治療スケジュール
概要
監修医師

CPA:シクロホスファミド(エンドキサン®)

投与量コース投与日
300mg/m²/回 点滴静注1、3、5、7Day 1~3
(12時間ごと)-(2回/日 計6回)

VCR:ビンクリスチン(オンコビン®)

投与量コース投与日
1.4mg/m² 点滴静注1、3、5、7Day 4、11
(最大2.0mg/body) --

DXR:ドキソルビシン(アドリアシン®)

投与量コース投与日
50mg/m² 点滴静注1、3、5、7Day 4

DEX:デキサメタゾン(デカドロン®)

投与量コース投与日
40mg/body 点滴静注1、3、5、7Day 1~4、11~14

MTX:メトトレキサート(メソトレキセート®)

投与量コース投与日
①200mg/m² 点滴静注2、4、6、8Day 1
(2時間で投与)--

MTX:メトトレキサート(メソトレキセート®)

投与量コース投与日
②800mg/m² 点滴静注2、4、6、8Day 1
(22時間で投与)--

AraC:シタラビン(キロサイド®)

投与量コース投与日
2,000mg/m² 点滴静注2、4、6、8Day 2~3
(12時間ごと)-(2回/日 計4回)

前投薬

HyperCVAD療法は、 Day1~4に5-HT3受容体拮抗薬を使用.
MA療法は、 Day1~3に5-HT3受容体拮抗薬を使用.
NK1受容体拮抗薬の使用を考慮.
リツキシマブ併用の場合、 解熱鎮痛薬、 抗ヒスタミン薬を使用.

その他

1コースは21日間.
HyperCVAD療法とMA療法を交互に4回ずつ行う.
CD20陽性の場合は、 リツキシマブをHyperCVADまたはMAのDay 0に併用.
MTX持続静注終了12時間後からロイコボリン救援療法を行う (詳細は概要欄を参照).
AraCは本邦の保険適応に合わせ2,000mg/m²/12hrとしているが、 原法は3,000mg/m²/12hr.
AraCを3,000mg/m²/12hrとして使用する場合、 60歳以上は1,000mg/m²/12hrおきに減量.
VCRやDXRは静注も可. 各施設の運用方針による.
レジメン
HyperCVAD/MA
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

※リツキサン®/リツキシマブBSⓇ併用時

*適正使用ガイドは「全薬工業株式会社」の外部サイトに遷移します。

主な有害事象

Cancer. 2004 Dec 15;101(12):2788-801.¹⁾ HyperCVAD導入療法時SEより引用

骨髄抑制

  • 好中球減少

重大な有害事象

  • 敗血症 (11%)
  • 肺炎 (16%)
  • 不明熱 (37%)

その他

  • 真菌感染症 (4%)
  • 神経毒性 (4%)
  • 中等度から重度の粘膜炎 (4%)
  • 中等度から重度の下痢 (3%)
  • イレウス (1%)
  • DIC (3%)

特徴と注意点

  • HyperCVAD/MA療法は、 40歳以上の成人ALL患者に対する標準治療の一つ. 
  • B細胞成人ALL患者において、 CD20陽性は転帰不良に関連²⁾³⁾. 
  • CD20陽性腫瘍に使用する場合はリツキシマブの併用を考慮⁴⁾. 
  • 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要
  • HBV再活性化リスクを考慮し、 適切なスクリーニング検査とモニタリングを行う
  • シクロフォスファミドは出血性膀胱炎のリスクがあるため、 水分摂取を励行し排尿を促す
  • ドキソルビシンには累積心毒性があるため、 累積上限量は500mg/m²
  • リツキシマブはinfusion reactionのリスクが高いため、 予防薬の投与を行い、 バイタルサインのモニタリングを行った上で段階的に投与速度をあげる. 
  • メトトレキサート (MTX) の副作用軽減目的として、 MTX終了12時間後からロイコボリンⓇ救援療法 (15mg/6hrおき 4日間) を行う. 
  • MTX投与開始後、 48時間後・72時間後のMTX血中濃度が、 それぞれ1µM未満、 0.1µM未満であることを確認する. どちらか一方でも超えた場合は、 各々1µM未満、 0.1µM未満になるまで、 十分な水分の補給、 尿のアルカリ化、 ロイコボリンⓇの増量や投与延長を行う. 
  • MTX大量療法に伴い、 薬物相互作用の観点から、 MTX投与前から排泄完了まではフロセミド、 NSAIDs、 ST合剤、 PPIの使用は避ける
  • シタラビン大量療法に伴う結膜炎リスクを低減するため、 ステロイド含有点眼薬の使用を考慮. 
  • G-CSF製剤の投与を考慮. 

関連する臨床試験の結果

Cancer. 2004 Dec 15;101(12):2788-801.¹⁾

概要

  • HyperCVAD/MA療法を受けたALL患者288人に対しての臨床試験. 
  • 年齢の中央値40歳、 うち20%が60歳以上. Ph陽性は17%、 T細胞性ALLは13%. 
  • 完全奏功(CR)、 5年生存率、 5年CR継続率、 CR期間の予後因子について調査.

結果

  • 追跡期間中央値63ヵ月.
  • CR:92%(81%が1コースで達成). 
  • CR率を年齢で比較: 30歳未満のCR率99%、 60歳以上はCR率80%. これは主に導入時の死亡率が高かったためと推測された. 
  • 誘導死亡率:5% (60歳未満の場合は2%、 60歳以上の場合は15%) . 
  • 生存期間中央値:32ヵ月.
  • 5年生存率:38%、 5年CR継続率:38%. 
  • CR期間の予後因子:年齢45歳以上、 白血球数50×10⁹/L以上、 PS不良 (Eastern Cooperative Oncology Groupスコア3~4) 、 Ph陽性疾患、 仏・米・英L2形態、 CR達成までのコース数1以上、 14日目の骨髄芽球数5%以上. 
  • 予後因子から、 低リスク群 (スコア0~1:37%) 、 中間リスク群 (スコア2~3:36%) 、 低リスク群 (スコア4以上:27%) に分けられ、 5年間のCR継続率はそれぞれ52%、 37%、 10%. 
  • 本試験でHyperCVAD療法を受けた患者群と、 過去の別調査でVAD療法を受けた患者群⁵⁾を比較すると、 CR率はHyperCVAD療法群が有意に高く (p<0.001) 、 生存率と寛解期間も優れていた. 

参考文献

  1. Cancer. 2004 Dec 15;101(12):2788-801.
  2. Blood. 2009 Jun 18;113(25):6330-7.
  3. Haematologica. 2010 Feb;95(2):324-8.
  4. J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9.
  5. J Clin Oncol. 1990 Jun;8(6):994-1004.

最終更新:2021年12月25日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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HyperCVAD / High dose MTX+AraC交替療法
2023年05月14日更新

CPA:シクロホスファミド(エンドキサン®)

投与量コース投与日
300mg/m²/回 点滴静注1、3、5、7Day 1~3
(12時間ごと)-(2回/日 計6回)

VCR:ビンクリスチン(オンコビン®)

投与量コース投与日
1.4mg/m² 点滴静注1、3、5、7Day 4、11
(最大2.0mg/body) --

DXR:ドキソルビシン(アドリアシン®)

投与量コース投与日
50mg/m² 点滴静注1、3、5、7Day 4

DEX:デキサメタゾン(デカドロン®)

投与量コース投与日
40mg/body 点滴静注1、3、5、7Day 1~4、11~14

MTX:メトトレキサート(メソトレキセート®)

投与量コース投与日
①200mg/m² 点滴静注2、4、6、8Day 1
(2時間で投与)--

MTX:メトトレキサート(メソトレキセート®)

投与量コース投与日
②800mg/m² 点滴静注2、4、6、8Day 1
(22時間で投与)--

AraC:シタラビン(キロサイド®)

投与量コース投与日
2,000mg/m² 点滴静注2、4、6、8Day 2~3
(12時間ごと)-(2回/日 計4回)

前投薬

HyperCVAD療法は、 Day1~4に5-HT3受容体拮抗薬を使用.
MA療法は、 Day1~3に5-HT3受容体拮抗薬を使用.
NK1受容体拮抗薬の使用を考慮.
リツキシマブ併用の場合、 解熱鎮痛薬、 抗ヒスタミン薬を使用.

その他

1コースは21日間.
HyperCVAD療法とMA療法を交互に4回ずつ行う.
CD20陽性の場合は、 リツキシマブをHyperCVADまたはMAのDay 0に併用.
MTX持続静注終了12時間後からロイコボリン救援療法を行う (詳細は概要欄を参照).
AraCは本邦の保険適応に合わせ2,000mg/m²/12hrとしているが、 原法は3,000mg/m²/12hr.
AraCを3,000mg/m²/12hrとして使用する場合、 60歳以上は1,000mg/m²/12hrおきに減量.
VCRやDXRは静注も可. 各施設の運用方針による.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

※リツキサン®/リツキシマブBSⓇ併用時

*適正使用ガイドは「全薬工業株式会社」の外部サイトに遷移します。

主な有害事象

Cancer. 2004 Dec 15;101(12):2788-801.¹⁾ HyperCVAD導入療法時SEより引用

骨髄抑制

  • 好中球減少

重大な有害事象

  • 敗血症 (11%)
  • 肺炎 (16%)
  • 不明熱 (37%)

その他

  • 真菌感染症 (4%)
  • 神経毒性 (4%)
  • 中等度から重度の粘膜炎 (4%)
  • 中等度から重度の下痢 (3%)
  • イレウス (1%)
  • DIC (3%)

特徴と注意点

  • HyperCVAD/MA療法は、 40歳以上の成人ALL患者に対する標準治療の一つ. 
  • B細胞成人ALL患者において、 CD20陽性は転帰不良に関連²⁾³⁾. 
  • CD20陽性腫瘍に使用する場合はリツキシマブの併用を考慮⁴⁾. 
  • 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要
  • HBV再活性化リスクを考慮し、 適切なスクリーニング検査とモニタリングを行う
  • シクロフォスファミドは出血性膀胱炎のリスクがあるため、 水分摂取を励行し排尿を促す
  • ドキソルビシンには累積心毒性があるため、 累積上限量は500mg/m²
  • リツキシマブはinfusion reactionのリスクが高いため、 予防薬の投与を行い、 バイタルサインのモニタリングを行った上で段階的に投与速度をあげる. 
  • メトトレキサート (MTX) の副作用軽減目的として、 MTX終了12時間後からロイコボリンⓇ救援療法 (15mg/6hrおき 4日間) を行う. 
  • MTX投与開始後、 48時間後・72時間後のMTX血中濃度が、 それぞれ1µM未満、 0.1µM未満であることを確認する. どちらか一方でも超えた場合は、 各々1µM未満、 0.1µM未満になるまで、 十分な水分の補給、 尿のアルカリ化、 ロイコボリンⓇの増量や投与延長を行う. 
  • MTX大量療法に伴い、 薬物相互作用の観点から、 MTX投与前から排泄完了まではフロセミド、 NSAIDs、 ST合剤、 PPIの使用は避ける
  • シタラビン大量療法に伴う結膜炎リスクを低減するため、 ステロイド含有点眼薬の使用を考慮. 
  • G-CSF製剤の投与を考慮. 

関連する臨床試験の結果

Cancer. 2004 Dec 15;101(12):2788-801.¹⁾

概要

  • HyperCVAD/MA療法を受けたALL患者288人に対しての臨床試験. 
  • 年齢の中央値40歳、 うち20%が60歳以上. Ph陽性は17%、 T細胞性ALLは13%. 
  • 完全奏功(CR)、 5年生存率、 5年CR継続率、 CR期間の予後因子について調査.

結果

  • 追跡期間中央値63ヵ月.
  • CR:92%(81%が1コースで達成). 
  • CR率を年齢で比較: 30歳未満のCR率99%、 60歳以上はCR率80%. これは主に導入時の死亡率が高かったためと推測された. 
  • 誘導死亡率:5% (60歳未満の場合は2%、 60歳以上の場合は15%) . 
  • 生存期間中央値:32ヵ月.
  • 5年生存率:38%、 5年CR継続率:38%. 
  • CR期間の予後因子:年齢45歳以上、 白血球数50×10⁹/L以上、 PS不良 (Eastern Cooperative Oncology Groupスコア3~4) 、 Ph陽性疾患、 仏・米・英L2形態、 CR達成までのコース数1以上、 14日目の骨髄芽球数5%以上. 
  • 予後因子から、 低リスク群 (スコア0~1:37%) 、 中間リスク群 (スコア2~3:36%) 、 低リスク群 (スコア4以上:27%) に分けられ、 5年間のCR継続率はそれぞれ52%、 37%、 10%. 
  • 本試験でHyperCVAD療法を受けた患者群と、 過去の別調査でVAD療法を受けた患者群⁵⁾を比較すると、 CR率はHyperCVAD療法群が有意に高く (p<0.001) 、 生存率と寛解期間も優れていた. 

参考文献

  1. Cancer. 2004 Dec 15;101(12):2788-801.
  2. Blood. 2009 Jun 18;113(25):6330-7.
  3. Haematologica. 2010 Feb;95(2):324-8.
  4. J Clin Oncol. 2010 Aug 20;28(24):3880-9.
  5. J Clin Oncol. 1990 Jun;8(6):994-1004.

最終更新:2021年12月25日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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