バルバーサ® (エルダフィチニブ)
【1コース】 21日間
【催吐性】 軽度催吐リスク
【FN発症】 低リスク*

1日1回8mgを14日間経口投与し、 その後1日1回9mgに増量
投与開始14日後の血清リン濃度が9mg/dL以上の場合は増量しない。
N Engl J Med 2023;389:1961-71.
PD-1/PD-L1阻害薬を含む1~2レジメン治療後に増悪したFGFR3/2遺伝子異常陽性の根治切除不能尿路上皮癌266例を対象とした第III相無作為化比較試験。 参加者はエルダフィチニブ群と化学療法 (ドセタキセルまたはvinflunine) 群に1:1で割り付けられ、 主要評価項目はOSであった。
【有効性】エルダフィチニブ (vs 化学療法)
- OS中央値 12.1ヵ月 (vs 7.8ヵ月)
- PFS中央値 5.6ヵ月 (vs 2.7ヵ月)
- 奏効率 45.6% (vs 11.5%)
- 奏効期間中央値 4.9ヵ月 (vs 5.6ヵ月)
【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)
- 高リン血症 80.0% (5.2%)
- 下痢 62.2% (3.0%)
- 口内炎 48.1% (8.1%)
- 口内乾燥 39.3% (0%)
- 手足症候群 30.4% (9.6%)
- 味覚障害 27.4% (0.7%)
- ALT上昇 27.4% (3.0%)
- 便秘 26.7% (0%)
- 食欲減退 26.7% (3.0%)
- 貧血 25.9% (7.4%)
- 脱毛症 25.2% (0.7%)
- 皮膚乾燥 23.0% (1.5%)
- 爪甲剥離症 23.0% (5.9%)
- 体重減少 22.2% (2.2%)
- AST上昇 21.5% (2.2%)
- 爪甲脱落症 20.7% (1.5%)
- 爪の変色 17.8% (0.7%)
- ドライアイ 17.0% (0%)
- 無力症 14.8% (1.5%)
- 悪心 14.8% (1.5%)
- 倦怠感 14.8% (0%)
THOR試験³⁾の主な適格基準
- 18歳以上
- ECOG PS 0–2
- 好中球数>1,500/mm³
- 血小板数>7.5万/mm³
- ヘモグロビン>8.0g/dL
- 腎機能 : CrCl>30mL/min/1.73m²
- 肝機能 : T-bil≦1.5×ULN、 AST/ALT≦2.5×ULN

尿中未変化体排泄率は13%と低く、 腎クリアランスの寄与は小さいと考えられる。 しかし、 FGFR阻害によるリン再吸収調整機構破綻に伴う高リン血症や急性腎障害の可能性があるため適切な評価、 処置が必要である¹⁾²⁾。

THOR試験³⁾では、 高リン血症に対する介入方法を以下のように定めていた。
リン制限食 : リン酸塩として600–800mg/日
リン吸着薬 : セベラマー800–1600mg 1日3回 (≧9mg/dLの場合は1600mg 1日3回)
「FGFR阻害薬投与に伴う高リン血症の改善」 に適応を有するのは、 炭酸ランタン顆粒分包250mg 「ニプロ」 および500mg 「ニプロ」 のみである点に注意。 炭酸ランタン500mgはセベラマー750mgに相当する。
治療の適応 : 転移性尿路上皮癌で、 免疫チェックポイント阻害薬を含む1-2ライン後に進行した症例が治療の適応となる。 主治医選択化学療法 (ドセタキセル、 Vinflunin) と比べてPFS、 OS、 RRで優れていた。
高リン血症の管理 : エルダフィチニブは高リン血症の有害事象があり初期用量が低く設定されているため、 血清リン値のモニタリングを行い、 2週間後に8mgから9mgへの漸増を行う必要がある (血清リン値9mg/dL以上の場合、本剤の増量は行わない)
エルダフィチニブは、 FGFRを標的とするチロチンキナーゼ阻害剤である。 変異型FGFR3やFGFR3融合タンパク等のリン酸化を阻害し、 下流シグナル伝達分子のリン酸化を阻害することで、 腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。
網膜剥離及び角膜障害 : 投与前および投与中は、 定期的に眼科検査とアムスラーグリッド検査を行う。 外出時は日光を避け、 サングラスや帽子の着用を促す。 霧視、 飛蚊症、 視野欠損、 光視症、 視力低下などの症状がみられた場合は、 速やかに医療機関への受診を指導する。
高リン血症 : 投与開始時に血清リン濃度が正常であることを確認し、 治療中も定期的にモニタリングを行う。 THOR試験³⁾では、 開始9週目までは2週ごと、 12週以降は3週ごとに血清リン濃度が測定された。
急性腎障害 : 高リン血症により急性腎障害が発現することがあるため、 定期的に腎機能検査を実施する。
- 網膜剥離
- 角膜障害
- 高リン血症
- 爪障害
- 手足症候群
- 急性腎障害
本剤の適応判定に利用可能なコンパニオン診断薬は以下のとおり。
- therascreen FGFR遺伝子変異・融合遺伝子検出キット RGQ 「キアゲン」
🧑⚕️FGFR3遺伝子変異 (R248C、 S249C、 G370C、 Y373C) や、 FGFR2/FGFR3融合遺伝子 (FGFR2-BICC1、 FGFR2-CASP7、 FGFR3-TACC3、 FGFR3-BAIAP2L1) が認められた場合に治療適応となる。 陽性率は16.6%と報告されている。
最終更新日 : 2025年10月16日
執筆 : 京都桂病院 薬剤科 塩飽英二先生
監修医師 : 国立がん研究センター東病院 腫瘍内科 近藤 千紘先生
バルバーサ® (エルダフィチニブ)
【1コース】 21日間
【催吐性】 軽度催吐リスク
【FN発症】 低リスク*

1日1回8mgを14日間経口投与し、 その後1日1回9mgに増量
投与開始14日後の血清リン濃度が9mg/dL以上の場合は増量しない。
N Engl J Med 2023;389:1961-71.
PD-1/PD-L1阻害薬を含む1~2レジメン治療後に増悪したFGFR3/2遺伝子異常陽性の根治切除不能尿路上皮癌266例を対象とした第III相無作為化比較試験。 参加者はエルダフィチニブ群と化学療法 (ドセタキセルまたはvinflunine) 群に1:1で割り付けられ、 主要評価項目はOSであった。
【有効性】エルダフィチニブ (vs 化学療法)
- OS中央値 12.1ヵ月 (vs 7.8ヵ月)
- PFS中央値 5.6ヵ月 (vs 2.7ヵ月)
- 奏効率 45.6% (vs 11.5%)
- 奏効期間中央値 4.9ヵ月 (vs 5.6ヵ月)
【安全性】主な有害事象 : 全Grade (Grade≧3)
- 高リン血症 80.0% (5.2%)
- 下痢 62.2% (3.0%)
- 口内炎 48.1% (8.1%)
- 口内乾燥 39.3% (0%)
- 手足症候群 30.4% (9.6%)
- 味覚障害 27.4% (0.7%)
- ALT上昇 27.4% (3.0%)
- 便秘 26.7% (0%)
- 食欲減退 26.7% (3.0%)
- 貧血 25.9% (7.4%)
- 脱毛症 25.2% (0.7%)
- 皮膚乾燥 23.0% (1.5%)
- 爪甲剥離症 23.0% (5.9%)
- 体重減少 22.2% (2.2%)
- AST上昇 21.5% (2.2%)
- 爪甲脱落症 20.7% (1.5%)
- 爪の変色 17.8% (0.7%)
- ドライアイ 17.0% (0%)
- 無力症 14.8% (1.5%)
- 悪心 14.8% (1.5%)
- 倦怠感 14.8% (0%)
THOR試験³⁾の主な適格基準
- 18歳以上
- ECOG PS 0–2
- 好中球数>1,500/mm³
- 血小板数>7.5万/mm³
- ヘモグロビン>8.0g/dL
- 腎機能 : CrCl>30mL/min/1.73m²
- 肝機能 : T-bil≦1.5×ULN、 AST/ALT≦2.5×ULN

尿中未変化体排泄率は13%と低く、 腎クリアランスの寄与は小さいと考えられる。 しかし、 FGFR阻害によるリン再吸収調整機構破綻に伴う高リン血症や急性腎障害の可能性があるため適切な評価、 処置が必要である¹⁾²⁾。

THOR試験³⁾では、 高リン血症に対する介入方法を以下のように定めていた。
リン制限食 : リン酸塩として600–800mg/日
リン吸着薬 : セベラマー800–1600mg 1日3回 (≧9mg/dLの場合は1600mg 1日3回)
「FGFR阻害薬投与に伴う高リン血症の改善」 に適応を有するのは、 炭酸ランタン顆粒分包250mg 「ニプロ」 および500mg 「ニプロ」 のみである点に注意。 炭酸ランタン500mgはセベラマー750mgに相当する。
治療の適応 : 転移性尿路上皮癌で、 免疫チェックポイント阻害薬を含む1-2ライン後に進行した症例が治療の適応となる。 主治医選択化学療法 (ドセタキセル、 Vinflunin) と比べてPFS、 OS、 RRで優れていた。
高リン血症の管理 : エルダフィチニブは高リン血症の有害事象があり初期用量が低く設定されているため、 血清リン値のモニタリングを行い、 2週間後に8mgから9mgへの漸増を行う必要がある (血清リン値9mg/dL以上の場合、本剤の増量は行わない)
エルダフィチニブは、 FGFRを標的とするチロチンキナーゼ阻害剤である。 変異型FGFR3やFGFR3融合タンパク等のリン酸化を阻害し、 下流シグナル伝達分子のリン酸化を阻害することで、 腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。
網膜剥離及び角膜障害 : 投与前および投与中は、 定期的に眼科検査とアムスラーグリッド検査を行う。 外出時は日光を避け、 サングラスや帽子の着用を促す。 霧視、 飛蚊症、 視野欠損、 光視症、 視力低下などの症状がみられた場合は、 速やかに医療機関への受診を指導する。
高リン血症 : 投与開始時に血清リン濃度が正常であることを確認し、 治療中も定期的にモニタリングを行う。 THOR試験³⁾では、 開始9週目までは2週ごと、 12週以降は3週ごとに血清リン濃度が測定された。
急性腎障害 : 高リン血症により急性腎障害が発現することがあるため、 定期的に腎機能検査を実施する。
- 網膜剥離
- 角膜障害
- 高リン血症
- 爪障害
- 手足症候群
- 急性腎障害
本剤の適応判定に利用可能なコンパニオン診断薬は以下のとおり。
- therascreen FGFR遺伝子変異・融合遺伝子検出キット RGQ 「キアゲン」
🧑⚕️FGFR3遺伝子変異 (R248C、 S249C、 G370C、 Y373C) や、 FGFR2/FGFR3融合遺伝子 (FGFR2-BICC1、 FGFR2-CASP7、 FGFR3-TACC3、 FGFR3-BAIAP2L1) が認められた場合に治療適応となる。 陽性率は16.6%と報告されている。
最終更新日 : 2025年10月16日
執筆 : 京都桂病院 薬剤科 塩飽英二先生
監修医師 : 国立がん研究センター東病院 腫瘍内科 近藤 千紘先生
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。
主要論文や適正使用ガイドをもとにした用量調整プロトコール、 有害事象対応をご紹介します。
なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。
また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。