亀田総合病院
8ヶ月前
FilmArray®システムは、 multiplex PCR法を用いて、 核酸同定を同時に行う全自動遺伝子解析装置です。 FilmArray®呼吸器パネル2.1は、 鼻咽頭拭い液を用いて以下に示す18種類のウイルスと4種類の細菌の遺伝子を同時に検出することができます。
短時間で多くのPCR検査を同時に行える利点がありますが、 高額 (診療報酬点数 : 963点) となっています。
成人肺炎診療ガイドライン2024においても、 「肺炎診療において多項目遺伝子検査は推奨されるか」 というクリニカルクエスチョンがあり、 弱い推奨となっています。 よって、 FilmArray®呼吸器パネル2.1の実施においては、 適応を慎重に考える必要があります
実臨床におけるFilmArray®呼吸器パネル2.1の統一された適応はないと考えられます。 筆者らのグループでは、 原則として、 ウイルス性肺炎やマイコプラズマ肺炎を疑う入院症例 (特にSARS-CoV-2とインフルエンザの迅速抗原検査が陰性の場合) で提出するようにしています。
呼吸器系ウイルスに関しては、 SARS-CoV-2、 インフルエンザを含めて比較的広範にカバーされていると考えられます。 しかし、 感度は対象ウイルスによって異なり、 最近のメタ解析では、 インフルエンザA 91.1%, インフルエンザB 82.2%, RSウイルス 91.1%、 アデノウイルス 67.0%、 ヒトメタニューモウイルス 91.4%と報告されています¹⁾。
特異度はこれらのウイルスにおいて99%以上でした¹⁾。 したがって、 偽陰性が起こり得るため、 FilmArray®呼吸器パネル2.1が陰性だからといって、 ウイルス性肺炎が完全に否定されるわけではありません。
ウイルス性肺炎症例では、 鼻咽頭拭い液や喀痰は陰性でも、 気管支肺胞洗浄液で陽性になる症例が存在します。 したがって検査する検体によって結果が変わる可能性があります (ただし、 気管支肺胞洗浄液や喀痰は保険適用外となります)。
細菌とウイルスの重複感染が市中肺炎の5~10%で認めると報告されています²⁾³⁾。 したがって、 ウイルスが検出されたからといって、 必ずしも細菌性肺炎が否定されるわけではありません。
ウイルスは健常者の気道に定着することもあるため⁴⁾⁵⁾、 ウイルスの検出が必ずしも呼吸器感染症の起炎菌とは断定はできません。
細菌に関しては、 Bordetella pertussis、 Bordetella parapertussis、 Chlamydophila pneumoniae、 Mycoplasma pneumoniaeの4つのみであり、 Legionella pneumophilaはカバーされていません。 したがって、 重症呼吸器感染症の起炎病原体を評価する場合に、 FilmArray®呼吸器パネル2.1のみでは不十分であり、 Legionella pneumophilaについては尿中抗原検査、 肺炎球菌を含む一般細菌については喀痰グラム染色、 喀痰培養による評価は必須です。
BioFire®肺炎パネルという、 20項目以上の細菌、 非定型肺炎病原体、 ウイルス、 および薬剤耐性遺伝子の5項目以上を検出するパネルが出ていますが、 今のところ保険適用外のため、 まだ国内で広くは用いられていないと考えられます⁶⁾。
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一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。
連絡先 : 主任部長 中島啓
メール : kei.7.nakashima@gmail.com
中島啓 X/Twitter : https://twitter.com/keinakashima1
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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