概要
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

- アドリアシン® (添付文書¹⁾)

- イホマイド® (添付文書²⁾)

用法用量

監修 : 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科 中野英司先生
電子添文の用法および用量
ドキソルビシン : イホスファミドとの併用において、 1日量、 20~30mg/m²を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、 1日1回3日間連続で静脈内投与し、 その後休薬し3~4週毎繰り返す。 総投与量は500mg/m²以下とする。
アドリアシン®電子添文 (2022年11月改訂 第1版)¹⁾より引用
イホスファミド : ドキソルビシン塩酸塩との併用において、 通常1コースは、 1日1.5~3g/m²を3~5日間連日点滴静注または静脈内に注射する。 末梢白血球の回復を待って3~4週間ごとに反復投与する。 総投与量は、1コース10g/m²以下とする。
イホマイド®電子添文 (2022年10月改訂 第1版)²⁾より引用

投与開始基準

国際第Ⅲ相試験³⁾よりプロトコル

Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):415-23³⁾より引用

主な有害事象

国際第Ⅲ相試験³⁾よりプロトコル

Grade3~4の主な有害事象

  • 好中球数減少 41.5%
  • 白血球数減少 43.3%
  • 発熱性好中球減少症 46.0%
  • 貧血 34.8%
  • 血小板数減少 33.5%
Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):415-23³⁾より引用

エキスパートによるワンポイント

皮膚血管肉腫の2次治療以降に選択

悪性骨軟部腫瘍に対して保険適用があるが、 タキサン系薬剤の有効性が示されて以降、 AI療法が1次治療として使用されることはほぼない。

また、 2次治療以降の候補薬剤の比較試験は無いが、 心毒性などの有害事象から高齢者の多い皮膚血管肉腫に使いにくいという背景もあり、 近年では他の薬剤が使用されることが多い。

投与スケジュール

ドキソルビシン20~30mg/m²を1日1回2日間連続で30分で点滴静注、 イホスファミド2g/m²を1日1回5日連続で4時間で点滴静注する。 その後休薬し3~4週間毎に繰り返す。

ただし、 総投与量はドキソルビシン500mg/m²以下、 イホスファミド1コース10g/m²以下とする。 血液毒性の有害事象が多く、 30%程度の症例で減量を要する³⁾。

臨床試験の結果

皮膚血管肉腫を対象とした前向き比較試験は存在しないが、 EORTCで実施された軟部肉腫に対するアンスラサイクリン系レジメンの統合解析では、 108人の局所進行または転移性血管肉腫患者において、 奏効率25%、 PFS中央値4.9ヵ月、 OS中央値9.9ヵ月と報告されている⁴⁾。

アンスラサイクリン単剤に対してAI療法は単変量解析でPFSのHR 0.53 (95%CI 0.33-0.86)、 OSのHR 0.53 (95%CI 0.32-0.90) と、 AI療法が予後を改善させる可能性が報告されている⁴⁾。

しかし、 これらの報告は少数例で皮膚血管肉腫対象では無いことに留意する必要がある。

投与の注意点

ドキソルビシンによる心筋障害は総投与量500mg/m²を超えると頻度が多くなるため注意が必要である。

また薬液が血管外に漏出した場合は組織障害、 皮膚壊死などを起こす危険性があるため、 投与経路の確保、 投与中の異常が無いか観察する必要がある。 血管外漏出した場合は、 デクスラゾキサンの投与を検討する。 イホスファミドを使用する時は出血性膀胱炎の予防のためにメスナを使用する。

監修 : 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科 中野英司先生

出典

  1. 日本化薬株式会社. アドリアシン®電子添文 (2022年11月改訂 第1版) [最終閲覧 : 2024/04/02]
  2. 塩野義製薬株式会社. イホマイド®電子添文 (2022年10月改訂 第1版) [最終閲覧 : 2024/04/02]
  3. Doxorubicin alone versus intensified doxorubicin plus ifosfamide for first-line treatment of advanced or metastatic soft-tissue sarcoma: a randomised controlled phase 3 trial. Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):415-23. PMID: 24618336
  4. First-line anthracycline-based chemotherapy for angiosarcoma and other soft tissue sarcoma subtypes: pooled analysis of eleven European Organisation for Research and Treatment of Cancer Soft Tissue and Bone Sarcoma Group trials. Eur J Cancer. 2014 Dec;50(18):3178-86. PMID: 25459395
最終更新日 : 2024年8月3日
監修医師 : 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科  中野英司先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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ドキソルビシン + イホスファミド
2024年08月04日更新
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

- アドリアシン® (添付文書¹⁾)

- イホマイド® (添付文書²⁾)

用法用量

監修 : 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科 中野英司先生
電子添文の用法および用量
ドキソルビシン : イホスファミドとの併用において、 1日量、 20~30mg/m²を日局注射用水または日局生理食塩液に溶解し、 1日1回3日間連続で静脈内投与し、 その後休薬し3~4週毎繰り返す。 総投与量は500mg/m²以下とする。
アドリアシン®電子添文 (2022年11月改訂 第1版)¹⁾より引用
イホスファミド : ドキソルビシン塩酸塩との併用において、 通常1コースは、 1日1.5~3g/m²を3~5日間連日点滴静注または静脈内に注射する。 末梢白血球の回復を待って3~4週間ごとに反復投与する。 総投与量は、1コース10g/m²以下とする。
イホマイド®電子添文 (2022年10月改訂 第1版)²⁾より引用

投与開始基準

国際第Ⅲ相試験³⁾よりプロトコル

Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):415-23³⁾より引用

主な有害事象

国際第Ⅲ相試験³⁾よりプロトコル

Grade3~4の主な有害事象

  • 好中球数減少 41.5%
  • 白血球数減少 43.3%
  • 発熱性好中球減少症 46.0%
  • 貧血 34.8%
  • 血小板数減少 33.5%
Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):415-23³⁾より引用

エキスパートによるワンポイント

皮膚血管肉腫の2次治療以降に選択

悪性骨軟部腫瘍に対して保険適用があるが、 タキサン系薬剤の有効性が示されて以降、 AI療法が1次治療として使用されることはほぼない。

また、 2次治療以降の候補薬剤の比較試験は無いが、 心毒性などの有害事象から高齢者の多い皮膚血管肉腫に使いにくいという背景もあり、 近年では他の薬剤が使用されることが多い。

投与スケジュール

ドキソルビシン20~30mg/m²を1日1回2日間連続で30分で点滴静注、 イホスファミド2g/m²を1日1回5日連続で4時間で点滴静注する。 その後休薬し3~4週間毎に繰り返す。

ただし、 総投与量はドキソルビシン500mg/m²以下、 イホスファミド1コース10g/m²以下とする。 血液毒性の有害事象が多く、 30%程度の症例で減量を要する³⁾。

臨床試験の結果

皮膚血管肉腫を対象とした前向き比較試験は存在しないが、 EORTCで実施された軟部肉腫に対するアンスラサイクリン系レジメンの統合解析では、 108人の局所進行または転移性血管肉腫患者において、 奏効率25%、 PFS中央値4.9ヵ月、 OS中央値9.9ヵ月と報告されている⁴⁾。

アンスラサイクリン単剤に対してAI療法は単変量解析でPFSのHR 0.53 (95%CI 0.33-0.86)、 OSのHR 0.53 (95%CI 0.32-0.90) と、 AI療法が予後を改善させる可能性が報告されている⁴⁾。

しかし、 これらの報告は少数例で皮膚血管肉腫対象では無いことに留意する必要がある。

投与の注意点

ドキソルビシンによる心筋障害は総投与量500mg/m²を超えると頻度が多くなるため注意が必要である。

また薬液が血管外に漏出した場合は組織障害、 皮膚壊死などを起こす危険性があるため、 投与経路の確保、 投与中の異常が無いか観察する必要がある。 血管外漏出した場合は、 デクスラゾキサンの投与を検討する。 イホスファミドを使用する時は出血性膀胱炎の予防のためにメスナを使用する。

監修 : 国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科 中野英司先生

出典

  1. 日本化薬株式会社. アドリアシン®電子添文 (2022年11月改訂 第1版) [最終閲覧 : 2024/04/02]
  2. 塩野義製薬株式会社. イホマイド®電子添文 (2022年10月改訂 第1版) [最終閲覧 : 2024/04/02]
  3. Doxorubicin alone versus intensified doxorubicin plus ifosfamide for first-line treatment of advanced or metastatic soft-tissue sarcoma: a randomised controlled phase 3 trial. Lancet Oncol. 2014 Apr;15(4):415-23. PMID: 24618336
  4. First-line anthracycline-based chemotherapy for angiosarcoma and other soft tissue sarcoma subtypes: pooled analysis of eleven European Organisation for Research and Treatment of Cancer Soft Tissue and Bone Sarcoma Group trials. Eur J Cancer. 2014 Dec;50(18):3178-86. PMID: 25459395
最終更新日 : 2024年8月3日
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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がん薬物療法における治療計画をまとめたものです。

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