治療スケジュール
概要
監修医師

Axi-cel:axicabtagen ciloleucel(イエスカルタ®)

投与量コース投与日
抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg (体重100kg以上の最大投与量2×10⁸個)1-Day1

前投薬

Infusion reaction軽減のため、 投与約1時間前に抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬を投与.

その他

製造販売業者による説明を受けた医師のもとで実施する.
投与の2日前までに必要に応じてリンパ球除去化学療法を行う.
サイトカイン放出症候群の緊急時に備えて、 トシリズマブの在庫を確保する.
レジメン
Axi-cel (Axicabtagene ciloleucel)
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは「第一三共株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

ZUMA-7試験³⁾より引用

骨髄抑制

  • 好中球減少 (93%、 ≧Grade3 9%)
  • 貧血 (42%、 ≧Grade3 30%)
  • リンパ球減少 (32%、 ≧Grade3 29%)
  • 血小板減少 (29%、 ≧Grade3 15%)
  • 発熱性好中球減少症 (2%、 ≧Grade3 2%)

主な有害事象

  • サイトカイン放出症候群 (92%、 ≧Grade3 6%)
  • 神経系事象 (60%、 ≧Grade3 21%)
  • 発熱 (93%、 ≧Grade3 9%)
  • 低血圧 (44%、 ≧Grade3 11%)
  • 倦怠感 (42%、 ≧Grade3 6%)
  • 下痢 (42%、 ≧Grade3 2%)
  • 洞頻脈 (34%、 ≧Grade3 2%)

特徴と注意点

作用機序

  • 遺伝子組換えガンマレトロウイルスを用いてCD19を特異的に認識する抗CD19キメラ抗原受容体 (Chimeric Antigen Receptor;CAR) をコードする遺伝子を患者自身のT細胞に導入したCAR発現T細胞を構成細胞とする細胞加工製品である.
  • 抗CD19CAR T細胞がCD19発現標的細胞を認識すると、 CAR T細胞の活性化、 増殖、 サイトカイン産生及び細胞障害などのエフェクター機能が誘導され抗腫瘍効果を示す. CD19はB細胞系列にのみ発現し、 B細胞性非ホジキンリンパ腫の全亜型で維持されていることから、 B細胞性腫瘍に対する抗腫瘍効果が期待される.

適応疾患

以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫

  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 原発性縦郭大細胞型B細胞リンパ腫
  • 形質転換濾胞性リンパ腫
  • 高悪性度B細胞リンパ腫

適格基準

  • 再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
  • CD19抗原を標的としたCAR-T療法の治療歴がない患者

白血球アフェレーシス

  • 非動員末梢血単核球を採取し、 白血球アフェレーシス産物を凍結保存する.
*製造販売業者が提供するマニュアル を参照.

リンパ球除去化学療法前の抗腫瘍療法 (ブリッジング療法)

  • ZUMA-1試験¹⁾:Axi-celの製造期間中の患者の病態を安定させるための抗腫瘍療法 (ブリッジング療法) は許容されていなかった.
  • J201試験²⁾:ブリッジング療法は許容されていなかった. ただし、 副腎皮質ステロイドはプレドニゾロン換算5mg/day以上の投与がAxi-cel投与前5日間を除き許容された.
  • ZUMA-7試験³⁾:Axi-cel投与前5日間まで副腎皮質ステロイド (デキサメタゾン20-40mg相当量を1-4日間) を投与可能とした.

ZUMA-7試験³⁾におけるブリッジング療法》

  • 35%がブリッジング療法を実施
  • デキサメタゾン 28%
  • メチルプレドニゾロン 4%
  • プレドニゾン 5%
  • プレドニゾロン 1%

リンパ球除去化学療法

  • CAR-T細胞の生着促進等の目的でD合成阻害作用等の殺細胞作用あるいはリンパ球減少に伴う免疫抑制作用を有する薬剤を投与する.
  • Axi-cel投与の5日前から3日間連続で投与する:シクロホスファミド 500mg/m² 1日1回3日間+フルダラビン 30mg/m² 1日1回3日間.
  • ZUMA-1試験¹⁾、 J201試験²⁾、 ZUMA-7試験³⁾ではリンパ球が100/mm³であることを確認の上リンパ球除去化学療法を実施した.

投与時の注意事項

  • B型肝炎又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者、 HIV感染者は、 ウイルスが再活性化又は増加する可能性がある.
  • Axi-cel投与前に、 静注用バッグのラベルにより患者本人用であることを確認する.
  • Infusion reaction軽減のため、 Axi-cel投与の約1時間前に抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬を投与する.
  • 生命を脅かす緊急事態を除き、 副腎皮質ステロイド薬は使用しない.
  • サイトカイン放出症候群 (CRS) の緊急時に備え、 トシリズマブを速やかに使用できるよう準備する.
  • 静注用バッグは融解後室温下で3時間までは安定であるため、 融解後3時間以内に投与を完了する.
  • 白血球除去フィルターは使用せず、 ラテックスフリーの点滴ルートを用いる.
  • 注入速度は5分以上かけて30分を超えないように投与する.
  • 投与前後に生理食塩水にてプライミングを実施する.
  • 移植のために血液、 臓器、 組織及び細胞を提供しないよう指導する.
  • レトロウイルスベクターによる意図しない挿入変異あるいは増殖性ウイルスに起因する二次性悪性腫瘍が発現する理論的リスクを有する.

副作用と対策【サイトカイン放出症候群;CRS】

  • 活性化されたT細胞により放出されるサイトカインによって引き起こされる全身性炎症反応.
  • 体内でのCAR発現生T細胞の増殖、 活性化及び腫瘍細胞の死滅の結果発現する.
  • Axi-cel投与後1週間は患者の状態に注意し、 少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 症状:高熱、 悪寒、 筋肉痛、 関節痛、 悪心、 嘔吐、 下痢、 発汗、 発疹、 食欲不振、 疲労、 頭痛、 低血圧、 呼吸困難、 呼吸不全、 肺水腫、 頻呼吸、 低酸素症、 凝固障害、 心不全、 不整脈、 腎不全、 肝障害、 播種性血管内凝固症候群、 毛細血管漏出症候群、 血球貪食症候群、 マクロファージ活性化症候群、 急性呼吸窮迫症候群等.
  • CRS発現時期中央値 (範囲):3.0 (1-10) 日 (ZUMA-7試験³⁾).
  • CRS持続期間中央値 (範囲):7.0 (2-43) 日 (ZUMA-7試験³⁾).

《サイトカイン放出症候群管理アルゴリズム》

ZUMA-7試験³⁾におけるCRS治療》

  • トシリズマブ投与:71% (1回投与:24%、 2回投与:17%、 3回投与:13%、 4回投与:10%、 5回以上投与:6%).
  • 副腎皮質ステロイド:25%.

副作用と対策【神経系事象】

  • 発現メカニズムは不明. 多くは一過性であり、 ほとんどが支持療法もしくは治療を要せず症状が消失.
  • Axi-cel投与後少なくとも8週間は自動車の運転及び危険を伴う行動に従事しないよう指導する.
  • 症状:脳症、 せん妄、 不安、 浮動性めまい、 振戦、 意識障害、 失見当識、 頭痛、 錯乱、 激越、 痙攣発作、 無言症、 失語症等.
  • 神経系事象発現時期中央値 (範囲):7.0 (1-133) 日 (ZUMA-7試験³⁾).
  • 神経系事象持続期間中央値 (範囲):8.5 (1-817) 日 (ZUMA-7試験³⁾).

《神経系事象管理アルゴリズム》

副作用と対策【感染症】

  • 低γグロブリン血症又は無γグロブリン血症や重篤な遷延する血球減少に伴い、 細菌、 真菌、 ウイルス等による重度の感染症や発熱性好中球減少症が現れることがある.
  • 患者の易感染状態に応じた標準的な感染予防療法を実施する. National Comprehensive Cancer Network (NCCN) ガイドライン (NCCN clinical practice guideline in oncology: Prevention and Treatment of Cancer-Related Infection) 参照.

副作用と対策【低γグロブリン血症】

  • 正常なB細胞にもCD19が発現しているため、 一時的又は持続的にB細胞の枯渇が引き起こされ、 低γグロブリン血症を発症することがある.
  • CAR発現生T細胞が患者の体内で持続する限り、 低γグロブリン血症が持続する可能性がある.
  • 定期的に免疫グロブリンを測定し、 必要に応じて免疫補充療法を実施する.

副作用と対策【血球減少】

  • Axi-cel投与後数週間以上にわたり白血球減少、 好中球減少 (発熱性好中球減少症含む)、 血小板減少症、 貧血等が現れることがある.
  • 発熱性好中球減少症が認められた場合は日本臨床主要学会による発熱性好中球減少症診療ガイドライン等を参照.

関連する臨床試験の結果

ZUMA-1試験¹⁾

概要

  • 非盲検非対称海外多施設共同第I/II相試験.
  • 18歳以上の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象にAxi-celの有効性および安全性を評価.
  • 対象:以下の①又は②に該当し、 少なくとも抗CD20モノクローナル抗体及びアントラサイクリン含有化学療法による治療歴があり、 中枢神経系にリンパ腫病変が認められない患者.

①最終の化学療法に対し難治性

②自家造血幹細胞移植後の疾患進行又は再発、 あるいは移植後サルベージ療法に無効又は再発

  • 投与量:抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg (体重100kg超は2.0×10⁸個).

結果

  • 追跡期間中央値:15.4ヵ月.
  • 客観的奏効率 (完全奏効+部分奏効):82% (95%CI 73-89)、 完全奏効率:54%.
  • 奏効持続期間中央値:11.1ヵ月 (95%CI 3.9-not be estimated).
  • 無増悪生存期間中央値:5.8ヵ月 (95%CI 3.3-not be estimated).
  • 無増悪生存率 (6ヵ月):49% (95%CI 39-58).
  • 無増悪生存率 (12ヵ月):44% (95%CI 34-53).
  • 無増悪生存率 (15ヵ月):41% (95%CI 31-50).
  • 全生存期間中央値:未到達.
  • 全生存率 (6ヵ月):78% (95%CI 69-85).
  • 全生存率 (12ヵ月):59% (95%CI 49-68).
  • 全生存率 (18ヵ月):52% (95%CI 41-62).

J201試験²⁾

概要

  • 非盲検非対称国内第I/II相試験.
  • 20歳以上の再発又は難治性の日本人大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象にAxi-celの有効性および安全性を評価.
  • 対象:ZUMA-1試験¹⁾参照.
  • 投与量:抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg.

結果

  • 追跡期間最低値:3.0ヵ月.
  • 客観的奏効率 (完全奏効+部分奏効):86.7% (95%CI 59.5-98.3)、 完全奏効率:26.7%、 部分奏効率:60.0%.
  • 奏効持続期間中央値:5.6ヵ月 (95%CI 2.2-not estimable).
  • 無増悪生存期間中央値:6.5ヵ月 (95%CI 2.9-not be estimated).
  • 全生存期間中央値:未到達 (95%CI 6.9-not be estimated)

ZUMA-7試験³⁾

概要

  • 非盲検無作為化海外第III相試験.
  • 18歳以上の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象にAxi-celと標準治療 (救援化学療法及び奏効例への自家造血幹細胞移植併用大量化学療法) の有効性および安全性を比較.
  • 対象:抗CD20モノクローナル抗体及びアントラサイクリン含有化学療法に難治性はまた12ヵ月以内に再発した自家造血幹細胞移植適応患者で、 中枢神経系にリンパ腫病変が認められない患者.
  • 投与量:抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg.

結果

  • 追跡期間中央値:24.9ヵ月.
  • 無イベント生存期間中央値: Axi-cel群 8.3ヵ月 (95%CI 4.5-15.8) vs 標準治療群 2.0ヵ月 (95%CI 1.6-2.8).
  • 無イベント生存率 (24ヵ月): Axi-cel群 41% (95%CI 33-48) vs 標準治療群 16% (95%CI 11-22) (HR 0.40、 95%CI 0.31-0.51、 p<0.001). 
  • 全生存率 (24ヵ月): Axi-cel群 not reached (95%CI 28.3-not be estimated) vs 標準治療群 35.1% (95%CI 18.5-not be estimated) (HR 0.73、 95%CI 0.53-1.01). 
  • 無増悪生存率 (24ヵ月): Axi-cel群 14.7% (95%CI 5.4-not be estimated) vs 標準治療群 3.7% (95%CI 2.9-5.3) (HR 0.49、 95%CI 0.37-0.65).
  • 奏効率 (完全奏効+部分奏効): Axi-cel群 83% vs 標準治療群 50% (p<0.001).
  • 完全奏効率:Axi-cel群 65% vs 標準治療群 32%.

参考文献

  1. N Engl J Med. 2017 Dec 28;377(26):2531-2544.
  2. Int J Clin Oncol. 2022 Jan;27(1):213-223.
  3. N Engl J Med. 2022 Feb 17;386(7):640-654.

最終更新:2023年7月22日
監修医師:HOKUTO編集部医師

レジメン
Axi-cel (Axicabtagene ciloleucel)
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン
Axi-cel (Axicabtagene ciloleucel)
レジメン
Axi-cel (Axicabtagene ciloleucel)

Axi-cel (Axicabtagene ciloleucel)

イエスカルタ®:CD19-CAR-T
2023年07月22日更新

Axi-cel:axicabtagen ciloleucel(イエスカルタ®)

投与量コース投与日
抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg (体重100kg以上の最大投与量2×10⁸個)1-Day1

前投薬

Infusion reaction軽減のため、 投与約1時間前に抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬を投与.

その他

製造販売業者による説明を受けた医師のもとで実施する.
投与の2日前までに必要に応じてリンパ球除去化学療法を行う.
サイトカイン放出症候群の緊急時に備えて、 トシリズマブの在庫を確保する.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*適正使用ガイドは「第一三共株式会社」 の外部サイトへ遷移します.

主な有害事象

ZUMA-7試験³⁾より引用

骨髄抑制

  • 好中球減少 (93%、 ≧Grade3 9%)
  • 貧血 (42%、 ≧Grade3 30%)
  • リンパ球減少 (32%、 ≧Grade3 29%)
  • 血小板減少 (29%、 ≧Grade3 15%)
  • 発熱性好中球減少症 (2%、 ≧Grade3 2%)

主な有害事象

  • サイトカイン放出症候群 (92%、 ≧Grade3 6%)
  • 神経系事象 (60%、 ≧Grade3 21%)
  • 発熱 (93%、 ≧Grade3 9%)
  • 低血圧 (44%、 ≧Grade3 11%)
  • 倦怠感 (42%、 ≧Grade3 6%)
  • 下痢 (42%、 ≧Grade3 2%)
  • 洞頻脈 (34%、 ≧Grade3 2%)

特徴と注意点

作用機序

  • 遺伝子組換えガンマレトロウイルスを用いてCD19を特異的に認識する抗CD19キメラ抗原受容体 (Chimeric Antigen Receptor;CAR) をコードする遺伝子を患者自身のT細胞に導入したCAR発現T細胞を構成細胞とする細胞加工製品である.
  • 抗CD19CAR T細胞がCD19発現標的細胞を認識すると、 CAR T細胞の活性化、 増殖、 サイトカイン産生及び細胞障害などのエフェクター機能が誘導され抗腫瘍効果を示す. CD19はB細胞系列にのみ発現し、 B細胞性非ホジキンリンパ腫の全亜型で維持されていることから、 B細胞性腫瘍に対する抗腫瘍効果が期待される.

適応疾患

以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫

  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  • 原発性縦郭大細胞型B細胞リンパ腫
  • 形質転換濾胞性リンパ腫
  • 高悪性度B細胞リンパ腫

適格基準

  • 再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
  • CD19抗原を標的としたCAR-T療法の治療歴がない患者

白血球アフェレーシス

  • 非動員末梢血単核球を採取し、 白血球アフェレーシス産物を凍結保存する.
*製造販売業者が提供するマニュアル を参照.

リンパ球除去化学療法前の抗腫瘍療法 (ブリッジング療法)

  • ZUMA-1試験¹⁾:Axi-celの製造期間中の患者の病態を安定させるための抗腫瘍療法 (ブリッジング療法) は許容されていなかった.
  • J201試験²⁾:ブリッジング療法は許容されていなかった. ただし、 副腎皮質ステロイドはプレドニゾロン換算5mg/day以上の投与がAxi-cel投与前5日間を除き許容された.
  • ZUMA-7試験³⁾:Axi-cel投与前5日間まで副腎皮質ステロイド (デキサメタゾン20-40mg相当量を1-4日間) を投与可能とした.

ZUMA-7試験³⁾におけるブリッジング療法》

  • 35%がブリッジング療法を実施
  • デキサメタゾン 28%
  • メチルプレドニゾロン 4%
  • プレドニゾン 5%
  • プレドニゾロン 1%

リンパ球除去化学療法

  • CAR-T細胞の生着促進等の目的でD合成阻害作用等の殺細胞作用あるいはリンパ球減少に伴う免疫抑制作用を有する薬剤を投与する.
  • Axi-cel投与の5日前から3日間連続で投与する:シクロホスファミド 500mg/m² 1日1回3日間+フルダラビン 30mg/m² 1日1回3日間.
  • ZUMA-1試験¹⁾、 J201試験²⁾、 ZUMA-7試験³⁾ではリンパ球が100/mm³であることを確認の上リンパ球除去化学療法を実施した.

投与時の注意事項

  • B型肝炎又はC型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者、 HIV感染者は、 ウイルスが再活性化又は増加する可能性がある.
  • Axi-cel投与前に、 静注用バッグのラベルにより患者本人用であることを確認する.
  • Infusion reaction軽減のため、 Axi-cel投与の約1時間前に抗ヒスタミン薬と解熱鎮痛薬を投与する.
  • 生命を脅かす緊急事態を除き、 副腎皮質ステロイド薬は使用しない.
  • サイトカイン放出症候群 (CRS) の緊急時に備え、 トシリズマブを速やかに使用できるよう準備する.
  • 静注用バッグは融解後室温下で3時間までは安定であるため、 融解後3時間以内に投与を完了する.
  • 白血球除去フィルターは使用せず、 ラテックスフリーの点滴ルートを用いる.
  • 注入速度は5分以上かけて30分を超えないように投与する.
  • 投与前後に生理食塩水にてプライミングを実施する.
  • 移植のために血液、 臓器、 組織及び細胞を提供しないよう指導する.
  • レトロウイルスベクターによる意図しない挿入変異あるいは増殖性ウイルスに起因する二次性悪性腫瘍が発現する理論的リスクを有する.

副作用と対策【サイトカイン放出症候群;CRS】

  • 活性化されたT細胞により放出されるサイトカインによって引き起こされる全身性炎症反応.
  • 体内でのCAR発現生T細胞の増殖、 活性化及び腫瘍細胞の死滅の結果発現する.
  • Axi-cel投与後1週間は患者の状態に注意し、 少なくとも4週間は観察を継続する.
  • 症状:高熱、 悪寒、 筋肉痛、 関節痛、 悪心、 嘔吐、 下痢、 発汗、 発疹、 食欲不振、 疲労、 頭痛、 低血圧、 呼吸困難、 呼吸不全、 肺水腫、 頻呼吸、 低酸素症、 凝固障害、 心不全、 不整脈、 腎不全、 肝障害、 播種性血管内凝固症候群、 毛細血管漏出症候群、 血球貪食症候群、 マクロファージ活性化症候群、 急性呼吸窮迫症候群等.
  • CRS発現時期中央値 (範囲):3.0 (1-10) 日 (ZUMA-7試験³⁾).
  • CRS持続期間中央値 (範囲):7.0 (2-43) 日 (ZUMA-7試験³⁾).

《サイトカイン放出症候群管理アルゴリズム》

ZUMA-7試験³⁾におけるCRS治療》

  • トシリズマブ投与:71% (1回投与:24%、 2回投与:17%、 3回投与:13%、 4回投与:10%、 5回以上投与:6%).
  • 副腎皮質ステロイド:25%.

副作用と対策【神経系事象】

  • 発現メカニズムは不明. 多くは一過性であり、 ほとんどが支持療法もしくは治療を要せず症状が消失.
  • Axi-cel投与後少なくとも8週間は自動車の運転及び危険を伴う行動に従事しないよう指導する.
  • 症状:脳症、 せん妄、 不安、 浮動性めまい、 振戦、 意識障害、 失見当識、 頭痛、 錯乱、 激越、 痙攣発作、 無言症、 失語症等.
  • 神経系事象発現時期中央値 (範囲):7.0 (1-133) 日 (ZUMA-7試験³⁾).
  • 神経系事象持続期間中央値 (範囲):8.5 (1-817) 日 (ZUMA-7試験³⁾).

《神経系事象管理アルゴリズム》

副作用と対策【感染症】

  • 低γグロブリン血症又は無γグロブリン血症や重篤な遷延する血球減少に伴い、 細菌、 真菌、 ウイルス等による重度の感染症や発熱性好中球減少症が現れることがある.
  • 患者の易感染状態に応じた標準的な感染予防療法を実施する. National Comprehensive Cancer Network (NCCN) ガイドライン (NCCN clinical practice guideline in oncology: Prevention and Treatment of Cancer-Related Infection) 参照.

副作用と対策【低γグロブリン血症】

  • 正常なB細胞にもCD19が発現しているため、 一時的又は持続的にB細胞の枯渇が引き起こされ、 低γグロブリン血症を発症することがある.
  • CAR発現生T細胞が患者の体内で持続する限り、 低γグロブリン血症が持続する可能性がある.
  • 定期的に免疫グロブリンを測定し、 必要に応じて免疫補充療法を実施する.

副作用と対策【血球減少】

  • Axi-cel投与後数週間以上にわたり白血球減少、 好中球減少 (発熱性好中球減少症含む)、 血小板減少症、 貧血等が現れることがある.
  • 発熱性好中球減少症が認められた場合は日本臨床主要学会による発熱性好中球減少症診療ガイドライン等を参照.

関連する臨床試験の結果

ZUMA-1試験¹⁾

概要

  • 非盲検非対称海外多施設共同第I/II相試験.
  • 18歳以上の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象にAxi-celの有効性および安全性を評価.
  • 対象:以下の①又は②に該当し、 少なくとも抗CD20モノクローナル抗体及びアントラサイクリン含有化学療法による治療歴があり、 中枢神経系にリンパ腫病変が認められない患者.

①最終の化学療法に対し難治性

②自家造血幹細胞移植後の疾患進行又は再発、 あるいは移植後サルベージ療法に無効又は再発

  • 投与量:抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg (体重100kg超は2.0×10⁸個).

結果

  • 追跡期間中央値:15.4ヵ月.
  • 客観的奏効率 (完全奏効+部分奏効):82% (95%CI 73-89)、 完全奏効率:54%.
  • 奏効持続期間中央値:11.1ヵ月 (95%CI 3.9-not be estimated).
  • 無増悪生存期間中央値:5.8ヵ月 (95%CI 3.3-not be estimated).
  • 無増悪生存率 (6ヵ月):49% (95%CI 39-58).
  • 無増悪生存率 (12ヵ月):44% (95%CI 34-53).
  • 無増悪生存率 (15ヵ月):41% (95%CI 31-50).
  • 全生存期間中央値:未到達.
  • 全生存率 (6ヵ月):78% (95%CI 69-85).
  • 全生存率 (12ヵ月):59% (95%CI 49-68).
  • 全生存率 (18ヵ月):52% (95%CI 41-62).

J201試験²⁾

概要

  • 非盲検非対称国内第I/II相試験.
  • 20歳以上の再発又は難治性の日本人大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象にAxi-celの有効性および安全性を評価.
  • 対象:ZUMA-1試験¹⁾参照.
  • 投与量:抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg.

結果

  • 追跡期間最低値:3.0ヵ月.
  • 客観的奏効率 (完全奏効+部分奏効):86.7% (95%CI 59.5-98.3)、 完全奏効率:26.7%、 部分奏効率:60.0%.
  • 奏効持続期間中央値:5.6ヵ月 (95%CI 2.2-not estimable).
  • 無増悪生存期間中央値:6.5ヵ月 (95%CI 2.9-not be estimated).
  • 全生存期間中央値:未到達 (95%CI 6.9-not be estimated)

ZUMA-7試験³⁾

概要

  • 非盲検無作為化海外第III相試験.
  • 18歳以上の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫患者を対象にAxi-celと標準治療 (救援化学療法及び奏効例への自家造血幹細胞移植併用大量化学療法) の有効性および安全性を比較.
  • 対象:抗CD20モノクローナル抗体及びアントラサイクリン含有化学療法に難治性はまた12ヵ月以内に再発した自家造血幹細胞移植適応患者で、 中枢神経系にリンパ腫病変が認められない患者.
  • 投与量:抗CD19CART細胞として2.0×10⁶個/kg.

結果

  • 追跡期間中央値:24.9ヵ月.
  • 無イベント生存期間中央値: Axi-cel群 8.3ヵ月 (95%CI 4.5-15.8) vs 標準治療群 2.0ヵ月 (95%CI 1.6-2.8).
  • 無イベント生存率 (24ヵ月): Axi-cel群 41% (95%CI 33-48) vs 標準治療群 16% (95%CI 11-22) (HR 0.40、 95%CI 0.31-0.51、 p<0.001). 
  • 全生存率 (24ヵ月): Axi-cel群 not reached (95%CI 28.3-not be estimated) vs 標準治療群 35.1% (95%CI 18.5-not be estimated) (HR 0.73、 95%CI 0.53-1.01). 
  • 無増悪生存率 (24ヵ月): Axi-cel群 14.7% (95%CI 5.4-not be estimated) vs 標準治療群 3.7% (95%CI 2.9-5.3) (HR 0.49、 95%CI 0.37-0.65).
  • 奏効率 (完全奏効+部分奏効): Axi-cel群 83% vs 標準治療群 50% (p<0.001).
  • 完全奏効率:Axi-cel群 65% vs 標準治療群 32%.

参考文献

  1. N Engl J Med. 2017 Dec 28;377(26):2531-2544.
  2. Int J Clin Oncol. 2022 Jan;27(1):213-223.
  3. N Engl J Med. 2022 Feb 17;386(7):640-654.

最終更新:2023年7月22日
監修医師:HOKUTO編集部医師

こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
レジメン(血液)

がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。

なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。