概要
監修医師
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

薬剤情報

ノルバデックス® (添付文書)

用法用量

タモキシフェン20mg 1日1回経口投与

※電子添文記載の1日最高量は40mg、 また1日2回分割も可

特徴と注意点

  • 閉経状態に関わらず使用可能なホルモン療法である。
  • TAMは臓器によって、 エストロゲンの部分的なアゴニストとしてもアンタゴニストとしても作用する。 子宮内膜、 骨、 心血管系、 肝臓などではアゴニストとしての作用を有することが知られている。
  • ホルモン受容体陽性乳癌に対し、 TAMの術後5年間の内服は、 再発・死亡の相対リスクをそれぞれ41%、 34%低下させる。
  • TAMを術後5年間終了後にさらに5年追加することで術後10年以降の再発リスク、 死亡のリスクをそれぞれ25%、 29%低下させる。
  • 5年間内服後に閉経していた場合、 アロマターゼ阻害薬を5年間さらに内服することが推奨されている³⁾。
  • TAM内服により、 主に閉経後において子宮内膜癌 (子宮体癌) の発症リスクが増加するが、 死亡リスクの有意な増加は認めない。 不正性器出血などの症状がある場合は、 婦人科での精査が勧められる。

投与開始基準

Lancet. 2005 May;365(9472):1687-717.¹⁾より抜粋

タモキシフェンの使用歴やエストロゲン受容体 (ER) 、 結節の状態、 その他の腫瘍の特徴にほとんど関係なく、 50-69歳の患者

ATLAS試験²⁾より抜粋
  • 女性
  • 切除可能な早期乳癌
  • 過去数年から現在に至るまでタモキシフェンを投与中、 もしくは過去1年間に投与中止したがほとんど中断することなく治療再開可能であった
  • 臨床的に病変がない (局所再発はすべて切除、 遠隔再発なし)

疾患の発生率

ATLAS試験²⁾

  • 肺塞栓 RR 1.87 (95%CI 1.13–3.07)、 p=0.01 (両治療群の死亡率 0.2%を含む) 
  • 脳卒中 RR 1.06 (95%CI 0.83–1.36)、 p=0.63
  • 虚血性心疾患 RR 0.76 (95%CI 0.60–0.95)、 p=0.02 
  • 子宮内膜癌 RR 1.74 (95%CI 1.30–2.34)、 p=0.0002 (すべての非子宮頸癌を含む)

関連する臨床試験①|RCTメタ解析¹⁾

早期乳癌患者の術後化学療法またはホルモン療法における、 複数の無作為化比較試験(RCT)の結果を評価したメタアナリシスの結果より、 15年死亡率を減少させる治療の存在が示された。

>>臨床試験の詳細を見る

術後単剤/多剤併用化学療法 vs 術後療法なし

単剤化学療法レジメンは再発率を低下させ、 多剤化学療法レジメンは再発と乳癌による死亡率 (ひいては総死亡率) を低下させた。

単剤化学療法

  • 再発イベント発生率の比 (対対照) :0.86、 p=0.001
  • 乳癌死亡イベント発生率の比:0.96、 p=0.4

多剤化学療法

  • 再発イベント発生率の比 (対対照) :0.77、 p<0.00001
  • 乳癌死亡イベント発生率の比:0.83、 p<0.00001

若年および高齢患者の術後多剤併用化学療法 vs 術後療法なし

  • 若年患者および高齢患者の15年時再発率と乳癌死亡率は、 年齢に関わらず多剤併用化学療法で有意に低かったが (すべてp<0.00001) 、 高齢患者より若年患者の方が多剤併用化学療法の予後改善効果が約3倍大きかった。
  • 若年患者・高齢患者のどちらにおいても、 CMFベースのレジメンとアントラサイクリンベースの有効性に差は見られなかった。
  • 結節の有無はいずれの年齢層においても乳癌死亡率の減少にはほとんど関係しない。

化学療法はエストロゲン受容体(ER)発現の乏しい若年患者にも高齢患者にも有効であった

  • 若年患者:再発率比 0.61 (p<0.00001) 、 死亡率比 0.68 (p=0.0002)
  • 高齢患者:再発率比 0.72 (p<0.00001) 、 死亡率比 0.81 (p=0.0004)

ER陽性の患者では、 化学内分泌療法は内分泌療法単独よりも有意に優れていた。

  • 若年患者:再発率比 0.64 (p<0.00001)
  • 高齢患者:再発率比 0.85 (p<0.00001)

術後多剤併用化学療法の長期療法 vs 短期療法

  • 最初の2年間の再発率は、 治療期間が長いほど有意に低かった (11.2 vs 13.0%/年、 再発率比0.84、 p=0.003) が、 長期的に見ると、 治療期間が長いことによる利益はほとんどなかった (再発率8.3 vs 8.7%/年、 再発率比0.95、 乳癌死亡率比 0.98) 。
  • アントラサイクリンベースのレジメンとCMFベースのレジメンの間接的比較では、 有効性に差は見られなかったが、 直接的比較では、 若年層でアントラサイクリンが有利であった。
  • アントラサイクリンvs CMF:再発率比0.89 (p=0.001) 、 乳癌死亡率比0.84 (p<0.00001)

死亡率に対するアントラサイクリンベースのレジメンの効果

  • アントラサイクリンベースの術後化学療法 vs 術後化学療法なし:乳癌死亡率比は若年患者で0.74、 高齢患者で0.83。
  • 若年患者・高齢患者のどちらにおいても、 アントラサイクリンベースのレジメンの乳癌死亡率に対する効果は、 ERの状態と有意な関係はなかった。

アントラサイクリン系レジメン間の比較

  • アントラサイクリンをベースとしたレジメン間に、 有意な異質性はみられなかった。
  • FACまたはFEC vs 術後補助化学療法なしの比較:乳癌死亡率比は若年患者で0.69、 高齢患者で0.79
  • FACまたはFEC vs CMFの比較:乳癌死亡率比は若年患者で0.74、 高齢患者で0.78

タモキシフェン vs タモキシフェンを使用しない術後療法

  • ER陽性の女性において、 タモキシフェンの1-2年投与、 約5年投与のどちらにおいても、 再発率と乳癌死亡率の大幅かつ有意な減少を認め、 特に5年投与の方が減少率が大きかった (1-2年投与 vs 5年投与:再発p<0.00001、 乳癌死亡p=0.0001)。
  • ER発現の乏しい女性では、 タモキシフェンを1-2年投与した試験でいくらかの有効性があるように思われたが、 約5年投与した試験では有効性は認めなかった。

ER陽性患者における5年間のタモキシフェン投与

  • 5年投与を行うことで、 年間の再発率はほぼ半減し (再発率比0.59) 、 乳癌死亡率は3分の1減少した (死亡率比0.66) 。
  • 再発に対する効果は、 タモキシフェン投与中の最初の5年間に見られるが、 乳癌死亡に対する効果はこの期間以降に現れる。
  • タモキシフェンによるリスク減少は、 20mg/日でも30-40mg/日でもほぼ同様であり、 年齢や結節の状態にもほとんど影響されなかった。
  • 乳癌死亡率に関しては、 10年確率はリンパ節転移陽性の女性 (32.0% vs 44.5%、 p<0.00001) だけでなく、 リンパ節転移陰性の女性 (12.2% vs 17.5%、 p<0.00001) においても有意であった。
  • 対側乳癌の発生率は約3分の1減少し (年間1,000人当たり4.0 vs 6.0人) 、 子宮体癌の発生率は約3倍に増加した (年間1,000人当たり1.9 vs 0.6人) 。

タモキシフェンの術後長期ホルモン療法 vs 術後短期ホルモン療法

  • 治療期間が長い方が治療期間が短い場合よりも乳癌の抑制効果が高かった (乳癌死亡率比0.92、 p=0.01、 再発率比0.85、 p<0.00001) 。
  • 治療期間が長くなるにつれて、 他の原因による死亡率 (血栓塞栓症、 脳卒中等) がわずかに多くなった (死亡率比0.98 vs 0.94%/年、 p=0.5) 。
  • 治療期間が長くなるにつれて、 子宮体癌の発生率は有意に増加した (0.21 vs 0.11%/年、 p=0.00002) 。
  • タモキシフェン5年投与とタモキシフェン1-2年投与の比較では、 約5年間の治療の方が優れていた (再発率比0.82、 p<0.00001、 乳癌死亡率比0.91、 p=0.01) 。

卵巣切除または卵巣機能抑制療法 (50歳未満) vs術後の卵巣機能抑制療法なし

卵巣切除または機能抑制は、 再発率 (p<0.00001) および乳癌死亡率 (p=0.004) に対して明確な効果を認めた。

関連する臨床試験②|ATLAS試験²⁾

エストロゲン受容体陽性の早期乳癌患者において、 術後にタモキシフェン投与を10年まで延長することの効果を、 5年投与で終了した場合を対照に検証したランダム化比較試験ATLASの結果より、 タモキシフェンを10年間投与することで、 10年後の再発と乳癌死亡を予防できることが示された。

>>臨床試験の詳細を見る

再発リスク

再発が記録されたのは1,328例 (5-9年目に899例、 10-14年目に379例、 15年目以降に50例)

  • 10年投与群:617例/3,428例
  • 5年投与群:711例/3,418例
RR 0.84 (95%CI 0.76-0.94)、 p=0.002
  • 5-14年目の累積再発率は、 10年投与群21.4%、 5年投与群25.1%であった。
  • 再発リスクの低下は10年目以降で顕著となった (10年目以降のRR 0.75、 5~9年目のRR 0.90) が、 有意ではなかった (p=0.10) 。

乳癌死亡リスク

  • 10年投与群:331例/3,428例
  • 5年投与群:397例/3,418例
p=0.01
  • 5-14年目の累積乳癌死亡率は、 10年投与群12.2%、 5年投与群15.0%であった。
  • 死亡リスクの低下は10年目以降で顕著 (p=0.04) となった (10年目以降のRR 0.71、 5-9年目のRR 0.97) 。

全死亡

  • 10年投与群:639例
  • 5年投与群:722例
p=0.01

乳癌以外の原因による (再発を伴わない) 死亡

  • 全被験者1万2,894例を6,454例、 6,440例に分割して解析
  • 治療の延長による影響は受けなかった(691例 vs 679例) 。
RR 0.99 (95%CI 0.89-1.10)、 p=0.84

特定の疾患の入院または死亡リスク

肺塞栓

RR 1.87 (95%CI 1.13-3.07)、 p=0.01

脳卒中

RR 1.06 (95%CI 0.83-1.36)、 p=0.63

虚血性心疾患

RR 0.76 (95%CI 0.60-0.95)、 p=0.02

子宮内膜癌

RR 1.74 (95%CI 1.30-2.34)、 p=0.0002

5-14年目の子宮内膜癌の累積リスクは、 10年投与群で3.1% (死亡率0.4%) 、 5年投与群で1.6% (死亡率0.2%) であった。

参考文献

  1. Effects of chemotherapy and hormonal therapy for early breast cancer on recurrence and 15-year survival: an overview of the randomised trials. Lancet. 2005 May;365(9472):1687-717. PMID: 15894097
  2. Long-term effects of continuing adjuvant tamoxifen to 10 years versus stopping at 5 years after diagnosis of oestrogen receptor-positive breast cancer: ATLAS, a randomised trial. Lancet. 2013 Mar 9;381(9869):805-16. PMID: 23219286
  3. A randomized trial of letrozole in postmenopausal women after five years of tamoxifen therapy for early-stage breast cancer. N Engl J Med. 2003 Nov 6;349(19):1793-802. PMID: 14551341
最終更新日:2023年12月18日
監修医師:HOKUTO編集部監修医師
執筆:NTT東日本関東病院 薬剤部 兼平 暖先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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タモキシフェン (ノルバデックス®)
2024年03月06日更新
本コンテンツは特定の治療法を推奨するものではありません。 個々の患者の病態や、 実際の薬剤情報やガイドラインを確認の上、 利用者の判断と責任でご利用ください。

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ノルバデックス® (添付文書)

用法用量

タモキシフェン20mg 1日1回経口投与

※電子添文記載の1日最高量は40mg、 また1日2回分割も可

特徴と注意点

  • 閉経状態に関わらず使用可能なホルモン療法である。
  • TAMは臓器によって、 エストロゲンの部分的なアゴニストとしてもアンタゴニストとしても作用する。 子宮内膜、 骨、 心血管系、 肝臓などではアゴニストとしての作用を有することが知られている。
  • ホルモン受容体陽性乳癌に対し、 TAMの術後5年間の内服は、 再発・死亡の相対リスクをそれぞれ41%、 34%低下させる。
  • TAMを術後5年間終了後にさらに5年追加することで術後10年以降の再発リスク、 死亡のリスクをそれぞれ25%、 29%低下させる。
  • 5年間内服後に閉経していた場合、 アロマターゼ阻害薬を5年間さらに内服することが推奨されている³⁾。
  • TAM内服により、 主に閉経後において子宮内膜癌 (子宮体癌) の発症リスクが増加するが、 死亡リスクの有意な増加は認めない。 不正性器出血などの症状がある場合は、 婦人科での精査が勧められる。

投与開始基準

Lancet. 2005 May;365(9472):1687-717.¹⁾より抜粋

タモキシフェンの使用歴やエストロゲン受容体 (ER) 、 結節の状態、 その他の腫瘍の特徴にほとんど関係なく、 50-69歳の患者

ATLAS試験²⁾より抜粋
  • 女性
  • 切除可能な早期乳癌
  • 過去数年から現在に至るまでタモキシフェンを投与中、 もしくは過去1年間に投与中止したがほとんど中断することなく治療再開可能であった
  • 臨床的に病変がない (局所再発はすべて切除、 遠隔再発なし)

疾患の発生率

ATLAS試験²⁾

  • 肺塞栓 RR 1.87 (95%CI 1.13–3.07)、 p=0.01 (両治療群の死亡率 0.2%を含む) 
  • 脳卒中 RR 1.06 (95%CI 0.83–1.36)、 p=0.63
  • 虚血性心疾患 RR 0.76 (95%CI 0.60–0.95)、 p=0.02 
  • 子宮内膜癌 RR 1.74 (95%CI 1.30–2.34)、 p=0.0002 (すべての非子宮頸癌を含む)

関連する臨床試験①|RCTメタ解析¹⁾

早期乳癌患者の術後化学療法またはホルモン療法における、 複数の無作為化比較試験(RCT)の結果を評価したメタアナリシスの結果より、 15年死亡率を減少させる治療の存在が示された。

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術後単剤/多剤併用化学療法 vs 術後療法なし

単剤化学療法レジメンは再発率を低下させ、 多剤化学療法レジメンは再発と乳癌による死亡率 (ひいては総死亡率) を低下させた。

単剤化学療法

  • 再発イベント発生率の比 (対対照) :0.86、 p=0.001
  • 乳癌死亡イベント発生率の比:0.96、 p=0.4

多剤化学療法

  • 再発イベント発生率の比 (対対照) :0.77、 p<0.00001
  • 乳癌死亡イベント発生率の比:0.83、 p<0.00001

若年および高齢患者の術後多剤併用化学療法 vs 術後療法なし

  • 若年患者および高齢患者の15年時再発率と乳癌死亡率は、 年齢に関わらず多剤併用化学療法で有意に低かったが (すべてp<0.00001) 、 高齢患者より若年患者の方が多剤併用化学療法の予後改善効果が約3倍大きかった。
  • 若年患者・高齢患者のどちらにおいても、 CMFベースのレジメンとアントラサイクリンベースの有効性に差は見られなかった。
  • 結節の有無はいずれの年齢層においても乳癌死亡率の減少にはほとんど関係しない。

化学療法はエストロゲン受容体(ER)発現の乏しい若年患者にも高齢患者にも有効であった

  • 若年患者:再発率比 0.61 (p<0.00001) 、 死亡率比 0.68 (p=0.0002)
  • 高齢患者:再発率比 0.72 (p<0.00001) 、 死亡率比 0.81 (p=0.0004)

ER陽性の患者では、 化学内分泌療法は内分泌療法単独よりも有意に優れていた。

  • 若年患者:再発率比 0.64 (p<0.00001)
  • 高齢患者:再発率比 0.85 (p<0.00001)

術後多剤併用化学療法の長期療法 vs 短期療法

  • 最初の2年間の再発率は、 治療期間が長いほど有意に低かった (11.2 vs 13.0%/年、 再発率比0.84、 p=0.003) が、 長期的に見ると、 治療期間が長いことによる利益はほとんどなかった (再発率8.3 vs 8.7%/年、 再発率比0.95、 乳癌死亡率比 0.98) 。
  • アントラサイクリンベースのレジメンとCMFベースのレジメンの間接的比較では、 有効性に差は見られなかったが、 直接的比較では、 若年層でアントラサイクリンが有利であった。
  • アントラサイクリンvs CMF:再発率比0.89 (p=0.001) 、 乳癌死亡率比0.84 (p<0.00001)

死亡率に対するアントラサイクリンベースのレジメンの効果

  • アントラサイクリンベースの術後化学療法 vs 術後化学療法なし:乳癌死亡率比は若年患者で0.74、 高齢患者で0.83。
  • 若年患者・高齢患者のどちらにおいても、 アントラサイクリンベースのレジメンの乳癌死亡率に対する効果は、 ERの状態と有意な関係はなかった。

アントラサイクリン系レジメン間の比較

  • アントラサイクリンをベースとしたレジメン間に、 有意な異質性はみられなかった。
  • FACまたはFEC vs 術後補助化学療法なしの比較:乳癌死亡率比は若年患者で0.69、 高齢患者で0.79
  • FACまたはFEC vs CMFの比較:乳癌死亡率比は若年患者で0.74、 高齢患者で0.78

タモキシフェン vs タモキシフェンを使用しない術後療法

  • ER陽性の女性において、 タモキシフェンの1-2年投与、 約5年投与のどちらにおいても、 再発率と乳癌死亡率の大幅かつ有意な減少を認め、 特に5年投与の方が減少率が大きかった (1-2年投与 vs 5年投与:再発p<0.00001、 乳癌死亡p=0.0001)。
  • ER発現の乏しい女性では、 タモキシフェンを1-2年投与した試験でいくらかの有効性があるように思われたが、 約5年投与した試験では有効性は認めなかった。

ER陽性患者における5年間のタモキシフェン投与

  • 5年投与を行うことで、 年間の再発率はほぼ半減し (再発率比0.59) 、 乳癌死亡率は3分の1減少した (死亡率比0.66) 。
  • 再発に対する効果は、 タモキシフェン投与中の最初の5年間に見られるが、 乳癌死亡に対する効果はこの期間以降に現れる。
  • タモキシフェンによるリスク減少は、 20mg/日でも30-40mg/日でもほぼ同様であり、 年齢や結節の状態にもほとんど影響されなかった。
  • 乳癌死亡率に関しては、 10年確率はリンパ節転移陽性の女性 (32.0% vs 44.5%、 p<0.00001) だけでなく、 リンパ節転移陰性の女性 (12.2% vs 17.5%、 p<0.00001) においても有意であった。
  • 対側乳癌の発生率は約3分の1減少し (年間1,000人当たり4.0 vs 6.0人) 、 子宮体癌の発生率は約3倍に増加した (年間1,000人当たり1.9 vs 0.6人) 。

タモキシフェンの術後長期ホルモン療法 vs 術後短期ホルモン療法

  • 治療期間が長い方が治療期間が短い場合よりも乳癌の抑制効果が高かった (乳癌死亡率比0.92、 p=0.01、 再発率比0.85、 p<0.00001) 。
  • 治療期間が長くなるにつれて、 他の原因による死亡率 (血栓塞栓症、 脳卒中等) がわずかに多くなった (死亡率比0.98 vs 0.94%/年、 p=0.5) 。
  • 治療期間が長くなるにつれて、 子宮体癌の発生率は有意に増加した (0.21 vs 0.11%/年、 p=0.00002) 。
  • タモキシフェン5年投与とタモキシフェン1-2年投与の比較では、 約5年間の治療の方が優れていた (再発率比0.82、 p<0.00001、 乳癌死亡率比0.91、 p=0.01) 。

卵巣切除または卵巣機能抑制療法 (50歳未満) vs術後の卵巣機能抑制療法なし

卵巣切除または機能抑制は、 再発率 (p<0.00001) および乳癌死亡率 (p=0.004) に対して明確な効果を認めた。

関連する臨床試験②|ATLAS試験²⁾

エストロゲン受容体陽性の早期乳癌患者において、 術後にタモキシフェン投与を10年まで延長することの効果を、 5年投与で終了した場合を対照に検証したランダム化比較試験ATLASの結果より、 タモキシフェンを10年間投与することで、 10年後の再発と乳癌死亡を予防できることが示された。

>>臨床試験の詳細を見る

再発リスク

再発が記録されたのは1,328例 (5-9年目に899例、 10-14年目に379例、 15年目以降に50例)

  • 10年投与群:617例/3,428例
  • 5年投与群:711例/3,418例
RR 0.84 (95%CI 0.76-0.94)、 p=0.002
  • 5-14年目の累積再発率は、 10年投与群21.4%、 5年投与群25.1%であった。
  • 再発リスクの低下は10年目以降で顕著となった (10年目以降のRR 0.75、 5~9年目のRR 0.90) が、 有意ではなかった (p=0.10) 。

乳癌死亡リスク

  • 10年投与群:331例/3,428例
  • 5年投与群:397例/3,418例
p=0.01
  • 5-14年目の累積乳癌死亡率は、 10年投与群12.2%、 5年投与群15.0%であった。
  • 死亡リスクの低下は10年目以降で顕著 (p=0.04) となった (10年目以降のRR 0.71、 5-9年目のRR 0.97) 。

全死亡

  • 10年投与群:639例
  • 5年投与群:722例
p=0.01

乳癌以外の原因による (再発を伴わない) 死亡

  • 全被験者1万2,894例を6,454例、 6,440例に分割して解析
  • 治療の延長による影響は受けなかった(691例 vs 679例) 。
RR 0.99 (95%CI 0.89-1.10)、 p=0.84

特定の疾患の入院または死亡リスク

肺塞栓

RR 1.87 (95%CI 1.13-3.07)、 p=0.01

脳卒中

RR 1.06 (95%CI 0.83-1.36)、 p=0.63

虚血性心疾患

RR 0.76 (95%CI 0.60-0.95)、 p=0.02

子宮内膜癌

RR 1.74 (95%CI 1.30-2.34)、 p=0.0002

5-14年目の子宮内膜癌の累積リスクは、 10年投与群で3.1% (死亡率0.4%) 、 5年投与群で1.6% (死亡率0.2%) であった。

参考文献

  1. Effects of chemotherapy and hormonal therapy for early breast cancer on recurrence and 15-year survival: an overview of the randomised trials. Lancet. 2005 May;365(9472):1687-717. PMID: 15894097
  2. Long-term effects of continuing adjuvant tamoxifen to 10 years versus stopping at 5 years after diagnosis of oestrogen receptor-positive breast cancer: ATLAS, a randomised trial. Lancet. 2013 Mar 9;381(9869):805-16. PMID: 23219286
  3. A randomized trial of letrozole in postmenopausal women after five years of tamoxifen therapy for early-stage breast cancer. N Engl J Med. 2003 Nov 6;349(19):1793-802. PMID: 14551341
最終更新日:2023年12月18日
監修医師:HOKUTO編集部監修医師
執筆:NTT東日本関東病院 薬剤部 兼平 暖先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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