寄稿ライター
4日前

前回は、高配当ETF投資のポイントについて解説しました。連載 「医師による医師のための財テク術」 第44回では、 セクターとそれを利用した投資法について勉強していきたいと思います。

米国の代表的な株価指数であるSP500の構成企業は、似たビジネスモデルを持つ企業ごとに「セクター」に分類されています。MSCIとS&P Globalが策定したGICS(世界産業分類基準)では、企業は11のセクターに区分されます。【表1】
近年は複数の事業を展開する企業が増え、どのセクターに属するか判断が難しいケースもありますが、基本的には主力事業に基づいて分類されます。例えばアマゾン(AMZN)は、高収益のクラウド事業(AWS)を抱えながらも、主力であるEC事業を基準として、一般消費財セクターに分類されています。

SP500は時価総額加重平均型の指数であり、時価総額の大きい企業ほど指数への影響力が大きくなります。近年の米国株はビッグテック企業の急成長によって情報技術セクターの比率が特に高まり、指数全体も同セクターの動向に左右されやすくなっています。成長企業の恩恵を受けられる一方で、特定セクターへの偏りが大きくなるという側面もあります。
そこで注目したいのがセクターETFです。市場全体ではなく好調なセクターに投資すれば、より多くのリターンを狙える可能性があります。ただし、コスト面には注意が必要です。SP500連動ETFの信託報酬が0.03%程度であるのに対し、セクターETFは0.09%前後とやや高めです。差は小さく見えても、長期投資では運用成績に影響を与える可能性があります。

なお、日本株は東京証券取引所によって33業種(簡易版では17業種)に分類されています。米国のセクター分類がビジネスモデルを基準としているのに対し、日本の業種分類は「何を作っているか」を基準とした産業分類です。そのため、景気循環や市場テーマを捉える投資では、米国のセクター分類の方が活用しやすい面があります。また、米国FRBがダイナミックに金利を動かすのに対して、日銀はかなり保守的で金利を動かさないため、今回は米国のセクター投資を取り扱う形にしています。
株式市場の流れを理解するうえでよく使われるのが、「4つの相場サイクル」です。これは景気と金融政策(特に金利)の関係から市場の局面を分類したもので、それぞれ強くなりやすいセクターにも傾向があります。以下の【グラフ1】は、それを表したものです。

→PER上昇により、グロース株が強くなりやすい傾向
→株価上昇の「質」が変わり、実力で幅広い銘柄が上昇しやすくなる
→金融引き締めにより株価が下落し始める
インフレの原因となるエネルギー株が相対的に優位に
→株価は業績悪化により下落するが、不景気でも消費が安定しているディフェンシブ銘柄(生活必需品、ヘルスケアなど)は相対的に堅調となる傾向
ただし、これらの相場サイクルは均一に起こるものではありません。局面を飛び越えたり、期間が極端に短くなったりすることもあります。

例えば2008年のリーマンショック後は、ゼロ金利政策と量的緩和(QE)によって強い金融相場へ移行し、2020年まで長期的な業績相場が続きました。また2020年のコロナショックでは、一時的に逆業績相場となったものの、わずか1カ月後にはゼロ金利と大規模な財政出動により、過去最強クラスの金融相場(コロナバブル)へ転換しました。
なお、逆業績相場ではディフェンシブセクターが強いといっても、必ずしも株価が上昇するわけではありません。市場全体が急落する局面ではディフェンシブ銘柄も下落しますが、その下落幅が比較的小さくなりやすいという意味です。
いかかでしたでしょうか。次回は、セクター投資について、実際の歴史に触れながら考えたいと思います。


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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