治療スケジュール
概要
監修医師

Pegcetacoplan:ペグセタコプラン(エムパベリ®)

投与量コース投与日
1回1080mg 皮下投与1~Day1、 Day4 (効果不十分の際は3日に1回へ増量可)

前投薬

投与開始2週間前までに、 髄膜炎菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型に対するワクチンを接種.

その他

補体C5阻害剤から本剤に切り替える際は、 本剤開始後4週間は補体C5阻害剤を併用.
本剤はシリンジポンプを用いて投与.
投与部位が2ヵ所の場合は15~30分、 投与部位が1ヵ所の場合は30~60分かけて投与.
薬剤の調製開始後2時間以内に投与を完了する.
予定日に投与できなかった場合は、 速やかに1回分を投与し、 以降の投与は規定通りに行う (2日連続投与までは可).
医師により適用が妥当と判断された場合は、 自己投与への移行可.
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Pegcetacoplan
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

エムパベリ® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「旭化成ファーマ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

適正使用ガイド¹⁾ APL2-302試験における副作用 [無作為化投与期間 (16週間)] より引用.

主な有害事象

  • 注射部位障害
  • 紅斑 (14.6%)
  • 反応 (9.8%)
  • 硬結 (7.3%)
  • 腫脹 (7.3%)
  • 疼痛 (2.4%)
  • 搔痒感 (2.4%)
  • 溶血 (4.9%)

その他

  • 無力症 (2.4%)
  • 注入部位腫脹 (2.4%)
  • 圧痛 (2.4%)
  • 顔面麻痺 (2.4%)
  • 頭痛 (2.4%)
  • 紅斑 (2.4%)
  • 色素沈着障害 (2.4%)
  • 下痢 (2.4%)
  • ウイルス性上気道炎 (2.4%)
  • 抱合ビリルビン増加 (2.4%)
  • 高カルシウム血症 (2.4%)
  • 頚部痛 (2.4%)
  • 落ち着きのなさ (2.4%)
  • 高血圧 (2.4%)

特徴と注意点

発作性夜間血色素尿症 (PNH)

  • 本剤は、 補体C3及びC3bに高親和性で結合することにより、 C3の開裂と補体活性化の下流エフェクターの生成かつMAC生成を阻害することで、 PNHの血管内溶血及び血管外溶血を抑制する.
  • C5阻害薬による適切な治療を行っても十分な効果が得られない場合に本剤を投与する.
  • C5阻害薬から切り替える際は、 C5阻害薬中止による溶血を抑えるため、 本剤開始4週間はC5阻害薬を併用する.
  • 本剤の投与条件として、 投与前までに髄膜炎菌ワクチンのほか、 肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型のワクチン接種が必要.
  • 注目すべき有害事象:注射部位反応 (36.6%)、 感染症/敗血症 (29.3%/0%)、 溶血性障害 (12.2%)、 血栓症 (0%)、 過敏症 (12.2%)
()内は無作為化投与期間における発現割合¹⁾
  • 本剤の投与により、 髄膜炎菌をはじめ、 莢膜形成細菌 (淋菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型等) による感染症リスクが増大することから、 感染対策、 ワクチン接種などの十分な患者指導を行う.

莢膜形成細菌による感染症の予防

  • 緊急治療を要する場合等を除き、 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに下記のワクチンを接種.
臨床試験では、 ワクチン接種前に本剤を使用した場合、 ワクチン接種後2週間以上は抗菌薬投与を規定

〈髄膜炎菌ワクチン〉

  • A、 C、 W-135及びY型に対するワクチンを接種.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注
  • B型については入手可能な場合は検討してもよいが、 臨床試験¹⁾ (日本人集団) では投与していない.
  • 髄膜炎菌ワクチンは5年ごとを目安に追加接種することを推奨¹⁾. 必要な抗体価については諸説あり、 現時点では確立されていない.
  • 過去5年以内に髄膜炎菌ワクチンを接種していない場合で、 無脾症 (脾摘含む)、 持続性補体欠損症、 HIV感染等を有する患者では0.5mLを2回接種する (2回目は初回から8週以上あけて接種).

〈肺炎球菌ワクチン〉

  • 臨床試験²⁾ では、 2週間前にPCV13、 8週後にPPSV23を接種.
  • 13価肺炎球菌結合型ワクチン (PCV13):プレベナー13Ⓡ
  • 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン (PPSV23):ニューモバックスⓇ

〈インフルエンザ菌b型ワクチン〉

関連する臨床試験の結果

PEGASUS試験 (APL2-302試験)²⁾

概要

  • 国際共同第Ⅲ相試験
  • 試験デザイン:前向き、 無作為化、 多施設共同、 非盲検、 実薬対照比較試験.
  • 目的:エクリズマブ治療にも関わらずHb値が10.5g/dL未満であるPNH患者に対して、 ペグセタコプラン投与群の有効性及び安全性を、 エクリズマブ投与群と比較.
  • 対象:HSFCによってPNHと診断された18歳以上の男女で、 スクリーニング来院前3ヵ月間にわたる一定用量のエクリズマブ治療にも関わらずHb値が10.5g/dL未満であった患者80例 (うち日本人10例).
HSFC:高感度フローサイトメトリー
  • 方法
  • 導入投与期間  (4週間:-4週~Day1)
ペグセタコプラン+エクリズマブ併用投与
  • 無作為化投与期間 (16週間:Day1~16週)
ペグセタコプラン又はエクリズマブを1:1で割付け
  • 主要評価項目:ヘモグロビン値のベースラインから16週時点までの変化量の平均

結果

  • ベースラインから16週目までのヘモグロビン値の変化:ペグセタコプランがエクリズマブより優れており、 調整 (最小二乗) 平均差は3.84g/dLであった (P<0.001).
  • 輸血回避割合:ペグセタコプラン群85.4% vs エクリズマブ群15.4%、群間差62.53% (95%CI:48.30, 76.77).
  • エクリズマブに対するペグセタコプランの非劣性は、 絶対網赤血球数の変化で示されたが、 LDHの変化では示されなかった.
  • FACIT-Fatigueスコア:ペグセタコプラン群9.22 vs エクリズマブ群 -2.65、群間差11.87 (95%CI:5.49, 18.25).
  • ペグセタコプラン群及びエクリズマブ群で治療中に発現した最も一般的な有害事象は、 注射部位反応 (37% vs 3%)、 下痢 (22% vs 3%)、 ブレイクスルー溶血 (10% vs 23%)、 頭痛 (7% vs 23%)、 疲労 (5% vs 15%)であった.
  • 髄膜炎の症例は両群ともに認めなかった.
  • ペグセタコプランは、 血管内溶血・血管外溶血を含む広範な溶血コントロールをもたらし、 PNH患者のヘモグロビン値と臨床的・血液学的転帰の改善に関してエクリズマブよりも優れていた.

参考文献

  1. エムパベリ®適正使用ガイド
  2. PEGASUS試験 (APL2-302試験)

関連コンテンツ

🔢 発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断基準・重症度分類

HOKUTO表・計算ツール

最終更新:2024年6月28日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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ペグセタコプラン(エムパベリ®)
2024年06月30日更新

Pegcetacoplan:ペグセタコプラン(エムパベリ®)

投与量コース投与日
1回1080mg 皮下投与1~Day1、 Day4 (効果不十分の際は3日に1回へ増量可)

前投薬

投与開始2週間前までに、 髄膜炎菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型に対するワクチンを接種.

その他

補体C5阻害剤から本剤に切り替える際は、 本剤開始後4週間は補体C5阻害剤を併用.
本剤はシリンジポンプを用いて投与.
投与部位が2ヵ所の場合は15~30分、 投与部位が1ヵ所の場合は30~60分かけて投与.
薬剤の調製開始後2時間以内に投与を完了する.
予定日に投与できなかった場合は、 速やかに1回分を投与し、 以降の投与は規定通りに行う (2日連続投与までは可).
医師により適用が妥当と判断された場合は、 自己投与への移行可.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

エムパベリ® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「旭化成ファーマ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

適正使用ガイド¹⁾ APL2-302試験における副作用 [無作為化投与期間 (16週間)] より引用.

主な有害事象

  • 注射部位障害
  • 紅斑 (14.6%)
  • 反応 (9.8%)
  • 硬結 (7.3%)
  • 腫脹 (7.3%)
  • 疼痛 (2.4%)
  • 搔痒感 (2.4%)
  • 溶血 (4.9%)

その他

  • 無力症 (2.4%)
  • 注入部位腫脹 (2.4%)
  • 圧痛 (2.4%)
  • 顔面麻痺 (2.4%)
  • 頭痛 (2.4%)
  • 紅斑 (2.4%)
  • 色素沈着障害 (2.4%)
  • 下痢 (2.4%)
  • ウイルス性上気道炎 (2.4%)
  • 抱合ビリルビン増加 (2.4%)
  • 高カルシウム血症 (2.4%)
  • 頚部痛 (2.4%)
  • 落ち着きのなさ (2.4%)
  • 高血圧 (2.4%)

特徴と注意点

発作性夜間血色素尿症 (PNH)

  • 本剤は、 補体C3及びC3bに高親和性で結合することにより、 C3の開裂と補体活性化の下流エフェクターの生成かつMAC生成を阻害することで、 PNHの血管内溶血及び血管外溶血を抑制する.
  • C5阻害薬による適切な治療を行っても十分な効果が得られない場合に本剤を投与する.
  • C5阻害薬から切り替える際は、 C5阻害薬中止による溶血を抑えるため、 本剤開始4週間はC5阻害薬を併用する.
  • 本剤の投与条件として、 投与前までに髄膜炎菌ワクチンのほか、 肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型のワクチン接種が必要.
  • 注目すべき有害事象:注射部位反応 (36.6%)、 感染症/敗血症 (29.3%/0%)、 溶血性障害 (12.2%)、 血栓症 (0%)、 過敏症 (12.2%)
()内は無作為化投与期間における発現割合¹⁾
  • 本剤の投与により、 髄膜炎菌をはじめ、 莢膜形成細菌 (淋菌、 肺炎球菌、 インフルエンザ菌b型等) による感染症リスクが増大することから、 感染対策、 ワクチン接種などの十分な患者指導を行う.

莢膜形成細菌による感染症の予防

  • 緊急治療を要する場合等を除き、 原則、 本剤投与開始の少なくとも2週間前までに下記のワクチンを接種.
臨床試験では、 ワクチン接種前に本剤を使用した場合、 ワクチン接種後2週間以上は抗菌薬投与を規定

〈髄膜炎菌ワクチン〉

  • A、 C、 W-135及びY型に対するワクチンを接種.
本邦ではA、C、W-135及びY型に対するワクチンのみ保険適用(メンクアッドフィ®筋注
  • B型については入手可能な場合は検討してもよいが、 臨床試験¹⁾ (日本人集団) では投与していない.
  • 髄膜炎菌ワクチンは5年ごとを目安に追加接種することを推奨¹⁾. 必要な抗体価については諸説あり、 現時点では確立されていない.
  • 過去5年以内に髄膜炎菌ワクチンを接種していない場合で、 無脾症 (脾摘含む)、 持続性補体欠損症、 HIV感染等を有する患者では0.5mLを2回接種する (2回目は初回から8週以上あけて接種).

〈肺炎球菌ワクチン〉

  • 臨床試験²⁾ では、 2週間前にPCV13、 8週後にPPSV23を接種.
  • 13価肺炎球菌結合型ワクチン (PCV13):プレベナー13Ⓡ
  • 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン (PPSV23):ニューモバックスⓇ

〈インフルエンザ菌b型ワクチン〉

関連する臨床試験の結果

PEGASUS試験 (APL2-302試験)²⁾

概要

  • 国際共同第Ⅲ相試験
  • 試験デザイン:前向き、 無作為化、 多施設共同、 非盲検、 実薬対照比較試験.
  • 目的:エクリズマブ治療にも関わらずHb値が10.5g/dL未満であるPNH患者に対して、 ペグセタコプラン投与群の有効性及び安全性を、 エクリズマブ投与群と比較.
  • 対象:HSFCによってPNHと診断された18歳以上の男女で、 スクリーニング来院前3ヵ月間にわたる一定用量のエクリズマブ治療にも関わらずHb値が10.5g/dL未満であった患者80例 (うち日本人10例).
HSFC:高感度フローサイトメトリー
  • 方法
  • 導入投与期間  (4週間:-4週~Day1)
ペグセタコプラン+エクリズマブ併用投与
  • 無作為化投与期間 (16週間:Day1~16週)
ペグセタコプラン又はエクリズマブを1:1で割付け
  • 主要評価項目:ヘモグロビン値のベースラインから16週時点までの変化量の平均

結果

  • ベースラインから16週目までのヘモグロビン値の変化:ペグセタコプランがエクリズマブより優れており、 調整 (最小二乗) 平均差は3.84g/dLであった (P<0.001).
  • 輸血回避割合:ペグセタコプラン群85.4% vs エクリズマブ群15.4%、群間差62.53% (95%CI:48.30, 76.77).
  • エクリズマブに対するペグセタコプランの非劣性は、 絶対網赤血球数の変化で示されたが、 LDHの変化では示されなかった.
  • FACIT-Fatigueスコア:ペグセタコプラン群9.22 vs エクリズマブ群 -2.65、群間差11.87 (95%CI:5.49, 18.25).
  • ペグセタコプラン群及びエクリズマブ群で治療中に発現した最も一般的な有害事象は、 注射部位反応 (37% vs 3%)、 下痢 (22% vs 3%)、 ブレイクスルー溶血 (10% vs 23%)、 頭痛 (7% vs 23%)、 疲労 (5% vs 15%)であった.
  • 髄膜炎の症例は両群ともに認めなかった.
  • ペグセタコプランは、 血管内溶血・血管外溶血を含む広範な溶血コントロールをもたらし、 PNH患者のヘモグロビン値と臨床的・血液学的転帰の改善に関してエクリズマブよりも優れていた.

参考文献

  1. エムパベリ®適正使用ガイド
  2. PEGASUS試験 (APL2-302試験)

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🔢 発作性夜間ヘモグロビン尿症の診断基準・重症度分類

HOKUTO表・計算ツール

最終更新:2024年6月28日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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