分割投資」 するかで、 どのような違いが出るかを見ていきます。
【グラフ1】では2004年1月から5年間、 毎年年初に一括投資したケースと、 毎月30万円ずつ積み立てたケースを比較しています。 資産の変動は一括投資の方が大きいものの、 最終的なリターンには大きな差はありません。
続いて、 1992年から1か月ずつ開始時期をずらした場合の比較を行いました【グラフ2】。
この検討の結果、 82%のケースで一括投資群のリターンが分割投資群を上回り、 平均差は約111万円 (資産の4.1%) となりました。 一方で、 ITバブル崩壊やリーマンショック前後などの暴落局面では、 分割投資の方が若干リターンが高かったことも分かりました。
なお、 累積投資額の1800万円を下回っている期間がありますが、 これは投資期間を5年で区切っているためです。 このまま合計15年以上保有すれば、 どの時期でもプラスに転じます。
次に、 開始月ごとに一括投資と分割投資の差をプロットしたのが【グラフ3】です。
これを見ると、 9月に一括投資をした場合のリターンが最も高いことがわかります。 これは、 「Sell in May and go away, and come on back on St Leger's Day (5月に売却し、 9月に戻れ) 」 という格言にも一致しています。
では、 この格言のように 「5月に売って9月に買い戻せばよいのでは?」 という考え方もあるかもしれません。 しかし、 新NISAでは売却した分の枠が翌年以降にしか回復せず、 年間360万円の上限もあるため、 短期売買を繰り返しても再投資の自由度は低いという問題があります。
つまり、 売却した分を買い戻せるのは実質5年後に可能性があるわけです。 その間の複利効果が得られなくなる損失の方がはるかに大きいので、 新NISAでは基本的に売らずに長期保有するスタンスが望ましいと考えます。
過去のリターンを見れば、 9月に年一括投資をすることが有利な傾向にあります。 ただ、 一括投資をした直後に暴落が起きた場合、 精神的なダメージも大きくなります。 リスク許容度が低い方や投資初心者は、 分割投資の方が継続しやすいというのが実際のところです。 一括投資は慣れてきたら検討したほうが良いでしょう。
積立投資枠では 「毎月定額」 で投資するイメージがありますが、 ボーナス月設定を活用することで、 実質的に一括投資に近い形にすることが可能です【図4】。
毎月の積立金額を限界まで少なくして、 残りをボーナス月の積立設定とする方法です。 強く推奨はしませんが、 一括投資をどうしてもしたい先生はご検討ください。
いかがでしたでしょうか。 本日のTake Home Messageは
となります。 次回は、 新NISAの細かい注意点をみていきます。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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