治療スケジュール
概要
監修医師

ATRA:トレチノイン(ベサノイド®)

投与量コース投与日
45mg/m² 経口最長60日Day 1~

IDR:イダルビシン(イダマイシン®)

投与量コース投与日
12mg/m² 点滴B群の場合Day 1~2
-C群の場合Day 1~3
-D群の場合その他参照

AraC:シタラビン(キロサイド®)

投与量コース投与日
100mg/m² 点滴B群の場合Day 1~5
-C群の場合Day 1~7
-D群の場合その他参照

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬 (IDR+AraC併用時)

その他

APL細胞とは、芽球+前骨髄球を表す.
ATRA投与は最長60日まで.
完全寛解後も地固め第1コース開始前日まで継続.
D群:治療中にAPL細胞≧1,000/µlへ増加したとき、 A群ではIDR 3日間+AraC 7日間、 B群ではIDR 1日間+AraC 2日間、 C群ではIDR 1日間を追加する.
レジメン
ATRA(±IDR+AraC)
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

主な有害事象

JALSG APL204試験における寛解導入療法時の死亡率¹⁾

  • 出血性合併症による30日以内の死亡 (4.7%)

IDR+AraCの有害事象

  • IDR+AraC / DNR+AraC (急性骨髄性白血病の寛解導入療法) を参照.

ATRAの主な有害事象²⁾

  • トリグリセライド上昇 (14%)
  • レチノイン酸症候群 (12.3%)

その他重要なATRAの有害事象²⁾

  • 白血球増多症 (5.1%)
  • 血栓症 (0.4%)
  • 血管炎 (頻度不明)
  • 感染症 (頻度不明)
  • 錯乱 (頻度不明)

特徴と注意点

DICによる出血予防

  • 播種性血管内凝固 (DIC)を参照.
  • 線溶系亢進型DICに注意する.
  • 厚生労働省DIC診断基準で連日評価.
  • リスクに応じて、 血小板新鮮凍結血漿アンチトロンビン製剤を適宜補充する.
  • トラネキサム酸投与は禁忌 (全身性の血栓症や突然死の報告あり).

分化症候群 (Differentiation Syndrome)

  • 分化症候群(DS)を参照.
  • 初発APLでは2.5~26%の発生率.
  • 症状:発熱、 呼吸困難、 低血圧、 体重増加≧5kg、 肺浸潤影、 胸水・心嚢液貯留、 AKI
  • 診断:上記症状1つ→DSとは診断しないがDS疑いとして早期に治療介入. 2~3つ→中等症のDS. 4つ以上→重症のDS.
  • 治療:可能な限り早期にDEX 10mg1日2回点滴静注開始 (DSの症状が消失するまで)
  • 腎不全や呼吸不全の出現や、 ステロイドの効果が得られない場合は、 ATRAを休薬する.
  • ATRA休薬後の再開は、 症状消失後に行う.

その他の注意点

  • 催奇形性あり、 避妊も含めた説明が必要.

関連する臨床試験の結果

JALSG APL204試験¹⁾

概要

  • 成人急性前骨髄球性白血病に対する、 維持療法におけるATRAとAm80 (タミバロテン) の有効性と安全性に関する多施設共同臨床第3相試験.
  • 寛解導入療法:本レジメン
  • 地固め療法:MIT+AraC、 DNR+AraC、 IDR+AraC
  • 維持療法:ATRA vs Am80 (14日間内服/3ヵ月を2年間)

結果

  • 全体の完全寛解率:93% (319例/344例)
  • 内訳: A群97%、B群94%、C群87%、D群91%
  • 30日以内の死亡:4.7% (出血性の合併症)
  • 観察期間中央値 4.3年 (1.3-8.0年)
  • 全体の4年生存率:89%
  • 4年無再発生存率:ATRA群 84% vs Am80群 91% (HR 0.54、 95% CI 0.26-1.13、 p=0.095) (下図)
  • WBC≧1万/μLのハイリスク群の4年RFS:ATRA群 58% vs Am80群 87% (HR 0.26:95% CI 0.07~0.95、 p=0.028)

JALSG APL97試験³⁾

概要

  • 未治療急性前骨髄球性白血病における維持強化療法の有無による多施設共同無作為比較試験.

結果

  • 全体の完全寛解率94%
  • 完全寛解達成日 (中央値) :42日 (14-98日)
  • 観察期間中央値:64ヵ月 (27-88ヵ月)
  • 全体の6年生存率:83.9% (95% CI 79.2-88.6%)
  • 全体の6年無病生存率:68.5% (95% CI 62.1-74.9%)

参考文献

  1. J Clin Oncol. 2014 Nov 20;32(33):3729-35.
  2. ベサノイドカプセル10mg 医薬品インタビューフォーム
  3. Blood. 2007 Jul 1;110(1):59-66.

最終更新:2021年11月1日
監修医師:東海大学血液腫瘍内科 扇屋大輔

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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JALSG APL204寛解導入療法
2023年05月27日更新

ATRA:トレチノイン(ベサノイド®)

投与量コース投与日
45mg/m² 経口最長60日Day 1~

IDR:イダルビシン(イダマイシン®)

投与量コース投与日
12mg/m² 点滴B群の場合Day 1~2
-C群の場合Day 1~3
-D群の場合その他参照

AraC:シタラビン(キロサイド®)

投与量コース投与日
100mg/m² 点滴B群の場合Day 1~5
-C群の場合Day 1~7
-D群の場合その他参照

前投薬

5-HT3受容体拮抗薬 (IDR+AraC併用時)

その他

APL細胞とは、芽球+前骨髄球を表す.
ATRA投与は最長60日まで.
完全寛解後も地固め第1コース開始前日まで継続.
D群:治療中にAPL細胞≧1,000/µlへ増加したとき、 A群ではIDR 3日間+AraC 7日間、 B群ではIDR 1日間+AraC 2日間、 C群ではIDR 1日間を追加する.

概要

本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではございません. 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください.

薬剤情報

主な有害事象

JALSG APL204試験における寛解導入療法時の死亡率¹⁾

  • 出血性合併症による30日以内の死亡 (4.7%)

IDR+AraCの有害事象

  • IDR+AraC / DNR+AraC (急性骨髄性白血病の寛解導入療法) を参照.

ATRAの主な有害事象²⁾

  • トリグリセライド上昇 (14%)
  • レチノイン酸症候群 (12.3%)

その他重要なATRAの有害事象²⁾

  • 白血球増多症 (5.1%)
  • 血栓症 (0.4%)
  • 血管炎 (頻度不明)
  • 感染症 (頻度不明)
  • 錯乱 (頻度不明)

特徴と注意点

DICによる出血予防

  • 播種性血管内凝固 (DIC)を参照.
  • 線溶系亢進型DICに注意する.
  • 厚生労働省DIC診断基準で連日評価.
  • リスクに応じて、 血小板新鮮凍結血漿アンチトロンビン製剤を適宜補充する.
  • トラネキサム酸投与は禁忌 (全身性の血栓症や突然死の報告あり).

分化症候群 (Differentiation Syndrome)

  • 分化症候群(DS)を参照.
  • 初発APLでは2.5~26%の発生率.
  • 症状:発熱、 呼吸困難、 低血圧、 体重増加≧5kg、 肺浸潤影、 胸水・心嚢液貯留、 AKI
  • 診断:上記症状1つ→DSとは診断しないがDS疑いとして早期に治療介入. 2~3つ→中等症のDS. 4つ以上→重症のDS.
  • 治療:可能な限り早期にDEX 10mg1日2回点滴静注開始 (DSの症状が消失するまで)
  • 腎不全や呼吸不全の出現や、 ステロイドの効果が得られない場合は、 ATRAを休薬する.
  • ATRA休薬後の再開は、 症状消失後に行う.

その他の注意点

  • 催奇形性あり、 避妊も含めた説明が必要.

関連する臨床試験の結果

JALSG APL204試験¹⁾

概要

  • 成人急性前骨髄球性白血病に対する、 維持療法におけるATRAとAm80 (タミバロテン) の有効性と安全性に関する多施設共同臨床第3相試験.
  • 寛解導入療法:本レジメン
  • 地固め療法:MIT+AraC、 DNR+AraC、 IDR+AraC
  • 維持療法:ATRA vs Am80 (14日間内服/3ヵ月を2年間)

結果

  • 全体の完全寛解率:93% (319例/344例)
  • 内訳: A群97%、B群94%、C群87%、D群91%
  • 30日以内の死亡:4.7% (出血性の合併症)
  • 観察期間中央値 4.3年 (1.3-8.0年)
  • 全体の4年生存率:89%
  • 4年無再発生存率:ATRA群 84% vs Am80群 91% (HR 0.54、 95% CI 0.26-1.13、 p=0.095) (下図)
  • WBC≧1万/μLのハイリスク群の4年RFS:ATRA群 58% vs Am80群 87% (HR 0.26:95% CI 0.07~0.95、 p=0.028)

JALSG APL97試験³⁾

概要

  • 未治療急性前骨髄球性白血病における維持強化療法の有無による多施設共同無作為比較試験.

結果

  • 全体の完全寛解率94%
  • 完全寛解達成日 (中央値) :42日 (14-98日)
  • 観察期間中央値:64ヵ月 (27-88ヵ月)
  • 全体の6年生存率:83.9% (95% CI 79.2-88.6%)
  • 全体の6年無病生存率:68.5% (95% CI 62.1-74.9%)

参考文献

  1. J Clin Oncol. 2014 Nov 20;32(33):3729-35.
  2. ベサノイドカプセル10mg 医薬品インタビューフォーム
  3. Blood. 2007 Jul 1;110(1):59-66.

最終更新:2021年11月1日
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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