本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
薬剤情報
主な有害事象
J Clin Oncol. 2011 Nov 20;29(33):4410-6.¹⁾ より引用
骨髄抑制
- 白血球減少 (≧Grade3 100%)
- 好中球減少 (≧Grade3 100%)
- 貧血 (≧Grade3 50%)
- 血小板減少 (≧Grade3 63%)
重大な有害事象
- 低フィブリノゲン血症 (≧Grade3 11%)
- APTT延長 (≧Grade3 11%)
- 低アルブミン血症 (≧Grade3 16%)
- 高ビリルビン血症 (≧Grade3 11%)
- AST上昇 (≧Grade3 32%)
- ALT上昇 (≧Grade3 32%)
- 低ナトリウム血症 (≧Grade3 32%)
- 高血糖 (≧Grade3 18%)
- アミラーゼ上昇 (≧Grade3 18%)
- 食欲不振 (≧Grade3 24%)
- 下痢 (≧Grade3 11%)
- 嘔気 (≧Grade3 13%)
- 粘膜炎 (≧Grade3 13%)
- 感染症 (≧Grade3 61%)
その他
- 嘔吐 (≧Grade3 5%)
- 傾眠 (≧Grade3 8%)
- 脳症 (≧Grade3 3%)
特徴と注意点
- SMILE療法は、 新たに診断されたステージIV、 再発性または難治性の節外性NK/T細胞リンパ腫、 鼻型 (ENKL) に対して推奨される標準治療の一つ.
- 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要.
- HBV再活性化リスクを考慮し、 適切なスクリーニング検査とモニタリングを行う.
- メトトレキサート (MTX) の副作用軽減目的として、 Day 2~Day 4までロイコボリン®救援療法 (15mg/6hr毎) を行う.
- MTX投与開始後、 48時間後・72時間後のMTX血中濃度が、 それぞれ1µM未満、 0.1µM未満であることを確認する. どちらか一方でも超えた場合は、 各々1µM未満、 0.1µM未満になるまで、 十分な水分の補給、 尿のアルカリ化、 ロイコボリン®の増量や投与延長を行う.
- MTX大量療法に伴い、 薬物相互作用の観点から、 MTX投与前から排泄完了まではフロセミド、 NSAIDs、 ST合剤、 PPIの使用を避ける.
- イホスファミドは出血性膀胱炎リスクがあるため、 メスナ (ウロミテキサン®) の使用、 尿量確保のため十分な輸液・水分補給 (目安:2000~3000mL/m²/日) 、 尿のアルカリ化を行う.
- メスナの1回投与量は、 イホスファミド1日投与量の20%量とし、 イホスファミド投与時、 4時間後、 8時間後に行う (上記レジメンであればメスナ300mg/m²/回を3回) .
- G-CSFはDay 6から開始し、 L-アスパラギナーゼの投与に関わらずWBC>5000/µLまで継続.
- L-アスパラキナーゼ投与時はアナフィラキシーに注意し、 凝固系、 膵および肝機能の検査を行う. 急性膵炎が発現した場合は投与の中止を検討.
関連する臨床試験の結果
概要
- ステージIV、 再発、 または難治性の節外性NK/ T細胞リンパ腫、 鼻型 (ENKL) を対象とした第2相試験.
- SMILE療法における奏効率、 OS、 PFS、 毒性を評価.
OS:全生存期間 PFS:無増悪生存期間
結果
- 追跡期間中央値24ヵ月.
- 38人の患者のうち、 CRは17人 (45%) であり、 ORRは79% (90%CI 65-89) . 新たにステージIVの疾患と診断された患者と最初の再発性疾患の患者間でORRまたはCR率に差はなかった.
- 1年OS率:55% (95%CI 38-69)
- 1年PFS:53% (95%CI 36-67) .
- SMILE療法に反応を示した患者はOSが高く、 再発性疾患の患者は、 難治性疾患の患者と比較して、 1年OS 79%およびPFS 71%が良好であった (それぞれp = .04および.05) .
- 自家HSCTを受けた患者は、 より良いOSとPFSを示す傾向があったが、 その差は統計的に有意ではなかった.
- 毒性については、 グレード4の好中球減少症の頻度が高かった (92%) . 新たにステージIVと診断された患者と再発患者のグレード4の血液毒性率は、 それぞれ95%と93%、 グレード4の非血液毒性率は、 それぞれ35%と14%. これらはいずれも統計的に有意ではなかった (p=0.99およびp=0.25).
- SMILE療法は骨髄抑制と感染のリスクが高く、 特に化学療法開始6日目から顕著となるため、 G-CSFの使用は必須と考えられた.
- SMILE療法2サイクル後のORR 79% (90%CI 65-89) は閾値ORR 35%を超え、 1年OS率 55%も以前の治療と比較して大幅に改善された.
参考文献
- J Clin Oncol. 2011 Nov 20;29(33):4410-6.
最終更新:2022年8月29日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔