HOKUTO編集部
10日前

北里大学北里研究所病院 (北研) IBDセンターの抄読会で実際に交わされた治療判断の視点や議論のエッセンスを凝縮してお届けします。
第9回は、 ステロイド抵抗性の急性重症潰瘍性大腸炎 (ASUC) に対する救済療法として、 タクロリムス (Tac) とインフリキシマブ (IFX) を比較した後ろ向きコホート研究を取り上げます。
Effectiveness and safety of tacrolimus versus infliximab as rescue therapy for intravenous corticosteroid-refractory acute severe ulcerative colitis: a multicenter cohort study
J Crohns Colitis. 2026 Sep 3;20(9):jjag143
ステロイド大量静注療法 (IVCS) に抵抗性を示すASUCは、 救済療法の選択肢が限られており、 臨床上の大きな課題となっている。
Tacは救済療法の候補とされているが、 この状況で広く使用されているIFXと比較した際の有効性・安全性は、 十分に明らかになっていない。
国内の34施設において、 2014年1月~2023年3月にASUCで入院し、 IVCS抵抗性のため救済療法としてTacまたはIFXを投与された患者を対象に、 両薬剤の短期的な有効性と安全性を比較した。
IVCS抵抗性は、 IVCS開始後14日以内に救済療法を要する無反応または不十分な反応と定義した。 また、 全結腸切除術または亜全結腸切除術の既往がある患者、 抗TNF-α製剤またはカルシニューリン阻害薬の使用歴がある患者、 入院からTacまたはIFXの投与開始までに他の生物学的製剤・低分子化合物・治験薬を投与された患者は除外した。
主要評価項目は、 2項目の患者報告アウトカム (PRO2) スコアを用いた14日目の臨床的寛解、 副次評価項目は、 3日目および7日目の臨床的反応、 56日以内の結腸切除および有害事象などとした。
解析対象は300例 (IFX群113例、 Tac群187例) であった。
14日目の臨床的寛解率は、 両群間で差が認められなかった。 3日目の臨床的反応率はTac群で低かったが、 7日目では差は認められなかった。

56日以内の結腸切除率はTac群で高かったが有意差は認められず、 有害事象の発現率は両群で同程度であった。

Tacは、 IVCS抵抗性ASUCに対する救済療法として、 IFXと同程度の有効性と安全性を示したが、 初期の反応は遅かった。

国内34施設による、 日本炎症性腸疾患学会公認の多施設共同後ろ向きコホート研究です。
非常に詳細に解析されており、 特に以前から治療選択に難渋していた低アルブミン血症における有効性の層別解析も行われています。 IFXは低アルブミン血症によりクリアランスが亢進するため、 有効性の低下が懸念されますが、 今回の検討ではIFXの有効性は比較的一貫していました。 対してTacは、 アルブミン値が低いほど有効性が低下する傾向がみられました。


Tacのhighトラフ (≧10ng/mL) 到達までの中央値は4日でした。 本研究では、 中央値の4日より前に到達した例を 「早期highトラフ群」、 そうでない例を 「非早期highトラフ群」 として層別解析しています。
14日目の臨床的寛解率は以下のとおりで、 いずれのTacサブグループもIFX群との間に有意差は認められませんでした。
より早期にhighトラフに到達させることで3日目・7日目の改善が得られる可能性はありますが、 14日目では差がないという結果と考えられます。 なお、 3日目・7日目の層別解析は記載がありませんでした。
Tacの維持療法に関するデータの詳細は不明で、 著者らは 「導入療法が成功した後の最適な維持療法については依然として不明確であり、 さらなる前向き研究が必要である」 と述べています。

ご指摘のように、 IFX群で免疫調節薬の併用率が低いことは有効性に影響している可能性があり、 免疫調節薬の用量の詳細も気になります。 同様に、 Tac群の長期の手術率についても、 免疫調節薬の至適化がどこまで行われたうえでの結果なのかが気になるところです。
また、 ウパダシチニブについては、 IFXと比較するRESCUE-UC試験¹⁾が進行中であり、 結果が待たれます。
北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター (IBDセンター)

潰瘍性大腸炎・クローン病を中心とした炎症性腸疾患に対し、 消化器内科を軸に多職種が連携し、 先進的な診療と研究を推進する拠点である。 専門医が高度な治療選択を提供し、 IBD診療の質向上を目指して活動している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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