寄稿ライター
3ヶ月前
新NISAをしている先生も多いでしょう。 連載 「医師による医師のための財テク術」 第30回では、 NISAを実際に運用していく中で見落としがちな注意点──売却のタイミングや相続、 海外留学などの取り扱いについて解説します。
前回で述べたように、 短期売買は投資枠の非効率な使用につながるため、 新NISAでは原則として長期保有が望ましいとされています。 では、 どんなときに売るべきなのか。
筆者が考える売却のタイミングは、 「資金が必要になったとき」 です。 たとえば留学や老後資金など、 通常の収入ではまかないきれない大きな出費がある場合、 NISA枠で積み上げた資産を取り崩すことは合理的です。
新NISAでは売却翌年にその分の投資枠が復活します。 これにより、 「いざという時は売却できる」 という安心感が、 日々の投資判断を後押しする要素にもなるでしょう。
また、 投資対象の見直しも検討すべきタイミングのひとつです。 たとえばS&P500に投資している場合、 米国が明確に経済的覇権を失ったと判断できる状況であれば、 投資戦略自体の再構築が必要になります。 ただし、 一時的な暴落だけでは判断すべきではありません (第7回参照)。
気をつけたいのが、 「死ぬときに資産が最も多い」 という状況です。
NISAで増えた資産は相続税の対象になります。 新NISAによる長期運用は数千万円規模に成長する可能性があり、 相続時に多額の税負担が発生するリスクもあります。
NISA口座保有者が死亡した場合、 「非課税口座開設者死亡届出書」 の提出が必要です。 死亡日までの運用益・配当は非課税ですが、 その日をもって課税口座に移され、 相続税が発生します。
相続税対策としては、 以下のような方針が挙げられます。
・自分の寿命を意識して効果的に使い切る
・暦年贈与を利用
・相続時精算課税制度を活用
・不動産に変えて相続税評価額を下げる
・資産管理法人を設立する
ただし、 どれも人によって最適解が異なり、 税制改正も頻繁に行われるため、 専門家 (税理士) に必ず相談することをおすすめします。
海外留学を予定している医師にとって、 NISA口座の扱いは意外な落とし穴です。
NISAはあくまで 「日本居住者」 を対象とした制度であり、 長期海外滞在中は原則として新規取引ができなくなります。
2019年からは 「継続適用届出書」 を提出することで、 やむを得ない事情による海外転居であれば最大5年間、 口座維持が可能となりました。 ただしこの適用は転勤等に限定されており、 自主的な留学が該当するかは証券会社によって判断が分かれるため、 事前に確認が必要です。
具体的には、 出国前日までに 「継続適用届出書」、 帰国後に 「帰国届出書」 を提出する必要があります。 5年以内の帰国であればNISA口座の復活が可能ですが、 5年を超えると自動的に課税口座に移される点には注意が必要です。
現在はSBI証券、 楽天証券、 マネックス証券といった大手ネット証券がこの制度に対応していますが、 商品によっては一部取引が制限されるケースもあるため、 各社のホームページで詳細を確認してください。
NISA口座を開設する証券会社は自由に選択可能です。 一般的には先述のSBI証券、 楽天証券、 マネックス証券の3社が主流ですが、 最近ではmoomoo証券などの新興勢力も注目されています。 ただし、 moomooは成長投資枠のみに対応、 iDeCo非対応など、 制限があるため注意が必要です。
NISA口座は1人1口座までで、 証券会社の変更は翌年度からのみ可能です。 変更後の口座において、 前年度の使い残したNISA枠を使うことはできますが、 前の口座で購入した商品を新しいNISA口座に移すことはできません。
移動させたい場合は売却が必要となり、 その売却分が翌年の枠として戻ってくる形になります。 変更手続き自体は可能ですが、 管理が煩雑になること、 枠の消化効率が下がる可能性があるため、 よほどの理由がない限りは変更しない方が無難です。
いかがでしたでしょうか。 本日のTake Home Messageは
となります。 次回は、 iDeCoについて考えてみましょう。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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