治療スケジュール
概要
監修医師

Pemigatinib:ペミガチニブ(ペマジール®)

投与量コース投与日
13.5mg 経口1~Day 1~

前投薬

なし

その他

1日1回13.5mgを経口投与.
患者の状態により適宜減量する.
胆道癌と用法及び用量が異なるため注意.
レジメン
Pemigatinib
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ペマジール® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

用法用量

主な有害事象

適正使用ガイド*の国際共同第Ⅱ相試験 (INCB 54828-203試験)の結果¹⁾より引用

*「インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

骨髄抑制

  • 記載なし.

主な有害事象 (41例中)

  • 高リン血症 (29例、 70.7%)
  • 脱毛症 (23例、 56.1%)
  • 下痢 (18例、 43.9%)
  • 口内炎 (18例、 43.9%)

その他重要な有害事象

投与中止に至った有害事象 (41例中、 本剤と関連ありと判断された事象のみ)

  • カルシフィラキシス (1例、 2.4%)
  • 血中ALP増加 (1例、 2.4%)

死亡に至った有害事象

  • 本剤と関連ありと判断された事象なし

特徴と注意点

  • 本剤は、 繊維芽細胞増殖因子受容体 (fibroblast growth factor receptor : FGFR) のチロシンキナーゼ活性を阻害する低分子化合物.
  • FGFR融合タンパクなどのリン酸化を阻害し、 下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、 腫瘍増殖抑制作用を示す.
  • FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍」 に保険適用あり.
  • がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌」 にも保険適用あり.
  • 網膜剥離、 高リン血症、 眼障害 (網膜剥離を除く)、 爪障害、 手掌・足底発赤知覚不全症候群、 急性腎障害などの副作用に注意.

FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍³⁾

  • 8p11骨髄増殖症候群 (8p11 myeloproliferative syndrome : EMS) と呼ばれる極めて稀な造血器腫瘍.
  • 8p11-12に位置するFGFR1遺伝子の再配列によって引き起こされる.
  • 染色体の転座や挿入だけでなく、 逆位も報告されている.
  • 17のFGFR1融合遺伝子を産生し、 最も一般的なパートナー遺伝子は13q11-12のZNF198と22q11.2のBCRである.
  • 骨髄系腫瘍とリンパ系腫瘍が同時もしくは異時的に発生する.
  • 初診時には骨髄増殖性腫瘍の病態を呈することが多く、 慢性骨髄性白血病、 急性骨髄性白血病、 Tリンパ芽球性リンパ腫、 T細胞性急性リンパ性白血病の病型として発症することもある.
  • 好酸球増多を伴うことも多い.
  • 一般に化学療法に抵抗性で、 標準治療は確立されていない.
  • 従来より同種造血幹細胞移植、 チロシンキナーゼ阻害薬、 インターフェロンなどで治療されてきた.
  • 近年分子標的薬としてペミガチニブなどが注目されている.

副作用とその対策

<減量用量>

<網膜剥離>

  • 本剤投与により網膜剥離 (網膜色素上皮剥離、 網膜剥離等)が生じることがある.
  • FGFRは網膜で発現し、 網膜色素上皮細胞の機能において、 新生血管形成に寄与し、 正常な網膜色素上皮細胞の維持、 傷害からの保護、 損傷の修復といった重要な役割を果たしている. FGFR阻害により網膜色素上皮の機能が妨害される可能性がある.⁴⁾ ⁵⁾
  • 本剤の投与開始前に、 光干渉断層計 (OCT) を含む包括的な眼科検査を行い、 投与中も定期的に検査を行う.
  • 飛蚊症、 視野欠損、 光視症、 視力低下等が認められた場合、 眼科検査を実施し、 投与を中止するなど適切な処置を行う.

<高リン血症>

本剤投与中は定期的に血清リン濃度を測定し、 血清リン濃度の変動に注意し、 以下のように対処する.

<その他の副作用>

眼障害 (網膜剥離を除く)、 爪障害、 手掌・足底発赤知覚不全症候群、 急性腎障害などの出現に注意し、 以下のように対処する.

関連する臨床試験の結果

国際共同第Ⅱ相試験 (INCB 54828-203試験)

論文未公表であり適正使用ガイド¹⁾の情報を参照し掲載

概要

  • 国際共同前向き非盲検第Ⅱ相試験 (日本を含む8ヵ国、 19施設).
  • 目的 : 対象患者へのペミガチニブの有効性及び安全性を評価.
  • 対象 : FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍患者41例 (うち日本人2例).
  • 連日投与集団 (27例) : ペミガチニブ 13.5mgを1日1回 21日間を1サイクルとして連日経口投与.
  • 間欠投与集団 (14例) : ペミガチニブ 13.5mgを1日1回 14日間投与後7日間休薬を1サイクルとして経口投与.
有効性評価可能集団はFGFR1融合遺伝子陽性が認められない1例を除いた40例.
病型として、 骨髄増殖性腫瘍、 前駆リンパ性腫瘍、 急性骨髄性白血病、 系統不明な急性白血病、 骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍が含まれていた.
本試験開始時は、 ペマジール13.5mgを1日1回14日間経口投与後7日間休薬を1サイクルとする間欠投与とされたが、 治験実施計画書の改訂により、 新規に組み入れられた患者は連日投与で開始し、 間欠投与を受けていた患者は、 本剤と関連ありと判断されたGrade 2以上の有害事象が持続していなければ、 少なくとも3サイクルを完了した後に連日投与に切り替えられることとされた. 間欠投与集団のうち3例が途中で連日投与に切り替えられた.

結果

CR : 完全奏効 PR : 部分奏効 SD : 安定
  • CR率 : 全体集団 62.5% (95%CI 45.80~77.27%)、 連日投与集団 66.7% (95%CI 46.04~83.48%).
  • 最良総合効果 (全体集団、 連日投与集団の順に記載)
  • CR率 : 62.5%、 66.7%.
  • PR率 : 10.0%、 11.1%.
  • SD率 : 25.0%、 18.5%.
  • 欠測 : 2.5%、 3.7%.
  • 追跡期間や生存期間の解析結果は掲載なし.

参考文献

  1. ペマジール® 適正使用ガイド
  2. Blood. 2018; 132 Suppl 1: 690.
  3. Front Oncol. 2022 Nov 3:12:1015792.
  4. Cancer Treat Rev. 2013 Oct;39(6):664-72.
  5. Biochem Biophys Res Commun. 2005 Nov 11;337(1):241-7.

最終更新 : 2024年1月18日
執筆/監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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ペミガチニブ(ペマジール®)
2024年01月19日更新

Pemigatinib:ペミガチニブ(ペマジール®)

投与量コース投与日
13.5mg 経口1~Day 1~

前投薬

なし

その他

1日1回13.5mgを経口投与.
患者の状態により適宜減量する.
胆道癌と用法及び用量が異なるため注意.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

ペマジール® (添付文書/適正使用ガイド*)

*「インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

用法用量

主な有害事象

適正使用ガイド*の国際共同第Ⅱ相試験 (INCB 54828-203試験)の結果¹⁾より引用

*「インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社」 の外部サイトへ遷移します.

骨髄抑制

  • 記載なし.

主な有害事象 (41例中)

  • 高リン血症 (29例、 70.7%)
  • 脱毛症 (23例、 56.1%)
  • 下痢 (18例、 43.9%)
  • 口内炎 (18例、 43.9%)

その他重要な有害事象

投与中止に至った有害事象 (41例中、 本剤と関連ありと判断された事象のみ)

  • カルシフィラキシス (1例、 2.4%)
  • 血中ALP増加 (1例、 2.4%)

死亡に至った有害事象

  • 本剤と関連ありと判断された事象なし

特徴と注意点

  • 本剤は、 繊維芽細胞増殖因子受容体 (fibroblast growth factor receptor : FGFR) のチロシンキナーゼ活性を阻害する低分子化合物.
  • FGFR融合タンパクなどのリン酸化を阻害し、 下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、 腫瘍増殖抑制作用を示す.
  • FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍」 に保険適用あり.
  • がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道癌」 にも保険適用あり.
  • 網膜剥離、 高リン血症、 眼障害 (網膜剥離を除く)、 爪障害、 手掌・足底発赤知覚不全症候群、 急性腎障害などの副作用に注意.

FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍³⁾

  • 8p11骨髄増殖症候群 (8p11 myeloproliferative syndrome : EMS) と呼ばれる極めて稀な造血器腫瘍.
  • 8p11-12に位置するFGFR1遺伝子の再配列によって引き起こされる.
  • 染色体の転座や挿入だけでなく、 逆位も報告されている.
  • 17のFGFR1融合遺伝子を産生し、 最も一般的なパートナー遺伝子は13q11-12のZNF198と22q11.2のBCRである.
  • 骨髄系腫瘍とリンパ系腫瘍が同時もしくは異時的に発生する.
  • 初診時には骨髄増殖性腫瘍の病態を呈することが多く、 慢性骨髄性白血病、 急性骨髄性白血病、 Tリンパ芽球性リンパ腫、 T細胞性急性リンパ性白血病の病型として発症することもある.
  • 好酸球増多を伴うことも多い.
  • 一般に化学療法に抵抗性で、 標準治療は確立されていない.
  • 従来より同種造血幹細胞移植、 チロシンキナーゼ阻害薬、 インターフェロンなどで治療されてきた.
  • 近年分子標的薬としてペミガチニブなどが注目されている.

副作用とその対策

<減量用量>

<網膜剥離>

  • 本剤投与により網膜剥離 (網膜色素上皮剥離、 網膜剥離等)が生じることがある.
  • FGFRは網膜で発現し、 網膜色素上皮細胞の機能において、 新生血管形成に寄与し、 正常な網膜色素上皮細胞の維持、 傷害からの保護、 損傷の修復といった重要な役割を果たしている. FGFR阻害により網膜色素上皮の機能が妨害される可能性がある.⁴⁾ ⁵⁾
  • 本剤の投与開始前に、 光干渉断層計 (OCT) を含む包括的な眼科検査を行い、 投与中も定期的に検査を行う.
  • 飛蚊症、 視野欠損、 光視症、 視力低下等が認められた場合、 眼科検査を実施し、 投与を中止するなど適切な処置を行う.

<高リン血症>

本剤投与中は定期的に血清リン濃度を測定し、 血清リン濃度の変動に注意し、 以下のように対処する.

<その他の副作用>

眼障害 (網膜剥離を除く)、 爪障害、 手掌・足底発赤知覚不全症候群、 急性腎障害などの出現に注意し、 以下のように対処する.

関連する臨床試験の結果

国際共同第Ⅱ相試験 (INCB 54828-203試験)

論文未公表であり適正使用ガイド¹⁾の情報を参照し掲載

概要

  • 国際共同前向き非盲検第Ⅱ相試験 (日本を含む8ヵ国、 19施設).
  • 目的 : 対象患者へのペミガチニブの有効性及び安全性を評価.
  • 対象 : FGFR1融合遺伝子陽性の骨髄性又はリンパ性腫瘍患者41例 (うち日本人2例).
  • 連日投与集団 (27例) : ペミガチニブ 13.5mgを1日1回 21日間を1サイクルとして連日経口投与.
  • 間欠投与集団 (14例) : ペミガチニブ 13.5mgを1日1回 14日間投与後7日間休薬を1サイクルとして経口投与.
有効性評価可能集団はFGFR1融合遺伝子陽性が認められない1例を除いた40例.
病型として、 骨髄増殖性腫瘍、 前駆リンパ性腫瘍、 急性骨髄性白血病、 系統不明な急性白血病、 骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍が含まれていた.
本試験開始時は、 ペマジール13.5mgを1日1回14日間経口投与後7日間休薬を1サイクルとする間欠投与とされたが、 治験実施計画書の改訂により、 新規に組み入れられた患者は連日投与で開始し、 間欠投与を受けていた患者は、 本剤と関連ありと判断されたGrade 2以上の有害事象が持続していなければ、 少なくとも3サイクルを完了した後に連日投与に切り替えられることとされた. 間欠投与集団のうち3例が途中で連日投与に切り替えられた.

結果

CR : 完全奏効 PR : 部分奏効 SD : 安定
  • CR率 : 全体集団 62.5% (95%CI 45.80~77.27%)、 連日投与集団 66.7% (95%CI 46.04~83.48%).
  • 最良総合効果 (全体集団、 連日投与集団の順に記載)
  • CR率 : 62.5%、 66.7%.
  • PR率 : 10.0%、 11.1%.
  • SD率 : 25.0%、 18.5%.
  • 欠測 : 2.5%、 3.7%.
  • 追跡期間や生存期間の解析結果は掲載なし.

参考文献

  1. ペマジール® 適正使用ガイド
  2. Blood. 2018; 132 Suppl 1: 690.
  3. Front Oncol. 2022 Nov 3:12:1015792.
  4. Cancer Treat Rev. 2013 Oct;39(6):664-72.
  5. Biochem Biophys Res Commun. 2005 Nov 11;337(1):241-7.

最終更新 : 2024年1月18日
執筆/監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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