言えない組織は、 弱い組織
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3ヶ月前

言えない組織は、 弱い組織

言えない組織は、 弱い組織
ついに医師の働き方改革がスタートしました。 本当の意味で改革を成し遂げるには 「変える覚悟」 を持ち、 実行に移す必要がありますが、 日本の医療現場ではそう簡単ではありません。 連載 「Dr. 岩田による医師のためのタイムマネジメント」 の5回目では、 この点を掘り下げます。 

カンファには議論がない

前回は 「できない理由」 を連呼し、 現状維持の重力に魂を奪われた組織では 「働き方改革」 はできないと述べました。 改革の実行に向けて 「言う」 ことが大切になりますが、 日本の医療現場、 特に大学病院はなかなか 「言う」 ことはできません。 大学からの派遣医師が一般病院で診療科を回している場合も同様です。

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写真はイメージです

なぜ、 できないのか。 それは 「議論」 の習慣がないからだと考えます。 医局のカンファレンスは上意下達で、 そこには議論はありません。 医師は看護師やその他の医療職に 「指示」 を出し、 出された方はそれに従う。 命令系統はあるけれども、 議論は発生しにくい。

ベテランに噛みつく若手医師

僕が研修医として外科のローテートしていた時、 驚愕したエピソードがあります (もう昔の話で時効だと思います)。 とあるレジェンダリーなボスが手術のために開腹しましたが、 すでに進行がんで手術はできず、 そのまま閉腹となりました。

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後日のカンファレンスで、 若手外科医たちが 「術前精査が十分じゃなかったのでは」 「そもそもオペをすべきじゃなかったのでは」 と噛みつきました。 レジェンダリーなボスは、 血気盛んな若手に問い詰められ、 その場で頭を下げたのです。

このボスは、 決して部下から見下されているタイプではありません。 それどころか、 オペの技術は超一流。 自分にも他人にも非常に厳格で、 僕はしょっちゅう怒られていました。 若手外科医が、 ベテランドクターを軽蔑して論難したわけではないのです。

思い返すと、 この病院では年齢、 診療科、 職種関係なく、 たびたび 「議論」 が起きていました。 皆が必死で最良の医療を目指し、 自分の意見を述べ、 妥協しませんでした。 ちょっとやりすぎなところもありましたが (笑)。

教授に反論しても飛ばされない

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さて、 現在の僕のいる感染症内科でも、 毎日侃々諤々の議論が展開され、 教授である僕の見解にもあちこちから反論が飛んできます。 ローテートしてくる医学生たちは、 あまりに活発な議論に 「この科の先生たちはみんな仲が悪いんじゃないか」 と心配になるそうです。

仲が悪かったら、 議論なんてしません。 激しく言い合っても、 人間関係が壊れないというお互いの信頼感があるから、 議論できるのです。 「イワタに反論しても、 医局人事で飛ばされたりしない」 という確信がウチの若手にはあるのです (笑)。

逆に、 「上司におもねって患者ケアを蔑ろにする態度をイワタが嫌う」 ことも知っているのです。

変えられない組織の代表例は…

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残念ながら、 日本社会では今でも 「議論」 と 「人間関係」 をくっつけておかないと気がすまない人が多いです。 この場合、 議論は発生しにくく、 改善の可能性はほぼなくなります。

現場の改善は一般的にボトムアップで起きます。 トップダウンでは働き方改革は起きにくいのです。 上司に楯突くことができない組織は、 改革の可能性が非常に低いです。

「変えられない」 人たちの代表例が、 霞が関の官僚だと僕は思っています。 ここの問題点は、 政治家に官僚が 「楯突くこと」 ができないこと。 議論が発生しないので問題が改善しにくい。 上役におもねるイエスマンか、 面従腹背で裏で反逆する小狡い人物だけの組織になってしまいます。

内閣府が人事を掌握するようになってこの傾向はさらに悪化しているように思います。 言えない組織は弱い組織です。 悪いところはどんどん指摘し、 どんどん良くしていくべきです。 自由に言い合える、 安心して言い合える組織を少しずつ作っていきましょう。

監修・執筆医

言えない組織は、 弱い組織

島根医科大 (現・島根大) 卒。 沖縄県立中部病院研修医、 セントルークス・ルーズベルト病院 内科研修医を経て、 ベスイスラエル・メディカルセンター感染症フェローに。 北京インターナショナルSOSクリニックを経て、 2004年に亀田総合病院で感染症科部長、 同総合診療・感染症科部長歴任。 2008年より現職。

「タイムマネジメントが病院を変える」 など著書多数。 米国内科専門医、 感染症専門医、 感染管理認定CIC、 渡航医学認定CTHなどのほか、 漢方内科専門医、 ワインエキスパート・エクセレンスやファイナンシャル・プランナーの資格をもつ。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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