治療スケジュール
概要
監修医師

BU:ブスルファン(ブスルフェクス®)

投与量コース投与日
3.2mg/kg 1日1回 点滴静注1Day -8、 -7、 -6、 -5
0.8mg/kg 1日4回 点滴静注1Day -8、 -7、 -6、 -5

TT:チオテパ(リサイオ®)

投与量コース投与日
5mg/kg 点滴静注1Day -4、 -3

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬・デキサメタゾン (Day -8~-3)

その他

Day 0に自家末梢血幹細胞移植を行う.
ブスルファン投与の2日前から2日後まで抗痙攣薬を内服.
処方例:レベチラセタム (イーケプラ®) 500mg 2錠分2.
レジメン
BU+TT
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*医薬品インタビューフォームは「住友ファーマ株式会社」の外部サイトに遷移します.

主な有害事象

国内第1相試験¹⁾より引用.

【骨髄抑制】

  • 発熱性好中球減少症 (100%)
  • その他記載なし.

【主な有害事象】

  • 嘔気 (100%)
  • 下痢 (80%)
  • 食欲低下 (70%)
  • 味覚障害 (60%)
  • 口内炎 (50%)
  • 嘔吐 (40%)
  • 口腔障害 (40%)
  • 直腸痛 (20%)
  • ALT上昇 (70%)
  • AST上昇 (60%)
  • GGT上昇 (40%)
  • ALP上昇 (20%)
  • 低カリウム血症 (20%)
  • 脱毛症 (30%)
  • 斑状丘疹状皮疹 (20%)
  • 倦怠感 (10%)
  • 発熱 (10%)
  • 感染症および寄生虫症 (10%)

特徴と注意点

BU+TTの特徴とエビデンス

  • 中枢神経原発悪性リンパ腫の移植前処置 (大量化学療法)として使用される.
  • 海外ではブスルファン+チオテパ+シクロホスファミド (TBC)療法が行われているが、 本邦からはシクロフォスファミドを除いたBU+TTの国内第1相試験の結果が報告されている.¹⁾
  • VOD/SOSを合併することがあるので体重増加、 肝腫大、 腹水、 黄疸等に注意.
TBC療法の投与方法例:チオテパ 250mg/m2 day -9、-8、-7に点滴静注、 ブスルファン 0.8mg/kg day -6、-5、-4に6時間毎点滴静注、 シクロホスファミド 60mg/kg、 day-3、 -2に静注.²⁾
静脈閉塞性肝疾患 (veno-occlusive liver disease; VOD)、 類洞閉塞症候群 (sinusoidal obstruction syndrome; SOS)

ブスルファンの特徴と副作用対策

  • アルキル化薬に分類される.
  • ブスルファンは1日4回投与 (0.8mg/kg、 1回2時間、 6時間毎)と1日1回投与 (3.2mg/kg、 1回3時間) の2つの投与方法がある.
  • 10倍量の溶解液に添加・混和する. 室温 (約25℃)で用事調整し、 8時間以内に投与を修了する.
  • 発癌性があることが指摘されている.

チオテパの特徴と副作用対策

  • アルキル化薬に分類される.
  • 国内ではテスパミン®として臨床使用されていたが、 原薬メーカーの設備老朽化により2009年に製造販売が中止された. その後、 2020年にリサイオ®が悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療において保険適用となった.
  • 1日1回5mg/kgを2時間かけて点滴静注.
  • CYP2B6の阻害作用を持つため、 シクロホスファミドの代謝活性化が阻害される可能性がある.
  • 急性腎障害が現れることがある.
  • 肺水腫、 浮腫、 体液貯留、 心嚢液が特に早期に出現することがあるため注意.

関連する臨床試験の結果

BU+TTの国内第1相試験 (BU 1日4回投与) ¹⁾

概要

  • 対象:16歳以上の悪性リンパ腫患者10名 (PCNSL 1例、 DLBCL 1例).
  • 治療:ブスルファン 0.8mg/kg×4回/日 (Day -8、-7、-6、-5)、 チオテパ 200mg (Day -4、-3) 200mg/m2、 自家末梢血幹細胞移植 (Day 0)

結果

  • 生着までの日数中央値:11日 (10~14日)
  • 100日生存率:100%
  • 主な有害事象:上記の通り.

BU 1日4回投与と1日1回投与の比較 ³⁾

概要

  • 同種造血幹細胞移植の前処置としてブスルファンを1日4回 (ivBU4) 又は1日1回 (ivBU1) 静脈内投与した時の薬物動態、 安全性、 有効性を比較する無作為化比較試験
  • 対象:15歳以上の造血器腫瘍患者60例 (AML 35例、 ALL 6例、 CML 8例、 MDS 8例、 その他 3例)
  • 主要評価項目:薬物動態パラメータ、 生着までの期間、 毒性、 全生存率、 非再発死亡率

結果

  • 薬物動態パラメータ:分布容積、 クリアランス、 半減期に両群間で有意差なし.
  • Cmax・AUC:ivBU1群はivBU4群の約4倍であり、 推定1日AUCに有意差なし.
AUC: area under the curve. Mean ± SD. *Student’s t-test.
Biol Blood Marrow Transplant. 2007 Sep;13(9):1095-105.より引用
  • 生着率に有意差なし.
  • 1年全生存率:ivBU4群 69.0% vs ivBU1群 70.0% (p=0.758)
  • 非再発死亡率:ivBU4群 25.5% vs ivBU1群 17u.3% (p=0.488)
  • 有害事象も特記すべき差なし.

参考文献

  1. Cancer Chemother Pharmacol. 2019 Oct;84(4):849-860.
  2. Cancer. 2017 Aug 15;123(16):3073-3079.
  3. Biol Blood Marrow Transplant. 2007 Sep;13(9):1095-105.

最終更新:2023年5月26日
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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ブスルファン+チオテパ(中枢神経系悪性リンパ腫)
2023年11月07日更新

BU:ブスルファン(ブスルフェクス®)

投与量コース投与日
3.2mg/kg 1日1回 点滴静注1Day -8、 -7、 -6、 -5
0.8mg/kg 1日4回 点滴静注1Day -8、 -7、 -6、 -5

TT:チオテパ(リサイオ®)

投与量コース投与日
5mg/kg 点滴静注1Day -4、 -3

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬・デキサメタゾン (Day -8~-3)

その他

Day 0に自家末梢血幹細胞移植を行う.
ブスルファン投与の2日前から2日後まで抗痙攣薬を内服.
処方例:レベチラセタム (イーケプラ®) 500mg 2錠分2.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

*医薬品インタビューフォームは「住友ファーマ株式会社」の外部サイトに遷移します.

主な有害事象

国内第1相試験¹⁾より引用.

【骨髄抑制】

  • 発熱性好中球減少症 (100%)
  • その他記載なし.

【主な有害事象】

  • 嘔気 (100%)
  • 下痢 (80%)
  • 食欲低下 (70%)
  • 味覚障害 (60%)
  • 口内炎 (50%)
  • 嘔吐 (40%)
  • 口腔障害 (40%)
  • 直腸痛 (20%)
  • ALT上昇 (70%)
  • AST上昇 (60%)
  • GGT上昇 (40%)
  • ALP上昇 (20%)
  • 低カリウム血症 (20%)
  • 脱毛症 (30%)
  • 斑状丘疹状皮疹 (20%)
  • 倦怠感 (10%)
  • 発熱 (10%)
  • 感染症および寄生虫症 (10%)

特徴と注意点

BU+TTの特徴とエビデンス

  • 中枢神経原発悪性リンパ腫の移植前処置 (大量化学療法)として使用される.
  • 海外ではブスルファン+チオテパ+シクロホスファミド (TBC)療法が行われているが、 本邦からはシクロフォスファミドを除いたBU+TTの国内第1相試験の結果が報告されている.¹⁾
  • VOD/SOSを合併することがあるので体重増加、 肝腫大、 腹水、 黄疸等に注意.
TBC療法の投与方法例:チオテパ 250mg/m2 day -9、-8、-7に点滴静注、 ブスルファン 0.8mg/kg day -6、-5、-4に6時間毎点滴静注、 シクロホスファミド 60mg/kg、 day-3、 -2に静注.²⁾
静脈閉塞性肝疾患 (veno-occlusive liver disease; VOD)、 類洞閉塞症候群 (sinusoidal obstruction syndrome; SOS)

ブスルファンの特徴と副作用対策

  • アルキル化薬に分類される.
  • ブスルファンは1日4回投与 (0.8mg/kg、 1回2時間、 6時間毎)と1日1回投与 (3.2mg/kg、 1回3時間) の2つの投与方法がある.
  • 10倍量の溶解液に添加・混和する. 室温 (約25℃)で用事調整し、 8時間以内に投与を修了する.
  • 発癌性があることが指摘されている.

チオテパの特徴と副作用対策

  • アルキル化薬に分類される.
  • 国内ではテスパミン®として臨床使用されていたが、 原薬メーカーの設備老朽化により2009年に製造販売が中止された. その後、 2020年にリサイオ®が悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療において保険適用となった.
  • 1日1回5mg/kgを2時間かけて点滴静注.
  • CYP2B6の阻害作用を持つため、 シクロホスファミドの代謝活性化が阻害される可能性がある.
  • 急性腎障害が現れることがある.
  • 肺水腫、 浮腫、 体液貯留、 心嚢液が特に早期に出現することがあるため注意.

関連する臨床試験の結果

BU+TTの国内第1相試験 (BU 1日4回投与) ¹⁾

概要

  • 対象:16歳以上の悪性リンパ腫患者10名 (PCNSL 1例、 DLBCL 1例).
  • 治療:ブスルファン 0.8mg/kg×4回/日 (Day -8、-7、-6、-5)、 チオテパ 200mg (Day -4、-3) 200mg/m2、 自家末梢血幹細胞移植 (Day 0)

結果

  • 生着までの日数中央値:11日 (10~14日)
  • 100日生存率:100%
  • 主な有害事象:上記の通り.

BU 1日4回投与と1日1回投与の比較 ³⁾

概要

  • 同種造血幹細胞移植の前処置としてブスルファンを1日4回 (ivBU4) 又は1日1回 (ivBU1) 静脈内投与した時の薬物動態、 安全性、 有効性を比較する無作為化比較試験
  • 対象:15歳以上の造血器腫瘍患者60例 (AML 35例、 ALL 6例、 CML 8例、 MDS 8例、 その他 3例)
  • 主要評価項目:薬物動態パラメータ、 生着までの期間、 毒性、 全生存率、 非再発死亡率

結果

  • 薬物動態パラメータ:分布容積、 クリアランス、 半減期に両群間で有意差なし.
  • Cmax・AUC:ivBU1群はivBU4群の約4倍であり、 推定1日AUCに有意差なし.
AUC: area under the curve. Mean ± SD. *Student’s t-test.
Biol Blood Marrow Transplant. 2007 Sep;13(9):1095-105.より引用
  • 生着率に有意差なし.
  • 1年全生存率:ivBU4群 69.0% vs ivBU1群 70.0% (p=0.758)
  • 非再発死亡率:ivBU4群 25.5% vs ivBU1群 17u.3% (p=0.488)
  • 有害事象も特記すべき差なし.

参考文献

  1. Cancer Chemother Pharmacol. 2019 Oct;84(4):849-860.
  2. Cancer. 2017 Aug 15;123(16):3073-3079.
  3. Biol Blood Marrow Transplant. 2007 Sep;13(9):1095-105.

最終更新:2023年5月26日
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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