本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
薬剤情報
ジャカビ® (添付文書 / 適正使用ガイド)
*適正使用ガイドは「ノバルティス ファーマ株式会社」 の外部サイトへ遷移します.
主な有害事象
REACH2試験¹⁾より引用
骨髄抑制
- 血小板減少症 (33%、 ≧Grade3 27%)
- 貧血 (30%、 ≧Grade3 22%)
- 好中球数減少 (16%、 ≧Grade3 13%)
主な有害事象
- サイトメガロウイルス感染症 (26%、 ≧Grade3 7%)
- 末梢浮腫 (18%、 ≧Grade3 1%)
- 高カリウム血症 (13%、 ≧Grade3 6%)
- 高血圧 (11%、 ≧Grade3 6%)
- 低アルブミン血症 (11%、 ≧Grade3 4%)
- 発熱 (11%、 ≧Grade3 1%)
- 低マグネシウム血症 (10%、 ≧Grade3 0%)
その他重要な有害事象
- 敗血症 (7%、 ≧Grade3 7%)
- EBウイルス感染 (6%、 ≧Grade3 0%)
特徴と注意点
- JAK1及びJAK2を阻害することによりJAK-STAT経路のシグナル伝達を抑制し、 腫瘍細胞の増殖を抑制するとともに臨床症状を改善する.
- 結核の既感染者への投与は結核を活動化させる可能性がある.
- B型肝炎ウイルスキャリアの患者又はHBs抗原陰性かつHBc抗体もしくはHBs抗体陽性の患者への投与はB型肝炎ウイルスの再活性化による肝炎が現れる可能性がある.
- CYP3A4関連の相互作用に注意.
- 肝障害患者および腎障害患者では減量を考慮.
- 治療効果が認められた場合は漸減する. 漸減はステロイドの投与中止後に2ヶ月ごとに1段階を目安とし、 副作用により減量する場合の1段階減量と同じ減量幅とする.
減量・休薬基準
【1段階減量】
- 1回10mgを1日2回投与している場合は、 1回5mgを1日2回に減量する.
- 1回5mgを1日2回で投与している場合は、 1回5mgを1日1回に減量する.
- 1回5mgを1日1回で投与している場合は休薬する.
関連する臨床試験の結果
REACH2試験=C2301試験 BAT:Best available therapy (現時点での最善治療) CR:完全奏効 PR:部分奏効 OR:オッズ比
概要
- 多施設共同無作為化非盲検第3相比較臨床試験.
- 対象:造血幹細胞移植後のステロイド抵抗性のGradeⅡ~Ⅳの急性GVHD患者309例. 日本人30例を含む.
- 選択基準概要:12歳以上、 生着が確認された患者 (好中球数≧1,000/mm³、 血小板数≧20,000/mm³).
- RUXの有効性及び安全性についてBATを対照として比較・検討.
- RUX群:Ruxolitinibを1回10mg、 1日2回.
- BAT群:現時点での最善治療.
- 主要評価項目:Day 28時点の奏効率.
- 副次評価項目:Day 56まで持続した奏効率など.
【BAT群からRUX投与へのクロスオーバー許容条件】
①Day 28にCR又はPR未達成.
②Day 28以降に奏効が消失し、 追加の全身免疫抑制療法を要し、 かつ慢性GVHDの徴候を認めない.
結果
- Day 28の奏効率:RUX群 62.3% vs BAT群 39.4% (OR 2.64、 95%CI 1.65-4.22、 p<0.001).
- Day 28のCR率:RUX群 34.4% vs BAT群 19.4%.
- Day 28のPR率:RUX群 27.9% vs BAT群 20.0%.
- Day 56まで持続した奏効率:RUX群 39.6% vs BAT群 21.9% (OR 2.38、 95%CI 1.43-3.94、 p<0.001).
- Day 56まで持続したCR率:RUX群 26.6% vs BAT群 16.1%.
- Day 56まで持続したPR率:RUX群 13.0% vs BAT群 5.8%.
REACH3試験=D2301試験 BAT:best available therapy (現時点での最善治療) CR:完全奏効 PR:部分奏効 OR:オッズ比 HR:ハザード比
概要
- 多施設共同無作為化非盲検第3相比較臨床試験.
- 対象: 造血幹細胞移植後の慢性GVHD患者329例. 日本人37例を含む.
- 選択基準概要:12歳以上、 好中球数>1,000/mm³、 血小板数>2.5万/mm³、 12ヵ月未満の慢性GVHDに対するグルココルチコイド使用、 グルココルチコイド抵抗性又は依存性の慢性GVHD、
グルココルチコイド抵抗性又は依存性の定義:①最低PSL 1mg/kg/日を1週間以上使用し非奏効又は病勢増悪、 ②PSL0.5mg/kg/日又は1mg/kg/隔日を4週間以上使用にも関わらず改善なし、 ③2回のPSL中止検討後にPSL>0.25mg/kg/日へ増量.
- RUXの有効性及び安全性についてBATを対照として比較・検討.
- 主要評価項目: Cycle 7 Day1 (C7D1、 1サイクル28日間)の奏効率.
- 副次評価項目:治療成功生存期間など.
【BAT群からRUX投与へのクロスオーバー許容条件 (C7D1以降)】
- 病勢進行、 mixed又はunchanged response、 BATによる許容できない毒性、 慢性GVHD再燃.
Mixed response:少なくとも1臓器のPR以上と増悪した臓器がある場合 Unchanged response:CR、 PR、 Progression、 Mixed responseのいずれにも入らない場合.
結果
- C7D1の奏効率:RUX群 49.7% vs BAT群 25.6% (OR 2.99、 95%CI 1.86-4.80、 p<0.001).
- C7D1のCR率:RUX群 6.7% vs BAT群 3.0%.
- C7D1のPR率:RUX群 43.0% vs BAT群 22.6%.
- 治療成功生存期間:RUX群 >18.6ヵ月 vs BAT群 5.7ヵ月 (HR 0.37、 95%CI 0.27-0.51、 p<0.001).
参考文献
- N Engl J Med. 2020 May 7;382(19):1800-1810.
- N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):228-238.
関連コンテンツ
🔢 慢性GVHDの重症度分類
最終更新:2023年9月28日
執筆担当:北里大学病院薬剤部 宮島律子
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔