治療スケジュール
概要
監修医師

Ibrutinib:イブルチニブ(イムブルビカ®)

投与量コース投与日
560mg 1日1回 経口1Day 1~

Venetoclax:ベネトクラクス(ベネクレクスタ®)

投与量コース投与日
20mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 1~7
50mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 8~14
100mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 15~21
200mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 22~28
400mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 29~35
400mg/body 1日1回 経口維持投与期Day 1~

前投薬

なし

その他

イブルチニブに対するベネトクラクスの24ヵ月超の上乗せ投与に関する有効性・安全性のデータは限られており、ベネフィットとリスクを踏まえ継続可否を慎重に判断する。
レジメン
Ibrutinib+Venetoclax
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

- イムブルビカ® (添付文書¹⁾/適正使用情報²*⁾)

 *ヤンセンファーマ株式会社の外部サイトへ遷移します。

- ベネクレクスタ® (添付文書³⁾/適正使用情報⁴*⁾)

 *アッヴィ合同会社の外部サイトへ遷移します。

投与スケジュール

【1コース】28日間
【催吐性】2剤とも軽度に分類
【FN発症】低リスク*
*SYMPATICO試験のFN発生率1.5%²⁾を基に編集部が分類

イブルチニブ : 560mgを1日1回経口投与

ベネトクラクス : 第1~5週は20~400mgを段階的に1日1回経口投与し、 以降は400mgを維持投与

SYMPATICO試験⁵⁾では、 2剤併用期間を2年間とし、 その後は病勢進行または忍容不能な毒性が生じるまでイブルチニブ単剤を継続した。 ベネトクラクスは病勢にかかわらず2年後に中止された。 ベネクレクスタ®電子添文においても、  「イブルチニブに対し24ヵ月を超えて上乗せ投与した際の有効性・安全性に関する情報は限られており、 ベネフィット・リスクを踏まえ投与継続の可否を慎重に検討すること」 と記載されている。

Key Data|臨床試験結果

📊 SYMPATICO試験⁵⁾

Lancet Oncol 2025; 26: 200-13

進行性または再発・難治性マントル細胞リンパ腫患者267例 (イブルチニブ+ベネトクラクス群134例、 イブルチニブ+プラセボ群133例) を対象とした多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験。 主要評価項目は、 治験担当医師が評価した無増悪生存期間 (PFS) であった。

【有効性】イブルチニブ+ベネトクラクス群 (vs イブルチニブ+プラセボ群)

- PFS中央値 : 31.9ヵ月 (vs 22.1ヵ月)

  • ハザード比 (HR) : 0.65、 p=0.005
  • 24ヵ月時点のPFS : 57% (vs 45%)

- CR率 : 54% (vs 32%、 p<0.001)

- 全奏効率 : 82% (vs 74%、 p=0.13)

【安全性】有害事象*: Grade1-2 (Grade≧3)

*全Gradeで10%以上の主なAEを抜粋
  • 下痢 57% (8%)
  • 好中球減少症 3% (31%)
  • 悪心 29% (2%)
  • 疲労 26% (3%)
  • 貧血 13% (9%)
  • 発熱 21% (0%)
  • 咳 20% (0%)
  • 無力症 19% (1%)
  • 血小板減少症 7% (13%)
  • 嘔吐 17% (1%)
  • 肺炎 5% (13%)
  • 視力障害 17% (1%)
  • 上気道感染 16% (1%)
  • 食欲減退 15% (1%)
  • 関節痛 15% (1%)
  • 低カリウム血症 12% (4%)
  • 便秘 14% (0%)
  • COVID-19 10% (4%)
  • 消化不良 14% (0%)
  • 視力低下 13% (1%)
  • ドライアイ 13% (0%)
  • 高血圧 9% (4%)
  • 斑状丘疹状皮疹 12% (1%)
  • 呼吸困難 11% (1%)
  • 流涙増加 12% (1%)
  • 腹痛 9% (2%)
  • 末梢性浮腫 11% (0%)
  • 心房細動 5% (5%)
  • 浮動性めまい 10% (1%)
  • 頭痛 10% (0%)
  • 低マグネシウム血症 10% (1%)
  • 口腔咽頭痛 10% (0%)
  • 掻痒 10% (0%)
  • 尿路感染症 9% (1%)
  • 眼刺激 10% (0%)
  • 筋痛 10% (0%)

各プロトコル

適格基準

SYMPATICO試験⁵⁾の主な適格基準

  • 年齢 : 18歳以上
  • ECOG PS : 0-2
  • 好中球数 : ≧1,000/mm³
  • 血小板数 : ≧5万/mm³
  • ヘモグロビン : ≧8.0g/dL
  • 腎機能 : CrCl≧30mL/min
  • 肝機能 : AST/ALT≦3.0 × ULN、 総ビリルビン≦1.5 × ULN

用量レベル

用量漸増期で1週間超、 維持投与期で2週間超の投与中断があった場合は、 腫瘍崩壊症候群 (TLS) リスクを再評価し、 必要に応じて減量用量での再導入を検討

SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコルを基に編集部作成

肝障害患者に対する用量調整

イブルチニブ : Child-Pugh Aでは280mg/日、 Bでは140mg/日に減量し、 Cでは中等度以下 (B相当) に回復するまで休薬する。

SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコルより引用

腎障害患者に対する用量調整

イブルチニブ : CrCl>30mL/minでは曝露量に変化はなく、 重度腎障害や透析患者に関するデータは得られていない²⁾

ベネトクラクス : 検討はされていないが、 尿中未変化体排泄率 (推定値) は0.01%未満であり、 減量は不要と考えられる

編集部の見解

減量・休薬・中止基準

イブルチニブ

原則として1日280mg未満の投与は不可 (CYP3A阻害薬併用時または中等度肝機能障害時を除く)

SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコル
SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコルを基に編集部作成

ベネトクラクス

ベネクレクスタ®電子添文を基に編集部作成

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️イブルチニブとベネトクラクスによる分子標的薬2剤併用は、 相乗効果により高い治療効果が期待されます。 一方で、 両薬剤ともCYP3A4阻害薬と併用する際には、 用量調整に注意が必要です。 
東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔先生

作用機序の特徴

イブルチニブはBTKの活性部位Cys481と共有結合し、 BTKを持続的に阻害することで下流のシグナル伝達を遮断し、 悪性B細胞の生存・増殖・接着・ホーミングを抑制する。 ベネトクラクスはBCL2阻害薬であり、 BCL2の抗アポトーシス作用を阻害し、 アポトーシスを誘導する。 両薬剤の併用により、 MCL細胞に対して増殖抑制とアポトーシス誘導の相乗効果が認められる。

本レジメンの位置づけ

本レジメンは、 再発または難治性マントル細胞リンパ腫に適用される。

CYP3A4阻害薬併用時の注意事項

イブルチニブおよびベネトクラクスは、 いずれもCYP3A4の感受性が高い基質薬であり、 CYP3A4阻害薬との併用により血中濃度が上昇する可能性がある。 両剤の用量調整を行う際は、 CYP3A4阻害薬の一覧を確認すること。

>> 中程度の・強いCYP3A4阻害薬を確認する

イブルチニブ

添付文書において、 併用禁忌または減量規定が明記されているCYP3A4阻害薬は以下のとおりである。 これに該当しない中等度または強力なCYP3A4阻害薬との併用時においても、 同様に十分な注意が求められる。

イムブルビカ®電子添文¹⁾を基に編集部作成

ベネトクラクス

ベネクレクスタ®電子添文³⁾を基に編集部作成

ベネトクラクスのTLS対策

- 血液検査 (K、 Ca、 P、 尿酸、 Cr) を実施し異常あれば補正を行う

- 事前に高尿酸血症治療薬を投与し、 CT等で腫瘍量を判定する

低腫瘍量かつCrCl≧60mL/minの患者対応

全ての病変が5cm以下
全ての病変が10cm以下かつ絶対リンパ球数≦2.5万/mm³
低腫瘍量の定義 (ベネクレクスタ®電子添文より引用)

- 治療2日前から経口補水 (1.5~2L/日) を開始

- 20mg・50mg投与の前、 6~8時間後、 24時間後、 以降の各増量前に血液検査を実施

高腫瘍量又はCrCl<60mL/minの患者対応

いずれかの病変が10cm超
いずれかの病変が5cm超かつ絶対リンパ球数>2.5万/mm³
高腫瘍量の定義 (ベネクレクスタ®電子添文より引用)

- 治療2日前から経口補水 (1.5~2L/日) を開始し、 補液 (150~200mL/時) を併用する

- 20mg・50mg投与の前、 4・8・12・24時間後、 以降の各増量前、 投与6~8時間後、 24時間後に血液検査を実施

イブルチニブの注意事項

  • 出血リスクがあるため、 手術や侵襲的処置を行う際は、 術前後に少なくとも3~7日の休薬を検討する²⁾
  • 不整脈のリスクがあるため、 定期的に心電図検査を行う
  • 肝機能障害に留意し、 定期的に肝機能検査を行う
  • 間質性肺疾患の可能性があるため、 呼吸器症状を注意深く観察する

RMP【重要な特定されたリスク】

RMP : 医薬品リスク管理計画書

イブルチニブ

  • 出血
  • 骨髄抑制
  • 感染症
  • 不整脈
  • 過敏症
  • TLS
  • 眼障害
  • 肝不全、 肝機能障害
  • 間質性肺疾患
  • 二次性悪性腫瘍
  • CYP3A阻害剤との薬物相互作用
  • 肝機能障害患者への使用

ベネトクラクス

  • TLS
  • 骨髄抑制
  • 感染症
  • CYP3A阻害剤との薬物相互作用

出典

  1. ヤンセンファーマ株式会社. イムブルビカ®カプセル140mg 電子添文 (2025年3月改訂 第7版)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  2. ヤンセンファーマ株式会社. イムブルビカ®カプセル140mg 適正使用ガイド (2025年3月作成 第10版)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  3. アッヴィ合同株式会社. ベネクレクスタ®錠10mg/50mg/100mg 電子添文 (2025年5月改訂 第9版)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  4. アッヴィ合同株式会社. ベネクレクスタ®錠10mg/50mg/100mg 適正使用ガイド (2025年3月作成)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  5. Lancet Oncol. 2025;26(2):200-13.
最終更新: 2025年6月9日
執筆担当: 北里大学病院薬剤部 宮島律子
監修医師: 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

レジメン
Ibrutinib+Venetoclax
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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イブルチニブ+ベネトクラクス
2025年06月16日更新

Ibrutinib:イブルチニブ(イムブルビカ®)

投与量コース投与日
560mg 1日1回 経口1Day 1~

Venetoclax:ベネトクラクス(ベネクレクスタ®)

投与量コース投与日
20mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 1~7
50mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 8~14
100mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 15~21
200mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 22~28
400mg/body 1日1回 経口用量漸増期Day 29~35
400mg/body 1日1回 経口維持投与期Day 1~

前投薬

なし

その他

イブルチニブに対するベネトクラクスの24ヵ月超の上乗せ投与に関する有効性・安全性のデータは限られており、ベネフィットとリスクを踏まえ継続可否を慎重に判断する。

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

- イムブルビカ® (添付文書¹⁾/適正使用情報²*⁾)

 *ヤンセンファーマ株式会社の外部サイトへ遷移します。

- ベネクレクスタ® (添付文書³⁾/適正使用情報⁴*⁾)

 *アッヴィ合同会社の外部サイトへ遷移します。

投与スケジュール

【1コース】28日間
【催吐性】2剤とも軽度に分類
【FN発症】低リスク*
*SYMPATICO試験のFN発生率1.5%²⁾を基に編集部が分類

イブルチニブ : 560mgを1日1回経口投与

ベネトクラクス : 第1~5週は20~400mgを段階的に1日1回経口投与し、 以降は400mgを維持投与

SYMPATICO試験⁵⁾では、 2剤併用期間を2年間とし、 その後は病勢進行または忍容不能な毒性が生じるまでイブルチニブ単剤を継続した。 ベネトクラクスは病勢にかかわらず2年後に中止された。 ベネクレクスタ®電子添文においても、  「イブルチニブに対し24ヵ月を超えて上乗せ投与した際の有効性・安全性に関する情報は限られており、 ベネフィット・リスクを踏まえ投与継続の可否を慎重に検討すること」 と記載されている。

Key Data|臨床試験結果

📊 SYMPATICO試験⁵⁾

Lancet Oncol 2025; 26: 200-13

進行性または再発・難治性マントル細胞リンパ腫患者267例 (イブルチニブ+ベネトクラクス群134例、 イブルチニブ+プラセボ群133例) を対象とした多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験。 主要評価項目は、 治験担当医師が評価した無増悪生存期間 (PFS) であった。

【有効性】イブルチニブ+ベネトクラクス群 (vs イブルチニブ+プラセボ群)

- PFS中央値 : 31.9ヵ月 (vs 22.1ヵ月)

  • ハザード比 (HR) : 0.65、 p=0.005
  • 24ヵ月時点のPFS : 57% (vs 45%)

- CR率 : 54% (vs 32%、 p<0.001)

- 全奏効率 : 82% (vs 74%、 p=0.13)

【安全性】有害事象*: Grade1-2 (Grade≧3)

*全Gradeで10%以上の主なAEを抜粋
  • 下痢 57% (8%)
  • 好中球減少症 3% (31%)
  • 悪心 29% (2%)
  • 疲労 26% (3%)
  • 貧血 13% (9%)
  • 発熱 21% (0%)
  • 咳 20% (0%)
  • 無力症 19% (1%)
  • 血小板減少症 7% (13%)
  • 嘔吐 17% (1%)
  • 肺炎 5% (13%)
  • 視力障害 17% (1%)
  • 上気道感染 16% (1%)
  • 食欲減退 15% (1%)
  • 関節痛 15% (1%)
  • 低カリウム血症 12% (4%)
  • 便秘 14% (0%)
  • COVID-19 10% (4%)
  • 消化不良 14% (0%)
  • 視力低下 13% (1%)
  • ドライアイ 13% (0%)
  • 高血圧 9% (4%)
  • 斑状丘疹状皮疹 12% (1%)
  • 呼吸困難 11% (1%)
  • 流涙増加 12% (1%)
  • 腹痛 9% (2%)
  • 末梢性浮腫 11% (0%)
  • 心房細動 5% (5%)
  • 浮動性めまい 10% (1%)
  • 頭痛 10% (0%)
  • 低マグネシウム血症 10% (1%)
  • 口腔咽頭痛 10% (0%)
  • 掻痒 10% (0%)
  • 尿路感染症 9% (1%)
  • 眼刺激 10% (0%)
  • 筋痛 10% (0%)

各プロトコル

適格基準

SYMPATICO試験⁵⁾の主な適格基準

  • 年齢 : 18歳以上
  • ECOG PS : 0-2
  • 好中球数 : ≧1,000/mm³
  • 血小板数 : ≧5万/mm³
  • ヘモグロビン : ≧8.0g/dL
  • 腎機能 : CrCl≧30mL/min
  • 肝機能 : AST/ALT≦3.0 × ULN、 総ビリルビン≦1.5 × ULN

用量レベル

用量漸増期で1週間超、 維持投与期で2週間超の投与中断があった場合は、 腫瘍崩壊症候群 (TLS) リスクを再評価し、 必要に応じて減量用量での再導入を検討

SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコルを基に編集部作成

肝障害患者に対する用量調整

イブルチニブ : Child-Pugh Aでは280mg/日、 Bでは140mg/日に減量し、 Cでは中等度以下 (B相当) に回復するまで休薬する。

SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコルより引用

腎障害患者に対する用量調整

イブルチニブ : CrCl>30mL/minでは曝露量に変化はなく、 重度腎障害や透析患者に関するデータは得られていない²⁾

ベネトクラクス : 検討はされていないが、 尿中未変化体排泄率 (推定値) は0.01%未満であり、 減量は不要と考えられる

編集部の見解

減量・休薬・中止基準

イブルチニブ

原則として1日280mg未満の投与は不可 (CYP3A阻害薬併用時または中等度肝機能障害時を除く)

SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコル
SYMPATICO試験⁵⁾のプロトコルを基に編集部作成

ベネトクラクス

ベネクレクスタ®電子添文を基に編集部作成

レジメンの特徴と注意点

🧑‍⚕️イブルチニブとベネトクラクスによる分子標的薬2剤併用は、 相乗効果により高い治療効果が期待されます。 一方で、 両薬剤ともCYP3A4阻害薬と併用する際には、 用量調整に注意が必要です。 
東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔先生

作用機序の特徴

イブルチニブはBTKの活性部位Cys481と共有結合し、 BTKを持続的に阻害することで下流のシグナル伝達を遮断し、 悪性B細胞の生存・増殖・接着・ホーミングを抑制する。 ベネトクラクスはBCL2阻害薬であり、 BCL2の抗アポトーシス作用を阻害し、 アポトーシスを誘導する。 両薬剤の併用により、 MCL細胞に対して増殖抑制とアポトーシス誘導の相乗効果が認められる。

本レジメンの位置づけ

本レジメンは、 再発または難治性マントル細胞リンパ腫に適用される。

CYP3A4阻害薬併用時の注意事項

イブルチニブおよびベネトクラクスは、 いずれもCYP3A4の感受性が高い基質薬であり、 CYP3A4阻害薬との併用により血中濃度が上昇する可能性がある。 両剤の用量調整を行う際は、 CYP3A4阻害薬の一覧を確認すること。

>> 中程度の・強いCYP3A4阻害薬を確認する

イブルチニブ

添付文書において、 併用禁忌または減量規定が明記されているCYP3A4阻害薬は以下のとおりである。 これに該当しない中等度または強力なCYP3A4阻害薬との併用時においても、 同様に十分な注意が求められる。

イムブルビカ®電子添文¹⁾を基に編集部作成

ベネトクラクス

ベネクレクスタ®電子添文³⁾を基に編集部作成

ベネトクラクスのTLS対策

- 血液検査 (K、 Ca、 P、 尿酸、 Cr) を実施し異常あれば補正を行う

- 事前に高尿酸血症治療薬を投与し、 CT等で腫瘍量を判定する

低腫瘍量かつCrCl≧60mL/minの患者対応

全ての病変が5cm以下
全ての病変が10cm以下かつ絶対リンパ球数≦2.5万/mm³
低腫瘍量の定義 (ベネクレクスタ®電子添文より引用)

- 治療2日前から経口補水 (1.5~2L/日) を開始

- 20mg・50mg投与の前、 6~8時間後、 24時間後、 以降の各増量前に血液検査を実施

高腫瘍量又はCrCl<60mL/minの患者対応

いずれかの病変が10cm超
いずれかの病変が5cm超かつ絶対リンパ球数>2.5万/mm³
高腫瘍量の定義 (ベネクレクスタ®電子添文より引用)

- 治療2日前から経口補水 (1.5~2L/日) を開始し、 補液 (150~200mL/時) を併用する

- 20mg・50mg投与の前、 4・8・12・24時間後、 以降の各増量前、 投与6~8時間後、 24時間後に血液検査を実施

イブルチニブの注意事項

  • 出血リスクがあるため、 手術や侵襲的処置を行う際は、 術前後に少なくとも3~7日の休薬を検討する²⁾
  • 不整脈のリスクがあるため、 定期的に心電図検査を行う
  • 肝機能障害に留意し、 定期的に肝機能検査を行う
  • 間質性肺疾患の可能性があるため、 呼吸器症状を注意深く観察する

RMP【重要な特定されたリスク】

RMP : 医薬品リスク管理計画書

イブルチニブ

  • 出血
  • 骨髄抑制
  • 感染症
  • 不整脈
  • 過敏症
  • TLS
  • 眼障害
  • 肝不全、 肝機能障害
  • 間質性肺疾患
  • 二次性悪性腫瘍
  • CYP3A阻害剤との薬物相互作用
  • 肝機能障害患者への使用

ベネトクラクス

  • TLS
  • 骨髄抑制
  • 感染症
  • CYP3A阻害剤との薬物相互作用

出典

  1. ヤンセンファーマ株式会社. イムブルビカ®カプセル140mg 電子添文 (2025年3月改訂 第7版)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  2. ヤンセンファーマ株式会社. イムブルビカ®カプセル140mg 適正使用ガイド (2025年3月作成 第10版)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  3. アッヴィ合同株式会社. ベネクレクスタ®錠10mg/50mg/100mg 電子添文 (2025年5月改訂 第9版)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  4. アッヴィ合同株式会社. ベネクレクスタ®錠10mg/50mg/100mg 適正使用ガイド (2025年3月作成)[最終閲覧 : 2025/6/6]
  5. Lancet Oncol. 2025;26(2):200-13.
最終更新: 2025年6月9日
執筆担当: 北里大学病院薬剤部 宮島律子
監修医師: 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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なお、 本ツールは医師向けの教育用資料であり、 実臨床での使用は想定しておりません。 最新の添付文書やガイドラインを必ずご確認下さい。

また、 一般の方への情報提供ではないことを予めご了承ください。