そろそろ地方会は廃止した方が良い
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27日前

そろそろ地方会は廃止した方が良い

そろそろ地方会は廃止した方が良い
日本の特徴として学術集会 (いわゆる学会) が非常に多いことが挙げられます。 連載 「Dr. 岩田による医師のためのタイムマネジメント」 の7回目では、 その意義について考察します。 

多忙なのに学会が多い日本の医師

僕が米国にいたとき、 「学会」 参加は年に1~2回程度でした。 ところが、 日本は同じ領域内に似たような学会が多々あり、 それぞれが全国集会や地方会を開催するため、 年がら年中学会だらけになっています。

これまでの連載でご説明したように、 様々な構造的な理由から、 日本の医者は海外の医者よりも多忙で労働時間が長いです。 どうして、 その多忙な医者たちが何度も学会に参加するのでしょうか。

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学会に参加しないと、 医者としての能力が担保できない?いえいえ、 そんなことはありません。 現在のようなネットが発達した社会では、 職場や自宅でも十分に勉強することができます。

そもそも、 多くの学会はオンデマンド・プログラムを配信しています。 国際学会でも時差ボケに苦しむことなく、 多種多様なプレゼンテーションを聞くことが可能です。

そもそも査読論文の方が高品質

というか、 一般的には学会の学術発表よりも査読された論文のほうが質が高いのです。 読まねばならぬ重要な論文が多々発表されており、 それを読むだけでも一苦労です。 査読もいい加減 (失礼!でも本当!) で、 質が高いのか低いのかも短時間で吟味しづらい学会発表を聞くよりも、 ちゃんと論文を精読したほうが良いのではないでしょうか。

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学術講演は?

大御所たちの学術講演やシンポジウムがある?でも、 そういう大御所は同じことを繰り返しあちこちの学会で発表してはいないでしょうか。 というか、 そういう講演だって、 アーカイブ配信があればいつでもどこでも聞けるわけで。 僕なら1.5~2倍速にして聞きますね。 タイパ (タイムパフォーマンス、時間対効果 ) ですよ、 タイパ。

ディスカッションは?

講演はそうだけど、 学会での丁々発止のディスカッションは対面じゃないとできない?残念ながら、 日本の学会でそんな議論をやっているところはほとんど見たことがありません。

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海外だと同じテーマで激論がかわされますが、 日本で同じことをすると人間関係が壊れてしまう。 「こと」 ではなく 「ひと」 で判断しちゃうんですね。

シンポジウムでも自説を主張、 朗読するだけで相手の話はろくに聞いていない。 対話も議論もない。 あれならリモートでも大した違いはないです。

学会の最大のメリットは 「娯楽」

要するに、 学会の最大のメリットは観光をしたり、 友人と飲み会をしたりする 「娯楽」 の部分なのです。

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確かに医者は多忙ですから、 息抜きも必要でしょう。 でも、 みんな一斉に組織的に娯楽をやるのは、 会社の慰安温泉旅行みたいで、 あまりに昭和じゃないですか?どうせ息抜きをするなら、 みんなバラバラに個別に休暇を取ったほうが病院経営的にも合理的でしょう。

毎年の 「地方会」 はもはや時代遅れ

もはや、 学術的価値の低い地方会を毎年繰り返す必然性は乏しいのです。 そして、 「働き方改革」 でそれは困難にもなっています。

過労死したり自殺者が出たりするような医療現場で、 質の低い地方会の発表準備のためにさらに睡眠時間を削られるのは若手医師がかわいそうすぎます (地方会で発表するのはたいてい若手医師です)。

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僕も若手に発表してもらいますが、 デビュー戦こそしっかりと準備をしてオーセンティックな、 ちゃんと査読付きの論文にできる発表を要求します。 できれば国際学会で発表してもらいます。

「初めてだから、 とりあえず地方会で症例だしとくか」 みたいな軽い気持ちで発表させるから地方会の質が落ちるのです。

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昭和30年代の団体温泉慰安旅行がもはや時代遅れなように、 医学領域の 「地方会」 もオワコンです。 我々は他に時間やエネルギーを割かねばならないことが山のようにあるのです (家事育児とか)。

もういい加減目を覚まして、 令和の時代にふさわしい学術活動のあり方を構築すべきではないでしょうか。

監修・執筆医

そろそろ地方会は廃止した方が良い

島根医科大 (現・島根大) 卒。 沖縄県立中部病院研修医、 セントルークス・ルーズベルト病院 内科研修医を経て、 ベスイスラエル・メディカルセンター感染症フェローに。 北京インターナショナルSOSクリニックを経て、 2004年に亀田総合病院で感染症科部長、 同総合診療・感染症科部長歴任。 2008年より現職。

「タイムマネジメントが病院を変える」 など著書多数。 米国内科専門医、 感染症専門医、 感染管理認定CIC、 渡航医学認定CTHなどのほか、 漢方内科専門医、 ワインエキスパート・エクセレンスやファイナンシャル・プランナーの資格をもつ。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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