治療スケジュール
概要
監修医師

RUX:ルキソリチニブ(ジャカビ®)

投与量コース投与日
1回10mg 1日2回 12時間毎 経口1~Day 1~
*12時間毎--

前投薬

なし

その他

1回10mgを1日2回、 12時間毎に投与.
有害事象により減量、 休薬.
治療効果が認められた場合は、 ステロイド中止後に2ヵ月毎に1段階減量を目安とする.
レジメン
Ruxolitinib
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ジャカビ® (添付文書 / 適正使用ガイド)

*適正使用ガイドは「ノバルティス ファーマ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

REACH2試験¹⁾より引用

骨髄抑制

  • 血小板減少症 (33%、 ≧Grade3 27%)
  • 貧血 (30%、 ≧Grade3 22%)
  • 好中球数減少 (16%、 ≧Grade3 13%)

主な有害事象

  • サイトメガロウイルス感染症 (26%、 ≧Grade3 7%)
  • 末梢浮腫 (18%、 ≧Grade3 1%)
  • 高カリウム血症 (13%、 ≧Grade3 6%)
  • 高血圧 (11%、 ≧Grade3 6%)
  • 低アルブミン血症 (11%、 ≧Grade3 4%)
  • 発熱 (11%、 ≧Grade3 1%)
  • 低マグネシウム血症 (10%、 ≧Grade3 0%)

その他重要な有害事象

  • 敗血症 (7%、 ≧Grade3 7%)
  • EBウイルス感染 (6%、 ≧Grade3 0%)

特徴と注意点

  • JAK1及びJAK2を阻害することによりJAK-STAT経路のシグナル伝達を抑制し、 腫瘍細胞の増殖を抑制するとともに臨床症状を改善する.
  • 結核の既感染者への投与は結核を活動化させる可能性がある.
  • B型肝炎ウイルスキャリアの患者又はHBs抗原陰性かつHBc抗体もしくはHBs抗体陽性の患者への投与はB型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎が現れる可能性がある.
  • CYP3A4関連の相互作用に注意.
  • 肝障害患者および腎障害患者では減量を考慮.
  • 治療効果が認められた場合は漸減する. 漸減はステロイドの投与中止後に2ヶ月ごとに1段階を目安とし、 副作用により減量する場合の1段階減量と同じ減量幅とする.

減量・休薬基準

【1段階減量】

  • 1回10mgを1日2回投与している場合は、 1回5mgを1日2回に減量する.
  • 1回5mgを1日2回で投与している場合は、 1回5mgを1日1回に減量する.
  • 1回5mgを1日1回で投与している場合は休薬する.

関連する臨床試験の結果

REACH2試験¹⁾

REACH2試験=C2301試験 BAT:Best available therapy (現時点での最善治療) CR:完全奏効 PR:部分奏効 OR:オッズ比

概要

  • 多施設共同無作為化非盲検第3相比較臨床試験.
  • 対象:造血幹細胞移植後のステロイド抵抗性のGradeⅡ~Ⅳの急性GVHD患者309例. 日本人30例を含む.
  • 選択基準概要:12歳以上、 生着が確認された患者 (好中球数≧1,000/mm³、 血小板数≧20,000/mm³).
  • RUXの有効性及び安全性についてBATを対照として比較・検討.
  • RUX群:Ruxolitinibを1回10mg、 1日2回.
  • BAT群:現時点での最善治療.
  • 主要評価項目:Day 28時点の奏効率. 
  • 副次評価項目:Day 56まで持続した奏効率など.

【BAT群からRUX投与へのクロスオーバー許容条件】

①Day 28にCR又はPR未達成. 

②Day 28以降に奏効が消失し、 追加の全身免疫抑制療法を要し、 かつ慢性GVHDの徴候を認めない.

結果

  • Day 28の奏効率:RUX群 62.3% vs  BAT群 39.4% (OR 2.64、 95%CI 1.65-4.22、 p<0.001).
  • Day 28のCR率:RUX群 34.4% vs BAT群 19.4%.
  • Day 28のPR率:RUX群 27.9% vs BAT群 20.0%.
  • Day 56まで持続した奏効率:RUX群 39.6% vs BAT群 21.9% (OR 2.38、 95%CI 1.43-3.94、 p<0.001).
  • Day 56まで持続したCR率:RUX群 26.6% vs BAT群 16.1%.
  • Day 56まで持続したPR率:RUX群 13.0% vs BAT群 5.8%.

REACH3試験²⁾ 

REACH3試験=D2301試験 BAT:best available therapy (現時点での最善治療) CR:完全奏効 PR:部分奏効 OR:オッズ比 HR:ハザード比

概要

  • 多施設共同無作為化非盲検第3相比較臨床試験.
  • 対象: 造血幹細胞移植後の慢性GVHD患者329例. 日本人37例を含む.
  • 選択基準概要:12歳以上、 好中球数>1,000/mm³、 血小板数>2.5万/mm³、 12ヵ月未満の慢性GVHDに対するグルココルチコイド使用、 グルココルチコイド抵抗性又は依存性の慢性GVHD、 
グルココルチコイド抵抗性又は依存性の定義:①最低PSL 1mg/kg/日を1週間以上使用し非奏効又は病勢増悪、 ②PSL0.5mg/kg/日又は1mg/kg/隔日を4週間以上使用にも関わらず改善なし、 ③2回のPSL中止検討後にPSL>0.25mg/kg/日へ増量.  
  •  RUXの有効性及び安全性についてBATを対照として比較・検討.
  • 主要評価項目: Cycle 7 Day1 (C7D1、 1サイクル28日間)の奏効率.
  • 副次評価項目:治療成功生存期間など.

【BAT群からRUX投与へのクロスオーバー許容条件 (C7D1以降)】

  • 病勢進行、 mixed又はunchanged response、 BATによる許容できない毒性、 慢性GVHD再燃.
Mixed response:少なくとも1臓器のPR以上と増悪した臓器がある場合 Unchanged response:CR、 PR、 Progression、 Mixed responseのいずれにも入らない場合.

結果

  • C7D1の奏効率:RUX群 49.7% vs BAT群 25.6% (OR 2.99、 95%CI 1.86-4.80、 p<0.001).
  • C7D1のCR率:RUX群 6.7% vs BAT群 3.0%.
  • C7D1のPR率:RUX群 43.0% vs BAT群 22.6%.
  • 治療成功生存期間:RUX群 >18.6ヵ月 vs BAT群 5.7ヵ月 (HR 0.37、 95%CI 0.27-0.51、 p<0.001).

参考文献

  1. N Engl J Med. 2020 May 7;382(19):1800-1810.
  2. N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):228-238.

関連コンテンツ

🔢 慢性GVHDの重症度分類

最終更新:2023年9月28日
執筆担当:北里大学病院薬剤部 宮島律子
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

レジメン
Ruxolitinib
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン
Ruxolitinib
レジメン
Ruxolitinib

Ruxolitinib

ルキソリチニブ(ジャカビ®)
2023年11月26日更新

RUX:ルキソリチニブ(ジャカビ®)

投与量コース投与日
1回10mg 1日2回 12時間毎 経口1~Day 1~
*12時間毎--

前投薬

なし

その他

1回10mgを1日2回、 12時間毎に投与.
有害事象により減量、 休薬.
治療効果が認められた場合は、 ステロイド中止後に2ヵ月毎に1段階減量を目安とする.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ジャカビ® (添付文書 / 適正使用ガイド)

*適正使用ガイドは「ノバルティス ファーマ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

REACH2試験¹⁾より引用

骨髄抑制

  • 血小板減少症 (33%、 ≧Grade3 27%)
  • 貧血 (30%、 ≧Grade3 22%)
  • 好中球数減少 (16%、 ≧Grade3 13%)

主な有害事象

  • サイトメガロウイルス感染症 (26%、 ≧Grade3 7%)
  • 末梢浮腫 (18%、 ≧Grade3 1%)
  • 高カリウム血症 (13%、 ≧Grade3 6%)
  • 高血圧 (11%、 ≧Grade3 6%)
  • 低アルブミン血症 (11%、 ≧Grade3 4%)
  • 発熱 (11%、 ≧Grade3 1%)
  • 低マグネシウム血症 (10%、 ≧Grade3 0%)

その他重要な有害事象

  • 敗血症 (7%、 ≧Grade3 7%)
  • EBウイルス感染 (6%、 ≧Grade3 0%)

特徴と注意点

  • JAK1及びJAK2を阻害することによりJAK-STAT経路のシグナル伝達を抑制し、 腫瘍細胞の増殖を抑制するとともに臨床症状を改善する.
  • 結核の既感染者への投与は結核を活動化させる可能性がある.
  • B型肝炎ウイルスキャリアの患者又はHBs抗原陰性かつHBc抗体もしくはHBs抗体陽性の患者への投与はB型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎が現れる可能性がある.
  • CYP3A4関連の相互作用に注意.
  • 肝障害患者および腎障害患者では減量を考慮.
  • 治療効果が認められた場合は漸減する. 漸減はステロイドの投与中止後に2ヶ月ごとに1段階を目安とし、 副作用により減量する場合の1段階減量と同じ減量幅とする.

減量・休薬基準

【1段階減量】

  • 1回10mgを1日2回投与している場合は、 1回5mgを1日2回に減量する.
  • 1回5mgを1日2回で投与している場合は、 1回5mgを1日1回に減量する.
  • 1回5mgを1日1回で投与している場合は休薬する.

関連する臨床試験の結果

REACH2試験¹⁾

REACH2試験=C2301試験 BAT:Best available therapy (現時点での最善治療) CR:完全奏効 PR:部分奏効 OR:オッズ比

概要

  • 多施設共同無作為化非盲検第3相比較臨床試験.
  • 対象:造血幹細胞移植後のステロイド抵抗性のGradeⅡ~Ⅳの急性GVHD患者309例. 日本人30例を含む.
  • 選択基準概要:12歳以上、 生着が確認された患者 (好中球数≧1,000/mm³、 血小板数≧20,000/mm³).
  • RUXの有効性及び安全性についてBATを対照として比較・検討.
  • RUX群:Ruxolitinibを1回10mg、 1日2回.
  • BAT群:現時点での最善治療.
  • 主要評価項目:Day 28時点の奏効率. 
  • 副次評価項目:Day 56まで持続した奏効率など.

【BAT群からRUX投与へのクロスオーバー許容条件】

①Day 28にCR又はPR未達成. 

②Day 28以降に奏効が消失し、 追加の全身免疫抑制療法を要し、 かつ慢性GVHDの徴候を認めない.

結果

  • Day 28の奏効率:RUX群 62.3% vs  BAT群 39.4% (OR 2.64、 95%CI 1.65-4.22、 p<0.001).
  • Day 28のCR率:RUX群 34.4% vs BAT群 19.4%.
  • Day 28のPR率:RUX群 27.9% vs BAT群 20.0%.
  • Day 56まで持続した奏効率:RUX群 39.6% vs BAT群 21.9% (OR 2.38、 95%CI 1.43-3.94、 p<0.001).
  • Day 56まで持続したCR率:RUX群 26.6% vs BAT群 16.1%.
  • Day 56まで持続したPR率:RUX群 13.0% vs BAT群 5.8%.

REACH3試験²⁾ 

REACH3試験=D2301試験 BAT:best available therapy (現時点での最善治療) CR:完全奏効 PR:部分奏効 OR:オッズ比 HR:ハザード比

概要

  • 多施設共同無作為化非盲検第3相比較臨床試験.
  • 対象: 造血幹細胞移植後の慢性GVHD患者329例. 日本人37例を含む.
  • 選択基準概要:12歳以上、 好中球数>1,000/mm³、 血小板数>2.5万/mm³、 12ヵ月未満の慢性GVHDに対するグルココルチコイド使用、 グルココルチコイド抵抗性又は依存性の慢性GVHD、 
グルココルチコイド抵抗性又は依存性の定義:①最低PSL 1mg/kg/日を1週間以上使用し非奏効又は病勢増悪、 ②PSL0.5mg/kg/日又は1mg/kg/隔日を4週間以上使用にも関わらず改善なし、 ③2回のPSL中止検討後にPSL>0.25mg/kg/日へ増量.  
  •  RUXの有効性及び安全性についてBATを対照として比較・検討.
  • 主要評価項目: Cycle 7 Day1 (C7D1、 1サイクル28日間)の奏効率.
  • 副次評価項目:治療成功生存期間など.

【BAT群からRUX投与へのクロスオーバー許容条件 (C7D1以降)】

  • 病勢進行、 mixed又はunchanged response、 BATによる許容できない毒性、 慢性GVHD再燃.
Mixed response:少なくとも1臓器のPR以上と増悪した臓器がある場合 Unchanged response:CR、 PR、 Progression、 Mixed responseのいずれにも入らない場合.

結果

  • C7D1の奏効率:RUX群 49.7% vs BAT群 25.6% (OR 2.99、 95%CI 1.86-4.80、 p<0.001).
  • C7D1のCR率:RUX群 6.7% vs BAT群 3.0%.
  • C7D1のPR率:RUX群 43.0% vs BAT群 22.6%.
  • 治療成功生存期間:RUX群 >18.6ヵ月 vs BAT群 5.7ヵ月 (HR 0.37、 95%CI 0.27-0.51、 p<0.001).

参考文献

  1. N Engl J Med. 2020 May 7;382(19):1800-1810.
  2. N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):228-238.

関連コンテンツ

🔢 慢性GVHDの重症度分類

最終更新:2023年9月28日
執筆担当:北里大学病院薬剤部 宮島律子
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン(血液)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。