治療スケジュール
概要
監修医師

FLU:フルダラビン(フルダラ®)

投与量コース投与日
30mg/m² 点滴静注1Day -6 ~ -2

MEL:メルファラン(アルケラン®)

投与量コース投与日
70mg/m² 点滴静注 <30min>1Day -3、 -2

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬を使用.
NK1受容体拮抗薬を考慮.

その他

肥満患者の投与量は実体重を用いて算出 (造血細胞移植ガイドライン 移植前処置 第2版) .
メルファランは溶解後1.5hr以内に投与.
メルファラン投与時はクライオセラピーを考慮.
レジメン
FLU/MEL140
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

主な有害事象

Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.¹⁾より引用

詳細な有害事象については記載なし

下記GradeはBearman scaleによる評価

  • 腎障害 (≧Grade3 9%)
  • 肝障害 (≧Grade3 6.4%)
  • 肺障害 (≧Grade3 6.4%)
  • 心臓障害 (≧Grade3 2.6%)
  • 感染症
  • 粘膜炎

特徴と注意点

  • 強度減弱前処置 (RIC) の基本レジメンの一つ.
  • RICは、 免疫抑制効果を保持しつつ抗腫瘍効果が減弱することを許容しながら、 前処置関連毒性を軽減する目的で開発.
  • 高齢患者や合併症もつ場合も実施可能¹⁾.

感染対策

  • 感染予防策、 手指衛星について患者指導.
  • 飲食物が感染源とならないよう十分な衛生管理、 患者説明を行う²⁾.
  • 予防的抗菌薬の内服.
例:キノロン薬、 抗ヘルペスウイルス薬、 ST合剤、 抗真菌薬

各薬剤の副作用と対策

  • 腎障害がある場合は減量を考慮するが、 確立された減量基準はない.

<腎障害時の減量例> 造血細胞移植学会ガイドライン第2版より

  • メルファランは口内炎リスクが高いため、 アズノールうがい液Ⓡによる含嗽やクライオセラピーを行う. また、 口腔ケアについても十分な患者指導を行い予防に努める.
クライオセラピー:投与15分前、 投与中、 投与後に氷片を口に含ませ、 口腔内粘膜を冷却

関連する臨床試験の結果

Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.¹⁾

概要

  • 対象患者:難治性白血病または形質転換した慢性骨髄性白血病、 初回寛解または慢性期、 未治療の初回再発またはその後寛解の計86人
  • 年齢中央値52歳 (範囲:22~70歳)
  • 強度低減準備レジメンを用いて同種移植の評価
フルダラビン25mg/m²×5days +メルファラン180mg/m² (n=66)
フルダラビン25mg/m²×5days +メルファラン140mg/m² (n=12)
cladribine 12mg/m²×5days +メルファラン180mg/m² (n=8)

結果

  • 100日目の非再発死亡率:フルダラビン+メルファラン併用療法37.4%、 cladribine+メルファラン併用療法87.5%.
  • 75 例における1ヵ月後のドナー細胞の割合の中央値は100%であった (範囲:0~100%).
  • Grade2~4及び3~4の急性移植片対宿主病の発生確率は、 それぞれ0.49 (95%CI 0.38-0.60)、 0.29 (95%CI 0.18-0.41) であった.
  • 1年後の無病生存率:初回寛解または慢性期の患者で57%、 未治療の初回再発または2回目以降の寛解の患者で49%.
Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.より引用
  • フルダラビン+メルファラン併用療法は、 合併症を持つ高齢患者において実施可能であり、 この集団では強度を下げた条件付けで長期の疾患制御が可能であることが示された.

Biol Blood Marrow Transplant. 2017 Dec;23(12):2079-2087.³⁾

概要

  • 同種造血幹細胞移植を受けた50歳以上の急性骨髄性白血病 (AML)、 急性リンパ性白血病または骨髄異形成症候群 (MDS) の患者1607例をレトロスペクティブに解析
  • FB2、 FB4、 FM140で臨床成績を比較
FB2:ブスルファン6.4mg/kg iv (n=463)
FB4:ブスルファン12.8mg/kg iv (n=721)
FM140:メルファラン140mg/m² (n=423)

結果

  • 非再発死亡率:FB4群とFM140群は、 FB2群よりも高かった (それぞれHR1.63 [P< .001] 及びHR1.71 [P< .001] ).
  • 再発率:FB4群とFM140群は、 FB2群よりも低かった (それぞれHR .73 [P= .011] 及びHR .56 [P< .001] ).
  • 全生存期間 (OS):FB2群、 FB4群、 FM140群の間で有意差はなかった.
  • FM140群の高リスクAML及びMDS患者の3年OS (37.0%及び60.2%) は、 FB2群 (24.4%及び45.5%)、 FB4群 (24.6%及び40.6%) より優れていたが (P= .016及びP= .023)、 3群間で他の患者のOSに差はなかった.
  • FB4群とFM140群の再発率の低さは非再発死亡率の悪化によりほぼ相殺されたが、 FM140は高リスクのAML及びMDS患者において、 より良いOSと関連する可能性が示唆された.

参考文献

  1. Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.
  2. 造血細胞移植後の感染管理 第4版(2017年9月)
  3. Biol Blood Marrow Transplant. 2017 Dec;23(12):2079-2087.

最終更新:2022年8月30日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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フルダラビン、メルファラン
2023年05月06日更新

FLU:フルダラビン(フルダラ®)

投与量コース投与日
30mg/m² 点滴静注1Day -6 ~ -2

MEL:メルファラン(アルケラン®)

投与量コース投与日
70mg/m² 点滴静注 <30min>1Day -3、 -2

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬を使用.
NK1受容体拮抗薬を考慮.

その他

肥満患者の投与量は実体重を用いて算出 (造血細胞移植ガイドライン 移植前処置 第2版) .
メルファランは溶解後1.5hr以内に投与.
メルファラン投与時はクライオセラピーを考慮.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

主な有害事象

Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.¹⁾より引用

詳細な有害事象については記載なし

下記GradeはBearman scaleによる評価

  • 腎障害 (≧Grade3 9%)
  • 肝障害 (≧Grade3 6.4%)
  • 肺障害 (≧Grade3 6.4%)
  • 心臓障害 (≧Grade3 2.6%)
  • 感染症
  • 粘膜炎

特徴と注意点

  • 強度減弱前処置 (RIC) の基本レジメンの一つ.
  • RICは、 免疫抑制効果を保持しつつ抗腫瘍効果が減弱することを許容しながら、 前処置関連毒性を軽減する目的で開発.
  • 高齢患者や合併症もつ場合も実施可能¹⁾.

感染対策

  • 感染予防策、 手指衛星について患者指導.
  • 飲食物が感染源とならないよう十分な衛生管理、 患者説明を行う²⁾.
  • 予防的抗菌薬の内服.
例:キノロン薬、 抗ヘルペスウイルス薬、 ST合剤、 抗真菌薬

各薬剤の副作用と対策

  • 腎障害がある場合は減量を考慮するが、 確立された減量基準はない.

<腎障害時の減量例> 造血細胞移植学会ガイドライン第2版より

  • メルファランは口内炎リスクが高いため、 アズノールうがい液Ⓡによる含嗽やクライオセラピーを行う. また、 口腔ケアについても十分な患者指導を行い予防に努める.
クライオセラピー:投与15分前、 投与中、 投与後に氷片を口に含ませ、 口腔内粘膜を冷却

関連する臨床試験の結果

Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.¹⁾

概要

  • 対象患者:難治性白血病または形質転換した慢性骨髄性白血病、 初回寛解または慢性期、 未治療の初回再発またはその後寛解の計86人
  • 年齢中央値52歳 (範囲:22~70歳)
  • 強度低減準備レジメンを用いて同種移植の評価
フルダラビン25mg/m²×5days +メルファラン180mg/m² (n=66)
フルダラビン25mg/m²×5days +メルファラン140mg/m² (n=12)
cladribine 12mg/m²×5days +メルファラン180mg/m² (n=8)

結果

  • 100日目の非再発死亡率:フルダラビン+メルファラン併用療法37.4%、 cladribine+メルファラン併用療法87.5%.
  • 75 例における1ヵ月後のドナー細胞の割合の中央値は100%であった (範囲:0~100%).
  • Grade2~4及び3~4の急性移植片対宿主病の発生確率は、 それぞれ0.49 (95%CI 0.38-0.60)、 0.29 (95%CI 0.18-0.41) であった.
  • 1年後の無病生存率:初回寛解または慢性期の患者で57%、 未治療の初回再発または2回目以降の寛解の患者で49%.
Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.より引用
  • フルダラビン+メルファラン併用療法は、 合併症を持つ高齢患者において実施可能であり、 この集団では強度を下げた条件付けで長期の疾患制御が可能であることが示された.

Biol Blood Marrow Transplant. 2017 Dec;23(12):2079-2087.³⁾

概要

  • 同種造血幹細胞移植を受けた50歳以上の急性骨髄性白血病 (AML)、 急性リンパ性白血病または骨髄異形成症候群 (MDS) の患者1607例をレトロスペクティブに解析
  • FB2、 FB4、 FM140で臨床成績を比較
FB2:ブスルファン6.4mg/kg iv (n=463)
FB4:ブスルファン12.8mg/kg iv (n=721)
FM140:メルファラン140mg/m² (n=423)

結果

  • 非再発死亡率:FB4群とFM140群は、 FB2群よりも高かった (それぞれHR1.63 [P< .001] 及びHR1.71 [P< .001] ).
  • 再発率:FB4群とFM140群は、 FB2群よりも低かった (それぞれHR .73 [P= .011] 及びHR .56 [P< .001] ).
  • 全生存期間 (OS):FB2群、 FB4群、 FM140群の間で有意差はなかった.
  • FM140群の高リスクAML及びMDS患者の3年OS (37.0%及び60.2%) は、 FB2群 (24.4%及び45.5%)、 FB4群 (24.6%及び40.6%) より優れていたが (P= .016及びP= .023)、 3群間で他の患者のOSに差はなかった.
  • FB4群とFM140群の再発率の低さは非再発死亡率の悪化によりほぼ相殺されたが、 FM140は高リスクのAML及びMDS患者において、 より良いOSと関連する可能性が示唆された.

参考文献

  1. Blood. 2001 Feb 1;97(3):631-7.
  2. 造血細胞移植後の感染管理 第4版(2017年9月)
  3. Biol Blood Marrow Transplant. 2017 Dec;23(12):2079-2087.

最終更新:2022年8月30日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

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