概要
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。 (監修:和歌山県立医科大学附属病院 赤松弘朗先生)

1. ICI開始前のチェック項目

推奨されるチェック項目

✅ECOG Performance Status 0~2

✅SpO₂ ≧ 90% (室内気)

✅胸部CT (特に高分解能CT *HRCT)

間質性変化があれば投与前に呼吸器内科専門医に確認

✅血清KL-6値 (シアル化糖鎖抗原KL-6)

必須ではないが、 肺障害時のコントロールとして用いることがある. 肺腺癌ではKL-6が擬陽性となる事がある

✅リスク因子の把握

年齢・喫煙歴・既存の肺障害・ICI併用レジメンなど. ただし、 これらは投与禁忌ではない
明らかな線維化を認める場合は投与禁忌であるが、 それ以外の症例については呼吸器内科専門医の判断を仰ぐ.

2. ICI開始時の患者説明内容

irAE肺臓炎で分かっていること

  • 症状:乾性咳嗽・息切れ・労作時呼吸困難
  • 頻度:肺臓炎の発生頻度は約5%¹⁾
  • 単剤 約3%(Grade 3≥ 1%)
  • 併用 約7%(Grade 3≥ 2%)
  • 時期:開始後2-4カ月が最多だが幅が広い. ICI終了後数カ月して発症することある²⁾.
  • 治療:中等症以上はステロイド治療実施²⁾.
  • 予後:画像上OPパターンが多いが様々. AIPパターンは予後不良である³⁾.

癌種や薬剤による違い

  • 肺癌では他癌腫に比して頻度が多い¹⁾.
  • PD-1/PD-L1阻害剤単独よりICI+化学療法やICI-ICI併用療法で頻度が多い¹⁾.
  • ICI終了3カ月以内の分子標的薬は、 肺臓炎を含めAE増強のリスクと言われている⁴⁾.

3. ICI投与中のチェック項目

評価項目と頻度

✅SpO₂ : 有症状時

✅胸部X線:3-4週ごと

✅胸部CT :進行期では6-9週ごと

術後では12-16週ごと、 その場合胸部X線で適宜フォローする. 腫瘍の効果判定時に胸部を撮像範囲として含める

✅KL-6値 :必須ではない

*臨床試験では定期的に採取しているが、 必須ではない

検査スケジュール例

薬剤や対象によって投与期間、 検査スケジュール、 特に画像評価間隔が異なるため、 詳細については適正使用ガイド²⁾を参照

4.疑った時のチェック項目

ICIの継続は?

以下に該当する場合は一旦休止し精査推奨²⁾
  • (原因に依らず) 肺臓炎≧ Grade 2
  • 呼吸状態やバイタルが不安定
  • 陰影が広範な場合
ICI肺臓炎は軽症の場合ステロイドの反応性が良い一方、 重篤化時の死亡リスクが高い. 一旦休止しても再開の可能性があるため、 休止を躊躇しない. ICI併用レジメンの場合、 併用している薬剤も休止となる

鑑別診断は?

必要な問診・検査は?

5. 肺臓炎と診断or否定できない時

CTCAE Gradeに準じ、 以下を決定する²⁾

6. 肺臓炎回復後のICI再開

  • Grade 1 画像が改善すれば再開
  • Grade 2 12週間以内を目途に, Grade 1以下に改善, かつ PSL≤10mgまで減量できれば再開を考慮
  • Grade 3以上 再開はしない
*あるICIで肺臓炎を生じた場合に他のICIに変更(PD-1阻害剤→PD-L1阻害剤など)は行わない
*irAEを生じた症例でICI再開した場合, 約30%で再燃が見られ, 肺臓炎は再発頻度が多い⁵⁾

参考文献

1)Incidence of Programmed Cell Death 1 Inhibitor-Related Pneumonitis in Patients With Advanced Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Oncol. 2016 Dec 1;2(12):1607-1616. PMID: 27540850

2)各ICIの安全・適正使用ガイド

小野薬品工業ホームページへ遷移
MSDホームページへ遷移
アストラゼネカホームページへ遷移
メルクバイオファーマホームページへ遷移
中外製薬ホームページへ遷移
ブリストル・マイヤーズスクイブホームページへ遷移

3)PD-1 Inhibitor-Related Pneumonitis in Advanced Cancer Patients: Radiographic Patterns and Clinical Course. Clin Cancer Res. 2016 Dec 15;22(24):6051-6060. PMID: 27535979

4)Severe immune-related adverse events are common with sequential PD-(L)1 blockade and osimertinib. Ann Oncol. 2019 May 1;30(5):839-844. PMID: 30847464

5)Immune Checkpoint Inhibitor Rechallenge After Immune-Related Adverse Events in Patients With Cancer. JAMA Oncol. 2020 Jun 1;6(6):865-871. PMID: 32297899

6)Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: ASCO Guideline Update. J Clin Oncol. 2018 Jun 10;36(17):1714-1768. PMID: 29442540

7)日本臨床腫瘍学会: がん免疫療法ガイドライン第2版, 金原出版 (2019)

最終更新:2023年2月15日
監修医師:和歌山県立医科大学附属病院腫瘍センター 赤松弘朗先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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2024年02月01日更新
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。 (監修:和歌山県立医科大学附属病院 赤松弘朗先生)

1. ICI開始前のチェック項目

推奨されるチェック項目

✅ECOG Performance Status 0~2

✅SpO₂ ≧ 90% (室内気)

✅胸部CT (特に高分解能CT *HRCT)

間質性変化があれば投与前に呼吸器内科専門医に確認

✅血清KL-6値 (シアル化糖鎖抗原KL-6)

必須ではないが、 肺障害時のコントロールとして用いることがある. 肺腺癌ではKL-6が擬陽性となる事がある

✅リスク因子の把握

年齢・喫煙歴・既存の肺障害・ICI併用レジメンなど. ただし、 これらは投与禁忌ではない
明らかな線維化を認める場合は投与禁忌であるが、 それ以外の症例については呼吸器内科専門医の判断を仰ぐ.

2. ICI開始時の患者説明内容

irAE肺臓炎で分かっていること

  • 症状:乾性咳嗽・息切れ・労作時呼吸困難
  • 頻度:肺臓炎の発生頻度は約5%¹⁾
  • 単剤 約3%(Grade 3≥ 1%)
  • 併用 約7%(Grade 3≥ 2%)
  • 時期:開始後2-4カ月が最多だが幅が広い. ICI終了後数カ月して発症することある²⁾.
  • 治療:中等症以上はステロイド治療実施²⁾.
  • 予後:画像上OPパターンが多いが様々. AIPパターンは予後不良である³⁾.

癌種や薬剤による違い

  • 肺癌では他癌腫に比して頻度が多い¹⁾.
  • PD-1/PD-L1阻害剤単独よりICI+化学療法やICI-ICI併用療法で頻度が多い¹⁾.
  • ICI終了3カ月以内の分子標的薬は、 肺臓炎を含めAE増強のリスクと言われている⁴⁾.

3. ICI投与中のチェック項目

評価項目と頻度

✅SpO₂ : 有症状時

✅胸部X線:3-4週ごと

✅胸部CT :進行期では6-9週ごと

術後では12-16週ごと、 その場合胸部X線で適宜フォローする. 腫瘍の効果判定時に胸部を撮像範囲として含める

✅KL-6値 :必須ではない

*臨床試験では定期的に採取しているが、 必須ではない

検査スケジュール例

薬剤や対象によって投与期間、 検査スケジュール、 特に画像評価間隔が異なるため、 詳細については適正使用ガイド²⁾を参照

4.疑った時のチェック項目

ICIの継続は?

以下に該当する場合は一旦休止し精査推奨²⁾
  • (原因に依らず) 肺臓炎≧ Grade 2
  • 呼吸状態やバイタルが不安定
  • 陰影が広範な場合
ICI肺臓炎は軽症の場合ステロイドの反応性が良い一方、 重篤化時の死亡リスクが高い. 一旦休止しても再開の可能性があるため、 休止を躊躇しない. ICI併用レジメンの場合、 併用している薬剤も休止となる

鑑別診断は?

必要な問診・検査は?

5. 肺臓炎と診断or否定できない時

CTCAE Gradeに準じ、 以下を決定する²⁾

6. 肺臓炎回復後のICI再開

  • Grade 1 画像が改善すれば再開
  • Grade 2 12週間以内を目途に, Grade 1以下に改善, かつ PSL≤10mgまで減量できれば再開を考慮
  • Grade 3以上 再開はしない
*あるICIで肺臓炎を生じた場合に他のICIに変更(PD-1阻害剤→PD-L1阻害剤など)は行わない
*irAEを生じた症例でICI再開した場合, 約30%で再燃が見られ, 肺臓炎は再発頻度が多い⁵⁾

参考文献

1)Incidence of Programmed Cell Death 1 Inhibitor-Related Pneumonitis in Patients With Advanced Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Oncol. 2016 Dec 1;2(12):1607-1616. PMID: 27540850

2)各ICIの安全・適正使用ガイド

小野薬品工業ホームページへ遷移
MSDホームページへ遷移
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メルクバイオファーマホームページへ遷移
中外製薬ホームページへ遷移
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3)PD-1 Inhibitor-Related Pneumonitis in Advanced Cancer Patients: Radiographic Patterns and Clinical Course. Clin Cancer Res. 2016 Dec 15;22(24):6051-6060. PMID: 27535979

4)Severe immune-related adverse events are common with sequential PD-(L)1 blockade and osimertinib. Ann Oncol. 2019 May 1;30(5):839-844. PMID: 30847464

5)Immune Checkpoint Inhibitor Rechallenge After Immune-Related Adverse Events in Patients With Cancer. JAMA Oncol. 2020 Jun 1;6(6):865-871. PMID: 32297899

6)Management of Immune-Related Adverse Events in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy: ASCO Guideline Update. J Clin Oncol. 2018 Jun 10;36(17):1714-1768. PMID: 29442540

7)日本臨床腫瘍学会: がん免疫療法ガイドライン第2版, 金原出版 (2019)

最終更新:2023年2月15日
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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