治療スケジュール
概要
監修医師

CBDCA:カルボプラチン(パラプラチン®)

投与量コース投与日
AUC 51~4コースDay 1

Etop:エトポシド(エトポシド®)

投与量コース投与日
100mg/m²1~4コースDay 1~3

Atezolizumab:アテゾリズマブ(テセントリク®)

投与量コース投与日
1200mg/body1~4コース、 その後単独で維持投与Day 1

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬
副腎皮質ステロイド

その他

1コース21日間で、4コースまで繰り返す。
4コース終了後、Atezo維持療法でPDになるまで継続。
Atezoの初回投与時間は60分間、 忍容性により2回目以降は30分間に短縮可能。
Etop投与中、 穿刺部の静脈炎やフレア現象に注意を要する。
レジメン
CBDCA/Etop+Atezolizumab
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

   パラプラチン® (添付文書/AUC投与量計算)

   エトポシド® (添付文書)

   テセントリク® (添付文書/適正使用ガイド*)

*中外製薬株式会社の外部サイトへ遷移します¹⁾

休薬・減量・中止基準例

IMpower133試験²⁾³⁾

非血液毒性の発現時

ベースライン値以下 (又は Grade 1以下) に回復するまで、 最長63日間休薬すること。 

血液毒性の発現時

各サイクル開始時点で好中球数≧1,500/mm³かつ血小板数≧10万/mm³に回復するまで、 最長63日間休薬すること。

再開・中止基準

一度減量した場合、 用量を100%に増量することはできない (以下の表参照)。 2回の減量後にGrade 3又は4の毒性が発現した場合、 もしくは毒性のために63日間を超えて投与を延期した場合は投与を中止すること。 

投与開始基準例

IMpower133試験²⁾³⁾

  • 好中球数≧1500/mm³
  • リンパ球数≧500/mm³
  • 血小板数≧100,000/mm³
  • ヘモグロビン≧9.0g/dL
  • AST / ALT / ALP ≦2.5×正常域上限(ULN)
  • 血清ビリルビン≦1.25×ULN
  • 血清クレアチニン≦1.5×ULN
  • INR 又はAPTT≦1.5×ULN

主な有害事象

IMpower-133試験²⁾より引用

主な有害事象

レジメンの特徴と注意点

投与開始前の注意点

  • EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子がないことを事前に確認する。
  • PD-L1の発現頻度により効果に差がある。
  • コンパニオン診断薬については「肺癌患者におけるPD-L1検査の手引き⁴⁾」を参照する。
  • CBDCAによるアレルギー既往を確認する。
  • PSが0〜1が治験時の患者登録基準である。
  • 自己免疫疾患、 間質性肺疾患等の既往がある患者はirAEのリスク因子となるため投与前に事前に評価を行う。
  • 4コース終了後はPD、 有害事象あるいは臨床上の利益がない状況となるまでアテゾリズマブ単剤での維持療法の継続について判断が必要なことに留意する。

副作用と対策

  • 本剤のT細胞活性化作用により、 過度の免疫反応に起因すると考えられる様々な疾患や病態 (irAE) が現れることがある。
  • CBDCAとアミノグリコシド系抗菌薬の併用によって聴覚障害や腎毒性が増強する可能性があるため注意。
  • 内分泌機能検査 (TSH、 FT4、 ACTHなど) を定期的に実施し、モニタリングする。
  • その他尿検査や画像評価などの定期的なモニタリングも必要である。
  • 有害事象が疑われた場合には、 各専門医へのコンサルトも検討する。

>>irAEについてはこちらを参照下さい

肺癌診療ガイドライン2023の推奨⁴⁾

進展型小細胞肺癌 (PS 0-1) には、 プラチナ製剤/エトポシド併用療法+PD-L1阻害薬の併用治療を行うよう推奨する (推奨とエビデンスの強さ:1A)

使用上のワンポイント

ED-SCLCは根治不能であり、 患者のQOL改善と生存期問延長をを重視した選択が重要。 PS良好例では、 第一選択として以下の理由から白金製剤併用+ICIがあがる。 ICIが併用できないときや、間質性肺疾患合併時にはIPまたはPE療法が候補となる。

IP療法 (CDDP+CPT-11) が標準であった

📊JCOG9511試験

PS0~2の70歳以下を対象として、 IP療法 (CDDP+CPT-11)とPE療法 (CDDP+ETP)と比較した第Ⅲ相試験。 2回目の中間解析で有効中止され、 IP換法が優越性を示した。 OS中央値:12.8ヶ月 vs  9.4ヶ月。

その後、白金製剤併用+ICIが標準療法に

📊IMpower133試験

CE療法 +Atezolizumabが、 CE療法に対してOSを優位に延長した。 OS中央値:12.3ヵ月 vs 10.3ヶ月。

📊CASPIAN試験

PE/CE療法+Durvalumabが、 PE/CE療法に対してOSを優位に延長した。 OS中央値:13.0ヶ月 vs 10.3ヶ月。

ICIそれぞれの併用療法比較

1.維持療法中の投与間隔が異なる。 

  • CASPIAN試験:Durvalumab 4週
  • IMpower133試験:Atezolizumab 3週

2.CASPIAN試験ではCDDPの使用が可能。

直接比較した臨床試験はないが、 いずれの薬剤もPD-L1限害葉であり、 効果副作用に関しても同様と考えられる。

主要な臨床試験

📊IMpower133試験²⁾³⁾

化学療法歴のない進展型小細胞肺癌患者 (国内42例) を対象とした多施設共同ランダム化二重盲検第Ⅲ相試験
  • 介入群:CBDCA/Etop + Atezolizumab
  • 対照群:CBDCA/Etop + プラセボ

主要評価項目:OS中央値

  • CE + Atezolizumab群  12.3ヵ月
  • CE + プラセボ群    10.3ヵ月

主要評価項目:PFS中央値

  • CE + Atezolizumab群  5.2ヵ月
  • CE + プラセボ群    4.3ヵ月

副次評価項目:ORR中央値

  • CE + Atezolizumab群  60.2%
  • CE + プラセボ群    64.4%
PFS:無増悪生存期間、 OS:全生存期間、 ORR:奏効率

参考文献

1)  中外製薬株式会社 「テセントリク®︎適正使用ガイド」 (2022年9月作成) [最終閲覧 2023/11/19]

*中外製薬株式会社の外部サイトへ遷移します

2)  First-Line Atezolizumab plus Chemotherapy in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2018 Dec 6;379(23):2220-2229. PMID: 30280641

3)  Updated Overall Survival and PD-L1 Subgroup Analysis of Patients With Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer Treated With Atezolizumab, Carboplatin, and Etoposide (IMpower133). J Clin Oncol. 2021 Feb 20;39(6):619-630. PMID: 33439693

4) 日本肺癌学会. 肺癌診療ガイドライン−悪性胸膜中皮腫・ 胸腺腫瘍含む−2023年版

最終更新日:2023年11月19日
HOKUTO編集部医師監修

レジメン
CBDCA/Etop+Atezolizumab
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
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監修・協力医一覧
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CBDCA/Etop+Atezolizumab
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カルボプラチン/エトポシド+アテゾリズマブ
2023年11月19日更新

CBDCA:カルボプラチン(パラプラチン®)

投与量コース投与日
AUC 51~4コースDay 1

Etop:エトポシド(エトポシド®)

投与量コース投与日
100mg/m²1~4コースDay 1~3

Atezolizumab:アテゾリズマブ(テセントリク®)

投与量コース投与日
1200mg/body1~4コース、 その後単独で維持投与Day 1

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬
副腎皮質ステロイド

その他

1コース21日間で、4コースまで繰り返す。
4コース終了後、Atezo維持療法でPDになるまで継続。
Atezoの初回投与時間は60分間、 忍容性により2回目以降は30分間に短縮可能。
Etop投与中、 穿刺部の静脈炎やフレア現象に注意を要する。

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

   パラプラチン® (添付文書/AUC投与量計算)

   エトポシド® (添付文書)

   テセントリク® (添付文書/適正使用ガイド*)

*中外製薬株式会社の外部サイトへ遷移します¹⁾

休薬・減量・中止基準例

IMpower133試験²⁾³⁾

非血液毒性の発現時

ベースライン値以下 (又は Grade 1以下) に回復するまで、 最長63日間休薬すること。 

血液毒性の発現時

各サイクル開始時点で好中球数≧1,500/mm³かつ血小板数≧10万/mm³に回復するまで、 最長63日間休薬すること。

再開・中止基準

一度減量した場合、 用量を100%に増量することはできない (以下の表参照)。 2回の減量後にGrade 3又は4の毒性が発現した場合、 もしくは毒性のために63日間を超えて投与を延期した場合は投与を中止すること。 

投与開始基準例

IMpower133試験²⁾³⁾

  • 好中球数≧1500/mm³
  • リンパ球数≧500/mm³
  • 血小板数≧100,000/mm³
  • ヘモグロビン≧9.0g/dL
  • AST / ALT / ALP ≦2.5×正常域上限(ULN)
  • 血清ビリルビン≦1.25×ULN
  • 血清クレアチニン≦1.5×ULN
  • INR 又はAPTT≦1.5×ULN

主な有害事象

IMpower-133試験²⁾より引用

主な有害事象

レジメンの特徴と注意点

投与開始前の注意点

  • EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子がないことを事前に確認する。
  • PD-L1の発現頻度により効果に差がある。
  • コンパニオン診断薬については「肺癌患者におけるPD-L1検査の手引き⁴⁾」を参照する。
  • CBDCAによるアレルギー既往を確認する。
  • PSが0〜1が治験時の患者登録基準である。
  • 自己免疫疾患、 間質性肺疾患等の既往がある患者はirAEのリスク因子となるため投与前に事前に評価を行う。
  • 4コース終了後はPD、 有害事象あるいは臨床上の利益がない状況となるまでアテゾリズマブ単剤での維持療法の継続について判断が必要なことに留意する。

副作用と対策

  • 本剤のT細胞活性化作用により、 過度の免疫反応に起因すると考えられる様々な疾患や病態 (irAE) が現れることがある。
  • CBDCAとアミノグリコシド系抗菌薬の併用によって聴覚障害や腎毒性が増強する可能性があるため注意。
  • 内分泌機能検査 (TSH、 FT4、 ACTHなど) を定期的に実施し、モニタリングする。
  • その他尿検査や画像評価などの定期的なモニタリングも必要である。
  • 有害事象が疑われた場合には、 各専門医へのコンサルトも検討する。

>>irAEについてはこちらを参照下さい

肺癌診療ガイドライン2023の推奨⁴⁾

進展型小細胞肺癌 (PS 0-1) には、 プラチナ製剤/エトポシド併用療法+PD-L1阻害薬の併用治療を行うよう推奨する (推奨とエビデンスの強さ:1A)

使用上のワンポイント

ED-SCLCは根治不能であり、 患者のQOL改善と生存期問延長をを重視した選択が重要。 PS良好例では、 第一選択として以下の理由から白金製剤併用+ICIがあがる。 ICIが併用できないときや、間質性肺疾患合併時にはIPまたはPE療法が候補となる。

IP療法 (CDDP+CPT-11) が標準であった

📊JCOG9511試験

PS0~2の70歳以下を対象として、 IP療法 (CDDP+CPT-11)とPE療法 (CDDP+ETP)と比較した第Ⅲ相試験。 2回目の中間解析で有効中止され、 IP換法が優越性を示した。 OS中央値:12.8ヶ月 vs  9.4ヶ月。

その後、白金製剤併用+ICIが標準療法に

📊IMpower133試験

CE療法 +Atezolizumabが、 CE療法に対してOSを優位に延長した。 OS中央値:12.3ヵ月 vs 10.3ヶ月。

📊CASPIAN試験

PE/CE療法+Durvalumabが、 PE/CE療法に対してOSを優位に延長した。 OS中央値:13.0ヶ月 vs 10.3ヶ月。

ICIそれぞれの併用療法比較

1.維持療法中の投与間隔が異なる。 

  • CASPIAN試験:Durvalumab 4週
  • IMpower133試験:Atezolizumab 3週

2.CASPIAN試験ではCDDPの使用が可能。

直接比較した臨床試験はないが、 いずれの薬剤もPD-L1限害葉であり、 効果副作用に関しても同様と考えられる。

主要な臨床試験

📊IMpower133試験²⁾³⁾

化学療法歴のない進展型小細胞肺癌患者 (国内42例) を対象とした多施設共同ランダム化二重盲検第Ⅲ相試験
  • 介入群:CBDCA/Etop + Atezolizumab
  • 対照群:CBDCA/Etop + プラセボ

主要評価項目:OS中央値

  • CE + Atezolizumab群  12.3ヵ月
  • CE + プラセボ群    10.3ヵ月

主要評価項目:PFS中央値

  • CE + Atezolizumab群  5.2ヵ月
  • CE + プラセボ群    4.3ヵ月

副次評価項目:ORR中央値

  • CE + Atezolizumab群  60.2%
  • CE + プラセボ群    64.4%
PFS:無増悪生存期間、 OS:全生存期間、 ORR:奏効率

参考文献

1)  中外製薬株式会社 「テセントリク®︎適正使用ガイド」 (2022年9月作成) [最終閲覧 2023/11/19]

*中外製薬株式会社の外部サイトへ遷移します

2)  First-Line Atezolizumab plus Chemotherapy in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2018 Dec 6;379(23):2220-2229. PMID: 30280641

3)  Updated Overall Survival and PD-L1 Subgroup Analysis of Patients With Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer Treated With Atezolizumab, Carboplatin, and Etoposide (IMpower133). J Clin Oncol. 2021 Feb 20;39(6):619-630. PMID: 33439693

4) 日本肺癌学会. 肺癌診療ガイドライン−悪性胸膜中皮腫・ 胸腺腫瘍含む−2023年版

最終更新日:2023年11月19日
HOKUTO編集部医師監修

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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レジメン(呼吸器)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。