HOKUTO編集部
5日前

化学療法未治療のホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳癌患者を対象に、 パクリタキセル+ベバシズマブに抗PD-L1抗体アテゾリズマブを追加することの有効性および安全性を評価した第Ⅲ相無作為化比較試験AMBITION(JCOG1919E)の結果、 アテゾリズマブの追加による無増悪生存期間(PFS)の有意な改善は示されなかった。 愛知県がんセンター乳腺科部部長の原文堅氏が発表した。
HR+/HER2-進行乳癌は免疫原性の低い 「冷たい腫瘍(cold tumor)」 と考えられており、 免疫チェックポイント阻害薬の臨床的有用性は限定的である。
一方、 VEGFを介した血管新生は免疫抑制的な腫瘍微小環境の形成を促進するため、 VEGFを阻害することで免疫抑制状態を解除し、 免疫療法への反応を増強できる可能性がある¹⁾。 単群試験のWJOG NEBEAT試験でも、 HR+/HER2-進行乳癌に対するニボルマブ+ベバシズマブ+パクリタキセルの有効性の評価で有望な結果が示されている²⁾。
そこで本試験では、 HR+/HER2-進行乳癌に対し、 パクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブ追加の有効性と安全性を評価した。
対象は、 日本国内24施設で登録された、 進行乳癌に対する化学療法歴がなく、 内分泌療法抵抗性またはLife threateningな転移を有するHR+/HER2-進行乳癌患者281例。 患者は以下の2群に1:1で割り付けられた。 両群ともに治療は28日1コースとし、 増悪を認めるか、 治療中止の基準に該当しない限り継続した。
層別因子は病勢(de novo StageIV vs 再発)、 肝転移(あり vs なし)、 PD-L1発現(SP142アッセイで陰性[免疫細胞での発現<1%] vs 陽性[≧1%])だった。
主要評価項目は医師判定によるPFS、 副次評価項目は全生存期間(OS)、 奏効率(ORR)、 盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、 安全性だった。
データカットオフは2025年9月15日、 追跡期間中央値は30ヵ月だった。
ベースラインの患者背景は、 de novo StageIVが33.1%、 肝転移を有する例が68.0%、 PD-L1陽性例が16.0%を占めており、 両群で概ね一致していた。
主要評価項目の医師判定によるPFS中央値は、 パクリタキセル+ベバシズマブ群で11.2ヵ月(95%CI 9.6~13.5)、 アテゾリズマブ追加群で12.4ヵ月(95%CI 10.3~15.2ヵ月)であり、 両群間で有意差は認められなかった(HR 0.876 [95%CI 0.670~1.145]、 p=0.168)。
12ヵ月PFS率は、 パクリタキセル+ベバシズマブ群で44.1%、 アテゾリズマブ追加群で50.5%だった。 BICRによるPFS中央値は、 パクリタキセル+ベバシズマブ群で13.8ヵ月、 アテゾリズマブ追加群で16.7ヵ月だった(HR 0.919 [95%CI 0.678~1.246]、 p=0.294)。
OSデータはimmatureであったものの、 OS中央値は、 パクリタキセル+ベバシズマブ群の31.2ヵ月(95%CI 23.9~34.7)に対してアテゾリズマブ追加群では39.1ヵ月(95%CI 30.0~47.8ヵ月)と、 数値的な延長が示された(HR 0.804 [95%CI 0.584~1.108]、 p=0.091)。
ORRは、 パクリタキセル+ベバシズマブ群で 71.9%(95%CI 63.7~79.2)、 アテゾリズマブ追加群で73.0%(95%CI 64.9~80.2)と両群で高かった。 臨床的有用率(CBR)はパクリタキセル+ベバシズマブ群で89.2%、 アテゾリズマブ追加群で88.7%、 奏効期間(DoR)中央値はそれぞれ9.5ヵ月、 12.0ヵ月だった。
Grade≧3の有害事象の発現率は両群で同程度だった。 アテゾリズマブ追加群における主な免疫関連有害事象(irAE、 全Grade)は皮疹(36.0%)、 副腎機能不全(11.5%)、 甲状腺機能低下症(10.8%)だった。 治療関連死は認められず、 新たな安全性シグナルは認めなかった。
原氏は 「HR+/HER2-進行乳癌において、 パクリタキセル+ベバシズマブへのアテゾリズマブの追加によるPFSの有意な延長は示されなかった。 一方、 アテゾリズマブ追加によるOSの数値的な延長は認められた」 と結論。 その上で、 「患者を選択することなくHR+/HER2-進行乳癌に対してパクリタキセル+ベバシズマブにアテゾリズマブを追加することは支持されない」 とした。
なお現在、 バイオマーカーを探索するトランスレーショナル研究を予定しているという。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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