HOKUTO編集部
5ヶ月前
2024年6月にスペイン・マドリードで開催された欧州血液学会 (EHA 2024) において発表された注目の6演題について、 大阪国際がんセンター血液内科副部長の藤重夫先生にご解説いただきました。
自家移植非適応の多発性骨髄腫 (MM) 症例におけるボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン (VRD) に抗CD38抗体イサツキシマブの上乗せ効果を検討した第Ⅲ相国際共同非盲検無作為化比較試験IMROZである。
無増悪生存期間 (PFS) においてはハザード比 (HR) が0.596で大きなベネフィットが示された。 特に持続的微小残存病変 (MRD) 陰性に関してもオッズ比 (OR) が2.7と、 イサツキシマブの上乗せにより大幅に増加していることが示されている。
最近このような抗CD38抗体を加えた4剤併用療法の有用性を示す研究が数多く報告されてきており、 本邦でも標準的な治療となってくることが予想される。
再発・難治性MMに対するBCMA標的抗体薬物複合体belantamab mafodotin +ポマリドミド+デキサメタゾン (BPd) とボルテゾミブ+ポマリドミド+デキサメタゾン (PVd) を比較する第Ⅲ相多施設共同非盲検無作為化比較試験DREAMM-8である。 結果として、 BPd群ではPFSが有意に改善された。
他試験との直接比較は不適切ではあるが、 最近の細胞療法などを含めた結果と比べても遜色ない、 あるいはより優れるのではないかと言える結果である。 特に奏効例において、 奏効期間が非常に長くなっている。 特徴的な有害事象である眼症状への対処法が昔に比べ改善し、 治療自体が継続しやすくなっているのかもしれない。
初発の慢性骨髄性白血病 (CML) に対して BCR-ABL1特異的アロステリック阻害薬アシミニブと担当医が選択した既存のチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の比較を行った第Ⅲ相多施設オープンラベル無作為化比較試験ASC4FIRSTである。
CMLに対する治療としてはまだフォローアップが不十分であることと、 標準治療群がイマチニブを含めて複数あったことから、 まだ結論が出ていない点もあるが、 現時点で予定されていたイマチニブとの比較においてアシミニブは48週時点のMMR達成率などで有意に優れる結果が示されている。
本邦で広く用いられている第2世代TKIと比して、 現時点でも既にアシミニブの方が良い傾向は示されているが、 統計学的な評価は今後の報告が待たれるところである。
再発・難治性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫 (DLBCL) に対する救援療法に、 CD20×CD3標的二重特異性抗体glofitamab+ゲムシタビン+オキサリプラチン (GemOx) と抗CD20抗体リツキシマブ (R) -GemOxを比較した第Ⅲ相多施設共同非盲検無作為化比較試験STARGLOである。 主要評価項目を全生存期間 (OS) としているところも挑戦的であったが、 そこでも有意差が示されていた。
また、 PFSのデータも示されたが、 glofit-GemOx群がR-GemOx群に対して大きな差をもって優れる結果だった。 毒性についてはglofit-GemOx群でやや報告数が目立っていたが、 実際、 今回のように対照群と比較して大幅に有効性が高く継続されている例が多くなると、 自ずと毒性も多くなってしまう分もあり、 どこまでリスクが上昇するのかはもう少し細かい解析が必要である。
現時点でglofit-GemOx投与時には、 二重特異性T細胞誘導抗体特有の副作用であるサイトカイン放出症候群 (CRS) や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群 (ICANS)、 そして感染症に注意が必要と考えられる。
初発の高齢マントル細胞リンパ腫 (MCL) に対するBTK阻害薬アカラブルチニブを、 次世代型選択的ブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) 阻害薬ベンダムスチン+抗CD20抗体リツキシマブ (BR) に上乗せする意義を検討した、 第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照無作為化比較ECHO試験である。
PFSにおいてはアカラブルチニブ上乗せ群で有意に改善した。 OSについては、 プラセボ群のアカラブルチニブへのクロスオーバーが許容されたこともあってか、 現時点で有意差は認められなかった。 BTK阻害薬イブルチニブを用いたSHINE試験と本試験の直接比較は難しい所であるが、 PFS、 奏効においてはあまり大きな差はなかったものの、 毒性の面ではアカラブルチニブが有利な傾向にあると考えられる。
2次性血球貪食性リンパ組織球症 (sHLH) を対象に、 抗SIRPα/β1/γ抗体ELA026の安全性と有効性を評価した第Ⅰb相国際共同非盲検単群試験で、 今回はNK/T細胞リンパ腫の症例が多く含まれていた。 CAR-T細胞療法後などにも同様の病態が認められることがあり、 今後より重要性が増してくる研究と考えられる。 研究者の定義した奏効においては高い奏効率を示しており、 今後の展開を期待したい。
sHLHの疾患定義自体がまだ明確にされていない面もあり、 どのような症例が本試験の対象として適切かなど、 sHLH自体のデータも充実させていく必要がある。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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