概要
監修医師
2026年3月23日に添付文書が改訂され、 HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌の2次治療に使用可能となった。
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

エンハーツ® (トラスツズマブ デルクステカン)

添付文書¹⁾ / 適正使用情報²⁾*

*第一三共株式会社の外部サイトへ遷移します

投与スケジュール

【1コース】21日間
【催吐性*】中等度 (日本)、 高度 (NCCN GL) 
【FN発症**】低リスク
*本邦の制吐薬適正使用ガイドラインと、 NCCNガイドライン 「Antiemesis」 における分類は異なる点に留意が必要
**DESTINY-Gastric04試験のFN発生率2.9%²⁾より編集部が分類

トラスツズマブ デルクステカン (T-DXd) : 6.4mg/kgを3週間ごとにDay 1に90分かけて点滴静注する。 初回投与の忍容性が良好であれば、 2回目以降は30分まで短縮可。

投与開始前に胸部CT検査と問診を行い、 間質性肺疾患の合併または既往がないことを確認したうえで、 投与可否を慎重に判断する。 
エンハーツ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作成

Key Data|臨床試験結果

📊 DESTINY-Gastric04試験

N Engl J Med. 2025;393(4):336-48.

トラスツズマブを含む1次治療中または治療後に増悪したHER2陽性の切除不能または転移性胃腺癌・食道胃接合部腺癌患者を対象とした国際共同第III相無作為化非盲検比較試験。 T-DXd群246例とラムシルマブ+パクリタキセル (RAM+PTX) 群248例に1:1で割り付け、 主要評価項目はOSとした。

【有効性】T-DXd群 (vs RAM+PTX群)

- OS中央値 14.7ヵ月 (vs 11.4ヵ月)

  • HR 0.70 (95%CI 0.55–0.90、 p=0.004)

- PFS中央値 6.7ヵ月 (vs 5.6ヵ月)

  • HR 0.74 (95%CI 0.59–0.92、 p=0.007)

- ORR 44.3% (vs 29.1%、 p<0.001)

- 病勢コントロール率 91.9% (vs 75.9%)

- 奏効持続期間中央値 7.4ヵ月 (vs 5.3ヵ月)

【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)

- 疲労 48.0% (7.0%)

- 好中球減少 48.0% (28.7%)

- 悪心 44.3% (4.9%)

- 貧血 31.1% (13.9%)

- 食欲減退 29.1% (2.0%)

- 白血球減少 26.6% (7.4%)

- 血小板減少 26.6% (8.6%)

- 下痢 25.8% (1.2%)

- 脱毛症 24.2% (0%)

- トランスアミナーゼ上昇 21.7% (2.0%)

- 嘔吐 20.1% (2.9%)

- 間質性肺疾患 13.9% (0.4%)

- 体重減少 11.1% (1.2%)

- 便秘 10.7% (0%)

- リンパ球減少 10.2% (2.0%)

- 口内炎 4.9% (0.4%)

各プロトコル

適格基準

DESTINY-Gastric04試験³⁾の主な適格基準

- ECOG PS 0–1

- 好中球数≧1,500/μL

- 血小板数≧10万/μL

- Hb≧8.0g/dL

- 腎機能 : CrCl≧30mL/min

- 肝機能 : AST/ALT≦5×ULN、 T-Bil≦1.5×ULN

- LVEF≧50%

- トラスツズマブ含有レジメンでの増悪後に実施した腫瘍生検でHER2陽性 (IHC 3+又はIHC 2+/ISH陽性) が確認されていること

用量レベル

エンハーツ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作成

腎障害患者に対する用量調整

軽度腎機能障害 (CrCl 60~90mL/min) 又は中等度腎機能障害 (CrCl 30~60mL/min) では、 用量調節は不要。 重度腎機能障害 (CrCl<30mL/min) における推奨用量は確立していない。

ENHERTU® (fam-trastuzumab deruxtecan-nxki) US Prescribing Information (2025)

有害事象発現時の減量・休薬・中止基準

エンハーツ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作成

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️2次治療におけるT-DXdは、 DESTINY-Gastric04試験の結果を受けて承認された。 PTX+RAMとの比較において、 主要評価項目であるOSおよび副次評価項目であるPFSで、 T-DXd群に有意な延長が認められた。 HER2陽性胃癌に対する2次治療で推奨されるレジメンとして、 日本胃癌学会からも速報が出されている。 一方、 本試験では治療開始前にHER2陽性が再確認されていたことから、 2次治療前のHER2 statusの再確認が推奨される。 HER2陽性胃癌では、 抗HER2療法後にHER2発現が低下し、 陽性から陰性へ転じることが報告されている。 HER2療法後の陽性率は概ね3~7割程度とされており、 注意が必要である。 評価不能または陰性である場合には、 従来のPTX+RAM療法を2次治療として行い、 その後にT-DXdを3次治療として従来どおり使用することも検討される。 有害事象では、 やはり間質性肺炎の出現に注意が必要である。 患者の臨床所見を注意深く観察し、 呼吸器症状などが疑われた場合には画像検査を躊躇なく行い、 重症化する前に対応することが重要である。
国立がん研究センター中央病院 消化管内科 廣瀬俊晴先生

作用機序の特徴

T-DXdは、 HER2に対するヒト化モノクローナル抗体と、 トポイソメラーゼⅠ阻害作用を有するカンプトテシン誘導体をリンカーで結合させた抗体薬物複合体である。 腫瘍細胞膜上のHER2に結合し、 細胞内に取り込まれた後リンカーが加水分解され、 遊離したカンプトテシン誘導体がDNA傷害作用とアポトーシス誘導作用を示すことで腫瘍増殖を抑制すると考えられている。

レジメン適用時の注意事項

エンハーツ®電子添文¹⁾ 「重要な基本的注意」 の要約

間質性肺疾患 : 投与開始前および投与中は呼吸状態・咳・発熱などの臨床症状を観察し、 SpO₂、 胸部X線、 CTを定期的に実施。 必要に応じてKL-6、 PaO₂、 A-aDO₂、 DLcoなども評価。 CT画像などの読影は呼吸器疾患に精通した医師の助言を得る。 患者には初期症状出現時の速やかな受診を指導する。

骨髄抑制 : 投与開始前及び投与中は定期的に血液検査を実施し状態を観察する。

心毒性 : LVEF低下の可能性があるため、 投与開始前に心機能を確認。 投与中は心症状や重症度に応じて心エコー等を適宜実施し、 LVEF変動を含めた状態を観察のうえ、 休薬・再開・中止を判断する。

臨床試験では、 スクリーニング時に加え、 4サイクルごとの投与開始前に12誘導心電図検査及び心エコー検査が規定された²⁾。 

RMP【重要な特定されたリスク】

エンハーツ®RMP : 医薬品リスク管理計画書

- 間質性肺疾患

- 骨髄抑制

- Infusion reaction

出典

1) 第一三共株式会社. エンハーツ®点滴静注用100mg 電子添文. 2026年3月改訂 第13版.

2) 第一三共株式会社. エンハーツ®点滴静注用100mg 適正使用ガイド. 2026年3月改定.

3) N Engl J Med. 2025;393(4):336-48.

最終更新 : 2026年4月8日
執筆 : HOKUTO編集部 がん専門・指導薬剤師
執筆協力 : 国立がん研究センター中央病院 消化管内科 廣瀬俊晴
監修 : 国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科 加藤健

レジメン
T-DXd (Trastuzumab deruxtecan)
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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監修・協力医一覧
レジメン
T-DXd (Trastuzumab deruxtecan)
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T-DXd (Trastuzumab deruxtecan)

T-DXd (Trastuzumab deruxtecan)

トラスツズマブ デルクステカン (エンハーツ®︎)
胃癌 > 二次治療 / 三次治療以降
2026年04月14日更新
2026年3月23日に添付文書が改訂され、 HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発胃癌の2次治療に使用可能となった。
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

エンハーツ® (トラスツズマブ デルクステカン)

添付文書¹⁾ / 適正使用情報²⁾*

*第一三共株式会社の外部サイトへ遷移します

投与スケジュール

【1コース】21日間
【催吐性*】中等度 (日本)、 高度 (NCCN GL) 
【FN発症**】低リスク
*本邦の制吐薬適正使用ガイドラインと、 NCCNガイドライン 「Antiemesis」 における分類は異なる点に留意が必要
**DESTINY-Gastric04試験のFN発生率2.9%²⁾より編集部が分類

トラスツズマブ デルクステカン (T-DXd) : 6.4mg/kgを3週間ごとにDay 1に90分かけて点滴静注する。 初回投与の忍容性が良好であれば、 2回目以降は30分まで短縮可。

投与開始前に胸部CT検査と問診を行い、 間質性肺疾患の合併または既往がないことを確認したうえで、 投与可否を慎重に判断する。 
エンハーツ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作成

Key Data|臨床試験結果

📊 DESTINY-Gastric04試験

N Engl J Med. 2025;393(4):336-48.

トラスツズマブを含む1次治療中または治療後に増悪したHER2陽性の切除不能または転移性胃腺癌・食道胃接合部腺癌患者を対象とした国際共同第III相無作為化非盲検比較試験。 T-DXd群246例とラムシルマブ+パクリタキセル (RAM+PTX) 群248例に1:1で割り付け、 主要評価項目はOSとした。

【有効性】T-DXd群 (vs RAM+PTX群)

- OS中央値 14.7ヵ月 (vs 11.4ヵ月)

  • HR 0.70 (95%CI 0.55–0.90、 p=0.004)

- PFS中央値 6.7ヵ月 (vs 5.6ヵ月)

  • HR 0.74 (95%CI 0.59–0.92、 p=0.007)

- ORR 44.3% (vs 29.1%、 p<0.001)

- 病勢コントロール率 91.9% (vs 75.9%)

- 奏効持続期間中央値 7.4ヵ月 (vs 5.3ヵ月)

【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)

- 疲労 48.0% (7.0%)

- 好中球減少 48.0% (28.7%)

- 悪心 44.3% (4.9%)

- 貧血 31.1% (13.9%)

- 食欲減退 29.1% (2.0%)

- 白血球減少 26.6% (7.4%)

- 血小板減少 26.6% (8.6%)

- 下痢 25.8% (1.2%)

- 脱毛症 24.2% (0%)

- トランスアミナーゼ上昇 21.7% (2.0%)

- 嘔吐 20.1% (2.9%)

- 間質性肺疾患 13.9% (0.4%)

- 体重減少 11.1% (1.2%)

- 便秘 10.7% (0%)

- リンパ球減少 10.2% (2.0%)

- 口内炎 4.9% (0.4%)

各プロトコル

適格基準

DESTINY-Gastric04試験³⁾の主な適格基準

- ECOG PS 0–1

- 好中球数≧1,500/μL

- 血小板数≧10万/μL

- Hb≧8.0g/dL

- 腎機能 : CrCl≧30mL/min

- 肝機能 : AST/ALT≦5×ULN、 T-Bil≦1.5×ULN

- LVEF≧50%

- トラスツズマブ含有レジメンでの増悪後に実施した腫瘍生検でHER2陽性 (IHC 3+又はIHC 2+/ISH陽性) が確認されていること

用量レベル

エンハーツ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作成

腎障害患者に対する用量調整

軽度腎機能障害 (CrCl 60~90mL/min) 又は中等度腎機能障害 (CrCl 30~60mL/min) では、 用量調節は不要。 重度腎機能障害 (CrCl<30mL/min) における推奨用量は確立していない。

ENHERTU® (fam-trastuzumab deruxtecan-nxki) US Prescribing Information (2025)

有害事象発現時の減量・休薬・中止基準

エンハーツ®電子添文情報¹⁾を基に編集部作成

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️2次治療におけるT-DXdは、 DESTINY-Gastric04試験の結果を受けて承認された。 PTX+RAMとの比較において、 主要評価項目であるOSおよび副次評価項目であるPFSで、 T-DXd群に有意な延長が認められた。 HER2陽性胃癌に対する2次治療で推奨されるレジメンとして、 日本胃癌学会からも速報が出されている。 一方、 本試験では治療開始前にHER2陽性が再確認されていたことから、 2次治療前のHER2 statusの再確認が推奨される。 HER2陽性胃癌では、 抗HER2療法後にHER2発現が低下し、 陽性から陰性へ転じることが報告されている。 HER2療法後の陽性率は概ね3~7割程度とされており、 注意が必要である。 評価不能または陰性である場合には、 従来のPTX+RAM療法を2次治療として行い、 その後にT-DXdを3次治療として従来どおり使用することも検討される。 有害事象では、 やはり間質性肺炎の出現に注意が必要である。 患者の臨床所見を注意深く観察し、 呼吸器症状などが疑われた場合には画像検査を躊躇なく行い、 重症化する前に対応することが重要である。
国立がん研究センター中央病院 消化管内科 廣瀬俊晴先生

作用機序の特徴

T-DXdは、 HER2に対するヒト化モノクローナル抗体と、 トポイソメラーゼⅠ阻害作用を有するカンプトテシン誘導体をリンカーで結合させた抗体薬物複合体である。 腫瘍細胞膜上のHER2に結合し、 細胞内に取り込まれた後リンカーが加水分解され、 遊離したカンプトテシン誘導体がDNA傷害作用とアポトーシス誘導作用を示すことで腫瘍増殖を抑制すると考えられている。

レジメン適用時の注意事項

エンハーツ®電子添文¹⁾ 「重要な基本的注意」 の要約

間質性肺疾患 : 投与開始前および投与中は呼吸状態・咳・発熱などの臨床症状を観察し、 SpO₂、 胸部X線、 CTを定期的に実施。 必要に応じてKL-6、 PaO₂、 A-aDO₂、 DLcoなども評価。 CT画像などの読影は呼吸器疾患に精通した医師の助言を得る。 患者には初期症状出現時の速やかな受診を指導する。

骨髄抑制 : 投与開始前及び投与中は定期的に血液検査を実施し状態を観察する。

心毒性 : LVEF低下の可能性があるため、 投与開始前に心機能を確認。 投与中は心症状や重症度に応じて心エコー等を適宜実施し、 LVEF変動を含めた状態を観察のうえ、 休薬・再開・中止を判断する。

臨床試験では、 スクリーニング時に加え、 4サイクルごとの投与開始前に12誘導心電図検査及び心エコー検査が規定された²⁾。 

RMP【重要な特定されたリスク】

エンハーツ®RMP : 医薬品リスク管理計画書

- 間質性肺疾患

- 骨髄抑制

- Infusion reaction

出典

1) 第一三共株式会社. エンハーツ®点滴静注用100mg 電子添文. 2026年3月改訂 第13版.

2) 第一三共株式会社. エンハーツ®点滴静注用100mg 適正使用ガイド. 2026年3月改定.

3) N Engl J Med. 2025;393(4):336-48.

最終更新 : 2026年4月8日
執筆 : HOKUTO編集部 がん専門・指導薬剤師
執筆協力 : 国立がん研究センター中央病院 消化管内科 廣瀬俊晴
監修 : 国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科 加藤健

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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監修・協力医一覧
レジメン(消化器)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。