寄稿ライター
7日前
iDeCoをしている先生も多いでしょう。 連載 「医師による医師のための財テク術」 第32回では、 前回に引き続きiDeCoを取り上げます。 今回は 「受け取り方」 に焦点を当て、 節税の仕組みや注意点について整理します。
iDeCoの受け取り方法は以下の3つです。
多くの方が該当するのは③老齢給付金です。 NISAがいつでも現金化できるのに対し、 iDeCoは60歳まで原則引き出せません。
③の場合、 60~75歳の任意の時期に受け取りが可能で、 「一時金」 「年金」 「一時金と年金の併用」 から選択できます。
退職所得として扱われ、 退職金と合算して退職所得控除を超えると課税対象となります。
雑所得扱いとなり、 公的年金控除を超えると課税対象となります。 年金額や年齢によって控除範囲が変動します。 さらに給付の都度440円の手数料がかかります。
このため、 基本は 「退職所得控除の範囲で一時金として受け取る」 のが有利とされます。 ただし加入年数、 勤務先の退職金、 公的年金額など複数の要因が絡むため、 一律に 「これが正解」 とは言えません。
退職所得の計算方法は【資料1】の通りです。
控除額を差し引いたうえでさらに1/2を掛けるため、 原則は一時金で受け取った方が有利になります。 ただし、 勤務先からの退職金と合算されるため、 多額の退職金がある場合は課税負担が重くなる点に注意が必要です。
ここで重要なのが 「退職所得控除枠の2回利用」 の可否です。
● 勤務先退職→ iDeCo受取
※19年以上の間隔が必要
● iDeCo受取→ 勤務先退職
※10年以上の間隔が必要
(法改正で従来の5年から見直し)
2025年6月に年金制度改正法が成立。 ネットで「改悪だ」 と叫ばれているのは2番目の項目です。
従来は一時金を先に受け取り、5年以上の期間を空けてから退職金を受け取れば、それぞれの受け取り時に退職所得控除を別々に満額適用することが可能でした。しかし、 この期間が10年に延長されることになりました。
つまり、iDeCoの一時金を受け取ってから10年以内に退職金を受け取ると、退職所得控除の枠が合算されて計算されることになります。
少なくとも56歳以前か70歳以降に退職金を受け取らない限り、 控除枠を2回利用することはできません。 制度改正によって条件が厳しくなった点は特に注意が必要です。
将来的に退職金課税が増税される可能性も否定できず、 税制変更によって節税効果が薄れたり、 場合によっては損をしたりするリスクすらあります。 こうした不確定要素があるため、 筆者としてはNISAに比べてiDeCoの優先度は低いと考えています。
では実際に、 どれほどの節税効果があるのかを試算してみましょう。
【前提条件】
● 投資期間 : 25~60歳 (35年間)
● 年率5%複利運用
● 掛金 : 月額6.2万円
【年収】
● 25~35歳 : 900~1,800万円
(所得税率33%+住民税10%)
● 35~60歳 : 1,800~4,000万円
(所得税率40%+住民税10%)
● 60歳 : 退職金2,000万円
以上の条件で運用結果をシミュレートします。
● 拠出金合計 : 2,604万円
● 35年後 : 7,073万円
● 所得控除による節税額 : 1,250万円
● 退職金課税 : 1,526.2万円
(所得税1,165万円、 住民税361.2万円)
参考 : iDeCoをしなかった場合の退職金課税=11.3万円
→運用益4,469万円を実質264.9万円の課税で取得 (実効税率5.9%)。
「節税」 と言いつつも、 最終的には退職金課税の影響は受けます。 ただし通常の課税 (約20%) に比べればお得といえますね。
つまり、 iDeCoは 「条件によっては有利」 ですが、 年収や退職金額によって効果は大きく変わります。 若い時に節税して後で課税される方が合理的と考える見方もあり、 一概にお得とも損とも言えない制度である点を理解しておく必要があります。
いかがでしたでしょうか。 本日のTake Home Messageは
となります。 次回は、基本に立ち返り 「米国株と日本株の比較」 について考えてみます。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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