がん悪液質の主な病態生理の1つは全身性炎症であり、 タンパク質異化の異常な亢進により、 骨格筋の分解促進や糖質、 脂質の代謝異常を来す。 主な症候は、 体重・骨格筋量の減少、 疲労感、 食欲不振、 低アルブミン血症など。 これらの症候に加えて、 薬物療法の効果の減弱や副作用の増加にも影響を及ぼし、 がん患者の予後を悪化させる。
進行がん患者の約80%に、 また時に初期より認められる¹⁾。
がん悪液質については、 欧州緩和ケア共同研究(EPCRC)が2011年に定義と診断基準の合意(コンセンサス)内容を公表。 その定義は以下の通り²⁾
通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、 進行性の機能障害に至る、 骨格筋量の持続的な減少 (脂肪量減少の有無を問わない) を特徴とする多因子性の症候群
またEPCRCのコンセンサスでは、 がん悪液質を以下の3つの状態に分類し、 「前悪液質」 からの早期介入の必要性が推奨されている。 「不可逆的悪液質」 の状態に陥ると、 予後は3ヵ月以内とされている²⁾。
2020年に改訂されたASCO (米国臨床腫瘍学会) によるがん悪液質の管理ガイドラインでは、①栄養療法、 ②薬物治療、 ③運動療法についてまとめられている³⁾。
またがん悪液質は多臓器・多要因が関わるため、 本邦の『がん悪液質ハンドブック』 (監修 : 日本がんサポーティブケア学会など) では、治療として薬物療法、 栄養療法、 運動療法、 心理社会的介入を含めた早期かつ集学的な介入が求められるとしている⁴⁾。
本邦初のがん悪液質治療薬として、 経口グレリン様作用薬である💊アナモレリン (商品名: エドルミズ®) が2021年に承認された。 現時点で、 がん悪液質に対し国内で保険適応となる唯一の薬剤である。
アナモレリンは視床下部では食欲亢進を促し、 下垂体では成長ホルモンの分泌を促進し、 肝臓でインスリン様成長因子-1を分泌することで、 筋蛋白の合成を促進することで悪液質改善に寄与する薬剤である⁵⁾⁶⁾。
アナモレリンの適応となる4つの癌種
・ 非小細胞肺癌
・ 胃癌
・ 大腸癌
・ 膵癌
それぞれ本邦のガイドラインでは以下のように提案されている。
肺癌診療ガイドライン 2023年版
「悪液質を呈する切除不能・進行非小細胞肺癌患者に選択的グレリン受容体刺激薬(アナモレリン)を投与することを提案する (推奨の強さ:2、 エビデンスの強さ:C、 合意率 : 100%)
膵がん診療ガイドライン 2022年版
進行膵癌患者の悪液質に対して、 グレリン受容体作動薬の投与を行うことを提案する〔推奨の強さ:弱い、 エビデンスの確実性(強さ) : D(非常に弱い)〕
患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版
がんが進行すると 「がん悪液質」 とよばれる体重減少、 食欲不振、 倦怠感などの主な症状を呈する状態を引き起こすことがあります。 (中略) 対処としてはがんの治療が基本となりますが、 食事の工夫やアナモレリン(がん悪液質に対しての薬剤)の使用も行っていくことが大事です。
また同薬の導入においては、 将来は栄養療法や運動療法との併用が有効であると考えられている。 そこで現在、本邦では集学的治療の標準モデルとなる方法を確立させるべく、 「NEXTAC (進行がんに対する栄養および運動治療) プログラム」 が進行中である⁷⁾⁸⁾。
最終更新 : 2024年6月22日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師
がん悪液質の主な病態生理の1つは全身性炎症であり、 タンパク質異化の異常な亢進により、 骨格筋の分解促進や糖質、 脂質の代謝異常を来す。 主な症候は、 体重・骨格筋量の減少、 疲労感、 食欲不振、 低アルブミン血症など。 これらの症候に加えて、 薬物療法の効果の減弱や副作用の増加にも影響を及ぼし、 がん患者の予後を悪化させる。
進行がん患者の約80%に、 また時に初期より認められる¹⁾。
がん悪液質については、 欧州緩和ケア共同研究(EPCRC)が2011年に定義と診断基準の合意(コンセンサス)内容を公表。 その定義は以下の通り²⁾
通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、 進行性の機能障害に至る、 骨格筋量の持続的な減少 (脂肪量減少の有無を問わない) を特徴とする多因子性の症候群
またEPCRCのコンセンサスでは、 がん悪液質を以下の3つの状態に分類し、 「前悪液質」 からの早期介入の必要性が推奨されている。 「不可逆的悪液質」 の状態に陥ると、 予後は3ヵ月以内とされている²⁾。
2020年に改訂されたASCO (米国臨床腫瘍学会) によるがん悪液質の管理ガイドラインでは、①栄養療法、 ②薬物治療、 ③運動療法についてまとめられている³⁾。
またがん悪液質は多臓器・多要因が関わるため、 本邦の『がん悪液質ハンドブック』 (監修 : 日本がんサポーティブケア学会など) では、治療として薬物療法、 栄養療法、 運動療法、 心理社会的介入を含めた早期かつ集学的な介入が求められるとしている⁴⁾。
本邦初のがん悪液質治療薬として、 経口グレリン様作用薬である💊アナモレリン (商品名: エドルミズ®) が2021年に承認された。 現時点で、 がん悪液質に対し国内で保険適応となる唯一の薬剤である。
アナモレリンは視床下部では食欲亢進を促し、 下垂体では成長ホルモンの分泌を促進し、 肝臓でインスリン様成長因子-1を分泌することで、 筋蛋白の合成を促進することで悪液質改善に寄与する薬剤である⁵⁾⁶⁾。
アナモレリンの適応となる4つの癌種
・ 非小細胞肺癌
・ 胃癌
・ 大腸癌
・ 膵癌
それぞれ本邦のガイドラインでは以下のように提案されている。
肺癌診療ガイドライン 2023年版
「悪液質を呈する切除不能・進行非小細胞肺癌患者に選択的グレリン受容体刺激薬(アナモレリン)を投与することを提案する (推奨の強さ:2、 エビデンスの強さ:C、 合意率 : 100%)
膵がん診療ガイドライン 2022年版
進行膵癌患者の悪液質に対して、 グレリン受容体作動薬の投与を行うことを提案する〔推奨の強さ:弱い、 エビデンスの確実性(強さ) : D(非常に弱い)〕
患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版
がんが進行すると 「がん悪液質」 とよばれる体重減少、 食欲不振、 倦怠感などの主な症状を呈する状態を引き起こすことがあります。 (中略) 対処としてはがんの治療が基本となりますが、 食事の工夫やアナモレリン(がん悪液質に対しての薬剤)の使用も行っていくことが大事です。
また同薬の導入においては、 将来は栄養療法や運動療法との併用が有効であると考えられている。 そこで現在、本邦では集学的治療の標準モデルとなる方法を確立させるべく、 「NEXTAC (進行がんに対する栄養および運動治療) プログラム」 が進行中である⁷⁾⁸⁾。
最終更新 : 2024年6月22日
監修医師 : HOKUTO編集部監修医師
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。
主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。
なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。
また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。