治療拒否の同意書?
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3ヶ月前

治療拒否の同意書?

治療拒否の同意書?
医師が勧めた治療法に納得せず、 エビデンスのない怪しげな治療をしたいと言ってきかない患者さんに出会ったことはありますか?連載「患者さんにどう伝えますか?」 の4回目では、 対応方法などを考えます。

「副作用が怖いから抗がん剤はしたくない」

ある患者さんの話です。

ステージ4の肺がんと診断され、 担当医から抗がん剤を勧められました。 患者さんは、 抗がん剤の副作用が怖くなり、 「抗がん剤をするのは、 ちょっと考えたい。 温熱療法やカテーテル療法など、 体に害が少ない治療を試してみたい」 と答えました。

一方、 担当医は患者さんの反応に怒った感じで、 「主治医から勧められた治療を拒否するのなら、 『病状が悪化したとしても、 病院側は一切責任を負わない』という内容の治療拒否同意書にサインをしてくれ」 と迫った上で、 「うちの病院を二度と受診しないでくれ」 と言ったそうです。

患者さんは、 その病院と担当医に不信感を抱き、 病院を変更したそうです。

先生ならどう対応する?

治療拒否の同意書?

皆さんは、 このような事例をどのように考えますか?ご自身でも同じように対応しますか?患者さんの立場を考慮し、 もう少し工夫をして話そうと試みますか?

がんの専門病院や大学病院の勤務医は非常に多忙であり、 一人一人の患者さんにそれほど多く時間をかけて対応できないのが現状です。 1日にがん患者の外来を数十件こなし、 中には上記ケースのように、 担当医が勧める治療に従ってくれない患者さんもいるでしょう。

そして、 担当医が勧める治療に納得しない患者さんが、 「うちの病院では責任を持てないので、 もう来ないでくれ」 と言われる事例を耳にすることも多いです。

怪しげな治療をしたいという患者

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写真はイメージです

さらに近年は、 「〇〇でがんを治す食事療法」 「がんを消滅させる免疫細胞療法」 のような怪しげなネット情報を信じ、 エビデンスのない治療を受けたいという人は後を絶ちません。

これに対し担当医が、 「ダメダメ、 そんなもの効かないよ。 どうしても受けたいならそれでもいいけれど、 うちの病院はもう診療できなくなるよ」 と諭すように話すこともよくあります。 実際、 このような対応をとっている病院も多いでしょう。

このような担当医の対応も理解できます。 怪しげな治療をした結果、 病状が悪化し、 自分のところに帰ってきてもらっても困りますから。

「がん難民」 となり、 亡くなった実例も

では、 患者さん側の気持ちを考えてみましょう。 多くは、 担当医や病院に不信感を持ちます。 「病院を追い出された」 と思った患者さんは、 科学的根拠のない怪しげな療法を行っているクリニックにすがりつきます。

そういったクリニックは、 がんが悪化してもフォローをしてくれないので、 患者さんは 「難民化」 します。 クリニックでも病院でもフォローされず、 最期は救急車で運ばれ、 救急室で心肺蘇生術まで行われましたが、 死亡してしまいました。 これは実例です。

「治療方針に従えない患者を放置」 は、 医療のプロか?

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写真はイメージです

「医師の言うことに従えない患者さんは診ない」 は、 医療のプロフェッショナルのやり方ではないように思います。 我々が提供する医療には、 程度の差はあれ、 リスクが伴います。 リスクがゼロの医療は存在しません。 リスクを恐れるのであれば、 その医療は受けない方がいいですが、 受けなければ病気も良くなりません。

患者さんはその葛藤に苦しむのですが、 最終的に患者さんがリスクのある医療を受けようという動機として最も重要な要素は、 医師への信頼感であると考えています。 「この医師になら、 自分の命を預けてもよい」 と患者さんが感じるかどうかでしょう。

「治療拒否の同意書を書いてくれ」 と迫る医師、 「うちの病院に来ないでくれ」 と突き放す医師に対しては、 残念ながら、 患者さんが信頼感を持つことは無理でしょう。

では、 標準治療を拒否する患者さんにどう対応していけばよいでしょうか? 次回で解説していきます。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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