乳房外パジェット病 (extramammary Paget’s disease: EMPD) は、 主に外陰部・肛門周囲に発症する皮膚アポクリン腺由来の悪性腫瘍である。 白人における罹患率は人口10万人当たり0.13人/年とされているが、 アジア圏ではやや多く0.28人/年と報告されている¹⁾。 一般的に皮膚悪性腫瘍の罹患率は白人において高いが、 本疾患は逆にアジア人で多い傾向がある。
本邦においては、 全国がん登録データに基づく疫学調査が実施されており、 EMPDは年間約1,050例発生し、 そのうち75%程度が転移能を有する浸潤癌であると報告されている²⁾。 男女比は3:2で男性に多く、 40代以降で発生数が増加し、 発生年齢の中央値は75.6歳とされる²⁾。
EMPDは、 原発性と二次性に分類される。
原発性EMPD : 95%以上が外陰部 (肛囲を含む) に発生し、 稀に腋窩や体幹にも生じる
二次性EMPD : 直腸・肛門管由来の腺癌、 膀胱癌、 婦人科系癌が外陰部皮膚へ進展する病態で、 他癌種が皮膚側へ表皮内伸展した状態を指す
病理組織学的分類は以下のとおり³⁾。
- 散在型
- 基底または基底直上部型
- 胞巣形成型
- 増殖型
- 混合型
- 蕾形成型
これらの増殖様式による標準治療の違いはなく、 予後にも大きな影響を与えないとされる。
EMPDの浸潤様式は、 以下の2つに分類される⁴⁾。
Microinvasion : 真皮上層 (乳頭層) に散在性かつ個別性に浸潤
Deep invasion : 真皮深層 (網状層) まで広範囲に浸潤
2024年現在、 AJCCおよびUICCの第8版には含まれていない。 これは欧米での患者発生数が少ないことが一因と考えられる。
一方、 本邦では、 2016年に浸潤性EMPD301例の予後解析を基にTNM分類⁵⁾が提唱されている。
進行期EMPDに対して、 これまで保険適用のある薬剤は存在しなかったが、 臨床現場ではドセタキセルが比較的多く使用されてきた。
2024年2月より、 ニボルマブがEMPDを含む上皮系皮膚悪性腫瘍に対して保険適用となった。 承認の根拠となったNMSC-PD1試験ではEMPD症例4例中、 1例で奏効が確認された。
現在、 1次治療としてドセタキセルを選択する施設とニボルマブを選択する施設が混在しており、 いずれを1次治療として優先すべきかについては確立したコンセンサスがない。
1) 藤澤康弘,大塚藤男 : 皮膚悪性腫瘍―基礎と臨床の最新研究動向 悪性黒色腫 皮膚悪性腫瘍の疫学調査―日本と外国の国際比較―,日本臨牀,2013; 71: 7―12.
2) Ogata D, Namikawa K, Nakano E et al. Epidemiology of skin cancer based on Japan's National Cancer Registry 2016-2017. Cancer Sci. 2023 Jul;114(7):2986-2992.
3) 森 俊二 : 乳房外Paget病の研究,日皮会誌,1965; 75: 21―46.
4) Hatta N, Yamada M, Hirano T et al. Extramammary Paget's disease: treatment, prognostic factors and outcome in 76 patients. Br J Dermatol. 2008 Feb;158(2):313-8.
5) 皮膚がん診療ガイドライン第 4 版 乳房外パジェット病診療ガイドライン 2025
最終更新日 : 2025年3月20日
監修医師 : 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科 緒方大先生
乳房外パジェット病 (extramammary Paget’s disease: EMPD) は、 主に外陰部・肛門周囲に発症する皮膚アポクリン腺由来の悪性腫瘍である。 白人における罹患率は人口10万人当たり0.13人/年とされているが、 アジア圏ではやや多く0.28人/年と報告されている¹⁾。 一般的に皮膚悪性腫瘍の罹患率は白人において高いが、 本疾患は逆にアジア人で多い傾向がある。
本邦においては、 全国がん登録データに基づく疫学調査が実施されており、 EMPDは年間約1,050例発生し、 そのうち75%程度が転移能を有する浸潤癌であると報告されている²⁾。 男女比は3:2で男性に多く、 40代以降で発生数が増加し、 発生年齢の中央値は75.6歳とされる²⁾。
EMPDは、 原発性と二次性に分類される。
原発性EMPD : 95%以上が外陰部 (肛囲を含む) に発生し、 稀に腋窩や体幹にも生じる
二次性EMPD : 直腸・肛門管由来の腺癌、 膀胱癌、 婦人科系癌が外陰部皮膚へ進展する病態で、 他癌種が皮膚側へ表皮内伸展した状態を指す
病理組織学的分類は以下のとおり³⁾。
- 散在型
- 基底または基底直上部型
- 胞巣形成型
- 増殖型
- 混合型
- 蕾形成型
これらの増殖様式による標準治療の違いはなく、 予後にも大きな影響を与えないとされる。
EMPDの浸潤様式は、 以下の2つに分類される⁴⁾。
Microinvasion : 真皮上層 (乳頭層) に散在性かつ個別性に浸潤
Deep invasion : 真皮深層 (網状層) まで広範囲に浸潤
2024年現在、 AJCCおよびUICCの第8版には含まれていない。 これは欧米での患者発生数が少ないことが一因と考えられる。
一方、 本邦では、 2016年に浸潤性EMPD301例の予後解析を基にTNM分類⁵⁾が提唱されている。
進行期EMPDに対して、 これまで保険適用のある薬剤は存在しなかったが、 臨床現場ではドセタキセルが比較的多く使用されてきた。
2024年2月より、 ニボルマブがEMPDを含む上皮系皮膚悪性腫瘍に対して保険適用となった。 承認の根拠となったNMSC-PD1試験ではEMPD症例4例中、 1例で奏効が確認された。
現在、 1次治療としてドセタキセルを選択する施設とニボルマブを選択する施設が混在しており、 いずれを1次治療として優先すべきかについては確立したコンセンサスがない。
1) 藤澤康弘,大塚藤男 : 皮膚悪性腫瘍―基礎と臨床の最新研究動向 悪性黒色腫 皮膚悪性腫瘍の疫学調査―日本と外国の国際比較―,日本臨牀,2013; 71: 7―12.
2) Ogata D, Namikawa K, Nakano E et al. Epidemiology of skin cancer based on Japan's National Cancer Registry 2016-2017. Cancer Sci. 2023 Jul;114(7):2986-2992.
3) 森 俊二 : 乳房外Paget病の研究,日皮会誌,1965; 75: 21―46.
4) Hatta N, Yamada M, Hirano T et al. Extramammary Paget's disease: treatment, prognostic factors and outcome in 76 patients. Br J Dermatol. 2008 Feb;158(2):313-8.
5) 皮膚がん診療ガイドライン第 4 版 乳房外パジェット病診療ガイドライン 2025
最終更新日 : 2025年3月20日
監修医師 : 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科 緒方大先生
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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