改革を拒む抵抗勢力たち
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10ヶ月前

改革を拒む抵抗勢力たち

改革を拒む抵抗勢力たち
2024年4月から始まる医師の働き方改革が目の前に迫ってきました。 本当の意味での改革を実現するためには、 必要のない業務や効率化できる業務をどんどん変えていくことが望ましいのですが、 そこにある問題が登場します。 連載 「Dr. 岩田による医師のためのタイムマネジメント」 の4回目では、 その点を掘り下げます。

立ちはだかる抵抗勢力

改革の 「やったふり」 は意味ないのに…

前回 ( 「働き方改革」 は単なる労働時間カットではない) は 「働き方改革」 は働き方そのものを変えていく改革であり、 形式的な弥縫策で 「やったふり」 をしても意味がないことを申し上げました。 ただ、 本当に改革を進めようとすると 「抵抗勢力」 が立ちはだかるのです。

改善、 改革を要求しても、 なんだかんだと 「できない理由」 を列挙して現状維持のままにしたがる人たちです。 どうしてこんなことが起きるのでしょう。

働き方が改善されれば、 個々人の労務は楽になります。 残業代も減るわけですから、 組織母体にも悪い話ではありません。 反対される内容ではないはずですが、 執拗な反対にあうのです。

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上層部~中間管理職がなりやすい

僕が観察したところ、 特に強い反対者は、 組織の中間管理職から上層部くらいのレイヤーです。 現場の末端はあまり反対しないのです。

特に中間管理職は、 「組織の非効率」 が自分たちの業務そのものである場合もあります。 「ハンコを押す仕事」 が典型例です。 あれを省略したら、 自分たちの仕事が減ってしまうのですね。 仕事が減るのはいいことのように思いますが、 自分たちのプレゼンス、 存在感も希薄になってしまうわけです。

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日本組織の弱点

ご存じの先生も多いと思いますが、 海外の組織は基本的にジョブ型です。 その人物の職能に合わせて業務があてがわれ、 その人物の職能を最大限に活かします。

海外は転職するのが一般的で、 同じ組織に何十年も居続ける人は少数派。 数年経ったら、 自分の職務条件や給与条件を改善すべく、 新しい組織に異動します。 これを重ねることで個人はキャリアアップをしていきますし、 組織は新陳代謝が活発となり、 成長していきます。

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終身雇用で 「改革」 は煙たがられる

ところが、 日本の組織は現在も終身雇用が基本です。 まとまった退職金が出ることもあり、 安定したポジションが確保された終身雇用には一定のメリットもあります。

しかし、 そのメリットとデメリットは表裏一体の関係にあります。 安定したポジションが確保されているがゆえに、 個々人はサボりモードに陥りがちです。 あるいは、 失点を恐れて事なかれ主義に終止しかねません。

そうした事なかれ主義の中で、 一番リスキーなのは 「改革」 です。 改革の責任者になれば、 問題が生じた時や失敗した時に責任を取らねばならないのです。 もちろん、 新しいことに挑戦する時に失敗が生じるのは当たり前です。 失敗が皆無の取り組みを我々は 「挑戦」 とは呼びません。

人間関係の調整役に終始

改革を拒む抵抗勢力たち

終身雇用が基本の組織において、 中間管理職の仕事は、 労務管理や企画のリーダーシップをとる役割というより、 上下の調整役になりがちです。 その武器は 「組織の内部のノウハウ」 です。 彼、 彼女曰く、 「規則や不文律ではこうなっている」 「この話を通すときは誰々さんに根回ししとかないと機嫌を損ねられる」。

こうした人間関係の調節や空気の醸成が、 日本組織の中間管理職や上層部のメインな仕事になっているわけです。 「働き方改革」 はこのど真ん中にメスを入れ、 効率化、 省力化、 生産性アップを目指します。 新しいシステムの中では自分たちの長年のノウハウや調整力が発揮できないケースもあります。 古き悪しき昭和のやり方にしがみつくのはそのためです。

こういう人物は組織の 「中の理屈」 には聡いですが、 外の状況、 特に国外の情勢などには無知なことが多いです。 日本の医療環境は国内外の環境変化のため、 激変を強いられています。 「中の理屈」 は外的にはもはや通らないところまで来ていいます。

「できない理由」 を列挙するのは止め、 覚悟を決めて、 自分たちの意識改革をしなければ、 日本の医療機関は生き延びることができません。 それ以外に選択肢はないのです。

監修・執筆医

改革を拒む抵抗勢力たち

島根医科大 (現・島根大) 卒。 沖縄県立中部病院研修医、 セントルークス・ルーズベルト病院 内科研修医を経て、 ベスイスラエル・メディカルセンター感染症フェローに。 北京インターナショナルSOSクリニックを経て、 2004年に亀田総合病院で感染症科部長、 同総合診療・感染症科部長歴任。 2008年より現職。

「タイムマネジメントが病院を変える」 など著書多数。 米国内科専門医、 感染症専門医、 感染管理認定CIC、 渡航医学認定CTHなどのほか、 漢方内科専門医、 ワインエキスパート・エクセレンスやファイナンシャル・プランナーの資格をもつ。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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