海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
Nakaferoらは、 免疫介在性炎症性疾患で免疫抑制療法を受けている患者を対象に、 肺炎球菌ワクチン接種の有効性をコホート内症例対照研究で検討した。 その結果、 ワクチン接種が肺炎による入院および死亡、 抗菌薬を必要とする下気道感染症のリスクの減らしていたことが明らかになった。 本研究はLancet Rheumatol誌にて発表された。
アウトカムが 「肺炎による入院や死亡」 であり、 肺炎球菌ワクチンでspecificに予防できる 「肺炎球菌感染による入院や死亡」 ではない点がlimitationです。
免疫抑制療法を受けている免疫介在性炎症性疾患の患者は肺炎リスクが高く、 23価の肺炎球菌ワクチン (PPV23) の接種が推奨されている。
しかし、 これらの患者に対する臨床試験データは限られている。 本研究はその有効性を評価する目的で実施された。
英国プライマリ・ケアの電子健康記録であるClinical Practice Research Datalink (CPRD) Goldを基に、 1997年4月1日~2019年12月31日に免疫介在性炎症性疾患*と診断され、 少なくとも1回は免疫抑制薬を処方された18歳以上の患者1万2,360例を抽出。そのうち、 肺炎球菌ワクチンの接種を2回以上受けていた患者を 「接種者」 とした。
以下の3つのアウトカムについて、 肺炎球菌ワクチン接種との関連を、 多変量条件なしロジスティック回帰モデルを用いて調べた。
各アウトカムにおける、解析対象およびその内訳のアウトカム発生群、対照群は以下の通りであった。
肺炎による入院
解析対象 : 1万2,360例
肺炎で入院 : 1,884例 (15.2%)
対照群 : 1万0,476例 (84.8%)
肺炎による死亡
解析対象 : 5,321例
肺炎で死亡 : 781例 (14.7%)
対照群 : 4,540例 (85.3%)
抗菌薬が必要な下気道感染症
解析対象 : 5万4,530例
下気道感染症と診断 : 1万549例 (19.3%)
対照群 : 4万3,981例 (80.7%)
多変量解析の結果、すべてのアウトカムにおいて、 肺炎球菌ワクチン接種はリスクを低減することが示された。
肺炎による入院
OR 0.70 (95%CI 0.60-0.81)
肺炎による死亡
OR 0.60 (95%CI 0.48-0.76)
抗菌薬が必要な下気道感染症
OR 0.76 (95%CI 0.72-0.80)
著者らは、 「肺炎球菌ワクチン接種が免疫抑制療法を受けている免疫介在性炎症性疾患患者の肺炎による入院および死亡のリスクを低減することを示した。 しかし、 本研究は観察研究であるため、 未知の交絡因子が存在する可能性があるため、 英国以外のデータでも同様の結果が得られるかを検証する必要がある」 と述べている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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