治療スケジュール
概要
監修医師

CDDP:シスプラチン(ランダ®)

投与量コース投与日
65mg/m² 肝動注1~Day1

その他

1コース4~6週間。
レジメン
CDDP肝動注
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

ランダ® (添付文書)

用法用量

投与開始基準

Hepatol Res. 2008 May;38(5):474-83.¹⁾より抜粋

20~74歳のコンピュータ断層撮影 (CT) などの画像診断により組織学的または臨床的に確認された切除不能肝細胞癌

主な有害事象

第Ⅱ相試験¹⁾

有害事象データを一部引用 (カッコ内はGrade3~4)

主な有害事象

  • 白血球数減少 76.8% (1.3%)
  • 好中球数減少 76.6% (13.0%)
  • 貧血 46.3% (1.3%)
  • 血小板数減少 76.3% (25.0%)
  • 嘔吐 40.0% (6.3%)
  • 発熱 31.3% (0%)
  • 倦怠感 33.8% (0%)
  • Tbil上昇 41.3% (3.8%)
  • AST上昇 62.5% (32.5%)
  • ALT上昇 48.8% (11.3%)

注意すべき有害事象

  • 蛋白尿 25.3% (0%)

主な治療中止理由

Liver Cancer. 2020 国内多施設研究²⁾

治療中止理由データを一部引用

主な有害事象

  • 肝不全 4.7%
  • 一般的な障害 0.7% 

上手に使うためのワンポイント

  • 殺細胞性抗がん剤であるためグレード3以上の副作用として、 食欲不振 22.5%、 嘔吐 6.3%、 腹痛 1.3%、 血小板減少症 25%、 好中球減少症 13%、 白血球減少症 1.3%、 色素欠乏症 1.3%、 肝障害32.5%、 血清クレアチニン上昇2.5% が報告されている¹⁾。 またカテーテル関連の有害事象も報告されている。
  • 一方肝臓局所での薬剤濃度を高める方法であるため他の全身薬物療法に比較して全身的な副作用は比較的少ない。 4〜6週ごとにカテーテルを用いて肝動脈からワンショットで薬剤を注入する方法であるためangioが可能な施設であればリザーバー留置のテクニックがなくとも施行可能である。 ガイドライン上はChild-Pugh Bでも治療適応となる。 ただしこのレジメンのエビデンスレベルは他の治療法と比して高くないことに注意が必要である。

特徴と注意点

  • 肝動注は肝がん診療ガイドラインにおいてChild-Pugh A、 Bで肝外転移や脈管侵襲がなく腫瘍数が4個以上の症例で薬物療法と並んで第2選択と記されている。
  • 肝動注のレジメンは様々でレジメン同士をランダム化した比較はない。 その中でCDDP肝動注は留置リザーバーシステムを使用せずに簡便に投与できるため比較的汎用されており保健収載もされている。
  • 全身薬物療法とのランダム化比較試験も存在しないが傾向スコアマッチングを用いたソラフェニブとの比較試験²⁾では肝外転移 (EHM) がなく大血管浸潤 (MVI) のあるものでは肝動注のOSがよく、 EHMもMVIもないものではOSが同等であったとされている。 ただしこの研究では本レジメンとは異なる動注レジメンも含まれており注意が必要である。
  • 肝がん診療ガイドラインにおいて薬物療法はChild-Pugh Aのみであるため局所療法が不能なChild-Pugh B症例では実質的に肝動注は唯一の治療選択肢である。

関連する臨床試験①|第Ⅱ相試験¹⁾

肝外転移のない切除不能な肝細胞癌患者において、 シスプラチンの肝動脈注入の効果を検証した単群コホートの第Ⅱ相試験の結果より、 高い奏効率が示された。

>>臨床試験の詳細を見る

奏効率

33.8%

(95%CI 23.6-45.2%)
CR 0例、 PR 27例、 NC 37例、 PD 11例

単変量解析および多変量解析

年齢、 Child分類、 血管浸潤の有無 (門脈および肝静脈) 、 抗癌剤治療歴の有無、 投与経路を調べ、 血管浸潤のみが治療効果に影響する唯一の優位な因子であった (オッズ比 0.224) 。

奏効期間 (中央値)

36日

(範囲:28-142日)

関連する臨床試験②|Liver Cancer. 2020 国内多施設研究¹⁾

肝動注化学療法 (HAIC) またはソラフェニブ治療を受けた進行肝細胞癌患者の転帰を、 レトロスペクティブに検討した試験の結果より、 大血管浸潤 (MVI) を認め、 肝外転移 (EHM) を認めない集団において有望性が示された。

>>臨床試験の詳細を見る

OS中央値

コホート1

  • HAIC群:10.6ヵ月
(95%CI 9.1-14.3ヵ月)
  • ソラフェニブ群:9.1ヵ月
(95%CI 6.8-12.0ヵ月)
HR 0.667 (95%CI 0.475-0.935)、 p=0.018

コホート2

  • HAIC群:12.2ヵ月
(95%CI 9.9-16.5ヵ月)
  • ソラフェニブ群:15.4ヵ月
(95%CI 9.7-19.1ヵ月)
HR 1.227 (95%CI 0.699-2.155)、 p=0.475

コホート3

  • HAIC群:6.5ヵ月
(95%CI 4.7-9.5ヵ月)
  • ソラフェニブ群:5.3ヵ月
(95%CI 3.7-5.8ヵ月)
HR 0.500 (95%CI 0.250-1.000)、 p=0.046

コホート4

  • HAIC群:6.3ヵ月
(95%CI 1.7-10.9ヵ月)
  • ソラフェニブ群:9.0ヵ月
(95%CI 4.2-11.8ヵ月)
HR 1.125 (95%CI 0.434-2.915)、 p=0.808

レジメンによる比較

多変量解析により、 HAICのレジメン内容はOSに影響を及ぼさないことが確認された。

  • 5FU+CDDP:10.5ヵ月
(95%CI 9.2-12.3ヵ月)
  • 5FU+インターフェロン:12.0ヵ月
(95%CI 9.0-14.6ヵ月)
  • CDDP単独:7.8ヵ月
(95%CI 6.3-12.1ヵ月)

TTF中央値

コホート1

  • HAIC群:2.8ヵ月
(95%CI 2.4-3.0ヵ月)
  • ソラフェニブ群:2.5ヵ月
(95%CI 1.8-2.9ヵ月)
HR 0.957 (95%CI 0.772-1.185)、 p=0.683

コホート2

  • HAIC群:2.7ヵ月
(95%CI 2.2-3.6ヵ月)
  • ソラフェニブ群:4.9ヵ月
(95%CI 3.0-6.8ヵ月)
HR 1.563 (95%CI 1.126-2.165)、 p=0.007

コホート3

  • HAIC群:2.6ヵ月
(95%CI 1.3-3.2ヵ月)
  • ソラフェニブ群:2.0ヵ月
(95%CI 1.3-3.5ヵ月)
HR 0.820 (95%CI 0.527-1.275)、 p=0.374

コホート4

  • HAIC群:2.3ヵ月
(95%CI 0.9-2.7ヵ月)
  • ソラフェニブ群:2.3ヵ月
(95%CI 1.1-3.9ヵ月)
HR 1.094 (95%CI 0.566-2.114)、 p=0.789

出典

  1. Phase II study of hepatic arterial infusion of a fine-powder formulation of cisplatin for advanced hepatocellular carcinoma. Hepatol Res. 2008 May;38(5):474-83. PMID: 18430093
  2. Hepatic Arterial Infusion Chemotherapy versus Sorafenib in Patients with Advanced Hepatocellular Carcinoma. Liver Cancer. 2020 Sep;9(5):583-595. PMID: 33083282
最終更新日:2023年11月21日
執筆医:九州がんセンター 消化器・肝胆膵内科部長 杉本理恵 先生
監修医:神奈川県立がんセンター 消化器内科 上野 誠先生

レジメン
CDDP肝動注
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン
CDDP肝動注
レジメン
CDDP肝動注

CDDP肝動注

シスプラチン肝動注
2024年04月24日更新

CDDP:シスプラチン(ランダ®)

投与量コース投与日
65mg/m² 肝動注1~Day1

その他

1コース4~6週間。

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

ランダ® (添付文書)

用法用量

投与開始基準

Hepatol Res. 2008 May;38(5):474-83.¹⁾より抜粋

20~74歳のコンピュータ断層撮影 (CT) などの画像診断により組織学的または臨床的に確認された切除不能肝細胞癌

主な有害事象

第Ⅱ相試験¹⁾

有害事象データを一部引用 (カッコ内はGrade3~4)

主な有害事象

  • 白血球数減少 76.8% (1.3%)
  • 好中球数減少 76.6% (13.0%)
  • 貧血 46.3% (1.3%)
  • 血小板数減少 76.3% (25.0%)
  • 嘔吐 40.0% (6.3%)
  • 発熱 31.3% (0%)
  • 倦怠感 33.8% (0%)
  • Tbil上昇 41.3% (3.8%)
  • AST上昇 62.5% (32.5%)
  • ALT上昇 48.8% (11.3%)

注意すべき有害事象

  • 蛋白尿 25.3% (0%)

主な治療中止理由

Liver Cancer. 2020 国内多施設研究²⁾

治療中止理由データを一部引用

主な有害事象

  • 肝不全 4.7%
  • 一般的な障害 0.7% 

上手に使うためのワンポイント

  • 殺細胞性抗がん剤であるためグレード3以上の副作用として、 食欲不振 22.5%、 嘔吐 6.3%、 腹痛 1.3%、 血小板減少症 25%、 好中球減少症 13%、 白血球減少症 1.3%、 色素欠乏症 1.3%、 肝障害32.5%、 血清クレアチニン上昇2.5% が報告されている¹⁾。 またカテーテル関連の有害事象も報告されている。
  • 一方肝臓局所での薬剤濃度を高める方法であるため他の全身薬物療法に比較して全身的な副作用は比較的少ない。 4〜6週ごとにカテーテルを用いて肝動脈からワンショットで薬剤を注入する方法であるためangioが可能な施設であればリザーバー留置のテクニックがなくとも施行可能である。 ガイドライン上はChild-Pugh Bでも治療適応となる。 ただしこのレジメンのエビデンスレベルは他の治療法と比して高くないことに注意が必要である。

特徴と注意点

  • 肝動注は肝がん診療ガイドラインにおいてChild-Pugh A、 Bで肝外転移や脈管侵襲がなく腫瘍数が4個以上の症例で薬物療法と並んで第2選択と記されている。
  • 肝動注のレジメンは様々でレジメン同士をランダム化した比較はない。 その中でCDDP肝動注は留置リザーバーシステムを使用せずに簡便に投与できるため比較的汎用されており保健収載もされている。
  • 全身薬物療法とのランダム化比較試験も存在しないが傾向スコアマッチングを用いたソラフェニブとの比較試験²⁾では肝外転移 (EHM) がなく大血管浸潤 (MVI) のあるものでは肝動注のOSがよく、 EHMもMVIもないものではOSが同等であったとされている。 ただしこの研究では本レジメンとは異なる動注レジメンも含まれており注意が必要である。
  • 肝がん診療ガイドラインにおいて薬物療法はChild-Pugh Aのみであるため局所療法が不能なChild-Pugh B症例では実質的に肝動注は唯一の治療選択肢である。

関連する臨床試験①|第Ⅱ相試験¹⁾

肝外転移のない切除不能な肝細胞癌患者において、 シスプラチンの肝動脈注入の効果を検証した単群コホートの第Ⅱ相試験の結果より、 高い奏効率が示された。

>>臨床試験の詳細を見る

奏効率

33.8%

(95%CI 23.6-45.2%)
CR 0例、 PR 27例、 NC 37例、 PD 11例

単変量解析および多変量解析

年齢、 Child分類、 血管浸潤の有無 (門脈および肝静脈) 、 抗癌剤治療歴の有無、 投与経路を調べ、 血管浸潤のみが治療効果に影響する唯一の優位な因子であった (オッズ比 0.224) 。

奏効期間 (中央値)

36日

(範囲:28-142日)

関連する臨床試験②|Liver Cancer. 2020 国内多施設研究¹⁾

肝動注化学療法 (HAIC) またはソラフェニブ治療を受けた進行肝細胞癌患者の転帰を、 レトロスペクティブに検討した試験の結果より、 大血管浸潤 (MVI) を認め、 肝外転移 (EHM) を認めない集団において有望性が示された。

>>臨床試験の詳細を見る

OS中央値

コホート1

  • HAIC群:10.6ヵ月
(95%CI 9.1-14.3ヵ月)
  • ソラフェニブ群:9.1ヵ月
(95%CI 6.8-12.0ヵ月)
HR 0.667 (95%CI 0.475-0.935)、 p=0.018

コホート2

  • HAIC群:12.2ヵ月
(95%CI 9.9-16.5ヵ月)
  • ソラフェニブ群:15.4ヵ月
(95%CI 9.7-19.1ヵ月)
HR 1.227 (95%CI 0.699-2.155)、 p=0.475

コホート3

  • HAIC群:6.5ヵ月
(95%CI 4.7-9.5ヵ月)
  • ソラフェニブ群:5.3ヵ月
(95%CI 3.7-5.8ヵ月)
HR 0.500 (95%CI 0.250-1.000)、 p=0.046

コホート4

  • HAIC群:6.3ヵ月
(95%CI 1.7-10.9ヵ月)
  • ソラフェニブ群:9.0ヵ月
(95%CI 4.2-11.8ヵ月)
HR 1.125 (95%CI 0.434-2.915)、 p=0.808

レジメンによる比較

多変量解析により、 HAICのレジメン内容はOSに影響を及ぼさないことが確認された。

  • 5FU+CDDP:10.5ヵ月
(95%CI 9.2-12.3ヵ月)
  • 5FU+インターフェロン:12.0ヵ月
(95%CI 9.0-14.6ヵ月)
  • CDDP単独:7.8ヵ月
(95%CI 6.3-12.1ヵ月)

TTF中央値

コホート1

  • HAIC群:2.8ヵ月
(95%CI 2.4-3.0ヵ月)
  • ソラフェニブ群:2.5ヵ月
(95%CI 1.8-2.9ヵ月)
HR 0.957 (95%CI 0.772-1.185)、 p=0.683

コホート2

  • HAIC群:2.7ヵ月
(95%CI 2.2-3.6ヵ月)
  • ソラフェニブ群:4.9ヵ月
(95%CI 3.0-6.8ヵ月)
HR 1.563 (95%CI 1.126-2.165)、 p=0.007

コホート3

  • HAIC群:2.6ヵ月
(95%CI 1.3-3.2ヵ月)
  • ソラフェニブ群:2.0ヵ月
(95%CI 1.3-3.5ヵ月)
HR 0.820 (95%CI 0.527-1.275)、 p=0.374

コホート4

  • HAIC群:2.3ヵ月
(95%CI 0.9-2.7ヵ月)
  • ソラフェニブ群:2.3ヵ月
(95%CI 1.1-3.9ヵ月)
HR 1.094 (95%CI 0.566-2.114)、 p=0.789

出典

  1. Phase II study of hepatic arterial infusion of a fine-powder formulation of cisplatin for advanced hepatocellular carcinoma. Hepatol Res. 2008 May;38(5):474-83. PMID: 18430093
  2. Hepatic Arterial Infusion Chemotherapy versus Sorafenib in Patients with Advanced Hepatocellular Carcinoma. Liver Cancer. 2020 Sep;9(5):583-595. PMID: 33083282
最終更新日:2023年11月21日
執筆医:九州がんセンター 消化器・肝胆膵内科部長 杉本理恵 先生
監修医:神奈川県立がんセンター 消化器内科 上野 誠先生

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン(消化器)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。