治療スケジュール
概要
監修医師

CDDP:シスプラチン(シスプラチン®)

投与量コース投与日
80mg/m² 点滴1~Day1

5-FU:フルオロウラシル(5-FU®)

投与量コース投与日
800mg/m² 点滴1~Day1~5

前投薬

パロノセトロン0.75mg day1 点滴、 デキサメタゾン 9.9mg day1、6.6mg day2-4 点滴、 アプレピタント 125mg day1、80mg day2-3、 オランザピン 5mg day1-4 経口 (糖尿病がない場合のみ)

その他

1コース21日間。
CDDP+5-FUでCF療法と呼ぶ。
レジメン
neoCF
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

*日本化薬の外部サイトへ遷移します

用法用量

JCOG9907試験¹⁾のプロトコル

Ann Surg Oncol. 2012 Jan;19(1):68-74.より作図
電子添文の用法および用量
シスプラチン : 食道癌には、 B法を標準的用法・用量とし、 患者の状態によりA法を選択する。 B法は 「50~70mg/m²を1日1回投与し、 少なくとも3週間休薬」 でA法は 「15~20mg/m²を1日1回、 5日間連続投与し、 少なくとも2週間休薬」 である。
ランダ®電子添文 (2021年4月改訂 第1版)²⁾ より引用
フルオロウラシル : 他の抗悪性腫瘍剤との併用療法において、 1日1000mg/m²までを、 4~5日間連日で持続点滴。 投与を繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与。
5-FU®電子添文 (2023年3月改訂 第2版)⁴⁾より引用

前投薬

HECレジメンとして扱う

  • パロノセトロン0.75mg day1 点滴
  • デキサメタゾン 9.9mg day1、 6.6mg day2-4 点滴
  • アプレピタント 125mg day1、 80mg day2-3 
ホスアプレピタント150mg day1 点滴、 ホスネツピタント 235㎎ day1 点滴でも可
  • オランザピン 5mg day1-4 経口 (糖尿病がない場合のみ)
執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生

投与開始基準

JCOG9907試験¹⁾のプロトコル

Ann Surg Oncol. 2012 Jan;19(1):68-74.¹⁾より作図

上手に使うためのワンポイント

neoCF療法の対象について

JCOG1109試験ではneoCF療法に対するneoDCF療法の優越性が報告されており、 neoDCF療法が投与可能な症例ではneoDCF療法を優先すべきである⁴⁾。 neoDCF療法は骨髄抑制などの有害事象の頻度が高く、 年齢や全身状態などからneoDCF療法不耐と考えられる症例がneoCF療法の対象となる。 現在の食道癌取り扱い規約第12版でのcStageII/IIIの切除可能例が術前化学療法の対象となる。

腎機能について

シスプラチンの腎機能による投与量についてはCrClを参考に決定する。 Cockcroft-Gault式を用いて計算し、 CrCl≥60 mL/minでは100% dose、 50-60 mL/minでは1段階減量、 40-50mL/minでは2段階減量とする。 なおJCOG1109試験ではCrCl≥60mL/minの患者が対象となっていた⁴⁾。 Cockcroft-gault式では高齢者や女性で推定値が実測値より低値となりやすいため、 血中クレアチニン値のわりにCrCl推定値が低い症例については畜尿による実測値を用いる。

執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生

特徴と注意点

  • neoCF療法では2コースがありneoDCF療法とコース数が異なる。 
  • シスプラチンを用いたレジメンであり腎機能の確認、 悪心・嘔吐対策を十分にしておく。 
  • 腎機能障害や心疾患、 全身状態などからneoCF療法も不耐の症例では手術単独も選択肢となる。
執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生

関連する臨床試験|JCOG9907試験¹⁾

cStage II~IIIの胸部食道扁平上皮癌の日本人患者において、 シスプラチン+5-FUによる術前化学療法後の効果を、 同レジメンの術後化学療法を対照に検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験JCOG9907の結果より、 主要評価項目である無増悪生存期間 (PFS) に有意差は認められなかったものの、 全生存期間 (OS)を有意に延長させることが示された。

>>臨床試験の詳細を見る

追跡期間中央値

62ヵ月

(範囲10.7-106.8ヵ月)

5年PFS率

  • 術後化学療法群 : 39%
(95%CI 31.1-46.3%)
  • 術前化学療法群 : 44%
(95%CI 36.4-51.8%)
HR 0.84 (95%CI 0.63-1.11)、 p=0.22

5年OS率

  • 術後化学療法群 : 43%
(95%CI 34.6-50.5%)
  • 術前化学療法群 : 55%
(95%CI 46.7-62.5%)
HR 0.73 (95%CI 0.54-0.99)、 p=0.04

サブグループ解析 (5年OS率)

cN0症例

  • 術後化学療法群 : 49.4%
  • 術前化学療法群 : 54.5%

cN1症例

  • 術後化学療法群 : 39.5%
  • 術前化学療法群 : 55.3%

術前化学療法群における奏効率

  • ベースラインのcStageは両群で同等であったが、 術後のpStageは、 Ⅰ~IIの割合は術後化学療法群では48%であったのに対し、 術前化学療法群では33%と多かった (p=0.01)。
  • 両群のcN0症例の割合はほぼ同じであった (術後化学療法群33%、 術前化学療法群35%、 p=0.64) のに対し、 pN0症例は術後化学療法群24%、 術前化学療法群35%であった (p=0.05)。
  • 手術を受けた患者のうち、 R0率は術後化学療法群91%に対し、 術前化学療法群では96%とわずかに多かった (p=0.04)。

手術による合併症と死亡率

術中出血量(中央値)

  • 術後化学療法群 : 446mL
  • 術前化学療法群 : 450mL

術前化学療法群では術後の腎機能障害(9例、 6%)が術後化学療法群 (4例、 3%) よりやや多かった。 その他の術後合併症については両群間に顕著な差はみられなかった。

各群1例が手術に関連した原因で死亡した。

術後化学療法群 : 食道気管支瘻 (術後12日目)、 術前化学療法群 : 大動脈穿孔 (術後8日目)

出典

  1. A randomized trial comparing postoperative adjuvant chemotherapy with cisplatin and 5-fluorouracil versus preoperative chemotherapy for localized advanced squamous cell carcinoma of the thoracic esophagus (JCOG9907). Ann Surg Oncol. 2012 Jan;19(1):68-74. PMID: 21879261
  2. 日本化薬. ランダ®電子添文 (2021年4月改訂 第1版) [最終閲覧:2024/03/22]
  3. 日本化薬. ランダ®特定項目製品情報概要 (2021年5月作成) [最終閲覧:2024/03/22]
  4. 協和キリン株式会社. 5-FU®電子添文 (2023年3月改訂 第2版) [最終閲覧:2024/03/22]
  5. A randomized controlled phase III trial comparing two chemotherapy regimen and chemoradiotherapy regimen as neoadjuvant treatment for locally advanced esophageal cancer, JCOG1109 NExT study. Journal of Clinical Oncology 40, no. 4_suppl (February 01, 2022) 238-238*
*Journal of Clinical Oncologyのサイトに遷移
最終更新日 : 2024年3月27日
執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生
監修医師:神奈川県立がんセンター消化器内科部長 町田望先生

レジメン
neoCF
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン
neoCF
レジメン
neoCF

neoCF

シスプラチン+フルオロウラシル
2024年04月24日更新

CDDP:シスプラチン(シスプラチン®)

投与量コース投与日
80mg/m² 点滴1~Day1

5-FU:フルオロウラシル(5-FU®)

投与量コース投与日
800mg/m² 点滴1~Day1~5

前投薬

パロノセトロン0.75mg day1 点滴、 デキサメタゾン 9.9mg day1、6.6mg day2-4 点滴、 アプレピタント 125mg day1、80mg day2-3、 オランザピン 5mg day1-4 経口 (糖尿病がない場合のみ)

その他

1コース21日間。
CDDP+5-FUでCF療法と呼ぶ。

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

*日本化薬の外部サイトへ遷移します

用法用量

JCOG9907試験¹⁾のプロトコル

Ann Surg Oncol. 2012 Jan;19(1):68-74.より作図
電子添文の用法および用量
シスプラチン : 食道癌には、 B法を標準的用法・用量とし、 患者の状態によりA法を選択する。 B法は 「50~70mg/m²を1日1回投与し、 少なくとも3週間休薬」 でA法は 「15~20mg/m²を1日1回、 5日間連続投与し、 少なくとも2週間休薬」 である。
ランダ®電子添文 (2021年4月改訂 第1版)²⁾ より引用
フルオロウラシル : 他の抗悪性腫瘍剤との併用療法において、 1日1000mg/m²までを、 4~5日間連日で持続点滴。 投与を繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与。
5-FU®電子添文 (2023年3月改訂 第2版)⁴⁾より引用

前投薬

HECレジメンとして扱う

  • パロノセトロン0.75mg day1 点滴
  • デキサメタゾン 9.9mg day1、 6.6mg day2-4 点滴
  • アプレピタント 125mg day1、 80mg day2-3 
ホスアプレピタント150mg day1 点滴、 ホスネツピタント 235㎎ day1 点滴でも可
  • オランザピン 5mg day1-4 経口 (糖尿病がない場合のみ)
執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生

投与開始基準

JCOG9907試験¹⁾のプロトコル

Ann Surg Oncol. 2012 Jan;19(1):68-74.¹⁾より作図

上手に使うためのワンポイント

neoCF療法の対象について

JCOG1109試験ではneoCF療法に対するneoDCF療法の優越性が報告されており、 neoDCF療法が投与可能な症例ではneoDCF療法を優先すべきである⁴⁾。 neoDCF療法は骨髄抑制などの有害事象の頻度が高く、 年齢や全身状態などからneoDCF療法不耐と考えられる症例がneoCF療法の対象となる。 現在の食道癌取り扱い規約第12版でのcStageII/IIIの切除可能例が術前化学療法の対象となる。

腎機能について

シスプラチンの腎機能による投与量についてはCrClを参考に決定する。 Cockcroft-Gault式を用いて計算し、 CrCl≥60 mL/minでは100% dose、 50-60 mL/minでは1段階減量、 40-50mL/minでは2段階減量とする。 なおJCOG1109試験ではCrCl≥60mL/minの患者が対象となっていた⁴⁾。 Cockcroft-gault式では高齢者や女性で推定値が実測値より低値となりやすいため、 血中クレアチニン値のわりにCrCl推定値が低い症例については畜尿による実測値を用いる。

執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生

特徴と注意点

  • neoCF療法では2コースがありneoDCF療法とコース数が異なる。 
  • シスプラチンを用いたレジメンであり腎機能の確認、 悪心・嘔吐対策を十分にしておく。 
  • 腎機能障害や心疾患、 全身状態などからneoCF療法も不耐の症例では手術単独も選択肢となる。
執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生

関連する臨床試験|JCOG9907試験¹⁾

cStage II~IIIの胸部食道扁平上皮癌の日本人患者において、 シスプラチン+5-FUによる術前化学療法後の効果を、 同レジメンの術後化学療法を対照に検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験JCOG9907の結果より、 主要評価項目である無増悪生存期間 (PFS) に有意差は認められなかったものの、 全生存期間 (OS)を有意に延長させることが示された。

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追跡期間中央値

62ヵ月

(範囲10.7-106.8ヵ月)

5年PFS率

  • 術後化学療法群 : 39%
(95%CI 31.1-46.3%)
  • 術前化学療法群 : 44%
(95%CI 36.4-51.8%)
HR 0.84 (95%CI 0.63-1.11)、 p=0.22

5年OS率

  • 術後化学療法群 : 43%
(95%CI 34.6-50.5%)
  • 術前化学療法群 : 55%
(95%CI 46.7-62.5%)
HR 0.73 (95%CI 0.54-0.99)、 p=0.04

サブグループ解析 (5年OS率)

cN0症例

  • 術後化学療法群 : 49.4%
  • 術前化学療法群 : 54.5%

cN1症例

  • 術後化学療法群 : 39.5%
  • 術前化学療法群 : 55.3%

術前化学療法群における奏効率

  • ベースラインのcStageは両群で同等であったが、 術後のpStageは、 Ⅰ~IIの割合は術後化学療法群では48%であったのに対し、 術前化学療法群では33%と多かった (p=0.01)。
  • 両群のcN0症例の割合はほぼ同じであった (術後化学療法群33%、 術前化学療法群35%、 p=0.64) のに対し、 pN0症例は術後化学療法群24%、 術前化学療法群35%であった (p=0.05)。
  • 手術を受けた患者のうち、 R0率は術後化学療法群91%に対し、 術前化学療法群では96%とわずかに多かった (p=0.04)。

手術による合併症と死亡率

術中出血量(中央値)

  • 術後化学療法群 : 446mL
  • 術前化学療法群 : 450mL

術前化学療法群では術後の腎機能障害(9例、 6%)が術後化学療法群 (4例、 3%) よりやや多かった。 その他の術後合併症については両群間に顕著な差はみられなかった。

各群1例が手術に関連した原因で死亡した。

術後化学療法群 : 食道気管支瘻 (術後12日目)、 術前化学療法群 : 大動脈穿孔 (術後8日目)

出典

  1. A randomized trial comparing postoperative adjuvant chemotherapy with cisplatin and 5-fluorouracil versus preoperative chemotherapy for localized advanced squamous cell carcinoma of the thoracic esophagus (JCOG9907). Ann Surg Oncol. 2012 Jan;19(1):68-74. PMID: 21879261
  2. 日本化薬. ランダ®電子添文 (2021年4月改訂 第1版) [最終閲覧:2024/03/22]
  3. 日本化薬. ランダ®特定項目製品情報概要 (2021年5月作成) [最終閲覧:2024/03/22]
  4. 協和キリン株式会社. 5-FU®電子添文 (2023年3月改訂 第2版) [最終閲覧:2024/03/22]
  5. A randomized controlled phase III trial comparing two chemotherapy regimen and chemoradiotherapy regimen as neoadjuvant treatment for locally advanced esophageal cancer, JCOG1109 NExT study. Journal of Clinical Oncology 40, no. 4_suppl (February 01, 2022) 238-238*
*Journal of Clinical Oncologyのサイトに遷移
最終更新日 : 2024年3月27日
執筆医:神奈川県立がんセンター消化器内科 古田 光寛先生
監修医師:神奈川県立がんセンター消化器内科部長 町田望先生

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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レジメン(消化器)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。