治療スケジュール
概要
監修医師

Fostamatinib:ホスタマチニブ(タバリス®)

投与量コース投与日
初回投与量:1回100mg 1日2回経口1~Day 1~
最高投与量:1回150mg 1日2回経口--
1段階減量:1回150mg 1日1回経口--
2段階減量:1回100mg 1日1回経口--
レジメン
Fostamatinib
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

タバリス® (添付文書100mg/150mg)

主な有害事象

R788-1301試験¹⁾ より引用.

  • 下痢31.8%
  • 高血圧27.3%
  • 好中球減少13.6%
  • 肝機能異常9.1%

特徴と注意点

作用機序

  • ホスタマチニブは経口投与後、 小腸のアルカリホスファターゼによってリン酸基が切断され、 活性本体であるR406に代謝される.
  • R406は脾臓のマクロファージに発現するFcy受容体を介したシグナル伝達を抑制することで(脾臓チロシンキナーゼ阻害)、 抗血小板自己抗体と結合した血小板のマクロファージによる貪食及び破壊を抑制する.
  • 適応:慢性特発性血小板減少性紫斑病 (cITP)
cITP:chronic idiopathic thrombocytopenic purpura
近年、 免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura)とも呼ばれる.
  • 以下の場合に使用可能.
  • 他の治療にて十分な効果が得られない場合.
  • 忍容性に問題があると考えられる場合.
  • 血小板数、 臨床症状からみて出血リスクが高いと考えられる場合.

用法・用量

  • 下記を参照の上、 治療上最小限の用量で使用する.

<用法・用量のポイント>

  • 初回100mgを1日2回.
  • 初回投与量を4週間以上投与しても効果不十分の場合は150mgを1日2回投与.
  • 血液学的検査、 肝機能検査、 及び血圧測定を定期的に行い、 用量を調節する.
  • 血小板数50,000/μL以下なら増量を考慮.
  • 血小板数が250,000/μL超に増加した場合は、 減量又は休薬する.
  • 12週間投与しても効果不十分と判断される場合には中止を考慮.

有害事象による減量又は中止の目安

下痢

  • Grade3以上で休薬.
  • Grade1以下に改善後、 1段階減量して再開.

高血圧

  • 収縮期血圧140mmHg以上又は拡張期血圧90mmHg以上.
  • 必要に応じて降圧剤等の投与を行う.
  • コントロール不良の場合には減量又は休薬.
  • 収縮期血圧160mmHg以上又は拡張期血圧100mmHg以上.
  • 降圧剤の投与等を行う.
  • コントロール不良の場合には休薬.
  • 収縮期血圧180mmHg以上又は拡張期血圧110mmHg以上.
  • 休薬又は減量し、 降圧剤等の投与を行う.
  • いずれの場合も、 血圧がコントロールされた場合は、 一段階減量で再開.

好中球減少

  • 好中球数が1,000/μL未満に減少した場合.
  • 好中球数を追加で測定し、 1,000/μLであった場合は休薬.
  • 休薬により好中球数が1,500/μL超えまで回復したら、 一段階減量で再開.

肝機能障害

① AST又はALTが基準値上限の3倍以上5倍未満

② 総ビリルビンが基準値上限の2倍超

③ AST又はALTが基準値上限の5倍以上

④ AST又はALTが基準値上限の3倍以上かつ総ビリルビンが基準値上限の2倍超

  • ①か②のいずれかを満たし、 悪心、 嘔吐、 腹痛等の症状が認められる場合.
  • 休薬.
  • ①か②のいずれかを満たし、 症状が認められない場合.
  • AST又はALTの上昇が持続する場合は、 減量又は休薬.
  • ③を満たす場合
  • 休薬.
  • ④を満たす場合
  • 中止.
  • 休薬後、 AST又はALT及び総ビリルビンが基準値上限の1.5倍未満に回復した場合は、 一段階減量で再開.
*GradeはCTCAE ver 5.0による.

関連する臨床試験の結果

R788-1301試験¹⁾

概要

  • 国内第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検並行群間試験
  • 対象:治療歴のある又は忍容性に問題のあったcITP患者34例.
  • 主要評価項目: Stable platelet response.
Stable platelet responseの定義:投与14~24週までの6回の来院のうち、 レスキュー治療を行わずに4回以上で血小板数が50,000/μL以上を達成した患者
  • 介入:開始用量100mg、 1日2回. 投与開始から4週以降に血小板数が50,000μL未満かつ忍容性が良好である場合は150mg、 1日2回に増量可能.

結果

  • Stable platelet response達成割合: ホスタマチニブ群 36.4% (8/22例) vs プラセボ群 0% (0/12例)
  • Fisher’s Exact検定は、 p=0.030. (群間差:36.4%[95% CI:3.1, 59.3]p=0.030)

C-788-047試験、 C788-048試験²⁾

概要

  • 海外第Ⅲ相多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験.
  • 対象:治療歴のある又は忍容性に問題のあったcITP患者150例.
  • 主要評価項目: Stable platelet response.

(Stable platelet responseの定義:投与14~24週までの6回の来院のうち、 レスキュー治療を行わずに4回以上で血小板数が50,000/μL以上を達成した患者)

  • 介入:開始用量100mg1日2回、 投与開始から4週以降に血小板数が50,000/μL未満かつ忍容性が良好である場合は150mg1日2回に増量可能.

結果

  • Stable platelet response達成割合:ホスタマチニブ群 17.6% (9/51例)及び18.0%(9/50例) vs プラセボ群 0%(0/25例)及び4.2%(1/24例).
  • Fisher’s Exact検定は、 それぞれp=0.0261、 p=0.1519. (群間差:17.6%[95% CI:7.2, 28.1]p=0.0261、 13.8%[95% CI:0.5, 27.1]p=0.0261).

参考文献

  1. Br J Haematol. 2023 Mar;200(6):802-811.
  2. Am J Hematol. 2018 Jul;93(7):921-930.
  3. タバリス®製品情報
  4. タバリス®インタビューフォーム

関連コンテンツ

🥼 特発性血小板減少性紫斑病

HOKUTOコンテンツ 専門医監修

🔢 ITP重症度分類

HOKUTO表・計算ツール

最終更新:2023年12月15日
執筆担当:小澤病院薬剤部 長剛広
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

レジメン
Fostamatinib
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン
Fostamatinib
レジメン
Fostamatinib

Fostamatinib

ホスタマチニブ(タバリス®)
2024年01月02日更新

Fostamatinib:ホスタマチニブ(タバリス®)

投与量コース投与日
初回投与量:1回100mg 1日2回経口1~Day 1~
最高投与量:1回150mg 1日2回経口--
1段階減量:1回150mg 1日1回経口--
2段階減量:1回100mg 1日1回経口--

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

タバリス® (添付文書100mg/150mg)

主な有害事象

R788-1301試験¹⁾ より引用.

  • 下痢31.8%
  • 高血圧27.3%
  • 好中球減少13.6%
  • 肝機能異常9.1%

特徴と注意点

作用機序

  • ホスタマチニブは経口投与後、 小腸のアルカリホスファターゼによってリン酸基が切断され、 活性本体であるR406に代謝される.
  • R406は脾臓のマクロファージに発現するFcy受容体を介したシグナル伝達を抑制することで(脾臓チロシンキナーゼ阻害)、 抗血小板自己抗体と結合した血小板のマクロファージによる貪食及び破壊を抑制する.
  • 適応:慢性特発性血小板減少性紫斑病 (cITP)
cITP:chronic idiopathic thrombocytopenic purpura
近年、 免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura)とも呼ばれる.
  • 以下の場合に使用可能.
  • 他の治療にて十分な効果が得られない場合.
  • 忍容性に問題があると考えられる場合.
  • 血小板数、 臨床症状からみて出血リスクが高いと考えられる場合.

用法・用量

  • 下記を参照の上、 治療上最小限の用量で使用する.

<用法・用量のポイント>

  • 初回100mgを1日2回.
  • 初回投与量を4週間以上投与しても効果不十分の場合は150mgを1日2回投与.
  • 血液学的検査、 肝機能検査、 及び血圧測定を定期的に行い、 用量を調節する.
  • 血小板数50,000/μL以下なら増量を考慮.
  • 血小板数が250,000/μL超に増加した場合は、 減量又は休薬する.
  • 12週間投与しても効果不十分と判断される場合には中止を考慮.

有害事象による減量又は中止の目安

下痢

  • Grade3以上で休薬.
  • Grade1以下に改善後、 1段階減量して再開.

高血圧

  • 収縮期血圧140mmHg以上又は拡張期血圧90mmHg以上.
  • 必要に応じて降圧剤等の投与を行う.
  • コントロール不良の場合には減量又は休薬.
  • 収縮期血圧160mmHg以上又は拡張期血圧100mmHg以上.
  • 降圧剤の投与等を行う.
  • コントロール不良の場合には休薬.
  • 収縮期血圧180mmHg以上又は拡張期血圧110mmHg以上.
  • 休薬又は減量し、 降圧剤等の投与を行う.
  • いずれの場合も、 血圧がコントロールされた場合は、 一段階減量で再開.

好中球減少

  • 好中球数が1,000/μL未満に減少した場合.
  • 好中球数を追加で測定し、 1,000/μLであった場合は休薬.
  • 休薬により好中球数が1,500/μL超えまで回復したら、 一段階減量で再開.

肝機能障害

① AST又はALTが基準値上限の3倍以上5倍未満

② 総ビリルビンが基準値上限の2倍超

③ AST又はALTが基準値上限の5倍以上

④ AST又はALTが基準値上限の3倍以上かつ総ビリルビンが基準値上限の2倍超

  • ①か②のいずれかを満たし、 悪心、 嘔吐、 腹痛等の症状が認められる場合.
  • 休薬.
  • ①か②のいずれかを満たし、 症状が認められない場合.
  • AST又はALTの上昇が持続する場合は、 減量又は休薬.
  • ③を満たす場合
  • 休薬.
  • ④を満たす場合
  • 中止.
  • 休薬後、 AST又はALT及び総ビリルビンが基準値上限の1.5倍未満に回復した場合は、 一段階減量で再開.
*GradeはCTCAE ver 5.0による.

関連する臨床試験の結果

R788-1301試験¹⁾

概要

  • 国内第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検並行群間試験
  • 対象:治療歴のある又は忍容性に問題のあったcITP患者34例.
  • 主要評価項目: Stable platelet response.
Stable platelet responseの定義:投与14~24週までの6回の来院のうち、 レスキュー治療を行わずに4回以上で血小板数が50,000/μL以上を達成した患者
  • 介入:開始用量100mg、 1日2回. 投与開始から4週以降に血小板数が50,000μL未満かつ忍容性が良好である場合は150mg、 1日2回に増量可能.

結果

  • Stable platelet response達成割合: ホスタマチニブ群 36.4% (8/22例) vs プラセボ群 0% (0/12例)
  • Fisher’s Exact検定は、 p=0.030. (群間差:36.4%[95% CI:3.1, 59.3]p=0.030)

C-788-047試験、 C788-048試験²⁾

概要

  • 海外第Ⅲ相多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検試験.
  • 対象:治療歴のある又は忍容性に問題のあったcITP患者150例.
  • 主要評価項目: Stable platelet response.

(Stable platelet responseの定義:投与14~24週までの6回の来院のうち、 レスキュー治療を行わずに4回以上で血小板数が50,000/μL以上を達成した患者)

  • 介入:開始用量100mg1日2回、 投与開始から4週以降に血小板数が50,000/μL未満かつ忍容性が良好である場合は150mg1日2回に増量可能.

結果

  • Stable platelet response達成割合:ホスタマチニブ群 17.6% (9/51例)及び18.0%(9/50例) vs プラセボ群 0%(0/25例)及び4.2%(1/24例).
  • Fisher’s Exact検定は、 それぞれp=0.0261、 p=0.1519. (群間差:17.6%[95% CI:7.2, 28.1]p=0.0261、 13.8%[95% CI:0.5, 27.1]p=0.0261).

参考文献

  1. Br J Haematol. 2023 Mar;200(6):802-811.
  2. Am J Hematol. 2018 Jul;93(7):921-930.
  3. タバリス®製品情報
  4. タバリス®インタビューフォーム

関連コンテンツ

🥼 特発性血小板減少性紫斑病

HOKUTOコンテンツ 専門医監修

🔢 ITP重症度分類

HOKUTO表・計算ツール

最終更新:2023年12月15日
執筆担当:小澤病院薬剤部 長剛広
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン(血液)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。