【初ガイダンス】MRD検査を推奨する症例や実施タイミングは?
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HOKUTO編集部

1ヶ月前

【初ガイダンス】MRD検査を推奨する症例や実施タイミングは?

【初ガイダンス】MRD検査を推奨する症例や実施タイミングは?
日本癌治療学会は10月24日、 本邦初となる『分子的残存病変 (molecular residual disease: MRD)検査の適正臨床利用に関する見解書 第1版 2024年10月 (以下、 「MRDガイダンス」 )』(編 : 日本癌治療学会、 協力 : 日本臨床腫瘍学会・日本外科学会) を同学会公式サイトで公開した。 
ガイダンス作成の背景や目的、 主要なCQについて、 同学会MRDガイダンス作成ワーキンググループ委員長で国立がん研究センター東病院肝胆膵外科の小林信氏が、 第62回日本癌治療学会において発表した。

MRDの定義

ctDNAによる分子レベルの残存病変

MRDは、 臨床的に診断可能な限界未満、 かつctDNAによる検出の限界 (LOD) 以上の範囲において測定された残存病変を指す。

従来MRDは 「血液腫瘍における10⁻⁵以下の微小残存病変 (minimally residual disease) 」 と定義されることが多かったが、 MRDガイダンスにおいては、 固形癌に対するctDNAによる残存病変の評価と適正臨床利用に関する見解を示すものであることから、 分子的残存病変 (molecular residual disease)、 すなわち 「根治切除後の画像上再発前にctDNAが検出され分子的に再発した状態」 と定義された。

MRDによる治療開発の可能性

再発リスク評価や個別化周術期医療が期待もエビデンスが不足

根治切除後にMRD検査を行うことにより、 術後再発リスクの評価や、 それに基づいた個別化周術期医療の開発が期待できる。 実際に、 世界各国でMRDに関する大規模な前向き研究が進行中であり、 一定の臨床的妥当性も認められているという。

一方、 臨床的有用性を示すエビデンスは不足しており、 国内外の各種ガイドラインにおいてもMRD検査に関して詳細に記載されたものはない。 さらに現時点では国内で承認されているMRDアッセイが1つもないのが現状である。 小林氏は 「MRD検査による予後改善等の臨床的有用性を示すエビデンスが、 今後さらに求められる」 と説明した。

MRDガイダンスの目的

MRD検査の適正利用を促し社会的実装へ

このような状況のなかで10月24日に公開されたMRDガイダンスは、 「MRD検査に関する最新のエビデンスを網羅的に解釈し、 癌腫横断的に適正な臨床利用の共通見解を示すこと」 を目的に作成された。 小林氏は 「MRDガイダンスを通してMRD検査の適切な普及を促すとともに、 患者団体等の意見も取り入れながら、 社会実装につなげていきたい」 と語った。

主要なCQ紹介

MRDガイダンスの中では9つのクリニカル・クエスチョン (CQ) が設定されており、 その中から小林氏は特に重要な5つのCQについて解説した。

【初ガイダンス】MRD検査を推奨する症例や実施タイミングは?

CQ1 : 臨床的妥当性が示されたアッセイを強く推奨

CQ1について、 小林氏は 「臨床的妥当性が重要視される」 と指摘。 臨床的妥当性は①MRD検査の感度・特異度、 陽性/陰性的中率②陰性例と比較した陽性例の予後の比較③MRD検出から再発までの期間――などにより評価される。 これらの指標が適切な臨床試験により示されているアッセイの利用が 「強く推奨する」 こととされた。

CQ2 : 根治切除後の症例にMRD検査を強く推奨

MRD検査の目的は分子的再発の早期発見であることから、 再発リスク評価においては根治的切除が行われている症例全例でMRD検査を 「強く推奨する」 とされた。 ただし具体的な癌腫や病期に関して臨床的妥当性が示されていることが求められる。

一方で、 再発サーベイランスにおいてはMRD検査のメリットとコストのバランスも考慮されるべきとされ、 「推奨する」 に留められた。

CQ4: 術後2-8週時点でのMRD検査を推奨

再発リスク評価を目的とした術後MRD検査は、 術後補助療法開始前かつ術後2-8週間を目安にした実施を 「推奨する」 とされた。 また、 再発サーベイランスを目的としたMRD検査については、 推奨頻度や期間が各癌種によって異なるため、 推奨度は 「考慮する」 に留められた。

CQ6 : 術後MRD陽性例には術後補助療法を推奨

術後MRD陽性例に対する術後補助療法は無治療経過観察に比べて予後を改善することが、 複数癌種の再発高リスク例において示されている。 しかし、 再発低リスクのMRD陽性例に対する有効性を示した研究データは各癌種で不足しており、 MRDガイダンスの各領域委員においても見解に差が生じたという。

したがって、 全体の推奨度は 「推奨する」 としたものの、 各癌種のガイドラインにおける補助療法として解釈し、 適正に臨床利用することが望ましいとされた。

CQ8 : 術後MRD陰性例には術後補助療法を考慮

術後MRD陰性例に対し術後補助療法を省略または簡略化した場合の予後を担保するエビデンスは十分ではない。 ただし、 術後補助療法を実施したMRD陽性例よりも予後が良好であった無治療経過観察のMRD陰性例が複数の癌種で報告されている。

したがって術後MRD陰性例には、 腫瘍・患者因子等を考慮した標準治療の簡略化や各癌種のガイドライン等に応じた治療強度の低いレジメンの適応、 または省略も選択肢になりうると考えられ、 全体の推奨度は 「考慮する」 とされた。


最後に小林氏は、  「MRDに関するエビデンスは依然として不足しており、 今後も新たなエビデンスをタイムリーに蓄積し、 適正な臨床利用に備える必要がある」 と述べたうえで、  「本ガイダンスのCQを解決していくためのさらなる臨床研究が求められる」 と呼びかけた。

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国立がん研究センター中央病院呼吸器内科医長 吉田達哉先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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