本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
薬剤情報
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主な有害事象
SHINE試験¹⁾より引用
骨髄抑制
- 好中球減少 (51.4%、 ≧Grade3 47.1%)
- 血小板減少 (35.9%、 ≧Grade3 12.7%)
- 貧血 (33.6%、 ≧Grade3 15.4%)
- リンパ球減少 (18.1%、 ≧Grade3 16.2%)
- 白血球減少 (18.1%、 ≧Grade3 10.0%)
主な有害事象
感染症
- 肺炎 (33.6%、 ≧Grade3 20.1%)
- 上気道感染 (27.4%、 ≧Grade3 1.5%)
- 気管支炎 (14.7%、 ≧Grade3 2.3%)
- 尿路感染 (14.7%、 ≧Grade3 4.2%)
- 副鼻腔炎 (10.8%、 ≧Grade3 0.8%)
- 結膜炎 (10.0%、 ≧Grade3 0%)
- 鼻咽頭炎 (9.3%、 ≧Grade3 0%)
- 帯状疱疹 (5.8%、 ≧Grade3 0.8%)
胃腸障害
- 下痢 (46.3%、 ≧Grade3 6.9%)
- 吐き気 (41.3%、 ≧Grade3 2.3%)
- 嘔吐 (22.4%、 ≧Grade3 2.7%)
- 便秘 (19.7%、 ≧Grade3 0%)
- 腹痛 (10.0%、 ≧Grade3 2.3%)
一般・全身障害および投与部位の状態
- 発熱 (36.7%、 ≧Grade3 1.9%)
- 倦怠感 (30.5%、 ≧Grade3 3.1%)
- 末梢浮腫 (19.7%、 ≧Grade3 1.2%)
- 無力症 (11.6%、 ≧Grade3 0.8%)
- 寒気 (6.9%、 ≧Grade3 0.4%)
皮膚障害
- 皮疹 (37.8%、 ≧Grade3 12%)
- 搔痒 (17.8%、 ≧Grade3 2.3%)
- 斑点状丘疹 (10.0%、 ≧Grade3 4.6%)
呼吸器障害
- 咳嗽 (29.7%、 ≧Grade3 0.4%)
- 鼻出血 (12.0%、 ≧Grade3 0%)
- 呼吸困難 (10.0%、 ≧Grade3 0.8%)
代謝・栄養障害
- 食欲減退 (21.6%、 ≧Grade3 1.5%)
- 低カリウム血症 (15.1%、 ≧Grade3 7.3%)
骨格筋・結合組織障害
- 関節痛 (17.4%、 ≧Grade3 1.2%)
- 背部痛 (13.9%、 ≧Grade3 0.8%)
- 筋肉痛 (12.0%、 ≧Grade3 0%)
その他
- 心房細動 (13.9%、 ≧Grade3 3.9%)
- 高血圧 (13.5%、 ≧Grade3 8.5%)
- 頭痛 (12.7%、 ≧Grade3 0%)
- 不眠症 (11.2%、 ≧Grade3 0%)
- 体重減少 (10.0%、 ≧Grade3 1.2%)
- 急性輸注反応 (8.1%、 ≧Grade3 0.8%)
特徴と注意点
適応
<イブルチニブ+BR療法の適応>
- イブルチニブ+BR療法は、 65歳以上の未治療マントル細胞リンパ腫 (病期Ⅱ-Ⅳ) に対するSHINE試験の結果をもとに承認された.
- 従って、 強力な化学療法の適応となる未治療例、 病期Ⅰ、 再発又は難治例への有効性及び安全性は確立していないことに注意.
<イブルチニブの適応>
- イブルチニブはベンダムスチン+リツキシマブ (BR療法) との併用において未治療のマントル細胞リンパ腫 (MCL) に保険適用.
- 再発又は難治性のMCLに対してはイブルチニブ単剤が保険適用.
- イブルチニブは病勢進行又は耐容不能な毒性の発現が認められるまで継続.
- イブルチニブはMCL以外に、 原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫 (WM/LPL)、 慢性リンパ性白血病又は小リンパ球性リンパ腫 (CLL/SLL)、 造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病 (cGVHD) (ステロイドで効果不十分な場合) に保険適用.
- イブルチニブとBR療法の併用は未治療のMCLのみに保険適用あり.
- MCLには560mgを1日1回、 WM/LPL、 CLL/SLL、 cGVHDには420mgを1日1回内服.
<BR療法の適応>
- 低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫、 マントル細胞リンパ腫、 慢性リンパ性白血病、 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に保険適用.
- リツキシマブ維持療法は、 8週毎に最大12回投与.
注意点
- 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要.
- HBV再活性化リスクを考慮し、 適切なスクリーニング検査とモニタリングを行う.
- 投与24時間以内にInfusion reactionが発生する可能性がある. 前投薬を行い、 モニタリング下で段階的に投与速度を上げる. 特に初回投与の際に十分注意.
- G-CSF製剤の投与を考慮.
- ベンダムスチンによるリンパ球減少に伴い、 ST合剤の予防投与を考慮.
- 帯状疱疹の予防のため、 アシクロビル1日1回200mg等の抗ウイルス薬を併用.
- リスクに応じて抗真菌薬の予防投与も考慮.
<イブルチニブ投与時の注意点>
- 出血性事象の発現に注意.「出血の高リスク因子 (下記)」を有する場合、 PT-INR、 APTT、 血小板凝集能、 第Ⅷ凝固因子、 von Willebrand因子活性を確認の上慎重に投与.
- CYP3Aで代謝されるためCYP3A阻害作用のない薬剤への変更や140mgへの減量を考慮.
- Grade3以上の副作用が発現した際はGrade1以下に回復するまで本剤を休薬する. 再開時は副作用の発現回数*によって減量又は中止を検討すること.
*減量目安:副作用1回目560mg、2回目420mg、3回目280mg、4回目以降は中止
- イブルチニブ投与中に腫瘍性リンパ球数の増加が高頻度で認められる (一過性のリンパ球増加は病勢進行の徴候ではない).
- 重篤な不整脈の発現又は悪化の報告があるため、 既往歴の確認や定期的な心機能検査を行う.
<出血の高リスク因子>
- 抗凝固薬や抗血小板薬の併用
- 周術期患者
- 年齢65歳以上
- 脂質異常症の既往
- 精神神経疾患の既往
- 大きな事故やけがの既往
- リンパ球数の増加 (10万/µL以上)
- 血小板数の減少 (10万/µL以下)
- 出血の既往
- 軽度の肝機能障害
- CYP3A阻害薬の併用
関連する臨床試験
概要
- 国際無作為化二重盲検第3相試験
- BR療法+イブルチニブ (イブルチニブ群*) 261例 vs プラセボ群**262例で比較
- 客観的奏効 (完全または部分的奏効) を示した患者にはリツキシマブ維持療法を8週ごと最大12回追加投与
- 評価項目:無増悪生存期間 (PFS)、 完全寛解 (CR)、 全生存 (OS)、 安全性
BR療法:Benda 90mg/m² (Day1、2)+RIT375mg/m² (Day1)を4週ごとに6コース
*イブルチニブ群:イブルチニブ560mg 1日1回 経口+BR療法
**プラセボ群:BR療法のみ
結果
- 追跡期間中央値:84.7ヵ月
- PFS中央値:イブルチニブ群80.6ヵ月 vs プラセボ群52.9ヵ月 (HR 0.75、 95%CI 0.59-0.96、 p=0.01).
- CR:イブルチニブ群171例 (65.5%) vs プラセボ群151例 (57.6%) (p=0.06).
- データカットオフ時点の死亡:イブルチニブ群104例 (39.8%) vs プラセボ群107例 (40.8%).
- OSは両群で同等 (HR 1.07、 95%CI 0.81-1.40). OS中央値はいずれも未到達.
- 7年時点のOSはイブルチニブ群55.0% vs プラセボ群56.8%であり、 進行による死亡はイブルチニブ群30例 (11.5%) vs プラセボ群54例 (20.6%) であった.
- Grade3/4の有害事象:イブルチニブ群81.5% vs プラセボ群77.3%.
- 頻度の高いGrade3/4の有害事象 (各群で10%以上):好中球減少症(イブルチニブ47.1% vs プラセボ群48.1%)、 肺炎 (20.1% vs 14.2%)、 リンパ球減少症 (16.2% vs 11.9%)、 貧血 (15.4% vs 8.8%)、 血小板減少症 (12.7% vs 13.1%)、 発疹 (12.0% vs 1.9%)、 白血球減少症 (10.0% vs 11.2%).
参考文献
- N Engl J Med. 2022 Jun 30;386(26):2482-2494.
最終更新:2023年5月31日
執筆担当:牛久愛和総合病院 薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔