ティブソボ® : 2024年12月24日に 「IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」 を対象として製造販売承認を申請し、 2025年3月27日に正式承認。 薬価は同年5月21日に収載され (250mg 1錠 : 3万7.60円、 1日薬価 : 6万15.20円)、 6月2日に販売が開始された。 また、 ipsogen IDH1変異検出キットRGQ 「キアゲン」 は、 2025年4月11日にコンパニオン診断薬としての承認を取得した。
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
薬剤情報
- ティブソボ® (添付文書/適正使用ガイド*)
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- ビダーザ® (添付文書/適正使用ガイド*)
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主な有害事象
AGILE試験¹⁾より引用 (イボシデニブ+AZA群)
骨髄抑制
- 貧血 (31%、 ≧Grade3 25%)
- 発熱性好中球減少症 (28%、 ≧Grade3 28%)
- 好中球減少 (20%、 ≧Grade3 27%)
- 血小板減少 (28%、 ≧Grade3 24%)
- リンパ球減少 (11%、 ≧Grade3 0%)
主な有害事象
- 出血 (41%、 ≧Grade3 6%)
- 悪心 (42%、 ≧Grade3 3%)
- 嘔吐 (41%、 ≧Grade3 0%)
- 下痢 (35%、 ≧Grade3 1%)
- 発熱 (34%、 ≧Grade3 2%)
- 頭痛 (28%、 ≧Grade3 0%)
- 便秘 (27%、 ≧Grade3 1%)
- 肺炎 (24%、 ≧Grade3 23%)
- QT間隔延長 (20%、 ≧Grade3 10%)
その他重要な有害事象
特徴と注意点
特徴
- コンパニオン診断薬である、 ipsogen IDH1変異検出キットRGQ 「キアゲン」 により、IDH1遺伝子変異が確認された患者に投与
- コンパニオン診断薬に関する情報は、 「医薬品医療機器総合機構 (PMDA)のコンパニオン診断薬等の情報」 ²⁾ を参照
- イボシデニブは変異型イソクエン酸脱水素酵素1 (IDH1) を阻害する経口分子標的薬
- アザシチジンはDNAに取り込まれてDNAのメチル化を阻害することで遺伝子発現を回復させ、 またRNAに取り込まれることでタンパク合成を阻害して殺細胞効果を表す
- 強力な寛解導入療法の適応となる急性骨髄性白血病患者におけるイボシデニブの有効性及び安全性は確立していない
作用機序
- 野生型IDHはイソクエン酸をα-ケトグルタル酸 (α-KG) へ変換する. α-KGはヒストンやDNAを脱メチル化し、 がん抑制遺伝子などを活性化することで、 骨髄での骨髄系細胞の分化を促進する
- IDH1遺伝子変異により発現する変異型IDHは、 α-KGを2-ヒドロキシグルタル酸 (2-HG) へ変換する. 2-HGは細胞分化を阻害し、 腫瘍増殖を促進させると考えられている
- イボシデニブは変異型IDH1に対する阻害作用を有する低分子化合物であり、 変異型IDH1の酵素活性を阻害することで、 腫瘍細胞における2-HG産生を阻害し、 IDH1遺伝子変異陽性のAML細胞の分化を誘導することにより、 腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている

公表された情報を基にHOKUTO編集部で作図
注意点
- 高脂肪食摂取後の服用は、 イボシデニブのAUC及びCmaxの増加が認められることから、 高脂肪食摂取前後の服用は避ける.
- 強いCYP3A阻害薬との併用時は、 1回用量を250mgに減量する.
>> 強いCYP3A4阻害薬を確認する
- QT間隔延長が現れることがあるため、 電解質検査を行い観察する. 心電図検査は最初の2ヵ月間は2週間に1回、 その後は月に1回を目安とする.
- 分化症候群が発現する可能性があるため、 投与中は適切なモニタリングを行う.
>> 分化症候群の特徴と診断を確認する
イボシデニブの減量・休薬・中止基準

ティブソボ®電子添文を基に編集部作図
関連する臨床試験の結果
概要
- 国際共同ランダム化二重盲検第III相試験
- 対象 : 強力な寛解導入療法の適応とならない未治療の IDH1変異陽性のAML患者.
- 介入群 : イボシデニブ (500mg 1日1回経口) +AZA (75mg/m²、 7日間 皮下注射又は静脈内投与).
- 対照群 : プラセボ +AZA (75mg/m²、 7日間 皮下注射又は静脈内投与).
結果
- 追跡期間中央値 : 12.4ヵ月.
- 無イベント生存期間 : 介入群優位、 HR 0.33 (95%CI 0.16-0.69、 p=0.002).
- 12ヵ月無イベント生存率 (推定) : 介入群 37% vs 対照群 12%.
- 全生存期間中央値 : 介入群 24.0ヵ月 vs 対照群 7.9ヵ月 (9.7-23.7)、 HR 0.44 (95%CI 0.27-0.79、 p=0.001).
安全性
- 発熱性好中球減少症 : 介入群 28% vs 対照群 34%.
- 全グレード出血関連イベント : 介入群 41% vs 対照群 29%.
出典
- N Engl J Med. 2022 Apr 21;386(16):1519-1531.
- 医薬品医療機器総合機構 (PMDA), コンパニオン診断薬等の情報
最終更新 : 2025年5月15日
執筆担当 : 北里大学病院薬剤部 宮島律子
監修医師 : 東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔