本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.
薬剤情報
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主な有害事象
Alliance /CALGB 50303試験¹⁾より引用
骨髄抑制
主な有害事象
- 発熱性好中球減少症 (≧Grade3 35%)
- 神経障害 (≧Grade3 18.6%)
- 感染症 (≧Grade3 16.9%)
その他
特徴と注意点
- DA-EPOCH-R療法は、 縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫²⁾、 バーキットリンパ腫³⁾、 MYC陽性⁴⁾やCD5陽性⁵⁾といった高リスクのDLBCLの初期治療や、 治療抵抗性DLBCLに対して使用されている.
- 上記疾患ではR-CHOP療法の治療成績が不良なため、 DA-EPOCH-R療法も有用な選択肢となるが、 大規模なランダム化比較試験でR-CHOP療法を上回る成績は示されていない.
- 縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫では、 DA-EPOCH-R療法はR-CHOP療法と比較して、 治療後の放射線照射を回避できる可能性が示されている²⁾⁶⁾.
- EPOCH療法はエトポシド、 ビンクリスチン、 ドキソルビシンを低濃度で96時間持続投与を行うことで薬剤抵抗性を克服するという基礎研究データに基づき開発された救援化学療法である.
- DA-EPOCH-R療法では、 患者ごとの治療薬の有効血中濃度を保つために、 直近コースの骨髄抑制の程度により、 治療薬の用量を調節. 8段階の用量レベル (-2~6) があり、 1コース目はレベル1から開始. 次コースの投与量は、 3日以上あけた週2回の血液検査の結果により決定.

- 神経障害、 イレウス、 肝障害のグレードによって、 ビンクリスチンの用量を調整.
- 腫瘍量が多い場合、 腫瘍崩壊症候群が出現するため、 十分な予防が必要.
- HBV再活性化リスクを考慮し、 適切なスクリーニング検査とモニタリングを行う.
- リツキシマブはinfusion reactionのリスクが高いため、 予防薬の投与を行い、 バイタルサインのモニタリングを行った上で段階的に投与速度を上げる.
- シクロフォスファミドは出血性膀胱炎のリスクがあるため、 水分摂取と輸液により尿量を保つ.
- ドキソルビシンには蓄積性の心毒性があるため、 累積上限量は500mg/m².
- G-CSF製剤の1次予防投与が必要
関連する臨床試験の結果
概要
- 未治療DLBCLに対する第3相ランダム比較試験.
- 治療:DA-EPOCH-R療法6コース vs R-CHOP療法6コース
- PFS、 奏効率、 OS、 安全性を比較.
PFS:無増悪生存期間 OS:全生存期間
結果
- 追跡期間中央値:5年
- 2年PFS:DA-EPOCH-R群 78.9%、 R-CHOP群 75.5%
- 5年PFS:DA-EPOCH-R群 68.0%、 R-CHOP群 66.0%
- 無増悪生存率に有意な差は認められず (HR 0.93、 95%CI 0.68-1.27、 p=0.65) .
- 2年OS:DA-EPOCH-R群 86.5%、 R-CHOP群 85.7%
- 5年OS:DA-EPOCH-R群 77.5%、 R-CHOP群 78.5%
- 全生存率に有意な差は認められず (HR1.09、 95%CI 0.75-1.59、 p=0.64) .
- 全奏効率:DA-EPOCH-R群 86.7%、 R-CHOP群 88.0%
- 完全奏効率:DA-EPOCH-R群 58.5%、 R-CHOP群 59.6%
- Grade3/4の有害事象は、 DA-EPOCH-R群でより多かった (p<0.001). 感染症 16.9% vs 10.7%、 発熱性好中球減少症 35.0% vs 17.7%、 粘膜炎 8.4% vs 2.1%、 末梢神経障害 18.6% vs 3.3%.

J Clin Oncol. 2019 Jul 20;37(21):1790-1799.より引用
参考文献
- J Clin Oncol. 2019 Jul 20;37(21):1790-1799.
- N Engl J Med. 2013 Apr 11;368(15):1408-16.
- J Clin Oncol. 2020 Aug 1;38(22):2519-2529.
- Lancet Haematol. 2018 Dec;5(12):e609-e617.
- Haematologica. 2020 Sep 1;105(9):2308-2315.
- Cancer Med. 2019 Aug;8(10):4626-4632.
最終更新:2025年1月10日
執筆:牛久愛和総合病院薬剤センタ- 秋場孝則
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔