寄稿ライター
4ヶ月前

こんにちは、 Dr.Genjohです。 診療報酬改定の議論が大詰めを迎えています。 連載 「続・医師の黄昏」 第2回では、 診療所を取り巻く実情について考察します。

【図1】は財務省の資料です。 2024年度の病院の平均利益率は0.1%と低水準である一方、 無床診療所の平均利益率は6.4%と 「高水準を維持している」 となっています。

【図2】では、 無床診療所を経営する医療法人の平均利益剰余金(=法人の貯金額)は1.35億円と 「高水準」 であるとなっています。
以上より 「診療所は利益を削減すべき」 と財務省は訴えています。

これに対し、 日本医師会は【図3】を示して反論しています。 無床診療所の2024年 (令和6年) 度の経常利益率の中央値は、 前年の6.6%から2.2%まで急落しています。
つまり、 「無床診療所の経常利益率の平均値は、 一部の高収益施設によって引き上げてられているものの、 多くの無床診療所の利益率(=中央値)はもっと低く抑えられている」 という論拠です。
野球の大谷翔平選手がロサンゼルス・ドジャースと契約した時、 「母校 (花巻東高校) の2013年卒業生の平均年収は4000万円だ!」 と揶揄するネットミームが流行りました。
財務省の言い分はこれと似ています。 「花巻東高校OBで大谷選手の同級生は平均年収4000万円。 卒業生全員に2000万円の税金を課しても問題無いでしょ?しかも君たち億単位の貯蓄もあるんだし!」 です。
残念ながら大谷翔平さんを除く卒業生の大多数は路頭に迷うことでしょう…。

診療所の実数は確かに毎年増加していますが、 東京や神奈川、 大阪、 愛知など8都府県に限られています【図4】。 その他は横ばいから減少傾向にあります。
無床診療所の全国平均経常利益率だけにフォーカスし、 一律に懲罰的減給を行えば、 へき地の医療を支えている診療所は閉鎖を余儀なくされるでしょう。 病診連携の一翼を担うはずであったかかりつけ医は死滅し、 へき地の医療インフラは維持不可能となります。

財務省は 「病院 vs 診療所」 の構図を示して、 診療所の利益削減を迫っています。 しかし、 そもそも他業種と比べると 「医療は1人負け」 の状況なのです。
【図5】は、 2024年の売上高経常利益率の業種別中央値です。 少し見づらいですが、 全業種の中央値は5.4%。 病院の平均利益率0.1%も、 無床診療所の中央利益率2.2%も、 どちらも低すぎると言えます。
もちろん財源に限りがあるため、 医療機関の絶対数・地域ごとの分布格差の適正化が前提条件となります。 その上で 「病院の利益は大きく上げて、 診療所の利益も少し上げる」 が本来あるべき姿です。

2024年の診療報酬改定では高血圧、 脂質異常症、 糖尿病の特定疾病指定が外されました。 結果、 患者単価の減少につながり、 多くの内科診療所が大打撃を受けました。
2026年の診療報酬改定ではさらに機能強化加算、 外来管理加算、 地域包括診療料加算などの廃止や包括化(=まるめ)が検討されています。 これらの実現すれば、 内科に限らず他の診療科においても患者単価は大きく落ち込み、 いわゆる 「ウハクリ」 以外は経営が危ぶまれることになるかもしれません。

これからは国民一人一人が自分の 「かかりつけ医」 を登録し、 固定化すべき。 診療所・病院は連携して継続的な医療(≒24時間対応)を提供すべきであり、 それを提供できる施設のみに加算をつけて評価する。 既存の加算は削り、 事実上24時間対応をしてもらうことになる。 総合的な診療に対応出来ないような施設は初診料、 再診料を減算し、 生存不能とさせる。
上記は財務省からの最後通牒です。 医師の働き方改革、 とは一体…?
勤務医の未来が明るいとも思えませんが、 開業医の未来が暗いことは間違いないと筆者は考えます。 開業医過剰地域での開業制限がニュースとなっている昨今、 最後のチャンスと焦る先生も中にはおられると思いますが、 熟慮が必要と考えられます。

Xアカウント : @DrGenjoh

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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