治療スケジュール
概要
監修医師

2-CdA:クラドリビン(ロイスタチン®)

投与量コース投与日
0.09mg/kg 持続点滴静注1Day 1~7

RIT:リツキシマブ(リツキサン®)

投与量コース投与日
375mg/m² 点滴静注1~Day 0 or 1

前投薬

RIT投与前に解熱鎮痛薬、 抗ヒスタミン薬を使用.
クラドリビン投与日に5HT3受容体拮抗薬を使用.

その他

クラドリビンは通常1コースのみの投与となるが、 2コース目以降を行う際は最低28日間の間隔をあける.
HCLに対するクラドリビンの本邦承認用量は、 0.09mg/kg/dayを7日間持続点滴.
RITは1コース7日間、 最大8コース.
RITはクラドリビンの前日 or 同日に投与.
レジメン
Cladribine±RIT
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは「全薬工業株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

J Clin Oncol. 2020 May 10;38(14):1527-1538.¹⁾ より引用

骨髄抑制

  • CD4細胞数減少 (85%、 ≧Grade3 56%)
  • リンパ球減少 (76%、 ≧Grade3 74%)
  • 白血球減少 (68%、 ≧Grade3 65%)
  • 血小板減少 (68%、 ≧Grade3 59%)
  • 好中球減少 (38%、 ≧Grade3 35%)
  • 発熱性好中球減少症 (38%、 ≧Grade3 38%)
  • 貧血 (35%、 ≧Grade3 9%)
  • 低ハプトグロビン血症 (6%、 ≧Grade3 3%)

主な有害事象

  • 輸注反応 (74%、 ≧Grade3 3%)
  • トランスアミナーゼ上昇 (38%、 ≧Grade3 3%)
  • 低アルブミン血症 (29%)
  • 皮疹/搔痒 (21%)
  • 倦怠感 (12%)

その他

  • 感染症 (9%、 ≧Grade3 3%)
  • 低酸素症 (3%、 ≧Grade3 3%)
  • トロポニン上昇 (3%、 ≧Grade3 3%)
  • 低リン血症 (3%、 ≧Grade3 3%)

特徴と注意点

  • ヘアリー細胞白血病 (HCL) は、 活性化記憶B細胞由来と想定されている毛髪様細胞突起を有するhairy cell骨髄・赤脾髄でびまん性に増殖し、 末梢血に出現する低悪性度B細胞性腫瘍.
  • HCL患者のうち、 治療適応と判断された際に推奨される治療法の一つ.
  • クラドリビン単剤療法の効果²⁾ ³⁾ も示されているが、 リツキシマブ併用により、再発に関連する微小残存病変 (MRD) を減らす可能性が示されている¹⁾.
  • 再発例においても、 プリンアナログ単剤の効果³⁾ は認められているが、 再投与により緩解期が短縮するとの報告あり、 再発難治例の場合はリツキシマブとの併用が評価されている⁴⁾ ⁵⁾.
 HCL適応のプリンアナログ:クラドリビン、 ペントスタチン
  • プリンアナログによる初回治療後に再発したHCLでは、 リツキシマブ単剤療法の有効性は高くないとの報告あり⁶⁾ ⁷⁾.
  • 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要

感染対策

  • 発熱性好中球減少症のリスク (年齢>65歳、 Alb≦3.5g/dL、 好中球数<1500/mm³、 肝疾患合併) に応じてG-CSF製剤の投与を考慮. 
  • 抗ヘルペスウイルス薬やST合剤の予防内服を考慮.
  • 予防内服の推奨期間は、 最低でも2ヵ月間、 かつCD4陽性細胞数が200/mm³以上となるまで.
  • 好中球減少期間は、 広域抗菌薬による予防内服も考慮.
  • HBV再活性化リスクを考慮し、 適切なスクリーニング検査とモニタリングを行う

各薬剤の副作用と対策

  • リツキシマブinfusion reactionのリスクが高いため、 予防薬の投与を行い、 バイタルサインのモニタリングを行った上で段階的に投与速度を上げる

関連する臨床試験の結果

J Clin Oncol. 2020 May 10;38(14):1527-1538.¹⁾

概要

  • 対象:プリンアナログ未治療の古典的ヘアリー細胞白血病患者68人
  • 無作為化第2相試験
  • クラドリビンを投与し、 MRDが検出された後にリツキシマブを初日 (CDAR、 同時投与群) 又は6ヵ月以上後 (遅延投与群) に投与を1対1で無作為化割付け
  • 完全寛解 (CR) 率、 毒性を評価
 クラドリビン用量:0.15mg/kgをDay1~5
 リツキシマブ用量:375mg/m²を週8回
 MRD検査:血液及び骨髄 (BM) フローサイトメトリー、 BM免疫組織化学が含まれる

結果

  • 追跡期間中央値 96ヵ月
  • 6ヵ月後のCR率:CDAR群 100% vs クラドリビン単剤群* 88% (P=0.11)
 *遅延投与群は6ヵ月まではクラドリビン単剤群として記載
  • 6ヵ月後のMRDフリーCR率:CDAR群 97% vs クラドリビン単剤群 24% (P<.0001)
  • 6ヵ月後の血液MRDフリー率:CDAR群 100% vs クラドリビン単剤群 50% (P<.0001) .
  • 追跡期間中央値96ヵ月でのMRDフリー率:CDAR群 94% vs クラドリビン単剤群 12%.
  • 遅延投与群は、 MRDフリーCR率 (評価可能患者 21人中 67%、 P=.0034) 及び持続性 (P=.0081、 CDARに有利なHR 0.094) が低下.
  • 遅延投与群の12例は、 リツキシマブ最終投与から 6~104ヵ月 (中央値 78ヵ月) 後の再診断でMRDフリーの維持を確認.
  • 毒性については、 CDARはクラドリビン単剤療法と比較し、 Grade3以上の血小板減少症 (59% vs 9%、 P< .0001) 及び出血を伴わない血小板輸血 (35% vs 0%、 P=.0002) が短期間で発生したものの、 4週間後の好中球数 (P=.017) 及び血小板数 (P=.0015) では高い値を示した.
  • MRDフリーCR達成には、 初回クラドリビン投与後にリツキシマブを同時投与することで大きく向上するが、 遅延投与ではそれほど向上しなかった.
  • MRDフリー生存が追加治療の必要性の減少やHCL の治癒につながるかは、 より長期的な追跡調査が必要.

Blood. 1998 Sep 15;92(6):1918-26.²⁾

概要

  • 対象:未治療のヘアリー細胞白血病患者358人
  • 投与法:クラドリビン 1日0.087又は0.1mg/kgを7日間持続点滴静注
  • 奏効率と期間、 治療失敗までの時間 (TTF) 率、 再治療の結果、 毒性、 生存率を評価

結果

  • 評価可能な349人のうち、 完全奏効 91%、 部分奏効 7%.
  • 全体の奏効追跡期間中央値 52ヵ月、 中央値29ヵ月で 26%が再発.
  • 奏効者341人の48ヵ月後 TTF率 19% (完全奏効者16%、 部分奏効者54%).
  • 初回再発時に2コース目のクラドリビン治療を受けた評価可能な53人のうち、 62%が完全奏効、 26%が部分奏効を達成.
  • 48ヵ月時点の全生存率は96%.
  • 8%の患者で二次新生物を発症 (造血系は1人のみ).
  • クラドリビン単回投与は、 大多数の患者で長期の完全寛解を達成し、 完全奏効者の再発率は低かった.
  • 再発患者においても、 クラドリビン再投与の効果は認められた.

参考文献

  1. J Clin Oncol. 2020 May 10;38(14):1527-1538.
  2. Blood. 1998 Sep 15;92(6):1918-26.
  3. J Clin Oncol. 2003 Mar 1;21(5):891-6.
  4. Br J Haematol. 2016 Sep;174(5):760-6.
  5. Leuk Lymphoma. 2011 Jun;52 Suppl 2:75-8.
  6. Blood. 2003 Aug 1;102(3):810-3.
  7. Haematologica. 2008 Sep;93(9):1426-8.
最終更新:2022年8月30日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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クラドリビン(ロイスタチン®)±リツキシマブ
2023年06月04日更新

2-CdA:クラドリビン(ロイスタチン®)

投与量コース投与日
0.09mg/kg 持続点滴静注1Day 1~7

RIT:リツキシマブ(リツキサン®)

投与量コース投与日
375mg/m² 点滴静注1~Day 0 or 1

前投薬

RIT投与前に解熱鎮痛薬、 抗ヒスタミン薬を使用.
クラドリビン投与日に5HT3受容体拮抗薬を使用.

その他

クラドリビンは通常1コースのみの投与となるが、 2コース目以降を行う際は最低28日間の間隔をあける.
HCLに対するクラドリビンの本邦承認用量は、 0.09mg/kg/dayを7日間持続点滴.
RITは1コース7日間、 最大8コース.
RITはクラドリビンの前日 or 同日に投与.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは「全薬工業株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

J Clin Oncol. 2020 May 10;38(14):1527-1538.¹⁾ より引用

骨髄抑制

  • CD4細胞数減少 (85%、 ≧Grade3 56%)
  • リンパ球減少 (76%、 ≧Grade3 74%)
  • 白血球減少 (68%、 ≧Grade3 65%)
  • 血小板減少 (68%、 ≧Grade3 59%)
  • 好中球減少 (38%、 ≧Grade3 35%)
  • 発熱性好中球減少症 (38%、 ≧Grade3 38%)
  • 貧血 (35%、 ≧Grade3 9%)
  • 低ハプトグロビン血症 (6%、 ≧Grade3 3%)

主な有害事象

  • 輸注反応 (74%、 ≧Grade3 3%)
  • トランスアミナーゼ上昇 (38%、 ≧Grade3 3%)
  • 低アルブミン血症 (29%)
  • 皮疹/搔痒 (21%)
  • 倦怠感 (12%)

その他

  • 感染症 (9%、 ≧Grade3 3%)
  • 低酸素症 (3%、 ≧Grade3 3%)
  • トロポニン上昇 (3%、 ≧Grade3 3%)
  • 低リン血症 (3%、 ≧Grade3 3%)

特徴と注意点

  • ヘアリー細胞白血病 (HCL) は、 活性化記憶B細胞由来と想定されている毛髪様細胞突起を有するhairy cell骨髄・赤脾髄でびまん性に増殖し、 末梢血に出現する低悪性度B細胞性腫瘍.
  • HCL患者のうち、 治療適応と判断された際に推奨される治療法の一つ.
  • クラドリビン単剤療法の効果²⁾ ³⁾ も示されているが、 リツキシマブ併用により、再発に関連する微小残存病変 (MRD) を減らす可能性が示されている¹⁾.
  • 再発例においても、 プリンアナログ単剤の効果³⁾ は認められているが、 再投与により緩解期が短縮するとの報告あり、 再発難治例の場合はリツキシマブとの併用が評価されている⁴⁾ ⁵⁾.
 HCL適応のプリンアナログ:クラドリビン、 ペントスタチン
  • プリンアナログによる初回治療後に再発したHCLでは、 リツキシマブ単剤療法の有効性は高くないとの報告あり⁶⁾ ⁷⁾.
  • 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要

感染対策

  • 発熱性好中球減少症のリスク (年齢>65歳、 Alb≦3.5g/dL、 好中球数<1500/mm³、 肝疾患合併) に応じてG-CSF製剤の投与を考慮. 
  • 抗ヘルペスウイルス薬やST合剤の予防内服を考慮.
  • 予防内服の推奨期間は、 最低でも2ヵ月間、 かつCD4陽性細胞数が200/mm³以上となるまで.
  • 好中球減少期間は、 広域抗菌薬による予防内服も考慮.
  • HBV再活性化リスクを考慮し、 適切なスクリーニング検査とモニタリングを行う

各薬剤の副作用と対策

  • リツキシマブinfusion reactionのリスクが高いため、 予防薬の投与を行い、 バイタルサインのモニタリングを行った上で段階的に投与速度を上げる

関連する臨床試験の結果

J Clin Oncol. 2020 May 10;38(14):1527-1538.¹⁾

概要

  • 対象:プリンアナログ未治療の古典的ヘアリー細胞白血病患者68人
  • 無作為化第2相試験
  • クラドリビンを投与し、 MRDが検出された後にリツキシマブを初日 (CDAR、 同時投与群) 又は6ヵ月以上後 (遅延投与群) に投与を1対1で無作為化割付け
  • 完全寛解 (CR) 率、 毒性を評価
 クラドリビン用量:0.15mg/kgをDay1~5
 リツキシマブ用量:375mg/m²を週8回
 MRD検査:血液及び骨髄 (BM) フローサイトメトリー、 BM免疫組織化学が含まれる

結果

  • 追跡期間中央値 96ヵ月
  • 6ヵ月後のCR率:CDAR群 100% vs クラドリビン単剤群* 88% (P=0.11)
 *遅延投与群は6ヵ月まではクラドリビン単剤群として記載
  • 6ヵ月後のMRDフリーCR率:CDAR群 97% vs クラドリビン単剤群 24% (P<.0001)
  • 6ヵ月後の血液MRDフリー率:CDAR群 100% vs クラドリビン単剤群 50% (P<.0001) .
  • 追跡期間中央値96ヵ月でのMRDフリー率:CDAR群 94% vs クラドリビン単剤群 12%.
  • 遅延投与群は、 MRDフリーCR率 (評価可能患者 21人中 67%、 P=.0034) 及び持続性 (P=.0081、 CDARに有利なHR 0.094) が低下.
  • 遅延投与群の12例は、 リツキシマブ最終投与から 6~104ヵ月 (中央値 78ヵ月) 後の再診断でMRDフリーの維持を確認.
  • 毒性については、 CDARはクラドリビン単剤療法と比較し、 Grade3以上の血小板減少症 (59% vs 9%、 P< .0001) 及び出血を伴わない血小板輸血 (35% vs 0%、 P=.0002) が短期間で発生したものの、 4週間後の好中球数 (P=.017) 及び血小板数 (P=.0015) では高い値を示した.
  • MRDフリーCR達成には、 初回クラドリビン投与後にリツキシマブを同時投与することで大きく向上するが、 遅延投与ではそれほど向上しなかった.
  • MRDフリー生存が追加治療の必要性の減少やHCL の治癒につながるかは、 より長期的な追跡調査が必要.

Blood. 1998 Sep 15;92(6):1918-26.²⁾

概要

  • 対象:未治療のヘアリー細胞白血病患者358人
  • 投与法:クラドリビン 1日0.087又は0.1mg/kgを7日間持続点滴静注
  • 奏効率と期間、 治療失敗までの時間 (TTF) 率、 再治療の結果、 毒性、 生存率を評価

結果

  • 評価可能な349人のうち、 完全奏効 91%、 部分奏効 7%.
  • 全体の奏効追跡期間中央値 52ヵ月、 中央値29ヵ月で 26%が再発.
  • 奏効者341人の48ヵ月後 TTF率 19% (完全奏効者16%、 部分奏効者54%).
  • 初回再発時に2コース目のクラドリビン治療を受けた評価可能な53人のうち、 62%が完全奏効、 26%が部分奏効を達成.
  • 48ヵ月時点の全生存率は96%.
  • 8%の患者で二次新生物を発症 (造血系は1人のみ).
  • クラドリビン単回投与は、 大多数の患者で長期の完全寛解を達成し、 完全奏効者の再発率は低かった.
  • 再発患者においても、 クラドリビン再投与の効果は認められた.

参考文献

  1. J Clin Oncol. 2020 May 10;38(14):1527-1538.
  2. Blood. 1998 Sep 15;92(6):1918-26.
  3. J Clin Oncol. 2003 Mar 1;21(5):891-6.
  4. Br J Haematol. 2016 Sep;174(5):760-6.
  5. Leuk Lymphoma. 2011 Jun;52 Suppl 2:75-8.
  6. Blood. 2003 Aug 1;102(3):810-3.
  7. Haematologica. 2008 Sep;93(9):1426-8.
最終更新:2022年8月30日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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